沼田市立沼田東中学校 千明 浩己
向山先生は、俗にいう「キレる」(理性を失い、暴力的な行動をとったり、見境なく暴れたり
すること)状態について、その原因を以下の4点に簡潔に示された。
| 1,幼児期における親の愛情不足 2,しつけ不足 3,食生活(砂糖の摂りすぎ) 4,精神的な病気 (教育トークライン98年9月号Q&Aより) |
1、2については、マスメディアでよく取り上げられることである。
向山先生のすごいところは、3について言及したことである。当時私は目から鱗が落ちるような
衝撃を受けた。
さらに、4について触れていることにも高い知性を感じる。
神戸の「酒鬼薔薇」事件では、当時マスメディアのほとんどが教育に原因を求めた。さらに、環
境説まで飛び出した(コンビニが無い・・・云々)。
しかし、結局原因は犯人の脳障害にあった。
当時からこれに触れていたのは、一部の精神医学者だけであったように思う。
向山先生は、この以前に精神的な病気について言及されていた。さすがである。
さて、この4つの原因を授業するとしたら、やはり3について授業したい。
他の3つは、生徒自身ではどうにもできない。また、一般化することも不可能である。
しかし、食生活については、どの生徒にも当てはまり、今からでもその知識を生活に生かすこと
ができるからである。
知識があるのと無いのとでは、天と地ほどの差がある。
これについて授業した。小学校5年・6年生で授業をし、本年は中学1年生で授業した。主な引
用・参考文献は、以下の通りである。
| @教育トークライン98年9月号Q&A(向山先生回答) A食原性低血糖症 大沢博 ブレーン出版 B栄養と犯罪行動 A・G・シャウス 大沢博訳 ブレーン出版 Cその食事ではキレる子になる 鈴木雅子 河出書房新書 D子供は食べ物でこんなに変わる 鈴木雅子 企画室 |
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発問1 人間の脳の栄養源は、わずかに一つだけです。その栄養源は、次のうち どれですか。 オ、カルシウム |
答えは、ウの炭水化物である。炭水化物は分解されてブドウ糖となる。このブドウ糖こそが脳の
唯一の栄養源となる。
生徒にはプリントに答えを書かせてから、挙手させた。ビタミンやカルシウムに手を挙げる生徒
が多かった。炭水化物は3・4名が手を挙げた。
| 発問2 ご飯やパン、うどんなどの炭水化物は、ゆっくりと消化されブドウ糖に なるため、理想的な食材です。血糖値は緩やかに上昇します。しかし炭 水化物の中で、一気に血糖値を上昇させるものがあります。それは何で すか。 |
これも、生徒にはプリントに書かせた。(以下同様)
書かせた後、列指名し答えさせていった。バナナやスパゲッティーなどさまざまな答えが出る。
答えは、砂糖である。
生徒からも、もちろん出てきた。
| 発問3 砂糖が大量に体内に入ると、血糖値が一気に上昇します。すると、脳は 驚いて、血糖値を下げるように命令を出します。この命令を伝える役割 をする液体を、ホルモンといいます。血糖値を下げるホルモンは、一体 どこから出るでしょう。 ア、心臓 イ、胃 ウ、腎臓 エ、肝臓 オ、すい臓 |
答えは、オのすい臓である。プリントに予想を書かせてから挙手で答えさせた。
ウ・エ・オに同じくらい手が挙がった。
| 説明 このすい臓から出るホルモンを、インスリンといいます。血糖値を下げ るホルモンは、このインスリンしかありません。なぜなら、人間の長い 歴史の中で、血糖値を下げなくてはならないほど食生活が豊かな時代 は、ここ50年くらいにすぎないからです。あとの数百万年はほとんど 飢えとの戦いでした。血糖値を下げる必要などほとんど無かったので す。そのため血糖値を下げるホルモンはすい臓の分泌するインスリンだ けしかないのです。それで、十分足りていたのです。 |
| 発問4 インスリンがドバッと放出されると、一気に血糖値が下がります。本来 ならもう少し時間をかけてゆっくりとブドウ糖を吸収しなければならな かったはずなのに、一気に血糖値が下がってしまったため、ブドウ糖が 足りなくなります。 ブドウ糖が足りなくなると大変なのは脳です。脳の栄養源は、ブドウ糖 だけなのです。ブドウ糖を全く補給できないと、脳はどのくらいで機能 が停止すると思いますか。 |
予想をプリントに書かせ、列指名で答えさせた。
30分とか、1時間、1日等、さまざまな答えが出た。
答えは、約5分である。この答えを言うと、生徒から驚きの声が上がった。
| 説明 完全にブドウ糖が補給できなくなれば、5分程度で脳は機能を停止しま す。脳が機能を停止するということは、死ぬということです。生きている ことができません。 また、ブドウ糖が足りない状態でも、10時間続けば「植物状態」になっ てしまいます。脳はとてもデリケートなのです。 |
| 発問5 ブドウ糖が補給されないということは、そのくらい重大な危機なので す。しかし、人間の体は良くできています。ちゃんと緊急事態に対応す るシステムがあります。血糖値が下がり、脳に影響がありそうなとき、 脳は血糖値を上げるためのホルモンを出すよう命令を出します。血糖値 を上げるホルモンは、一体どこから出るでしょう。 ア、心臓 イ、胃 ウ、腎臓 エ、肝臓 オ、すい臓 |
これも、答えを予想させてから、挙手で答えさせた。
答えは、ウである。正確には、副腎髄質である。腎臓の上の部分にある。(すい臓のランゲル
ハンス島からもグルカゴンというホルモンが出るが、ここでは混乱を防ぐため触れない。)
| 説明 副腎髄質といって腎臓の上の部分にあるところから血糖値を上げるホルモ ンが出ます。ちなみに、人間の歴史は飢えとの戦いの歴史であったことは さっき言った通りです。ですから、血糖値を上げるためのホルモンは人間 の体に3種類もあります。そのくらい用意しておかないと、どれか一つ不 都合が生じた場合、すぐに命にかかわってしまうからです。 さて、副腎髄質から、血糖値を上げるホルモンが出ます。このホルモンの ことを、アドレナリンといいます。 |
| 発問6 アドレナリンが分泌されると、血糖値を上げるために、ある臓器が働き ここからブドウ糖が放出されます。さて、この臓器はどれでしょう。 ア、心臓 イ、胃 ウ、腎臓 エ、肝臓 オ、すい臓 |
答えを予想させてから、挙手で答えさせた。
答えはエの肝臓である。
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説明 アドレナリンが分泌されると、肝臓に蓄えてあったグリコーゲンという物 質がブドウ糖に分解されるのです。ちなみに、キャラメルで有名なグリコ はこのグリコーゲンからとっています。(インスリンは、ブドウ糖をこの グリコーゲンに変え血糖値を下げている。) しかし、ここには大きな危険がひそんでいます。 |
| 発問7 このように砂糖の取り過ぎは、低血糖症という恐ろしい病気になる可能 性を含んでいます。では、次のおやつの中で、最も砂糖を多く含んでい るおやつはどれですか。 ア、チョコレート 1枚 イ、シュークリーム 1こ ウ、ショートケーキ 1個 エ、清涼飲料水500ml 1本 オ、プリン 1カップ カ、チョコレートパフェ 1杯 |
予想させ、挙手で答えさせた。
チョコレートパフェが最も多く、続いてチョコレート、清涼飲料水と続いた。
| 指示 それぞれ、砂糖が何グラムか言いますから、プリントにメモしていきなさ い。 説明 チョコレート、19g。シュークリーム8g。(シュークリームを選んで いた生徒、ええ、と言う声)ショートケーキ、31g。(ここで歓声と驚 きの声が上がった)清涼飲料水、50g。(驚きの声が大きかった)プリ ン、11g。チョコレートパフェ・・・28g。(一斉に驚きの声) 圧倒的に、清涼飲料水が多いのです。コーラなどは350mlの缶で50 gの砂糖を飲んだことになります。 |
| 発問8 では、1日平均どのくらいの砂糖ならとっても問題ないのでしょうか。 |
予想をプリントに書かせ、列指名した。
平均100g程度であった。中には600gという生徒もいた。
| 説明 答えは、30〜40gです。これならなんの問題もないそうです。50g でもまず大丈夫だという人もいます。 しかし、清涼飲料水を1本飲めば、それだけで1日の許容摂取量に達して しまうのです。ポテトチップスや甘いお菓子を食べながら、清涼飲料水を 飲むことは、低血糖症への近道となるのです。 |
| 発問9 体に入った砂糖を分解するときには、ビタミンB1が使われます。ま た、体が酸性になるのを防ぐために、カルシウムが使われます。では、 清涼飲料水1本分に含まれている砂糖で200mlの牛乳何本分のカル シウムが壊れると思いますか。 |
これも予想を書かせ、挙手で列指名した。その後、挙手させ更に確認させた。
ほとんどの生徒が10本以下であった。最も予想した人数が多かったのは5本であった。
一番多く予想した生徒は、21本であった。
| 説明 答えは、5(と、板書すると5本の生徒が「当たった!」と声を上げた) 0本です。(生徒驚きの声) 何と1本の清涼飲料水で、200mlの牛乳50本分のカルシウムが壊さ れ使われるのです。もちろん、そんなに牛乳を飲む人はいないから、当然 骨などのカルシウムが使われます。最近増えている骨粗しょう症という病 気は、骨がスポンジのようにスカスカになってしまう病気です。砂糖の取 り過ぎで骨のカルシウムが壊されることが、その原因の一つであるといわ れています。 さらに、カルシウムには脳をコントロールする働きがあります。興奮しす ぎるのを押さえる働きがあるのです。カルシウムが足りなくなることで、 人はイライラし、攻撃的になってしまうのです。怒りっぽくなっていると お家の人に「カルシウムが足りないんじゃないの」といわれた人も多いと 思います。それには、こういう理由があったのです。 |
最後に次のように話した。
| 砂糖を摂りすぎることによりインスリンの過剰分泌を招き、攻撃ホルモンアドレナリンが分泌されます。これで攻撃的になっているうえに、砂糖を摂取することにより体の酸性化を防ぐため脳をコントロールするカルシウムが使われ、カルシウムが足りなくなりさらに攻撃的になってしまうのです。この状態になったとき、「キレる」人が出てきてしまうのです。 ですから、これは特別な人がなるのではありません。誰でもが「キレる」可能性があるのです。ぜひ、自分の生活を振り返ってみてください。思い当たることはありませんか。 だからといって、おやつが悪いわけではありません。育ち盛りの君たちにとって肉体的にも精神的にもおやつは必要なものです。 でも、よく考えて食べないと、おやつのせいで「キレ」てしまうことがあることを理解して、上手におやつを食べてください。 これで授業は終わりです。最後に今日の授業の感想をひとこと短く書いて提出してください。(時間がなかったので、感想を読むことはしなかった。) |
この飽食の時代に、栄養失調があるという。
「低血糖症」も、そのうちの一つであるように思う。
しかし、知識さえあれば防ぐことはできる。ぜひ、知恵を磨き、本当の意味で豊かな食生活
ができる日本人になって欲しいと心から願う。
作成責任者:千明浩己(TOSS水芭蕉・TOSS群馬ML)