ここでは、毎日の私の診療生活を思い当たるままに書いて参ります。何か中で皆
様の参考になる事があれば幸いです。多少の自己紹介ですが、在京の歯科大学を
卒業したのが昭和43年、当時の東京では学生紛争発火直前でした。それからの
数年間は東京は異常でした。私の大学院での研究生活は全く学園紛争の中で血塗
られたと言ったらおおげさですが、全く凄まじい時代でした。そして昭和47年
父親の歯科医院を現在地で跡を引き継いだ典型的なUターン組でした。
ある日の事です。一人の御老人が何箇所も歯
科医院を渡り歩いて参りましたが、なかなか
思うような入れ歯に巡り合う事ができず、本
当に苦しい生活、いや食生活で悩んでこられ
たとの事でした。よくお口の中を観察致しま
すとどうも上下の一組の義歯、入れ歯ですが
色や形から観察して同じ歯科医院で同じ時に
作成したものとは思えないものです。それで
同じ所で、同じ時期に作ったものですか?と
お聞きしますとそうだとの御返事!
どうも変です。 それで誠に失礼を顧みず他に何組くらいの入れ歯をお持ちです
かと尋ねますと、驚くなかれ上下3組の入れ歯を持っていますとの事。その上、
何と今使っておられる上下は同じ対のものではないのです。何と上下を取り違え
て使っておられるのですから上手く交合する訳がありません。制約が有ってなか
なか難しいのですが、この方はそれでも沢山の入れ歯セットを持っておられた事
になります。当然ながら、入れ歯は常に上下一対で作られているものですから新
旧の入れ歯では上手く噛めるはずがありません。何対もの入れ歯を持っておられ
るとどれとどれが対であるかは、ご本人でも定かではなくなってしまうでしょう
どうぞ、古い義歯は当然御自分の顎の粘膜の形には合わなくなっている訳ですか
ら処分致しましょう。常にその時の顎の粘膜の形に合った一番新しい入れ歯を使
っていただきましょう。
多くの患者さんを治療するのに当たって一番
苦労するのが残念ながら私達専門の歯科医師
の説明や意見に貸す耳を持たない方にたいす
る時ですね。まず、歯を抜く事を要求し何故
抜きたいのかを説明しない方ですね。ただ、
抜歯を要求してもその後の状況がどの様にな
るのか、抜歯が本当に一番ベストな選択なの
か? 考えられる最高の治療をしてあげよう
と思うのですが、なかなかそうはいかない場
合があるのです。助かる可能性のある歯を抜歯する様に言われてもはい、そうで
すかとは応じられない場合があるのです。