◎動脈硬化症の食事療法
動脈硬化症の発生促進、危険因子としてあげられているのは、高血圧(正常血圧:上<130かつ下<85)、LDLコレステロール(正常値140mg/dl以下とし下限を60mg/dl)、喫煙、肥満、更年期障害、
糖尿病、
痛風(尿酸〈難溶性〉正常値2〜7mg/dl)、運動不足、ストレス、ヘマトクリット(赤血球容積値:正常値35〜50%)の増加(50%以上)となっています。最近よくいわれる「
メタボリックシンドローム」は、肥満、中性脂肪、血圧、血糖の値が少し高めでこれらの条件が重なった状態とされています。数値がやや高い項目が、3〜4項目が重複すると、動脈硬化の危険が一気に高まります。
年齢と共に気になってくるのがコレステロール値、これから10月にかけて食欲の秋でもあり、身体を動かすにも良い季節でもあります。寒さに向かい身体を動かす機会が少なくって来る時期に備え、高齢者にとっては、美味しいものを食べ適度に身体を動かし来るべき冬に備えて健康な身体作りをしておきましょう。そんなことを交えながら、動脈硬化症の食事について触れていきたいと思います。
血液の流れる血管を取り巻いている動脈壁は、血液に直接触れている内膜上皮、内膜、内弾力板、平滑筋細胞、外弾力板、外膜があります。高血圧、喫煙、ストレス、紫外線、老化によって内膜上皮に炎症が起こって障害が発生してきます。そこにコレステロールの脂肪斑が平滑筋細胞の内外に沈着が起こります。早い人では10代後半より脂肪斑の出現があるのです。コレステロールの沈着が増殖してくると血小板(血液を固まらせる役目を持つ)からの平滑筋増殖因子が働き線維斑が形成され動脈硬化が進んでいきます。血液の流れも乱れてきて部分的にも動脈硬化が見られてくるのです。それが石灰化、血栓、潰瘍、出血をみるようになります。血栓からの発症が著しく多くなっています。更年期のころになると病的症状としてコレステロール値の上昇が顕著になって末梢動脈、脳動脈、冠動脈、腎動脈の硬化に表われ、軽症時の症状として足が冷える、メマイ、しびれ、息切れ、動悸、狭心症、頻尿、重症になると半身麻痺、言語障害、脳梗塞、脳いっ血、心筋梗塞、乏尿、脱疽(手足の先の部分の病変)に至るのです。
その治療として食事療法、薬物療法(血栓防止、合併症の防止)、手術療法(血栓除去、バイパス)が状況に応じて行われています。
最近の食生活は、景気低迷のせいもあるのか蓄肉の消費が少し減少傾向を示しているものの欧米化してきて依然として多いようです。食事療法としてのポイントは、乳幼児期からの食生活の配慮が必要です。常日頃からバランスの取れた食事をすることが大切なのです。40歳を過ぎた頃より免疫力の低下により更年期障害としてコレステロール値が高くなってくることもあるのです。また水分の少ない血液は、糖質、脂質の濃度が濃くなって流れが悪くなります。動脈硬化によって引き起こされ、増加傾向を示す脳梗塞、心筋梗塞は早朝に多く発生しています。流れの悪くなった血液が詰まって引き起こされるのです。夕食後、起床時の水分補給が重要です。その外にも上記に示したようにさまざまの誘引によって併発されます。そのそれぞれについて食事に対する注意が必要です。
◆高血圧(正常血圧:上<130かつ下<85)では、1日の食塩量を7g以下として多価不飽和脂肪酸である魚油(DPA、EPA、DPA:いわし、まぐろ)の摂取が望ましく肥満のある場合は適正なエネルギーの摂取に努めましょう。高血圧症である場合は、すでに肥満、動脈硬化が始まっていることが多いのです。
◆LDLコレステロール(正常値140mg/dl以下とし下限を60mg/dl)飽和脂肪酸(パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸:豚脂、牛脂)の摂取を制限し多価不飽和脂肪酸である魚油(DPA、EPA、DPA:いわし、まぐろ)の摂取をする。食事からのコレステロール量を300〜350mg/1日に制限し、肥満のある場合は適正なエネルギーの摂取に努めましょう。
◆喫煙は、 たばこの
ニコチンは、アルカロイド(植物に含まれる塩基性窒素化合物:苦味がある)であリ、そのニコチンを分解するとニコチン酸がえられます。神経の興奮作用があり、血管を収縮させ血圧の上昇を招いたり、胃腸の収縮力の働きを悪くし食欲が抑制されますので禁煙とするのが望ましいといえます。
◆肥満の原因になっているのが、脂肪、糖質(中性脂肪:菓子、果物、アルコール)の取りすぎによって引き起こされています。動脈硬化を促進させていることが最も多いことから、食べ過ぎ、飲み過ぎを避け標準体重とします。3食バランス良く主に朝、昼を主とするほうが飢餓状態を作らなく代謝がスムーズに行われエネルギーの消費量が多くなり肥満の解消にもよいのです。血液中の中性脂肪が増えると、エネルギーに変換されない中性脂肪は、善玉コレステロール(HDL)を減らし悪玉コレステロール(LDL)を増やします。総コレステロール値が高くなくても動脈硬化を招く原因となるのです。
◆更年期にはいると体力の低下、ホルモンのバランスの崩れ、障害により、コレステロール値の上昇を見ることもあります。女性ホルモンは、コレステロールからなっており閉経により充分に作用しなくなって余分なコレステロールが血中に流出し値が高くなりやすいのです。
◆糖尿病の長期に及んでくると腎障害、動脈硬化を併発してきます。
◆痛風(尿酸〈難溶性〉正常値2〜7mg/dl)の原因となる食事は、プリン体(蓄魚肉)を多く含む食事、アルコール(適量はHDLコレステロールを増加させる)の多飲(エネルギーの過剰摂取、中性脂肪増加、尿酸排出阻止)があります。尿酸排泄機能の低下によって腎障害、尿路結石が起こってきます。
◆運動不足によって、肥満を招きやすく、しいては糖尿病、高血圧症に罹(かか)りやすくなります。適度な運動することによってHDLコレステロールの増加、血行促進が認められています。
◆ストレスは、ときには神経を興奮させ血管を収縮させ血圧の上昇を招くことにことになり度重なることによって動脈硬化への影響がでてきます。疲労の蓄積がある時は、充分な睡眠を確保することも重要なことです。
◆ヘマトクリット(赤血球容積値:正常値35〜50%)の増加(50%以上)し過ぎると血液の粘度、濃度が上昇していることで血液が固まりやすくなり血栓を作りやすくするのです。脱水状態であることもあるので努めて水分の補給をすることが大切です。
食事療法の基本方針としては、動脈硬化といろいろの病気(肥満症、糖尿病、高脂血症、高血圧症、痛風、腎障害)とが合併していることが多く
メタボリックシンドロームの原因になっていますので、その原因とされる疾病の治療と並行して行われます。
痛風食について簡単に触れておきますと大量飲酒、蓄肉者に多く血液中に過剰に尿酸がみられ高尿酸血症(8.0mg/dl以上)の状態にあります。プリン体を多く含む食品(核酸〈細胞の核、原形質で、水溶性、難油溶性、タンパク質(核タンパク質)以外の成分をいう。イノシン酸(鰹節の旨み)、グアニル酸(椎茸の旨み)として核酸系調味料がある〉、臓物、オイルサーデン、大豆)、アルコールの制限、尿酸排出を促進する為に充分な水分の補給がありますが、最近では内因性のことが多く厳重な食事制限は行われていませんが、常にバランスの取れた規則正しい食生活が望まれます。
動脈硬化症で一番に問題にされること、気にされていることは、LDLコレステロール値を下げることにあり、最近の傾向として効果的な方針、方法についてお話を進めてまいります。
- 肥満を避け適正なエネルギーの摂取としましょう。夜食、早食いは、肥満の原因となり易いですので避けます。ゆっくりと一口20回程度よく噛んで食べましょう。
- 高血圧を併発していることがおおいので食塩の1日摂取量を7gとします。カリウム(栄養のバランスの取れた食事とする)の多く含む食品を取ることによって高血圧の原因となっているナトリウムの排出を促します。
- コレステロールの多い食品の摂取を控えると共に血中のコレステロールを低下させる作用のある必須脂肪酸(アラキドン酸、αーリノレン酸、リノール酸)は、プロスタグラジン(生体を防御するホルモン)を体内で生成し血液の粘性に関与しており大切な働きをしているので総エネルギー4%(総エネルギー1600kcalとして64kcal)がFAO/WHOで奨励されています。脂肪酸は、飽和脂肪酸(パルミチン酸:豚脂、牛脂)、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸:オリーブ油)、多価不飽和脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸、αーリノレン酸、EPA、DPA、DHA)とにわけてその比が3:4:3であることが望ましいとしており摂取脂肪酸量を40gとすると12g:16g:12gになります。そのなかでも不飽和脂肪酸であるn-6(リノール酸、アラキドン酸)/n-3(αーリノレン酸、DPA、EPA、DPA)の比が4:1(総脂肪酸量40gとして多価不飽和脂肪酸12gであり9.6g:2.4g)が日本人の適正値として第6次改定で示されています。日本人は、平均して300〜400mgのコレステロール摂取量となっており適正値とされています。DPA(ドコサペンタエンサン)は、EPAより10〜20倍ものコレステロール低下作用があることがつい最近になって知られるようになっています。LDL(正常値140mg/dl〜下限を60mg/dl)とHDL(正常値40mg/dl〜上限80mg/dl)の比率が3倍未満、2.3倍以下が理想とされていますが、総コレステロール値(正常値220mg/dl〜140mg/dl)が極端に低下している場合は、免疫力が低下し問題があります。
- タウリンが甲殻類(えび・かに)、軟体動物(たこ・いか・貝類[さざえ、かき])の筋肉部分に多く含まれています。アミノ酸の一つで肝臓の働きを良くし胆汁の分泌を促し中性脂肪、血圧を低下させる作用があります。コレステロールは、肝臓で分解され胆汁酸に変わってその胆汁酸がタウリンと組み合わさったものがタウロコール酸で胆汁として胆のうに蓄えられるのです。水溶性で、鎮静、有害物質除去、視力強化にも役立っています。
- 食物繊維を多く含む食品(胚芽米、ライ麦パン)特にねばねばを含む里芋は、有害物質の排出、生成を妨げ、血圧安定、排便促進、血糖値の上昇を抑制、肥満予防、血清コレステロール値を安定させる作用を持っていますので積極的に取りましょう。
- 植物ステロールが、大豆、野菜、果物、きのこ、穀類などに細胞膜の構成成分として含まれており、植物ステロールは、単に遊離体としてだけでなく植物ステロールに脂肪酸が結合したステリルエステルとしても存在しています。食品添加物の乳化剤としても利用され、これらが血中コレステロール値に影響しコレステロールの吸収を妨げるとされ、そのジアシルグリセロールが(脂肪がつきにくいとして植物油に使用)注目されています。他にカンペステロール、スティグマステロール、シトステロールなどがあり、菌類ステロールとしてエルゴステロール(しいたけ)があります。
- 葉緑素(クロロフィル)が主に植物の葉緑体といわれるおもに植物の葉に存在する緑の細胞でその色素をいいます。アレルギー性疾患、消臭作用、LDLコレステロール値を上昇させない、血液浄化、造血、抗炎、抗酸化作用があり利用されています。
- 水分補給することが血液の流れをよくし血栓をつくりにくくします。年齢と共に体内での保水力の衰えがみられ常に水分を補うことが必要とされます。風呂上り、就寝前の水分補給1日に1.5〜2リットル必要とされマメに飲むように心がけます。
以上のことから、適正体重を維持する、肥満を避けることが最も重要なこと理解されます。規則正しい生活、食生活、栄養のバランスの取れた食事が基本となり、中高年、高血圧症を合併していることが多いことから、コレステロールを制限した食事に加えて食塩(7g/1日)の摂取量を控えた食事とします。
動物性食品に含まれる一回使用量からのコレステロール含有量
- 油脂類:バター21mg/10g、豚脂10mg/10g、牛脂10mg/10g、マヨネーズ15mg/10g、植物性マーガリン0.5mg/10g、白絞油・サラダ油微量、オリーブ油・ゴマ油0
- 魚貝類:うなぎ161mg/70g、あなご98mg/70g、鱈59mg/80g、はまち50mg/70g、めかじき50mg/70g、キス50mg/50g、すずき47mg/70g、きんめ鯛42mg/70g、かつお42mg/70g、鮭42mg/70g、鯵39mg/50g、いわし30mg/50g、シラス干し24mg/10g、牡蠣26mg/50g、赤貝14mg/30g、あさり12mg/30g、ほたて貝10mg/30g、しじみ8mg/10g、大正えび48mg/30g、ずわいがに13mg/30g、するめいか135mg/50g、たこ75mg/50g、
- 蓄鳥肉類:牛肝臓72mg/30g、鶏皮付きむね肉52mg/60g、マトン46mg/60g、鶏皮無しむね肉44mg/60g、和牛肩肉43mg/60g、豚肩肉39mg/60g、ロースハム12mg/30g、鶏皮無しむね肉44mg/60g、
- 卵類:鶏卵210mg/50g、うずら卵94mg/20g、いくら48mg/10g、うに29mg/10g、卵白1mg/50g
- 乳類:牛乳18mg/150g、プレーンヨーグルト12mg/100g、プロセスチーズ12mg/15g、脱脂粉乳5mg/20g
脂質エネルギー比を25%以下とします。コレステロール量は、250mg/1日程度に制限されます。コレステロールは、動物性食品に多く含まれています。エネルギー25〜30kcal/kg/1日、蛋白質1.0〜1.2g/kg/1日、エネルギー比率は、糖質60%、蛋白質20%、脂質20%となります。
一日の食糧構成(例)エネルギー1608Kcal たんぱく質75.3g 脂肪38.9g 炭水化物237.4g
ビタミンA1176μg ビタミンE10.2mg ビタミンB1:1.57mg ビタミンB
2:1.40mg
ビタミンB
6:1.79mg ビタミンC162mg 飽和脂肪酸9.32g 不飽和脂肪酸24.28g
コレステロール241mg 食物繊維17.3g
| 食品名 |
米飯 胚芽米 |
芋類 |
砂糖 |
油脂類 |
味噌 |
豆腐 |
魚類 (アジ) |
| 数量(g) |
450 |
50 |
5 |
15 |
15 |
100 |
100 コレステロール77mg |
| 目安 |
軟飯で軽く 6杯 |
馬鈴薯 小1個 |
大匙1杯弱 |
大豆油 ン小匙1杯 |
大さじ1杯 |
1/3丁 |
鯵中1尾 |
| 食品名 |
豚鳥肉類 (豚もも肉) |
卵類 |
牛乳 |
スキムミルク |
緑黄色野菜 |
その他の野菜 |
果物 |
海草 (わかめ) |
| 数量(g) |
60
コレステロール42mg |
25 コレステロール 105mg |
100
コレステロール 12mg |
20 コレステロール 5mg |
150 |
200 |
150 |
5 |
| 目安 |
豚ヒレ肉小1切れ |
小1/2個 |
カップ1/2杯 |
カップ1杯分 |
ほうれん草7株 |
キャベツ中葉3枚 |
りんご小1個 |
大さじ1杯弱 |
高脂血(脂質異常)・高C*TG(動脈硬化症)の食事:献立表へ
高脂血症(脂質異常症)食についても参考にしてみてください。
食生活の変化によって、動脈硬化症が増加傾向にあり、冠動脈血管障害と診断され心筋梗塞を起こしてしまうケースが多発しています。最近の生活の豊かさから畜鶏肉食中心の飽和脂肪酸の多い、食物繊維(野菜、海藻類、胚芽精米、いも類、豆類、おから、果物等)の少ない食生活に変化してきています。ニュースで有名人の喫煙、水分の不足から血管に障害を起こし40歳代から発病と弱年齢化してきています。食べ過ぎによる肥満が増加し
ダイエットブームを巻き起こしたともいえます。適正な体重維持が望まれているのです。
過食、肥満、不規則な食生活、若年層からの畜鶏肉食中心の生活、年齢の高齢化による免疫力の低下、複雑な社会からのストレスによって動脈硬化症が引き起こされています。規則正しい、運動、休養、栄養のバランスの取れた、いろいろの食品を組み合わせた食事、生活態度が基本と考えます。
(初版03.9.18 更新07.9.13 村上京子)