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◎急性膵炎食事療法
アルコール類の多量な摂取によって膵炎を誘発することが見受けられます。そのほかに急性膵炎の原因になるのに胆石、胆のうの異常、栄養の代謝の異常(高脂血症[脂質異常症]・肥満症・糖尿病・肝硬変など)、ホルモンバランス、感染症、腹部の外傷、薬物の中毒、アレルギー、その他のことが考えられます。女性では、脂肪の多い食事が続けられることによって胆石症から、男性ではアルコール性膵炎が多い傾向です。
アルコールによってすい臓が過度に刺激され、また十二指腸乳頭部の働きに異常が起き周辺組織の自己消化されるのです。脂肪の多い食事を続けていると急性膵炎を起こしやすいといわれています。炭水化物、たんぱく質に比べ脂質は、膵液分泌に対する刺激が大きく、症状が軽快した回復期の患者への脂肪摂取で疼痛(とうつう)の再発がしばしばあります。
症状として吐き気、嘔吐、食欲不振、腹部膨満感、圧迫感、発熱、脂肪便などがあり、重症時では、ショックを起こすこともあります。
急性すい炎は、膵炎から分泌される酵素(トリプシン、リパーゼなど)が活発になってすい臓が傷つくことによることを原因とし、激しい痛みを伴うことがあるのです。主にすい臓(膵液)に存在する消化酵素トリプシノーゲンが分泌され、十二指腸から出されるエンテロキナーゼによって活性化されトリプシン(主に蛋白質をアミノ酸まで分解する加水分解酵素)が活発に活動しトリプシンが他の消化酵素(脂肪分解酵素・炭水化物分解酵素など)も次々に活発に活動し過ぎることによって、血液の流れに沿って他の臓器にも運ばれ、次々にいろいろの臓器に障害を及ぼしていくこともあるのです。膵臓は消化酵素だけでなく、血糖値をコントロールするインシュリンを
分泌しています。膵臓の機能低下は、糖尿病の発生や悪化にも大いに関係があります。
診断に腹部コンピュータ断層撮影(CT)、腹部のエコー検査で腫脹(しゅちょう)した膵臓とかその周(まわ)りの滲出液(しんしゅつえき)が撮影されます。
血液の中に特にアミラーゼ(慢性膵炎では低値を示す場合もある)がすい臓から血液中に多量に検出されます。
他にカリウム、カルシウムの低下、尿素窒素、白血球値、尿中のアミラーゼ、リパーゼ、トリプトファンの上昇、赤沈促進などが膵炎の診断基準にされています。
血清アミラーゼ 基準値 50−190U/l
血清リパーゼ 基準値 9-43U/l
血沈(赤血球沈降速度) 基準値:女3〜15mm*男2〜10mm
尿素窒素 基準値 8-20mg/dl
白血球値 基準値 4〜8.0×103/μl
の少々促進がみられます。
カリウム(K) 基準値 3.6 - 4.8 mEq/l
カルシウム(Ca) 基準値 4.4 - 5.3 mEq/dl
尿中アミラーゼ 基準値 40-460U/l
尿中トリプトファン 基準−
他に貧血、CRP陽性、尿蛋白、糖陽性、腹部単純X線によるイレウス(腸閉塞)が見られることがあります。
人によって症状はさまざまですが、激痛のあるときは、すい臓を刺激するホルモンが大量に分泌されているので胃液を抜くこと、薬物療法などの治療がされ厳重な絶食とします。最初は膵液の分泌抑制を目的にした膵庇護食で自己消化を阻止する、胃液分泌を促進させない食事とします。胃液中の塩酸の刺激で分泌されるセクレチン、コリストキニン、パンクレオサイミンが膵液の分泌を促します。
痛みが治まってきた頃より徐々に胃に刺激の少ない糖質を主とした流動、半流動の消化されやすい状態にしたものから食事を開始させます。症状、臨床検査の様子を観察しながら身体に負担の少ない糖質よりタンパク質性の食品を少しずつ徐々に加えていきます。たんぱく質も、膵液の分泌を亢進させるのですが、障害を受けた組織の修復のため、膵臓はたんぱく質の合成のための大切な臓器でありたんぱく質の補給が必要です。急性期を過ぎ回復期に向かってきたならば少しずつ良質のたんぱく質を増やしていくようにします。体力をつけること、すい臓の機能を回復させるには、たんぱく質が必要です。脂質は、すい臓を刺激しやすいことから極度に制限された食事とします。
当初は、炭水化物が、重要なエネルギー源となりますが一回の量を少なくして回数を4〜5回に分けて摂取するようにします。炭水化物は、膵液の分泌に対し直接的な刺激が少なく、消化吸収に唾液、小腸のアミラーゼによってなされあまり支障なく、エネルギー源として利用できるのです。
脂肪を殆ど含まない食事であることからビタミンA,D,E,Kの不足に注意します。また食事量、栄養成分上の制約があることからビタミン、ミネラル類の不足をきたしやすく、このような場合には、やもうえずビタミン剤、ミネラル剤の服用に頼ることもあります。
味付けは、薄味とします。濃い味付けは、胃液の分泌を促進、また膵液の分泌を促すことになりますので、食欲の低下に注意しながら膵臓を保護する目的で塩味、甘味、酸味の濃い味は避けるようにします。献立、調理の工夫を凝らしていくことが大切です。
合併症として糖尿病、高脂血症(脂質異常症)などが考えられます。膵炎食では、脂質が極度に制限され、たんぱく質の制限もあります。エネルギー源として炭水化物(糖質)に多くを依存しています。糖尿病がある場合には、経口血糖降下剤、インスリン注射の薬物療法に頼らざる得ない場合もあります。炭水化物の摂過多により中性脂肪の値が高値を示してくることがあります。
膵炎は、症状がなくなってきても数ヶ月間は、注意が必要です。膵臓をいたわり、病巣(びょうそう)の修復と体力の回復に努めます。無理の無い規則正しい生活、精神の安定した生活を送れる環境にすることが大切です。
食事療法の実際
ひどい時には、背中に激痛があります。このような時には2〜3日の絶食、絶飲とし、エネルギー、ビタミン、ミネラルの必要な補給は、点滴などによって行なわれています。疼痛(とうつう)が和(やわ)らいできたら消化吸収のよい、刺激の少ない流動物より経口摂取を開始します。痛みが感じられないようになったら徐々に半固形物に進み、五分粥食、全粥食と刺激の少ない消化の良い、主に糖質を中心として、たんぱく質を徐々に普通量に近づけていきます。脂肪は、膵臓を刺激しやすく、回復期に入って、痛みを伴わないように、少しづつ様子を見ながら摂取していくことになります。
急性膵炎の流動食から常食の食料構成、献立例を示しておきましょう。症状に合わせて食事を進めていきます。
食糧構成
急性膵炎 流動食
エネルギー400kcal、たんぱく質10g以下、脂質1g、糖質100g、食塩3g
| 食品名 | ゼラチン | 脱脂粉乳乳製品 | 野菜スープ |
馬鈴薯 | 果汁 | 重湯 | 味噌 | 砂糖類 |
| 数量(g) | 2 | 100 | 100 | 30 | 100 | 450 | 10 | 35 |
| 目安 | 小さじ1弱 | 1/2カップ | 切れ端の野菜のスープ | 1/2個弱 | ストレート ジュース1/2カップ |
一回量100〜150cc | 味噌スープに | 大匙4杯 |
水分補給、食事総量が1日2000〜2500g程度になるようにして脱水状態を防ぎ電解質の補給を行います。
食欲がでてきたら野菜、芋類の裏ごししたものをポタージュに、ゼリーにしてもよいでしょう。ビタミン、ミネラルの補給ができます。
急性膵炎 五分粥食
エネルギー900kcal、たんぱく質20g、脂質5g、糖質200〜250g、食塩3g
| 食品名 | スキムミルク |
乳製品 (加糖ヨーグルト) |
緑黄色野菜 (ほうれん草) |
その他の野菜 (キャベツ) |
イモ類 (馬鈴薯) |
果実類 (りんご) |
5分粥 | 小麦粉 | 大豆製品(豆腐) | 砂糖 |
| 数量(g) | 10 | 50 | 100 | 200 | 100 | 200 | 900 | 10 | 50 | 50 |
| 目安 | かれい中1切れ | 厚切り一切れ。 |
7株 | 中1/4切れ | 小匙一杯 | 小さじ1杯 | ドンブリ3杯 | 大匙1匙強 | 2.5cm 角 |
カップ 1/4杯強 |
エネルギー補給にたんぱく質、脂質の制限があることから糖質(炭水化物)の利用が主になります。ご飯、パン類にはたんぱく質も含まれ、制限された使い方になります。そこで粉あめがよく使われています。粉あめはエネルギーが、砂糖と変わらず甘味度が低く高エネルギーを摂取しやすく、およそ砂糖の5倍の量で砂糖の甘さと同じです。
急性膵炎全粥食
エネルギー1300kcal、たんぱく質45g、脂質15g、糖質250g、食塩5g
| 食品名 | 魚介類 (かれい) |
乳製品 (脱脂加糖ヨーグルト) |
卵類(鶏卵) | 緑黄色野菜 (ほうれん草) |
その他の野菜 (キャベツ) |
キノコ類(生椎茸) | 乾燥野菜 (切干大根) |
海藻類 (乾燥わかめ) |
イモ類(馬鈴薯) | 果実類(りんご) | 全粥 | 小麦粉 | 大豆製品(豆腐) | 味噌 | 砂糖類(砂糖) |
| 数量(g) | 40 | 100 | 50 | 100 | 200 | 10 | 3 | 1 | 80 | 200 | 600 | 40 | 100 | 10 | 30 |
| 目安 | 中1切れ | 1カップ | 7株 | 中1/4切れ | 中1個 | 一つまみ | 一つまみ | 小一個 | 中一個 | 丼2杯 | カップ1/2弱 | 5cm角 | 大匙1/2 | 大匙3杯 |
急性期の急性膵炎の流動食期から全粥食期のメニューは、こちらからになります。
症状が安定してきましたら、軟飯、普通のご飯とすすめ、しばらく症状が安定した時期が続いた段階でたんぱく質を増やしますが脂肪は、強い制限のままの、油の多い食品、油脂類は避けるような食事になります。又過食すると痛みを感じやすくなりますので常に満腹にしないよう気を付けましょう。慢性膵炎食事療法へと進めます。
(08.1.18 記載者 村上京子)
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