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《テーマいろいろ・パート2》

◎消化と吸収Digestion&Absorption しょうかときゅうしゅう
 人、動物では、水と炭酸ガス、空気中の窒素などの原料より生命を維持していくための生活に必要な複雑な食物を体内で作り上げていく能力はありません。人の身体を作るための食物を植物、動物を調理して生命維持に必要なエネルギー源、栄養素としています。食物としている植物、動物の栄養素は、さまざまの種類の栄養成分が含まれますが、それぞれに特異性があります。おなじ蛋白質でも魚、豚肉、卵などで、それぞれの種属の特異性があり、人の蛋白質と同じものではありません。たとえば鶏卵の蛋白質がそのまま人の体内に入ってくるとアレルギー反応を起こします。人の蛋白質に適応させるために、その種属の特異性を除き、低分子にして、人の蛋白質に適合した化合物に合成していく必要があります。水、アルコール、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ブドウ糖などの低分子のものはそのまま吸収されていますが、大分の食物は、高分子の化合物であり、それらを分解して、それらを組み立てている最も小さい単位の特異性をもたない低分子の化合物として消化管壁を通過できるような分子として変化させ血液中やリンパに溶け各組織に運ばれ利用しているのです。

食物を変化させ人に適合したものに変化させていくこと、その作用を消化、消化して特異性が除かれた低分子に変わった物質を消化管の粘膜から体内に取り入れていくことを吸収といいいます。食物の消化と吸収をおこなう器官を消化器といい、口腔→咽頭(いんとう)→食道→胃→小腸→大腸→直腸→肛門に至るまでで、それらを一括して消化器系Digestive systemといいます。噛むこと、飲むこと、排泄することを除くと、消化吸収の働きはすべて自律神経によって支配され不随意的におこなわれています。
◆消化Digestion
  消化には機械的因子(物理的因子)、化学的因子がおもにあげられますがそのほかに生物学的因子もあります。
◇機械的因子(物理的因子)
  口腔内における咀嚼、胃腸の蠕動(ぜんどう)運動における混合、攪拌、溶解、移動などがあります。食物が調理され口から入りますが、調理も消化の一部と解釈できます。調理は、食物を物理的、化学的に処理して食品をより消化しやすい状態にしています。おいしく、軟らかくし、食品の細胞、組織を破壊し、脂質、炭水化物、蛋白質の変性が行なわれたりされています。そのことによって食物の口腔内における咀嚼を容易にし、消化液との混合、酵素の作用を受けやすい形としているのです。
◇化学的因子
  おもに消化酵素による加水分解のことをいいます。消化液には、胃液、腸液にある塩酸、アルカリ、胆汁による溶解、中和、結合などの化学反応のことをいいます。人は、食物を消化吸収し自分の身体に合った、特有な蛋白質、脂質として合成し、そしてエネルギーとして利用するために複雑な変化を起こさせています。これらは、高温で行なわれているわけでもなく、強酸、強アルカリのもとでおこなわれているわけではありません。体内で短時間のうちに、人にあった蛋白質、脂質などの物質に作り上げられ促進していくのには、化学的分解で、その働きをする酵素が関係しています。消化作用の大半が関与しています。
◇生物学的因子
  腸内には、無数の細菌が繁殖しています。新生児の胎便は、無菌ですが、その後食物を摂るようになるとさまざまの種類の細菌が体内に入り込んできます。特に大腸内には大腸菌が主で糞便中の3分の1は細菌体で占められるともいわれています。これらの腸内細菌の中には、その細菌の持っている酵素によって難消化性のもの食物繊維などを分解し発酵、腐敗がおこなわれています。

  食物は、口腔内では咀嚼(そしゃく)とプチアリンのでんぷんに作用する酵素でデキストリンを経て一部は麦芽糖にまで分解されています。15〜20分で40%がデキストリンに60%は麦芽糖に分解されるといいます。
食べ物が食道を通り胃に入り蠕動運動と胃液の消化酵素によって、塩酸は食物と共に入ってきた、おおくの細菌が殺菌され、ペプシンと塩酸で蛋白質の80〜85%を分解していきます。脂肪は、胃液中のリパーゼによってわずかに分解されていますが、酸性が強いとその作用は弱くなります。脂質に富んだ食物を摂ると十二指腸から消化液が逆流してきて、胆汁により脂肪が乳化され、リパーゼの消化作用を受けています。コレシストキニンCholecystokininは、十二指腸の粘膜の細胞から分泌されるホルモンで、胃内容の排出を抑制するとともに胆嚢(たんのう)を収縮させるので、胆汁の排出が促進され消化酵素に富む膵液(すいえき)の分泌を促しています。

食物の量、硬軟度、質的なもので胃内の停滞時間は異なってきます。炭水化物は、胃液の分泌を促すことは少なく早く腸に移行していきます。
 胃から酸性粥状になって十二指腸に送られ、その刺激によって、アルカリ性で中和され、消化酵素の膵液、胆汁、腸液の分泌が促され、炭水化物(ブドウ糖・果糖・ガラクトース)、たんぱく質(アミノ酸)、脂質 (脂肪酸・グリセリン)がほぼ完全に消化されます。主として小腸上部で消化を下部に行くに従い吸収をつかさどっています。
 小腸:約7m(十二指腸12cm-空腸2.5m-回腸3.5m)で消化作用を充分に受けられずに大腸に送られた内容物は、主に食物繊維等で腸内細菌の酵素によって消化、発酵が行なわれますが、人で利用される量は少なくなります。蛋白質の分解によって腐敗が助長されることもあります。大腸から分泌される液は、アルカリ性で粘ちょう性があり、消化酵素はほとんど含まれていません。

魚、鶏肉、植物といった食品は人の体内にあったものに作り上げていくわけですが、そのためそのままでは吸収されず、咀嚼(そしゃく)され、消化酵素が分泌され胃、十二指腸、小腸を経るに従って炭水化物、タンパク質、脂質が低分子のブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、水などの低分子にされていく過程、食物を変化させていく作用が消化です。口に入れられた食物は、胃、十二指腸、小腸(7m)、大腸(1.7m)を経てそれぞれの消化酵素(プチアリン、ペプシン、リパーゼなど)の作用を受け吸収、排泄がおこなわれています。食物の胃内停滞時間は、およそ、たん白質、脂肪は4時間、炭水化物2時間、水1.5時間程度となります。小腸では全体で3、4時間といわれます。

◆吸収Absorption 
  人体では、分子の大きい)、たんぱく質脂質、炭水化物そのものでは、吸収し取り入れられません。機械的、化学的、生物学的に消化されたものが人の体内に適合する低分子のビタミンミネラルブドウ糖アミノ酸、脂肪酸などになった栄養素を消化管粘膜から取り入れることを吸収といいます。アルコール以外は、胃での吸収は行われず主に小腸粘膜より低分子となった栄養素が吸収され、大腸で水分が吸収されています。吸収の機構は、受動輸送のろ過、拡散、浸透などの物理的作用と、能動輸送でATP(アデノシントリリン酸)の持つエネルギーによって積極的な生体に必要度の高い物質を吸収する2つの機構に分けられています。
 小腸粘膜の消化管壁の細胞は、半透明の性質を持っていて、一般に分子の大きい蛋白質、でん粉質のようなものは通しません。小さい分子、無機のイオンなどはその濃度の高い方から低い方へ通しますが、ある一定の物質だけが通過できる特殊選択作用があるといわれています。細胞壁から吸収された物質は拡散によって細胞の中を通り長さ0.5〜1mmの無数の数百万から数千万はあるとされる絨毛(柔突起じゅうとっき)にきている血管やリンパ管に送られます。
絨毛(じゅうもう)には、毛細管とその奥にリンパ管が通っています。絨毛自体で一部の水、ブドウ糖、NaClが、毛細管でアミノ酸、微粒子の脂肪が、リンパ管で脂肪酸、グリセリンの栄養素の吸収がおこなわれているといわれています。水溶性の栄養素(グルコース、アミノ酸、短・中鎖脂肪酸など)は毛細管から門脈を経て肝臓にいき単糖類はグリコーゲンとして、一部はたんぱく質に合成しそれぞれに貯蔵しています。脂溶性の栄養素(中性脂肪、脂溶性ビタミンなど)はリンパ管を通って輸送されます。

 ◇糖質は単糖類に分解されますが小腸ではガラクトース110〜130・ブドウ糖100・果糖43〜50の順に吸収速度が遅くなります。マンノース、キシロースが20、アラビノース10以下としています。糖が燐酸と結合することによってその吸収が促され、単糖類はほぼ100%吸収されています。二糖類(ショ糖・乳糖・麦芽糖)で濃度が濃い場合に吸収されることもありますが、多くは利用されることもなく尿中に排出されています。

 ◇蛋白質は、アミノ酸に分解され腸壁から門脈を経て肝臓で蛋白質に合成されているのもありますが、他は、アミノ酸のまま血液によって全身に運ばれていきます。吸収率は97%以上といわれています。植物性のたんぱく質は食物繊維に包まれていることが多く動物性のたんぱく質よりも消化・吸収が悪くなります。
新生児、乳幼児、腸粘膜に異常のある人では、たんぱく質が分解されないでそのままの状態で吸収して血液中に現れて、異種たんぱく質が血液中に入ってくることでアレルギー、アナフィラキシーAnaphylaxis「即時型食物アレルギー」の過敏症の現象がみられることがあります。

 ◇脂質は胆汁酸によって乳化され、リパーゼの働きで脂肪酸とグリセリンに分解されて吸収されています。腸の上皮細胞によってふたたび脂肪に合成されリンパ腔(こう)から胸管(きょうかん)を経て静脈(じょうみゃく)に入り、一部はグリセリンと短鎖の脂肪酸そのまま毛細管から門脈を通って肝臓にいくとされています。

 ◇ミネラル(無機塩類)と水では、消化管内で、粥状となって混合されている中で絨毛(じゅうもう)の毛細血管内に吸収され門脈血液に入って肝臓を通り静脈に入ります。溶解されにくい無機塩類は、吸収が悪く、不足気味の鉄、さらに例えばカルシウムは、胃の酸度、ビタミンD、シュウ酸、フィチン酸、燐酸、蛋白質、ナトリウムなどの多少の存在に影響を受けます。

 ◇ビタミン類では、水溶性のものは一般に絨毛(じゅうもう)の毛細血管内に吸収されていますが、脂溶性では脂肪吸収の場合と同様に胆汁酸の影響を受けて中心繊毛腔内に吸収されていきます。

小腸で吸収の終え、さらに大腸(盲腸-結腸[上行じょうこう・横行おうこう・下行かこう・S字状]-直腸)で吸収されているのは、主に水とミネラルです。とくに水分の吸収は多く、大腸管内の内容物は、時間と共に水分を失い結腸(大腸)にたどり着くまでにほぼ固形化されています。小腸に見られる絨毛はなく、徐々にですが、ほかの栄養成分でも水溶性で拡散性のものは吸収されています。ブドウ糖の類の単糖類も同様に吸収を受けていますがその速度は小腸上部での吸収の十分の一程度といわれます。蛋白質のトリプトファンが腸内細菌によって分解されてできたインドール、スカトールは容易に吸収され、大部分は肝臓で一部は腸壁で硫酸と結合しエーテル硫酸として尿中に排出されています。そして食物の成分で消化吸収できなかった残渣が便として排出されることになります。便中には、ほかにも消化液、消化管粘膜の細胞、再排出された鉄、カルシウムなどのミネラル類、腸内細菌などから成り立っています。食品の成分が同じでも、硬軟度、食べ合わせなどによって吸収される利用率に差があります。

栄養素のほぼ90%が小腸で、水分の80%が大腸で吸収されていますが、吸収開始までおよそ2時間、大腸まで大部分が送られてくるのは、9時間程度で栄養分の吸収がおこなわれています。大腸には18時間以上とどまり、水分が吸収され次第に固くなり便となって排出されていきます。
 便の量は植物性食品の多い場合は、便量が多くなり日本人では通常一日一回程度で、高齢者では、水分の乏しい固い便で便秘症の傾向です。筋力、ビタミンB1の不足による大腸の緊張の低下、反対に高度の緊張で大腸が痙攣性収縮により大腸が狭くなり、便が固くなることがあります。便の色は、胆汁酸に由来し、乳児の便はビリルビンのため黄色、成人ではウロビリンのため褐色です。病的な場合には酸化されて緑色になることもあります。

 消化のよい食べ物は、吸収率がよく便量も少なくなりますが、腸内にはさまざまの細菌が潜んでいます。体内で不要となった排出物を食物繊維がそれらを運び出してくれています。栄養バランスの取れた食生活が望まれます。


(初版2010.5.18 更新2013.7.6  記載者村上京子)

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