子宮全摘術の種類

子宮全摘は最後の最後の手段と考えている私も、一度は観念して手術を予定していました。そして、子宮全摘と言えば、子宮を取るということ、と単純に考えていました。

いざ手術日が迫ってくると、生命保険の手術給付金はいくらおりるのだろうと気になり、特約のしおりを見たら、『子宮広汎全摘除術(単純子宮全摘などの子宮全摘除術は除く。)』と書いてありました。はて私の手術はどっち、広汎?単純?給付金が倍も違うとはどういうこと?そんな初歩的なことさえも知らず、手術直前になって疑問に思い始めたのです。

手術のために紹介された病院で、4時間近く待ってようやく執刀医と面談できた時にはすでに疲れ果て、かろうじて質問できたのは、広汎か単純(子宮がんではないので単純)、そして縦切りか横切りか(大きいので縦切り)だけでした。他には何の説明もなく、淡々とMRI検査と入院と手術予定日が決められたのです。

子宮全摘術には他にも様々な種類があり、それぞれのメリット・デメリットを知ったのは、ずいぶん後になってからのこと。私のような巨大筋腫であっても、選択の余地があったことすら知りませんでした。万が一、子宮全摘が本当に必要となった場合、できるかぎり選択肢を検討したいと思います。

子宮筋腫に対して行われる子宮全摘術には、主に次の方法があります。

腹式単純子宮全摘術 ― Total Abdominal Hysterectomy (TAH)
  お腹を切って子宮を摘出する最も一般的な方法。
腹式子宮膣上部切断術 ― Supracervical Hysterectomy (SH)
  子宮頸部を残して子宮体部のみを摘出する方法。
膣式単純子宮全摘術 ― Total Vaginal Hysterectomy (TVH)
  膣から子宮を摘出する方法。
腹腔鏡下膣式子宮全摘術 ― Laparoscopic Assisted Vaginal
  Hysterectomy (LAVH)
  お腹に小さな穴をいくつか(通常3つ)開けて、腹腔鏡でお腹の中を
  確認しながら、膣から子宮を摘出する方法。

ここでは特に、膣式子宮全摘術、そして意外と知られていない子宮膣上部切断術について、「子宮頸部」との関連から触れてみたいと思います。

膣式子宮全摘術

「お腹を切りたくない、傷を残したくない」と思う女性にとって、膣から子宮を摘出する手術法は一見して魅力的です。「今の大きさならまだ膣式で手術できますが、これ以上大きくなると開腹手術になりますよ」と医師に言われ、手術を決意される方も少なくないようです。

膣式単純子宮全摘術は、出産経験があり、癒着がなく、子宮筋腫がさほど大きくない場合に可能な術式で、お腹に傷が残らず術後の回復が早いのが最大のメリットですが、適応が限定されているため多くの女性はこの術式を選択することはできませんでした。しかし、この術式に腹腔鏡を併用した腹腔鏡下膣式子宮全摘術の登場によって適応範囲がぐんと広まったのです。子宮全摘術の9割以上(うち6割は子宮筋腫)をこの術式で行っているという病院もあるくらい、ポピュラーな手術になってきたようです。

しかし、子宮筋腫は良性腫瘍ですから、“大きさ”だけにとらわれず、手術を必要とするだけの“症状”があるのかどうかを自分で判断しなくてはなりません。膣から子宮を摘出できるくらいの大きさの筋腫であれば、「そもそも子宮全摘する必要はない」と断言する産婦人科医もいますので、本当に必要な手術かどうかをよく検討したうえで決断すべきでしょう。

膣式子宮全摘術には次のようなデメリットがあることは、あまり知られていません。

  • 子宮頸部を切除するため、膣管が短くなる。
  • 膣管を通して子宮を摘出するため、膣壁が弱くなる。

膣管が短くなると人によっては性交痛を感じることがあり、また子宮頸部から分泌される粘液がなくなることも性交痛の原因になります。こうした子宮全摘後のセックスに関する問題は、日本では語られることはほとんどありませんが、アメリカの女性たちは切実な問題としてとらえています。また、膣壁が弱くなると、膣脱などの脱症状が生じやすくなります。術後すぐにではなくとも、女性ホルモンの分泌低下とともに靭帯が弱まる高齢になってから起こる確率が高くなります。


子宮膣上部切断術

現在、腹式子宮全摘のほとんどは単純子宮全摘術ですので、子宮頸部の切除についてあえて説明をする医師は少なく、子宮頸部の役割と切除のリスクは軽視されていると言えます。

腹式子宮全摘術の場合、子宮頸部を残す子宮膣上部切断術という選択肢があります。昭和40年代頃までは子宮膣上部切断術が主流でしたが、その後ほとんど行われなくなったようです。その理由として、子宮頸がんの予防があげられます。

子宮頸がんは、子宮体がんとは異なり、特殊なウィルスによる感染が原因になることがわかってきていますが、セックスによって感染すると言われています。もしセックスの経験がない、あるいは特定のセックスパートナーしかいない、そして40歳を過ぎて手術時点で子宮頸部に異常がなければ、「将来そこに病変が発生する確率は1%未満」と言われています。つまり、子宮頸部を残しても、子宮頸がんにかかることは稀なのです。子宮がん検診を引き続き受ける必要はありますが、年1回の定期検診で早期発見は可能です。

子宮頸部は血管が多いため、切除の際に手術時間が長引いたり、輸血が必要になったりすることがあり、尿管損傷のリスクも考慮せねばなりません。従って、子宮膣上部切断術のメリットは、手術時間が短く、出血が少なく簡単で、尿管損傷の危険性が少ないという点です。また、術後の性交痛も少ないとされています。

以上のメリットをふまえて、アメリカでは子宮全摘の際に子宮頸部を残せるかどうかを事前に確認する女性も多く、最近、日本の一部の病院でもインフォームド・コンセントによって術式の選択を患者の判断に委ねています。その結果、QOL(quality of life; 生活の質)を優先して、子宮頸部を残す膣上部切断術を選択する女性が少しずつ増えてきているようです。このように、知識さえあれば、子宮頸部を残すか残さないかは患者自身が選択できることなのです。

病院で膣上部切断術についての説明と術後の性生活について詳しい説明がありました。この手術では子宮は摘出しますが 卵巣、子宮頸部は 残す為、セックス時の男性の感覚が術前と変わらない事、女性の痛みも少ない事。膣上部切断術だと入院も1週間、すぐに歩けるようになるし、仕事復帰も早い。ただし、術後も子宮頸がん検診は受けるようにとのことでした。(なな)

以上、子宮全摘について少し理解を深めていただけましたでしょうか?

子宮全摘は、時と場合によっては有効で最善の治療選択です。生死に関わる病気であれば命が救われることがあります。将来において子宮がんの心配がなくなり、多くの方にとって満足度の高い選択です。しかし、どんな医療行為にもリスクはつきものであり、医師にとっては簡単な手術であっても、女性にとって子宮を摘出するということは大手術です。

子宮筋腫のように良性疾患であるならば、子宮全摘を最初ではなく、最後の手段としてとっておくことができるということ、そして、その一歩手前には、UAEという選択肢があるということを、心に留めていただければと思います。

今後、子宮筋腫患者の若年化が懸念される一方、子宮筋腫治療にさらに新たな選択肢が増えることも予想されますが、女性が自らの生き方を、後悔することなく選択できる世の中であってほしいと願ってやみません。