保険診療?自費診療?

『厚生労働省と保険問題』のページでは、「UAEは保険診療ではなく、自費診療です」と書いてしまいましたが、実際には保険扱いでUAEを行っている医療施設もあることを、皆さんはご存知ですよね?保険制度についてまったく無知・無関心だった私も、当初は「なぜなの〜?」って不思議でしたが、色んなことが少しずつわかってきましたので、保険制度について一緒に考えたいと思います。

実は、厚生省保険局医療課の担当者から言われたように、厚生省から全国の病院に「UAEは保険請求できません」というような指示があったわけではありません。厚生省に審議を仰いだ保険機構に対しては、「保険適用には該当しない」という回答がありましたが、全国の保険機構や病院にはそのような通達は出されていないのです。

では、どこでどのようにして「保険適用外」とみなされてしまったのか?
その謎を解く鍵は、日本母性保護産婦人科医会だと思われます。
2000年5月14日に開かれた日本母性保護産婦人科医会の第30回日母全国支部社会保険担当者連絡会の報告には、子宮筋腫の動脈塞栓術の算定について、「現在研究中の技術であり、保険診療の給付外」と記されています。それ以外には何も書かれていませんが、これで「UAEは保険適用外」と決定づけられたことは間違いないようです。(分娩後の大量出血を止めるための子宮動脈塞栓術はかなり前から行われているので、“研究中の技術”ではないはずですが・・・)

<保険医療制度の不可思議>

通常、健康保険に加入されている皆さんは、診療費の3割を一部負担金として病院に支払っていますが、残りの7割の金額は、各医療機関から保険者に対して請求されることになっています。社会保険の場合は、「社会保険診療報酬支払基金」、国民保険の場合は「国民健康保険団体連合会」(国民健康保険中央会)に請求書を提出します。

請求書の審査は、都道府県ごとにあるそれぞれの保険機構の支部で行われます。そのため、同じ診療内容であっても県によって審査結果が異なる場合があり、請求が通ったり、通らなかったりということがあります。従って、ある県ではUAEは保険適用なのに、隣の県では保険適用外ということが実際に起こりえるのです。

最初からUAEを自費診療で行っている病院があるのは、その病院が所在する県ではすでにUAEを実施している施設または件数が多いために、請求が通らないことを予め知っているからです。

県内で唯一UAEを行っている病院、またはUAEを細々とやっている病院では、初期の段階では保険扱いで行うことができても、件数が多くなるにつれて審査が厳しくなり、そのうちに保険が通らなくなります。そのうえ、通知が届いた時点から数ヵ月前まで遡って、支払いを拒否されることもあります。(私は全額を支払う覚悟でUAEを受け、その2ヵ月後に保険適用外の通達があったのですが、病院側が保険機構とかけあってくれたおかげで、なんとか差額を支払わずに済みました。)

また、産婦人科から請求したら通る、放射線科からでは通らない、というように保険請求をする診療科によっても審査が異なることもあるようです。保険の審査員に放射線科医が出ている県がひじょうに少ないということ、また、ほとんどの場合、UAEに関する査定が婦人科医によって行われていることがネックになっているようです。

昨今、どの保険組合も財政難ですから、監査が厳しくなってきているのは理解できますが、子宮動脈塞栓術だったら何でもかんでも保険適用外になるといった行き過ぎたことにもなりかねません。

例えば、分娩後に大量出血が生じた際、緊急の止血目的のために子宮動脈塞栓術はかなり以前から行われており、保険も適用されてきました。しかし、子宮筋腫を持ったまま妊娠・出産した女性が大量出血を起こした場合はどうなるのでしょうか?また、リュープリンなどのホルモン療法によって大量出血を起こしたらどうなるのでしょうか?これらの場合、緊急処置として子宮動脈塞栓術を受けても、保険適用が認められないことが現実にありえるのです。子宮筋腫があってもなくても、どちらも同じ手技で、同じ止血目的なのに・・・理不尽とは思いませんか?

保険が適用されるものとして、病院が患者に一部負担金しか請求していない場合、保険の支払いを拒否されると、残額はすべて病院側が負担するハメになるのです。不正請求でもないのに、支払拒否(査定)が度重なると、適正な保険請求を行っていても病院は深刻な赤字を抱えることになります。UAEを始めたら保険適用だったものまでが保険適用外になりかねない、ということでUAEの導入をしぶる病院経営者もいるかもしれません。

こういった不可解な保険制度によって、私たち患者の選択肢が狭められ、UAEのような有効な治療法の健全な普及が阻まれていると言っても過言ではないでしょう。社会保険診療報酬支払基金のサイトは、『いつでも、どこでも安心して必要な医療が受けられる医療保険制度を「適正な審査」と「迅速適正な支払」で支えています』をモットーに掲げていますが、はたして適正と言えるのでしょうか?“客観的”かつ“適正”な判断のもと、“公平”な医療給付を保証していただきたいものです。

アメリカの健康保険制度は日本とはまったく異なるシステムですが、日本と同じく当初はUAEに対する保険支払いは拒否されていました。しかし、医師と患者が一丸となって保険会社を相手に闘い、保険の支払いが認められたケースが多々あります。そういった努力の積み重ねの結果、いまやほとんどの保険会社がUAEに対する支払いを認めるようになってきています。

日本では一体全体どうしたらよいのでしょうか?

個々の医師はおろか、病院は、保険機構や厚生省に対して意見できないというのが現状です。査定がさらに厳しくなったり、補助金が減額されたり、ということもありえますから・・・
しかし、患者の声を止めることは誰にもできません。この1〜2年の間にUAEが全国各地に広まってきたのは、なんと言ってもUAEを要望する女性たちの声が高まり、それが婦人科医を動かし始めているからです。EMBO FORUM では、保険診療に向けて、女性たちの声をひとつにして、UAEに対する理解をさらに広めていきたいと考えています。

どうかひとつでも多くの声をお寄せくださるようお願い致します。
(皆さんの「意見」を公開するページをつくりました!)



日本の保険医療制度の問題はとっても複雑です!しかし、私たちが病院で受ける診療に深く深く関わることです。医療制度のしくみに少しでも関心をもつことで、より良い医療を受けるヒントを見いだすことができると思います。
ムズカシイことはちょっと苦手・・・でもわかりやすく書いてあるなら読んでみたい、という方にお薦めの本は、『日本の医療を問いなおす―医師からの提言』(鈴木厚著、ちくま新書 1998)。

<UAEの自費診療費は?>

「UAEの自費診療はどのくらいかかるのでしょうか?」という質問が多く寄せられます。200万円以上もかかるレーザー治療と比較して、きっと高いんだろうなぁ・・・と思われている方も多いようですが、UAEはけっして法外な金額ではありません。

医療施設によって異なりますが、UAEの治療費は概ね30〜60万円くらい、平均で約45〜50万円です。その差は、検査の種類、手技、麻酔、入院日数などの違いによるものですが、マイクロカテーテルを使用している施設では若干高めになります。また、術前・術後のMRI検査などが含まれている場合もありますので、治療費の内容をよく確認して検討してください。

保険診療と比較すると、50万円は高い!と思われるかもしれませんが、日本では薬剤やカテーテルがべらぼうに高く、50万円でも病院・医師の儲けはほとんど無いに等しい金額です。ちなみに、医療費がもっと高いアメリカでは、UAEは1〜2万ドルほどかかります。

医療施設を選択される際、治療費の差は気になるところだと思いますが・・・
費用はさておき、まずは診療方針、診療内容、治療成績などをしっかりと確認し、担当の医師とじっくり話し合って、自分にとって納得のいく選択かどうかをきっちりと見極めてくださいね!
2002年4月