続1089

● ふしぎな数「1089」 ●

 

前回の「1089」で、寺田恵一さまからいただいたメールを紹介させていただきました。

そのとき、「果報は寝て待て」ということで、

「ほかにもあるでしょうか」という質問は、みなさまにおまかせすることにしました。

いくら寝て待てど、果報がホームページに掲載されなかったからでしょうか。

寺田さまから、先日メールの続きが届きました。

そして、このメールの中に、寺田さまの予想が述べらていていました。

予想ときたら・・・・・。

その予想が正しければ証明、まちがっていれば反例をあげる、という展開になります。

これは、ちょっと数学者気分の体験、となりそうです。

(内容は、算数ではありますが・・・・・)

 

さて、ふしぎな数「1089」は、こんな数でした。

 

     1089×=1089   <−−−−−> 1089×=9801

     1089×=2178   <−−−−−> 1089×=8712

     1089×=3267   <−−−−−> 1089×=7623

     1089×=4356   <−−−−−> 1089×=6534

     1089×=5445   <−−−−−> 1089×=5445

 

このように、かける数がたして10になるときは、数字が逆にならんでいます。

 

 

さらに、寺田さまは続けました。間にを入れた数を見てみたのです。

 

     

     1089×=1089   <−−−−−> 1089×=9801

     1089×=2178   <−−−−−> 1089×=8712

     1089×=3267   <−−−−−> 1089×=7623

     1089×=4356   <−−−−−> 1089×=6534

     1089×=5445   <−−−−−> 1089×=5445

 

まだあります。

 

     109989×=109989   <−−−−−> 109989×=989901

     109989×=219978   <−−−−−> 109989×=879912

     109989×=329967   <−−−−−> 109989×=769923

     109989×=439956   <−−−−−> 109989×=659934

     109989×=549945   <−−−−−> 109989×=549945

 

このように9を追加しても、かける数がたして10になるときは、数字が逆にならんでいます。

9を追加するのは、いくつでもよさそうです。

ほかにもあるでしょうか。

 

 

 


● 「1089」の寺田予想 ●

寺田さまは、こんな予想をたてました。

 


1089、1089、109989、1099989、・・・ のような数は、

     かける数がたして10になるときは、数字が逆にならぶ。(前回やりました)

 

【寺田予想】

逆に、かける数がたして10になるとき、数字が逆にならぶのは、

     1089、1089、109989、1099989、・・・ のように間に9を入れてできた数しかない

 

 

そして、寺田さまは、

     4桁では 1089

     5桁では 1089

     6桁では 109989

     7桁では 1099989

しかないことを示しました。そして、こうしめくくりました。

「8桁以上も 109・・・989 しかないとは思いますが、私は数学的な証明をすることができません。」

 

さあ、おもしろくなってきました。

これは正しくて、あとは証明するのみなのでしょうか。

それとも、まちがっていて、反例をあげることができるのでしょうか。

 


● 4桁の場合 ●

寺田さまの考察はこうです。

まず、9をかけた場合を考えるのです。

最上位の数字は1しかありえません。(そうでないと繰り上がりが生じるから!)

そうすると、かけ算の九九で1の位が1になるのは、×=8だから、

最下位の位は9になります。

     1・・・・・・・・・・×=9・・・・・・・・・・

 

さて、上から2桁目は、1または0です。(そうでないと繰り上がりが生じるから!)

 

ところが、もし2桁目が1なら、

     11・・・・・・・・・9×99・・・・・・・・・1

となるので、数字が逆にならぶことを考えると、下から2桁目は9のはずです。

つまり、こうなるはずです。

     11・・・・・・・・99×9=99・・・・・・・・11

ところが、99×9をやってみると、こうなります。

     11・・・・・・・・99×=99・・・・・・・・91

ということは、2桁目は1ではありえない、ということです。

 

こうして、2桁目は0しかありえません。

     1・・・・・・・・9×9=9・・・・・・・・・

さて、今度は下から2桁目を考えます。

下の位の方のかけ算を見てみると、9×9=81で8の繰り上がりがありながら、になるということは・・・。

そうです。8+=0になったのですから、かけ算の九九で、1の位がになるものです。

それは、8×9=7 です。

     1・・・・・・・・9×9=98・・・・・・・・・

 

今のところ予想通り、すべてこのような形にかぎられることが分かりました。

    「10・・・・・・・・89」

ついでに、これで4桁の場合は1089以外にはないことが判明しました。

ここまでは、寺田さまのメールの紹介です。

 


● 5桁の場合 ●

 

ここから、寺田さまは、9でわったあまりを考えるという方法をとりました。

しかしここでは、小学生でも分かる、ひき算による方法を紹介しましょう。

ポイントは、これだけです。

 

     a×9=a×(10−1)

        =a×10−a

 

つまり、9倍するかわりに10倍しておいて、ひき算すればいい、というものです。

 

さあ、引き続き9をかけた場合を考えましょう。

問題はこうです。

     1089×9=9801  ならば  となるか?

ポイントにしたがって、こう考えます。

9倍するかわりに10倍しておいて、ひき算するのです。

すると、問題はこうなります。

    10890−1089=9801  ならば  となるか?

ひき算を筆算でやります。小学校でやったように、繰り下がりに気をつけながら・・・。

 

         1 0 a 8 9 0

      )    0 a 8 9 

            8 a 0 1

 

ここで、10−1=9 や 90−89=1 をのぞくと、問題になるひき算は、これだけです。

 

            a 

         ) 0  

            8  

 

ここで、ふつうは下の位からやっていくひき算を、上の位から見ていくことにします。

すると、 a であることが分かります。

  8 の場合は繰り下がりが生じません。

  9 の場合は繰り下がりが生じます。

ちょっとやってみれば、 ではありえないことが分かります。

けっきょく、 しかありえないのです。

(反対に、9 でうまくいくことは、前回やりました。)

これで、5桁の場合は予想が正しいことが分かりました。

そのような数は 「1089」だけなのです。

 


● 6桁の場合 ●

次は6桁です。

問題はこうです。

     10ab89×9=98ba01  ならば  , となるか?

ポイントにしたがって、問題をこう置きかえます。

    10ab890−10ab89=98ba01  ならば  , となるか?

同じく、ひき算を筆算でやります。繰り下がりに気をつけながら・・・。

 

         1 0 a b 8 9 0

      )   0 a b 8 9 

            8 b a 0 1

 

ここで、10−1=9 や 90−89=1 をのぞくと、問題になるひき算は、これだけです。

 

            a b 

         ) 0 a b 

            8 b a 

 

またしても、ふつうは下の位からやっていくひき算を、上の位から見ていくことにします。

すると、やっぱり a であることが分かります。

  8 の場合は繰り下がりが生じません。

  9 の場合は繰り下がりが生じます。

ちょっとやってみれば、 ではありえないことが分かります。

下を成り立たせるような  なんてありえないからです。

 

            8 b 

         ) 0 8 b 

            8 b 8 

 

けっきょく、a  しかありえないのです。

それなら、はどうでしょう。

 

            9 b 

         ) 0 9 b 

            8 b 9 

 

さきほど、ふつうは下の位からやっていくひき算を、上の位から見ていくことにします、と言いました。

これは、正確にはこう言うべきでした。

上の位を見たら、次は下の位を見るというふうに、たがいちがいにしていく、と。

さて、それでは今度は、1の位を見ます。

8 から b をひいて 9 になるわけがありませんから、繰り下がりがあるのです。

すると、18 から b をひくと 9 になるとなり、これから   と分かります。

これで、10の位もバッチリです。

(反対に、99 でうまくいくことは、前回やりました。)

これで、6桁の場合も予想が正しいことが分かりました。

そのような数は 「109989」だけなのです。

 


● 7桁の場合 ●

次は7桁です。

問題はこうです。

     10abc89×9=98cba01  ならば  , , となるか?

ポイントにしたがって、問題をこう置きかえます。

    10abc890−10abc89=98cba01  ならば  , ,  となるか?

同じく、ひき算を筆算でやります。繰り下がりに気をつけながら・・・。

 

         1 0 a b c 8 9 0

      )    0 a b c 8 9 

            8 c b a 0 1

 

ここで、10−1=9 や 90−89=1 をのぞくと、問題になるひき算は、これだけです。

 

            a b c 

         ) 0 a b c 

            8 c b a 

 

まずは、上の位から見ていくことにします。

すると、やっぱり a であることが分かります。

  8 の場合は繰り下がりが生じません。

  9 の場合は繰り下がりが生じます。

がんばってやってみれば、 ではありえないことが分かります。

下を成り立たせるような     なんてありえないからです。

 

                     <のとき>      <のとき>                       

       8 b c 8       8  c 8         8  c 

    ) 0 8 b c     −) 0 8  c      −) 0 8  c 

       8 c b 8        8  c  8          8 c  8 

 

けっきょく、a  しかありえないのです。

それなら、はどうでしょう。

 

            9 b c 

         ) 0 9 b c 

            8 c b 9 

 

たがいちがいに見ていくということで、今度は下で、1の位を見ます。

すると、10の位から繰り下がりが生じていることが分かり、18−c=9 から と分かります。

 

            9 b 9 

         ) 0 9 b 9 

            8 9 b 9 

また、今度は上の位を見るということで、100の位を見てみます。

1000の位から繰り下がりが生じていることを考えると、b は 8 か 9 となりますが、

8 ではうまくいかないことが分かります。

これで、b   と分かります。

そうすれば、10の位も18から9をひいて9となり、バッチリです。

(反対に、999 でうまくいくことは、前回やりました。)

これで、7桁の場合も予想が正しいことが分かりました。

そのような数は 「1099989」だけなのです。

こうして、(寺田さまは、別の方法でアプローチしましたが)

とにかく4桁、5桁、6桁、7桁まで予想が正しいことが分かりました。

さあ、いよいよ次は8桁です。

予想は、本当に正しいのでしょうか。

 

 


● 8桁の場合 ●

次は8桁です。

問題はこうです。

     10abcd89×9=98dcba01  ならば  , , , となるか?

ポイントにしたがって、問題をこう置きかえます。

    10abcd890−10abcd89=98dcba01  ならば  , , となるか?

同じく、ひき算を筆算でやります。繰り下がりに気をつけながら・・・。

 

         1 0 a b c d 8 9 0

      )    0 a b c d 8 9 

            8 d c b a 0 1

 

ここで、10−1=9 や 90−89=1 をのぞくと、問題になるひき算は、これだけです。

 

            a b c d 

         ) 0 a b c d

            8 d c b a 

 

まずは、上の位から見ていくことにします。

すると、やっぱり a であることが分かります。

  8 の場合は繰り下がりが生じません。

  9 の場合は繰り下がりが生じます。

さあ、今度も、a は ではありえないのでしょうか。

a を として、見てみます。

 

            8 b c d 

         ) 0 8 b c d

            8 d c b 8 

 

今度は、下の1の位を見てみます。

10の位から繰り下がりがないなら、 です。

10の位から繰り下がりがあるなら、 です。

しかし、次は上の1000の位を見ると、d は 9 ではありえません。

けっきょく、 となります。

 

            8 b c 0 

         ) 0 8 b c 0

            8 0 c b 8 

 

さて、次は上の1000の位を見ると、b は 8 か 9 となります。

ところが、下のような c はないので、b は 8 ではありえません。

つまり、 となります。

 

            8 8 c 0 

         ) 0 8 8 c 0

            8 0 c 8 8

いよいよ、残りは c です。

今度は、下の10の位を見ます。

 

            8 9 c 0 

         ) 0 8 9 c 0

            8 0 c 9 8 

 

もちろん、100の位から繰り下がりがあって、10−c=9 から、 となります。

これで、100の位もバッチリです。

つまり、今度はa は  9 でなくても、 でもありえそうです。

いよいよ、9にかぎるという予想があぶなくなってきました。

それは、どんな数でしょうか。

 , , , ですから、10abcd89は

     「10891089」

となります!

ドッと、つかれましたね。

なんのことはない、「1089」を2つならべただけのものです。

     「10891089

これなら、反対にたしかめてみなくても、うまくいくにきまっています。

 

さきほど、やっぱり a であることが分かります、と言いました。

a からは、10891089が出てきました。

それなら、a からは、何が出てくるでしょうか。

そうです。a からは、「10999989」が出てきます。

同じようにして、やってみてください。

これで、8桁の場合は予想が正しくないことが分かりました。

そのような数は 「10999989」の他に

10891089というトゥリビアルな(つまらない・ちっぽけな・自明な)ものがあるのです。

 

 


● 9桁の場合 ●

次は9桁です。

(えっ、反例が見つかってもやるのかって?まあ、いいじゃないですか。だって、あれはトゥリビアルですから)

問題はこうです。

     10abcde89×9=98edcba01  ならば  となるか?

ポイントにしたがって、問題をこう置きかえます。

    10abcde890−10abcde89=98edcba01  ならば  となるか?

同じく、ひき算を筆算でやります。繰り下がりに気をつけながら・・・。

 

         1 0 a b c d e 8 9 0

      )    0 a b c d e 8 9 

            8 e d c b a 0 1

 

ここで、10−1=9 や 90−89=1 をのぞくと、問題になるひき算は、これだけです。

 

            a b c d e 

         ) 0 a b c d e

            8 e d c b a 

 

まずは、上の位から見ていくことにします。

すると、やっぱり a であることが分かります。

  8 の場合は繰り下がりが生じません。

  9 の場合は繰り下がりが生じます。

さあ、今度はどうでしょか。

a は ではありえないのでしょうか。

まず、a を として、見てみます。

 

            8 b c d e 

         ) 0 8 b c d e

            8 e d c b 8 

 

さすがに、とちゅうは全部省略すると、こうなります。

 , , ,  , 。

ですから、10abcde89は

     「108901089」

となります!

またしても、ドッとつかれましたね。

なんのことはない、やっぱり「1089」を2つならべて、間に0を入れただけのものです。

     「10891089

これも、反対にたしかめてみなくても、うまくいくにきまっています。

 

さきほど、やっぱり a であることが分かります、と言いました。

a からは、10891089が出てきました。

それなら、a からは、何が出てくるでしょうか。

そうです。a からは、「109999989」が出てきます。

同じようにして、やってみてください。

これで、9桁の場合も予想が正しくないことが分かりました。

そのような数は 「109999989」の他に、やっぱり

10891089というトゥリビアルな(つまらない・ちっぽけな・自明な)ものがあるのです。

 


● 予想の変更 ●

 

この予想は、反例が出ておしまい、とはなりそうにありません。

そうですね。予想の変更をすればいいだけです。

寺田さまの予想は、こう変更するといたしましょう。

 

【寺田予想の改訂版】

 かける数がたして10になるとき、数字が逆にならぶのは、トゥリビアルなものをのぞいて

     1089、1089、109989、1099989、・・・ のように間に9を入れてできた数しかない。

 

 

さあ、どうでしょうか。

この予想は正しくて、あとは証明するのみなのでしょうか。

それとも、まちがっていて、反例をあげることができるのでしょうか。

ちょうど夏休みも近づいてきましたね。

夏休みの自由研究にいかがでしょうか。

くれぐれも、私に答えを聞かないでください。

なんといっても、私の好きな言葉は、「果報は寝て待て」ですから。

それでは、朗報をおまちしています。


 


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