最高裁判所の裁判例から
裁判例と最初の検討内容
追加の検討内容
追加の検討内容の続き
追加の検討の続きの続き
大阪高裁判決の法律解釈
目      的
     
 

競売手続きにより受けた配当金の充当について

  大阪高裁判決では、競売手続きにより受けた配当金の充当が誤りであると判断していますが、その内容は次のとおりです。
 
 文章が長いため、文章の区切りのところで私の意見をはさみました。

 大阪高裁判決 2 控訴人による充当の適否についての(1) 本件競売手続について、

(判決)
 前提事実によれば、控訴人(α区長)は、本件競売手続の開始前に、債権①から⑩までの市徴収金を徴収するため、本件建物1の差押えをし、本件競売手続において、債権①から⑪までの市徴収金について交付要求していたところ、本件競売手続の配当金を、法定納期限等が先行する債権①ないし③(法定納期限等はいずれも平成11年4月30日)等に充当せずに、債権⑤の本税の一部及び債権⑥の本税全額(法定納期限等はいずれも平成12年5月31日)並びに債権⑩の本税全額(法定納期限等は平成13年5月1日)に充当している。これに対して、P6銀行のために本件建物1について根抵当権設定登記が経由されたのは、平成12年12月25日であり、被控訴人のために本件建物1についての抵当権設定登記が経由されたのは、平成13年5月25日と同年6月4日である。
(私の意見)
 控訴人(α区長)は、本件競売手続の開始前に、債権①から⑩までの市徴収金を徴収するため、本件建物1の差押えをしていたが、本件競売手続が続行されたため、債権①から⑩までの市徴収金について執行裁判所へ滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律(以下、「滞調法」といいます。)に基づく交付要求していたと考えられます。
 したがって、この交付要求は、滞調法10条の規定(準用規定は、省略)により、地方税法14条の6(差押先着手による地方税の優先)の規定が適用される交付要求であると考えられます。
 先日図書館で閲覧した法律雑誌の記事で、滞調法の規定に基づく交付要求であることを確認しました。
               
(判決)
 そこで、被控訴人は、控訴人の受けた配当金は、配当の対象となった債権すべてを消滅するには足りないので、地方税法373条7項、国税徴収法129条5項の規定により、固定資産税等の滞納処分に適用される民法489条及び地方税法14条の5第1項に従い、債権①から③の順に充当すべきであると主張するので検討する。 まず、地方税法373条7項により固定資産税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例によるとされるところ、国税徴収法129条5項は、「換価代金等が第1項各号に掲げる国税その他の債権の総額に不足するときは、税務署長は、第2章(国税と他の債権との調整)、第59条第1項後段、第3項及び第4項(これらの規定を第71条第4項において準用する場合を含む。)、前項並びに民法その他の法律の規定により配当すべき順位及び金額を定めて配当しなければならない。」と規定している。同規定は、換価代金等が第1項各号(差押えに係る国税(1号)、交付要求を受けた国税、地方税及び公課(2号)、差押財産に係る質権、抵当権、先取特権、留置権又は担保のための仮登記により担保される債権(3号)、第59条第1項後段、第3項又は第4項(第三者の損害賠償請求権等への配当)(これらの規定を第71条第4項(自動車等についての準用規定)において準用する場合を含む。)の規定を受ける損害賠償請求権又は借賃に係る債権(4号))に掲げる債権の総額に不足する場合に、その配当の順位及び金額を定めたものであり、同規定の「民法・・・の規定により配当」するという趣旨は、上記配当の順位及び金額を確定する場合に民法の規定を適用するというものであって、その配当された金額の充当について民法の規定を適用することまでを定めたものではないと解される。
(私の意見)
 民事執行法には、租税債権に対する配当の規定がないため、判決のとおり、国税徴収法を適用するほかはないと考えられます。
 また、債権の総額に不足する場合に、配当の順位及び金額を確定する場合に民法の規定を適用するというものであり、その配当された金額の充当について民法の規定を適用することまでを定めたものではないとの解釈は、正しい税法の読み方であると思います。

(判決)
 そして、地方税法14条の5第1項は、「地方団体の徴収金を滞納処分により徴収する場合において、当該地方団体の徴収金に配当された金銭を地方税及び当該地方税の延滞金、過少申告加算金、不申告加算金又は重加算金に充てるべきときは、その金銭は、まず地方税に充てるものとする。」と規定しているが、地方税(本税)相互の充当関係について何らの規定もしていない(なお、国税に関する国税徴収法129条6項もまず国税(本税)に充てなければならない旨を規定しているが、国税相互の充当関係についての規定はない。)。
(私の意見)
 同意見です。

(判決)
 次に、地方税法14条の10は、「納税者又は特別徴収義務者が地方団体の徴収金の法定納期限等以前にその財産上に抵当権を設定しているときは、その地方団体の徴収金は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収する。」と規定している。これを本件についてみると、本件競売手続において、本件建物1については、控訴人の債権①ないし⑦は、P6銀行の根抵当権設定登記日に優先しているために控訴人に対してその分の配当がなされたが、控訴人(α区長)が充当した債権⑩を含む債権⑧ないし⑪については、これに劣後している(なお、債権①ないし⑪は、いずれも被控訴人の抵当権設定登記日には、優先している。)。しかし、地方税法14条の10は、地方団体の徴収金の法定納期限等以前に当該物件に設定された抵当権が地方団体の徴収金に優先することを定めたものであり、当該抵当権に優先して徴収された地方団体の徴収金を、常に当該抵当権に優先する地方団体の徴収金のみに充当しなければならないことまでを定めたものと解することはできない。
(私の意見)
 「本件競売手続において、本件建物1については、控訴人の債権①ないし⑦は、P6銀行の根抵当権設定登記日に優先しているために控訴人に対してその分の配当がなされた」と判断していることから考えると換価代金の範囲内で、私債権が、優先していることを認めており、地方税法14条の10の私債権の優先規定には、該当していると考えられます。(2014.1.20誤記補正
  不動産配当の諸問題」の法律解釈を誤った法律解釈の影響を受けているのです。(2013.3.29追記)
 地方税法第14条の10の条文にある「換価代金」の意味を考えずに法律解釈をしているため、差押えに係る租税債権のうち、法定納期限等で、私債権に優先する部分と、法定納期限等で、私債権に劣後する部分があると誤解しているのです。(2013.3.29追記)
 この規定は、私債権優先の規定なのです。租税債権の法定納期限等以前に設定されている抵当権によって、担保されている私債権が保護されているのです。(2013.3.29追記)
 地方税法第14条の10(法定納期限等以前に設定された抵当権の優先)は、「納税者が地方団体の徴収金の法定納期限等以前にその財産上に抵当権を設定しているときは、その地方団体の徴収金は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収する。」のです。
 抵当権により担保される債権に次いで徴収するということは、地方団体の徴収金が、抵当権により担保される債権に劣後するのです。

 即ち、本件建物1については、控訴人の債権①ないし⑦は、P6銀行の根抵当権設定登記日に優先しているために控訴人に対してその分の配当がなされたのであれば、同法14条の10の規定により、本件建物1のP6銀行の根抵当権設定登記により担保される債権は、本件建物1の強制換価手続きにより配当すべき金銭の範囲内で、同建物1の差押えに係る租税債権に優先していないこととなり、本件建物1のP6銀行の根抵当権設定登記により担保される債権は、同法14条の規定により、本件建物1の控訴人の差押さえに係るすべての租税債権に劣後していることになると考えられます。(2014.1.20誤記訂正)
 したがって、控訴人(α区長)が充当した債権⑩を含む債権⑧ないし⑪については、これに劣後しているとの判断は地方税法14条及び、同法14条の10の法律解釈を誤っています。

 「換価代金」の用語の定義が、次の条文にあります。(2013.3.29追記)
 地方税法第14条の2(強制換価手続の費用の優先)「納税者又は特別徴収義務者の財産につき強制換価手続が行われた場合において、地方団体の徴収金の交付要求をしたときは、その地方団体の徴収金は、その手続により配当すべき金銭(以下本章において「換価代金」という。) につき、当該強制換価手続に係る費用に次いで徴収する。」
 「換価代金」とは、納税者の財産につき強制換価手続が行われた場合、その手続により配当すべき金銭(以下本章において「換価代金」という。)とあります。(2013.3.29追記)
 したがって、私債権優先の規定は、抵当権が設定されている不動産につき強制換価手続が行われた場合、その手続により配当すべき金銭(以下本章において「換価代金」という。)を限度とする優先規定だったのです。(2013.3.29追記)

  ここのところが、この判決の最大の争点です。(2012.8.30追記)
 そして、裁判官が法律解釈の誤解をしたところです。
 ここから、裁判官が、誤解に誤解を重ねてゆくのです。
地方税法
第14条の10 (法定納期限等以前に設定された抵当権の優先)
 納税者又は特別徴収義務者が地方団体の徴収金の法定納期限等以前にその財産上に抵当権を設定しているときは、その地方団体の徴収金は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収する。

 判決は、この規定を租税債権優先の規定であるかのような読み方をしていますが、私債権優先の規定なのです。(2012.8.30追記)
 そして、換価代金を無視して法律解釈をしようとしたため法律解釈を誤解していったのです。
 その答えが、
地方税法
第14条の2 (強制換価手続の費用の優先)
 納税者又は特別徴収義務者の財産につき強制換価手続が行われた場合において、地方団体の徴収金の交付要求をしたときは、その地方団体の徴収金は、その手続により配当すべき金銭(以下本章において「換価代金」という。) につき、当該強制換価手続に係る費用に次いで徴収する。

 そうです。「換価代金」とは、その手続により配当すべき金銭だったのです。(2012.8.30追記)
 したがって、この私債権優先の規定は、換価代金の範囲内での私債権の優先規定だったのです。
 その手続により配当すべき金銭を超えて配当することができないのは常識です。

(判決)
 すなわち、地方税法14条の6は、滞納処分による差押えをした場合は、
その換価代金について、交付要求のあった他の地方団体の徴収金又は国税に優先して徴収すると定め(差押先着手主義。なお、国税徴収法12条も同様の規定をしている。)、地方税法14条の7は、上記と同趣旨の交付要求先着手主義を定めている(国税徴収法13条も同様の規定をしている。)ところ、上記差押先着手主義ないし交付要求先着手主義の規定からすると、本件競売手続において、本件建物1については、P6銀行の根抵当権に優先する控訴人の債権①ないし⑦に相当する部分について控訴人に対して配当がなされたが、仮に、控訴人がした本件建物1についての差押えに先行して他の租税債権者が本件建物1についての差押えをしていたとするならば、その租税債権の法定納期限等が控訴人の債権①ないし⑦の後であり、かつ、P6銀行の根抵当権設定日の後であったとしても、上記の租税債権者が控訴人の債権①ないし⑦に相当する部分についての配当を受けることができることとなる。したがって、上記のような場合には、租税債権の法定納期限等については、競売事件における租税債権等の公債権に対する配当の順位を定めるためのものにすぎず、その配当金がどの租税債権に配当ないし充当されるかについては意味を持っていないことになる。

(私の意見)
 本件競売手続において、本件建物1については、控訴人の債権①ないし⑦は、P6銀行の根抵当権設定登記日に優先しているために控訴人に対してその分の配当がなされたことを認めています。
 したがって、地方税法14条及び同法14条の10を正しく解釈していれば、このような理由を述べる必要はなかったと考えられます。
 また、その分に相当する金銭の配当がなされたのであって、その分について配当されたのではありません。

 私債権が租税債権に優先しないことにより、租税債権優先の原則により、配当がなされたのです。(2012.8.30追記)
地方税法
第14条 (地方税優先の原則)
 地方団体の徴収金は、納税者又は特別徴収義務者の総財産について、本節に別段の定がある場合を除き、すべての公課(滞納処分の例により徴収することができる債権に限り、かつ、地方団体の徴収金並びに国税及びその滞納処分費(以下本章において「国税」という。) を除く。以下本章において同じ。) その他の債権に先だつて徴収する。

(判決)
 さらに、地方税法14条の20(地方税及び国税等と私債権との競合の調整)は、強制換価手続において地方団体の徴収金が国税、他の地方団体の徴収金又は公課及びその他の債権(私債権)と競合する場合において、法律の規定により、地方団体の徴収金が国税等に先だち、私債権がその国税等に後れ、かつ、当該地方団体の徴収金に先だつとき、又は地方団体の徴収金が国税等に後れ、私債権がその国税等に先だち、かつ、当該地方団体の徴収金に後れるときの換価代金の配当に関し、「地方団体の徴収金及び国税等並びに私債権(前号の規定の適用を受けるものを除く。)につき、法定納期限等(国税又は公課のこれに相当する納期限等を含む。)又は設定、登記、譲渡若しくは成立の時期の古いものからそれぞれ順次に本節又は国税徴収法その他の法律の規定を適用して地方団体の徴収金及び国税等並びに私債権に充てるべき金額の総額をそれぞれ定める。」(2号)、「前号の規定により定めた地方団体の徴収金及び国税等に充てるべき金額の総額を第14条(地方税優先の原則)若しくは第14条の6から第14条の8まで(差押先着手による地方税の優先等)の規定又は国税徴収法その他の法律のこれらに相当する規定により、順次地方団体の徴収金及び国税等に充てる。」(3号)、「第2号の規定により定めた私債権に充てるべき金額の総額を民法その他の法律の規定により順次私債権に充てる。」(4号)と規定している。同規定は、地方税及び国税等と私債権との競合によりこれらが三すくみになる場合の配当については、上記2号のとおり地方団体の徴収金及び国税等の法定納期限等の順序により私債権との優先順位を定めるとしているものの、これにより配当が実施された後の地方団体の徴収金及び国税等の配当関係については、差押先着手主義によるものとしており(したがって、前記のとおり、差押先着手主義によって配当される地方団体の徴収金又は国税等の法定納期限等は、私債権の登記日等よりも劣後するものもあり得ることになる。)、法定納期限等の順序により配当されることになっていないし、また、差押先着手主義によって地方団体の徴収金又は国税等に配当された後の充当関係についても何ら規定していない。
 なお、上記4号についても私債権の配当関係についてのみ民法等の規定によるものとしているものであって、地方団体の徴収金及び国税等の充当関係について民法等の規定によるものと規定しているものではない(国税徴収法26条の規定も同旨である。)。
 そうすると、換価代金等が(差押えないし交付要求した)地方税の総額に不足する場合については、民法489条3号の法定充当の適用はないというべきであり、本件競売事件において控訴人の受けた配当金について、法定納期限等が先に到来した地方税の順序で充当しなければならないということはできない。
 もっとも、本件競売事件においては、上記のような差押先着手主義が適用される場面ではないから、法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先することにより控訴人の受けた配当金は、地方税法14条の10の趣旨に照らして、当該法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先する市徴収金に充当すべきである解するのが相当である。なぜなら、課税庁において、不動産の換価代金等から抵当権に優先する部分についての配当を受けた上、同配当金を当該抵当権に劣後する租税債権に充当することができるとすれば、当該不動産以外の複数の不動産の換価代金等からも抵当権に優先する部分ついての配当を受け続けることができるようになるが、このような租税債権の反復的な優先権の行使を認めるべき法律上の根拠はなく、このような行使を許すとすれば、地方団体の徴収金の法定納期限等と抵当権設定登記の先後によって徴収金と抵当権の被担保債権との優劣を定めた上記規定の趣旨に反することになるといわざるを得ないからである。そして、課税庁において、不動産の換価代金等から抵当権に優先する部分について受けた配当金を、その優先する徴収金の範囲内で充当する限りでは、その範囲において課税庁の裁量により(すなわち、原則として、課税庁にとって有利となる法定納期限等が後に到来する市徴収金から)、充当することができるというべきである。ただし、その充当は、地方税法14条の5第1項に従い、まず、地方税(本税)から行うべきであり、控訴人の予備的主張3のうち、根抵当権に優先する債権の延滞金について他の優先する債権の本税に先立ち充当するとの主張は採用できない。

(私の意見)
 「換価代金」の意味を考えずに法律解釈をしたため、「法定納期限等」が優先することにより受けた配当金は、「法定納期限等」が優先する租税債権に充当しなければ違法であると、
 大阪高裁判決が、誤解に誤解を重ねていった様子です。(2012.8.30追記)
 当時の私が、驚いている様子がよくわかります。
 「不動産配当の諸問題」の解説記事と同じ法律解釈の誤り方をしているのです。(2013.3.29追記)
 大阪高裁判決は、「本件競売事件においては、上記のような差押先着手主義が適用される場面ではないから、法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先することにより控訴人の受けた配当金は、地方税法14条の10の趣旨に照らして、当該法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先する市徴収金に充当すべきであると解するのが相当である」と判断していますが、「地方税法14条の10の解釈と直接関係のない同法14条の20の例をあげ、本件競売事件においては、上記のような差押先着手主義が適用される場面ではないから、法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先することにより控訴人の受けた配当金は、地方税法14条の10の趣旨に照らして、当該法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先する市徴収金に充当すべきであると解するのが相当である。」と判断していますが、詭弁にしか過ぎないのではないですか、地方税法14条の10及び同法14条の法律解釈の誤りを覆い隠すための詭弁でしょう。」
「差押先着手主義が適用される場面ではないから、というのは、どういう意味ですか、論拠があるのですか、法律上の根拠がないでしょう。」
「法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先することにより控訴人の受けた配当金は、地方税法14条の10の趣旨に照らして、当該法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先する市徴収金に充当すべきである解するのが相当である。」と判断していますが、前述のとおり、地方税法14条の10及び同法14条の法律解釈を誤っているのではないですか。(2011.5.22追記)
 地方税法第14条の10(法定納期限等以前に設定された抵当権の優先)「納税者又は特別徴収義務者が地方団体の徴収金の法定納期限等以前にその財産上に抵当権を設定しているときは、その地方団体の徴収金は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収する。」とあり、その地方団体の徴収金は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収するのです。(2011.5.22追記)
 その地方団体の徴収金は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に劣後するのです。
 当該法定納期限等がP6銀行の根抵当権設定登記に優先する市徴収金という法律解釈があるのですか。
 
 私債権優先の規定を租税債権優先の規定であるかのように誤解しているのです。(2011.5.22追記)
 「換価代金」の意味を考えずに法律解釈したため、法律解釈の誤解が、誤解を呼んでいったのです。(2013.3.29追記)

 なお、交付要求により交付を受けた金銭は、交付要求に係る国税(地方団体の徴収金)に充てる(国税徴収法128条4号及び同法129条2項)のであり、本税に優先して充当するとの規定以外に充当順位についての定めはありません。
 なお、民法の法定充当の規定の適用がないことについては、同意見です。
 この点については、ブログで詳しく記載しています。(2012.8.30追記)

 大阪高裁判決の裁判官は、最高裁判所の判例を、自分の法律解釈を誤った法律解釈に都合のよいように引用しているのです。(2014.1.20追記)
  ぐるぐる回りの場合の、最高裁判所の判例を、単独の差し押さえである事例である、大阪高裁判決の事例に引用しているのです。(2014.1.20追記)
 大阪高裁判決の裁判官が、最高裁判所の判例を、正しく理解していない証拠なのです。(2014.1.20追記)

(判決)
 被控訴人は、充当とは、権利義務関係の変動に何ら変更を加えることなく徴税庁が内部的に処理するものにすぎないから、充当に際して第三者の権利関係に対して影響を及ぼすことは想定されていないと主張するが、上記説示のとおり、換価代金等が(差押えないし交付要求した)地方税の総額に不足する場合については、民法489条3号の法定充当の適用はなく、これを上記の範囲の地方税のいずれに充当するかは、課税庁の裁量に任されているというべきであるから、被控訴人の上記主張は採用できない。また、被控訴人は、現行の国税徴収法及び地方税法1章7節(地方税優先の原則及び地方税と他の債権との調整)の改正の経過を挙げて、控訴人が本件で行った充当処理は、予測可能性の原則ひいては私法秩序の尊重に係る上記改正の趣旨に明らかに反するもので、公債権としての保護の範囲を逸脱したものである旨主張する。確かに、租税債権と私債権との間では、私法秩序との調整を図る必要があり(国税徴収法1条参照)、租税は原則として私債権に優先するものの、抵当権の設定が租税の法定納期限等以前になされたときは、当該財産の換価代金につき抵当権によって担保されている債権に劣後するものとするなどにより、抵当権者が不測の損害を受け、取引の安全が害されることを防止することとしている。しかし、そのような点に配慮したとしても、上記説示のとおり、本件における競売手続及び公売処分により控訴人が換価代金から得た金員を上記の範囲においてその裁量によって充当することが、被控訴人の予測可能性を超え、公債権としての保護の範囲を逸脱するものとまではいえない。
(私の意見)
 抵当権の設定が租税の法定納期限等以前になされたときは、当該財産の換価代金につき抵当権によって担保されている債権に劣後するのではなく、当該財産の換価代金の範囲内に限り、抵当権によって担保されている債権が優先するのです。
 地方税法第14条の10(法定納期限等以前に設定された抵当権の優先)の規定は、私債権優先の規定なのです。(2011.5.10追記)
 本件競売事件においては、当該財産の換価代金の範囲内では、抵当権によって担保されている債権は優先しなかったのですから、地方税法14条の規定により、抵当権によって担保されている債権は、本件建物1の差し押さえに係るすべての租税債権に劣後しているのです。(2011.5.10一部改訂)
 民事執行法第188条(不動産執行の規定の準用)の規定により、前章第2節第1款第2目(強制競売)(第81条を除く。) の規定は担保不動産競売について準用するとあります」が、同法には、租税債権に係る配当の規定はありません。したがって、国税徴収法を参考に判断するほかないでしょう。
 交付要求により交付を受けた金銭(国税徴収法128条4号)は、交付要求に係る国税(地方団体の徴収金)に充てる(同法129条2項)とありますが、本税に優先して充当するとの規定のほか、充当の順位についての定めはありません。
 
(判決)
 以上によれば、本件競売事件において控訴人(α区長)のした上記充当のうち、債権⑤の本税の一部(263万7083円)及び債権⑥の本税全額(818万7800円)についての充当は適法であるが、債権⑩の本税全額(1770万5000円)についての充当は違法・無効であり、控訴人がP5にした充当通知(前提事実のとおり)も、指定充当としての効力がない(以下の本件各公売手続における充当通知についても同様である。)というべきである。
(私の意見)
 大阪高裁判決が、地方税法14条及び同法14条の10の法律解釈を誤った結論です。
 交付要求により交付を受けた金銭は、交付要求に係る地方団体の徴収金に充てるとの規定にも反しています。(3013.3.29一部補正)

 国税徴収法全体で、整合性が取れているのです。上記の私の見方が正しかったようです。(2012.8.30追記)
 正しい法律解釈をしていくと正しい法律解釈に結びつくのです。(2012.8.30追記)
 大阪高裁判決は、私債権優先規定の条文にある「換価代金」を無視して法律解釈をしたことにより、次々と法律解釈を誤っていったのです。(2013.3.29追記)

(判決)
 この場合、債権⑩について充当した1770万5000円については、控訴人は、債権⑤の上記充当後の本税の残額(1343万5217円)及び債権④の本税の一部に充当できたものであるから、これらの債権に充当するのが相当である。そうすると、債権⑤の本税全部が消滅し、その残額426万9783円を債権④に充当する結果、債権④の本税の残額は1183万2717円となる。なお、債権④と債権⑤は、法定納期限等は同じであり、課税庁がいずれの債権に先に充当しても特段の有利・不利となるとは考えられないから、便宜、課税時期が後の期である債権から先に充当することにする(以下の本件各公売手続に関しての充当についても同様である。

  前頁および上記大阪高裁判決についての検討
   大阪高裁の上記判断は、被控訴人の主張を概ね認めての判断と考えられますが、次のとおり、滞納処分関係法律の解釈を概ね正確に解釈しながら、基本的な解釈のところで、根本的に誤った判断をしていると考えられます。
 上記大阪高裁の判断の中に、「まず、地方税法373条7項により固定資産税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例によるとされるところ、国税徴収法129条5項は、「換価代金等が第1項各号に掲げる国税その他の債権の総額に不足するときは、税務署長は、第2章(国税と他の債権との調整)、第59条第1項後段、第3項及び第4項(これらの規定を第71条第4項において準用する場合を含む。)、前項並びに民法その他の法律の規定により配当すべき順位及び金額を定めて配当しなければならない。」と規定している。・・・」と本件競売事件で受けた配当金の充当が誤りであるとしている根拠条文の説明をしていますが、国税徴収法129条5項の規定は、滞納処分庁がした不動産の差押財産の売却代金等の配当の規定であり、本件競売代金の配当の規定は前頁で指摘したように民事執行法等の規定に基づいて判断しなければならないと考えられます。

  上記判決の前提事実からみれば、「控訴人は、本件競売手続の開始前に、市徴収金を徴収するため、本件建物1の差押えをし、本件競売手続において、市徴収金について交付要求していたところ、」とあることから判断すると、この交付要求は、滞調法に基づく本件競売手続が続行された後の同法の規定に基づく交付要求 (ただし、次の理由により差押先着手の規定が適用される) であると考えられます。

  本件競売手続続行の決定があったときは、この法律の適用については、滞納処分による差押は、本件競売手続による差押後にされたものとみなす(したがって、本件競売手続により換価された)とありますが、国税徴収法12条(差押先着手による国税の優先)の規定または地方税法14条6(差押先着手による地方税の優先)の規定は、前項の規定による交付要求があった場合についても適用があるものとするとあり、上記交付要求は、差押先着手または、交付要求先着手の規定が適用されることとなっています。

 そうすると、交付要求していた執行裁判所からの受け入れ金であり国税徴収法第128条(配当すべき金銭)4号の「交付要求により交付を受けた金銭」であることから、同法第129条(配当の原則)2項「前条第3号(差し押えた金銭)又は第4号(交付要求により交付を受けた金銭)に掲げる金銭は、それぞれ差押又は交付要求に係る国税に充てる。」とあり、交付要求により交付を受けた金銭 は、交付要求に係る国税(地方団体の徴収金)に充てることになると考えられます。(2011.5.22追記)

 この私の考え方は正しかったようです。(2012.8.30追記)
 国税徴収法を正しく解釈すれば、正しい法律解釈に結びついてゆくのです。
 
 租税債権相互間の優先劣後は、差押先着手、あるいは、交付要求先着手であり、滞納処分の着手順である一方、私債権と公租公課の優先劣後は、抵当権等の設定の日と、法定納期限等の先後で決せられ、国税徴収法、地方税法等で、うまく調整がなされています。

 大阪高裁判決は、仮に、控訴人がした本件建物1についての差押えに先行して他の租税債権者が本件建物1についての差押えをしていたとするならば、その租税債権の法定納期限等が控訴人の債権①ないし⑦の後であり、かつ、P6銀行の根抵当権設定日の後であったとしても、上記の租税債権者が控訴人の債権①ないし⑦に相当する部分についての配当を受けることができることとなる。したがって、上記のような場合には、租税債権の法定納期限等については、競売事件における租税債権等の公債権に対する配当の順位を定めるためのものにすぎず、その配当金がどの租税債権に配当ないし充当されるかについては意味を持っていないことになると判断しています。

 前頁でも述べましたように、地方税法第7節地方税優先の原則及び地方税と他の債権との調整によれば、地方税法14条(地方税優先の原則)「地方団体の徴収金は、納税者又は特別徴収義務者の総財産について、本節に別段の定がある場合を除き、すべての公課(滞納処分の例により徴収することができる債権に限り、かつ、地方団体の徴収金並びに国税及びその滞納処分費(以下本章において「国税」という。) を除く。以下本章において同じ。)その他の債権に先だつて徴収する。」にいう本節による別段の定めである私債権が優先する場合の規定のうちの一つが、地方税法第14条の10(法定納期限等以前に設定された抵当権の優先)の規定です。

 競売対象となった不動産建物1の換価代金(その手続により配当すべき金銭)の範囲内で優先しなかった私債権は、地方税法第14条(地方税優先の原則)の規定により、当該換価代金の範囲内では、すべての租税債権に劣後すると考えられることから、大阪高裁判決がいうように、本件競売手続において、本件建物1については、控訴人の債権①ないし⑦は、P6銀行の根抵当権設定登記日に優先しているために控訴人に対してその分の配当がなされたのではなく、不動産建物1の差押に係る租税債権全額に対しての配当と考えるのが、地方税法第14条の10 及び同法14条の法律解釈ではないでしょうか。

 また、不動産競売は、民事執行法の規定に基づき執行され、その配当は、民事執行法84条の規定に基づき配当が実施され、国税徴収法128条4号(交付要求により交付を受けた金銭)は、国税徴収法129条2項の規定により、交付要求により交付を受けた金銭に充てるとあることから、この規定に反する充当を判決で判示し、明らかに適用法律を誤っていると考えられます。

 大阪高裁判決は、上記判断の中で、地方税法14条の6(差押先着手による地方税の優先)の規定は「上記のような場合には、租税債権の法定納期限等については、競売事件における租税債権等の公債権に対する配当の順位を定めるためのものにすぎず」と、図らずも指摘していますが、上記のような場合に限らず、すべての場合に対応しているのが、法律の規定であり、租税債権の法定納期限等については、競売事件における租税債権等の公債権に対する配当の順位を定めるためのものにすぎないのが、この条文の解釈ではないでしょうか。

 不動産競売は、民事執行法84条の規定に基づき配当が実施され、国税徴収法128条4号(交付要求により交付を受けた金銭)は、国税徴収法129条2項の規定により、交付要求により交付を受けた金銭に充てるとあるとおり、この規定では、充当の順序の指定は特にありません。交付要求により交付を受けた金銭の配当の規定が、このようにシンプルなのは、競売対象となった不動産建物1の、換価代金(その手続により配当すべき金銭)の範囲内で優先しなかった私債権は、当該換価代金の範囲内では、すべての租税債権に劣後することとなることからであると考えられます。

 なお、大阪高裁判決は、総論のところで、「本件建物1の換価代金は2852万9883円であり、控訴人の有する債権①から③までの本税額の合計を超えないから、この換価代金全額が控訴人に配当されることとなる。」と述べていることから、「本件建物1の換価代金の範囲内では、抵当権の被担保債権は、本件建物1の差し押さえに係る租税債権に優先しないことは明らかであると考えられます。」

 仮に、検討結果のとおりの法律解釈が正しいとすれば、租税債権相互間では、滞納処分の着手順により、優先関係が決せられる一方、租税債権と私債権との優先関係は法定納期限等の先後によって決せられますが、現実には、納税の猶予等の制度もあり、滞納の発生順に差し押さえ等の処分がなされているとは限らず、また、交付要求により交付を受けた金銭を法定納期限等の新しい租税債権から順次充当していくのでは、行政上問題がないとはいえず、また、上記判決がいうように、課税庁において、不動産の換価代金等から抵当権に優先する部分についての配当を受けた上、同配当金を当該抵当権に劣後する租税債権(大阪高裁が劣後すると判断していますが、法律的には劣後していません)に充当してゆけば、当該不動産以外の複数の不動産の換価代金等からも抵当権に優先する部分についての配当を受け続けることができるようになりますし、租税債権が公課に優先することからも同様の問題が発生しており、このような租税債権の反復的な優先権の行使を認めるべき法律上の根拠となることから、理論的にもう少しすっきりとしてほしいところもあり、この事件でなくても、一度、最高裁判所での判断を待ちたい気がしていたのですが、大阪高裁判決が確定して残念です。
 最高裁判所の判断を待つまでもなく、私の法律解釈が定説になる日が近いことを感じ取っています。(2012.8.30追記)
 充当に関する、前記の私の疑問については、国税庁の換価事務提要で、行政的な配慮がなされています。

   換価事務提要 滞納税目間の充当の順序等

   http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/080613/07/03.htm#a-136