2004/07/05

2004/07/27追記

2004/08/05追記

2005/03/08追記

2005/03/13追記

黒潮大蛇行と伊豆の漁業

 

     気象庁は5月11日に報道機関に対し、「2、3ヶ月後に東海沖で黒潮が大蛇行(A型)する可能性が高い」と発表した。

http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/press/0405/11a/kuroshio0511.pdf

     その後、6月25日の水産経済新聞では「当初の予想より蛇行の東進が遅い。大蛇行(A型)ではなく、蛇行の規模の小さいB型になるだろう。8月以降の状況に注目する必要がある。」との中央水産研究所のコメントを載せている。

     過去、伊豆半島では黒潮が大蛇行したときにカジメの磯焼けが発生することが多く、磯焼けの発生が懸念される。大蛇行が長期化すると磯焼け状態も長期化する恐れがある。磯焼けの発生した漁場ではアワビが斃死する。

http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/PREF/24-0531.pdf河尻正博・佐々木正・影山佳之:下田市田牛地先における磯焼け現象とアワビ資源の変動、静岡水試研報、15、19-30(1981)

     磯焼けの発生が確認された場合には、アワビが斃死する前に漁獲、あるいは岸よりのカジメが残っている場所に移殖するなどの対応を取る必要がある。

     水産庁は7月20日に長期漁海況予報として12月までの黒潮の予測を発表した。http://ss.nrifs.affrc.go.jp/yohou/2004_1/3.pdf8月から12月まで、A型が持続すると予測している。

     7月20日前後から冷水塊が東進しはじめ、A型の様相がはっきりしてきた。

     8月4日、気象庁が黒潮の大蛇行が確認されたと発表した。http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/press/0408/04a/kairyuu3.pdf

     2005年2月26日に伊豆先端のカジメ群落で磯焼けが発生していると水試伊豆分場が発表した。
http://www.shizuokaonline.com/senior/nature/20050226000000000015.htm

     2005年3月10日に神戸海洋気象台は今夏(7〜9月)も黒潮は大蛇行流路をとると予測した。http://www.kobe-jma.go.jp/Koho/pdf/h17suionyohou.pdf

 

     伊豆半島周辺の黒潮流路に関する水産海洋研究を対象生物の漁場への補給に関わる過程への影響、漁場形成に関わる過程への影響、生物の再生産過程への影響という観点からまとめると次のようになる。

     対象生物の漁場への補給に関わる過程

1)       黒潮が房総半島に接岸していると南下するマサバは足止めをくう。相模湾の定置に入る春漁のマサバは未成魚だが黒潮が接岸するときには不漁。

2)       相模湾の定置のゴマサバ秋漁では黒潮が遠州灘で蛇行して伊豆半島の南に接岸し、黒潮の分枝流が相模灘に入りこんでいるときは好漁。

3)       南下するブリ群が相模湾に来遊する条件は黒潮が房総半島に接岸して流れ、沿岸水帯の幅が狭まって、房総沿岸低温水が相模湾に入りこんでいる状態。

     漁場形成に関わる過程

1)       伊豆沿岸漁場におけるキンメダイでは黒潮流路が伊豆半島に接近し、漁場域に影響するようになると、漁場の潮流が早くなるなど底釣漁業の漁獲能率が低下して漁獲量が減少する。

2)       伊豆下田を基地とするカジキ突棒は黒潮が接岸していた年には漁獲量急増。

3)       駿河湾・遠州灘カタクチシラスの来遊量の変動−黒潮大蛇行時には水揚量が平年の70%以下に減少。

4)       マサバ産卵群の集合様式の変化−マサバ産卵群は犬吠埼沖から伊豆諸島北部に南下し、黒潮内側縁辺に集合するが、黒潮流路でサバ漁場が動く。

5)       早春に伊豆海嶺を北上してくるカツオの群れは黒潮系暖水の縁辺に漁場が形成される。

6)       棒受網漁業の漁場形成に影響がでる。

7)       神奈川では黒潮が接岸するとムツが好漁。

     生物の再生産過程

1)       伊豆沿岸漁場におけるキンメダイは、黒潮大蛇行時に黒潮が伊豆海嶺を北上して沿岸漁場に達するとき、資源補給が行われ4、5年後の漁獲が増大。

2)       南伊豆では黒潮が接岸した年の翌年にはイセエビの子エビが多く現れ、2・3年後のイセエビの漁獲量が増える。

     以上の取りまとめは以下の文献を参考にした。

1)     大塚一志(1986)黒潮と漁業、水産技術と経営、32(12)、35-41.

2)     河尻正博(1987)黒潮の動きと漁況、水産技術と経営、33(11)、15-23.

3)     小川嘉彦・若林清(1992)黒潮の蛇行に伴う海況変化とその水産生物への影響、中央水研研究報告、(4)、69-87.