上 申 書
井上 健太郎
外 同志一同
昭和49年 月
内閣総理大臣
自由民主党総裁
田中 角栄 殿
日夜、国家国民のため尽瘁されていることを国民の一員として深く感謝いたします。
ご承知のようにわが日本はあなた方のご努力のおかげで、経済的には大変な繁栄をしました。けれども、精神的
には進歩するどころ反って退歩したのではないかとすら思われる現状であります。人間の精神的進化が、人間社
会にとって必須の要件であることは、世の識者一般が等しくこれを認め、そしてその実現を強く翹望しているところ
ですが、それにも拘わらず、一向にその実が挙がらないのは恂に残念なことであります。
それには二つの根因があることを国民は夙に承知をしております。一つは労資の闘争であり、今一つは政治家の政治姿勢であります。
先ず労資の闘争ですが、これをなくすのに、マルクス・レーニン主義を以ってするという方法は今日既に失敗であることが、幾多の事実により明らかになっておりますので、今後この闘争のない真に平和にして善意に充ちた人間社会をわが日本に現成するには、どうすればよいかということは何にも増して緊要な問題だと思われます。あなたを初め政治家諸子の真剣な検討をお願いいたしたい処であります。
尤も、この点については今直ちにご意見を承ろうとは思いません。けれども次の点については、今日ぜひご意見をお聞かせ頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それは昨今静かに国民の間に盛り上がりつつある政党不信の風潮であります。このことはひいては議会制民主
主義の否定に繋がり、平和国家としての日本の根底を揺さぶる大問題だと思うのであります。
その依ってくる原因を具に検討いたしますと、国民は終局、政党に現存する利害派閥を”政治悪”と看、この政治悪に対する反撥として政治に背を向けているという事実を看得するのであります。
国民の考えを代弁いたしますと、
1.政治は国民に貢献するための”自己犠牲”の聖業であること。
2.従ってこの精神に悖ると思われる利害派閥は速やかにこれを解消し、今日まで派閥が財界その他より得ていた
少なからざる金銭は今後一切貰わないようにすること。
3.利害派閥の行事として調査や、研究や、研修の必要性が強調されますが、調査や研究のためには、支 出す
る調査研究費があり、国会常任委員会の専門員及びそのスッタフがおり、世界に誇る図書館があり、地方視
察の必要があれば国鉄は無賃、その他の交通機関に対し優遇措置もある。また必要経費は旅費日当として
国家より支出されているから、議員諸子はそれで目的は達せられる筈だと国民は考えております。
4.研修の必要があれば、経費のかからぬ施設はいくらでもあるので、会費持ち寄りで質素にやって貰うことを国民
は強く望んでおります。
5.要するに政党の利害派閥からは、犠牲原理とは全く正反対の利己原理の匂いしか国民は嗅ぎ取っておりませ
んから、あなたの叡智によって一日も早くこれを解消して国民の疑惑を解き、政党不信の根因を断ち、以って
国家国民を盤石の安きに置かれることを懇願いたします。
願わくは、この点に関する政党総裁としての貴方のお考えを国民に代って承りたく存ずる次第であります。
以 上
この上申書に対する結果は、次の項目をご覧下さい。
