Being On the Road

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グレート・ギャツビー(1/4)
The Great Gatsby
1925年
スコット・フィツジェラルド
Francis Scott Key Fitzgerald


あらすじ

第一章

私がまだ若く、いまよりもっと傷つきやすい心を持っていた頃に、父がある忠告をしてくれたが、それ以来私はその忠告を心の中で何度もくりかえしてきた。「誰か人を批判したい気持ちになったら、この世の中の人がみんなおまえのように恵まれているのではないということを思い出してみなさい」
そして、このように自分の才能を自慢した後で、私はそれにも限界があるということも認める・・・ただ一人、ギャツビー、この本に名前を使わせてもらったギャツビー、彼だけが例外であった──ギャツビー、ぼくが心からの軽蔑(an unaffected scorn)を抱いているもののすべてを体現しているような男。もしも、途切れることのなく演じ続けられた一連の姿勢(an unbroken series of successful gestures)を個性というのならば、彼には何か絢爛とした個性(something gorgeous)があった。人生の兆しに対する高感度の感受性(some heightened sensitivity to the promise of life)というか・・・それは希望を見い出す非凡な才能であり、ぼくが他の人の中にはこれまで見たことがなく、これからも二度と見い出せそうにないようなロマンティックな心構え(romantic readiness)だった。

 私はニック・キャラウェイ。中西部の出身で一九一五年にイェール大学を出た後に、第一次世界大戦に従軍した。そして一九二二年の春、東部へやってきた私はウォール街の証券会社で働き、ニューヨークのロングアイランドのウエストエッグで家賃の安い平家を借りて住んでいた。家の右隣には、そこには似つかわしくない白亜の豪邸があった。向かいのイーストエッグは高級住宅地で、そこには親戚のデイジーが住んでいた。彼女の夫のトム・ブキャナンは私の学友だった。その夏のある日、私はトムの家に招待された。屋敷の玄関でトムが待っていた。

いまでは、麦わら色の頭髪のたくましい三十男で、なかなかしたたか者で、態度もごう慢だった。きらきらと光る尊大な二つの眼が彼の表情をかたちづくっていて、いつも好戦的に身構えているといった雰囲気をもっている。・・・彼の声、すこししゃがれてかすれ声のそのテノールも、彼から受ける気難し屋の印象を強めている。そこには彼が好意を持っている人々に対してすら、親が子にものを言うような感じがあり、奴の根性が気に食わないというものはニューヘイヴンの頃から何人もいた。

私が部屋に招き入れられると、そこにはソファーにけだるく腰かけるデイジーがいた。久々の再会を喜ぶと、彼女は女友達のジョーダン・ベイカーを紹介した。彼女は有名なゴルフ選手だった。私がウエストエッグに住んでいるというと、私の隣の豪邸に住んでいるのはギャツビーという男で、彼の開くパーティーに行ったことがあると彼女は言った。庭で食事をしながら、トムは最近読んだというゴダードという学者の軽薄な有色人種興隆論について偉そうに講釈する。やがて、トムに電話がかかってきて彼が席を外し、デイジーもその後に続くと、家の奥で言い争う二人の声が聞こえてきた。ジョーダンによると実はトムにはニューヨークに愛人がおり、デイジーは愛人からの電話と思ったのだろうという。その後、私はデイジーから長女パメラが産まれた時の話を聞いた。

女の子だっていわれた時、私は顔を背けて泣いてしまったの。でも私は言ったわ、『いいわ、女の子でよかった。おばかさんな子になるといいわ。女の子は可愛いちっちゃなおばかさん(a beautiful little fool)、それが一番なのよ』って。" その時、トムはすぐに病院を出ていったという。そこへトムがやってきたので、デイジーは話をはぐらかした。

 やがて私はトムとデイジーが自分とジョーダンをくっつけたがっているということが分かってきた。

彼らが関心を寄せてくれることはうれしくもあり、彼らは自分とかけ離れた金持ちだという感じを薄めてもくれたが、車を運転しながら、私は混乱し、少しだけむかむかしていた。

その日トムの家からウエストエッグに帰ると、隣の豪邸で一人の男がポケットに手を入れ、遠くを見つめながら、たたずんでいるのが見えた。彼が見ていた海のほうには桟橋のあたりにぼんやりと緑色の光が見えた。もう一度、私が彼の姿を探したとき、既にその姿はなかった。


第二章

ウエストエッグとニューヨークのほぼ中間地点に、道路が急に線路と合流し、四分の一マイルほど平行して走っているところがある、まるで荒涼としたその一体からしりごみしているかのようだ。ここは灰の谷(a valley of ashes)──灰が小麦のように成長して、峰や丘やグロテスクな庭になる奇妙な農場。そこでは灰が家となり、煙突となり、立ち昇る煙となり、最後には不可解な力によって灰色の人間が出現する。その人間たちは埃のただよう空気の中を、すでに崩れかかりながら、影のようにうごめいている。
しかし、しばらくすると、この灰色の土地とその上を絶えずただようもの寂しい埃の渦の上に、T・J・エクルバーグ医師の眼が見えてくる。T・J・エクルバーグ医師の眼は青く、とてつもなく大きい──網膜の直径は一ヤードもある。顔はないが、その眼は鼻にあたるところにかかっている巨大な黄色い眼鏡の奥から見つめている。

その灰の谷にジョージ・ウィルソンの小さな自動車整備工場があった。ある日曜日の午後、トムが私を連れてここをわざわざ訪れたのは、ウィルソンの妻であり彼の愛人であるマートルを見せるためだった。トムは長い間、ウィルソンに車を売ると言っているのだがなかなか売ろうとしない。トムと会話するウィルソンはおどおどしていた。私たちがそこを立ち去った後、トムはマートルをニューヨークのアパートに呼び寄せた。マートルの妹のキャサリンや階下のマッキー夫妻らを呼び寄せパーティーが始まった。

私は一生に二度だけ泥酔したことがあるが、その二度目がこの日の午後だった。

聞くとキャサリンはギャツビーのパーティーに行ったことがあるという。彼はドイツの皇帝の子息と言う噂だが、姿を見せず無気味だという。やがて夜も遅くなると、マートルとトムが些細なことから言い争いを始めた。デイジーの名を皮肉たっぷりに叫ぶマートルに対し、苛立ったトムが平手打ちをすると、マートルは鼻血を流した。その光景を見た私は部屋を後にして、夜の駅のベンチで午前四時の始発を待っていた。


第三章

 ギャツビーの邸宅では少なくとも二週間に一度はパーティーが開かれていた。ある日、私のもとにギャツビーからパーティーの招待状が届いた。彼のパーティーに実際に招待されて来ている人はまれで、大半は勝手に訪ねてくるパーティー好きの連中である。私は知らない人ばかりの中で居心地が悪かったが、そこでジョーダンと再会した。彼女と連れ立って人々の話を聞いていくうちに、誰一人ギャツビーを見たことがないということがわかってきた。彼らはギャツビーに関する様々な噂をしていた。人殺し、スパイ、オックスフォード・・・彼は誰が出ているか見るだけでパーティーには出てこないのだという。やがて私たちがいたテーブルに同席していた男が微笑みかけてきた。その男こそギャツビーであった。いくつかの会話を交わした後、執事が彼に電話の呼び出しを告げた。私は彼にいい印象を持った。その後、また執事が現れジョーダンにだけ話があるという。しばらくしてギャツビーとジョーダンが戻ってきた。ジョーダンはギャツビーから驚くべき話を聞いてきたのだという。夜もふけて、パーティーはお開きとなった。

ウェーファーのような月がギャツビーの邸宅の上を照らしている・・・玄関先に立って片手をあげ、型どおりの別れの挨拶をするこのパーティーの主催者の姿には、完全なる孤独が感じられた。

 普段の私はありふれた会社員だった。会社の近所の食堂で昼食を取り、イェール・クラブで夕食をすませた後、階上の図書館で証券の勉強をする。そして、ぶらぶらとマジソン街を歩いて、電車の駅へ向かう。

私はニューヨークが好きになりはじめた。活気にあふれ、スリルにみちた夜の雰囲気。めまぐるしく行きかう男や女や車の流れが休みなく眼にとびこんでくる満足感。私は五番街を歩きながら、人混みの中からロマンティックな女性を選びだし、間もなくだれにも知られずだれからも非難されないまま、自分が彼女の生活の中に入り込むといった想像にふけるのが好きだった。

久しぶりにジョーダンと再会したのは、もう真夏のことだった。彼女は以前ゴルフの試合で、ボールを有利な位置に動かして打ったという醜聞があったことを思い出した。だからといって私の彼女への気持ちが変わるということはなかった。

女の不正直さなんて、深くとがめるようなことじゃない。

また彼女の車の運転は乱暴だった。

「不注意な人は嫌いよ。だからあなたが好きなのよ」

私は一瞬、彼女が自分の恋人のような気がした。しかし、私には週に一度、「愛するニックより」という署名を入れた手紙を書く女性が郷里にいた。以前、この女性と結婚するような噂をトムとデイジーがしていたことがあった。

しかし、私はものごとをゆっくりと考える性格で、内なる心の規則が自分の欲望にブレーキをかけていた。
私が自由になる前には、まずそれをうまく断ち切らねばならないというおぼろげな了承があったのだ。
・・・私は自分が知っている数少ない正直者のうちの一人だった。

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<更新履歴>
2006/5/20 作成
2010/9/13 更新


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