カンムリウミスズメ

黒潮のペンギン カンムリウミスズメについて

 カンムリウミスズメはほぼ日本固有種で、その仲間の世界分布の中では最も南に生息しています。
 世界のウミスズメ類の中で最も個体数が少なく、また極端に個体数が少ないことから、絶滅のおそれのある野生動植物のひとつとして、IUCN(世界自然保護連合)によりにVulnerable(危急)種に指定されている貴重な鳥です。

学 名: Synthliboramphus wumizusume
英 名: Japanese Murrelet
和 名: カンムリウミスズメ     (分類  チドリ目ウミスズメ科)
大きさ: 体長 約24cm、体重 約170g、翼開長 約45cm
食 性: 主にイワシなどの小魚や、小型のエビ類などを海中に潜って捕獲し、捕食する。
繁 殖: 年中日本近海に住む留鳥(スズメなどと同じで年中姿が見られる鳥)で、3月頃、岩の下やすき間などに2卵を産卵する。約1ヶ月の抱卵の後、ヒナはふ化後数日以内に巣立ち、すぐに海に移動して育つ。
巣立ったヒナがどのように育っていくかは不明である。

名前の由来

 繁殖期には、頭の上に3〜5cm程度の冠羽(かんむり羽)が生えていることによります。ただしこの冠羽は通常はねかせており、なかなか立っているところを見ることはありません。


                   

                    通常の状態のカンムリウミスズメ



                   

                    少し冠羽を立てたところ



                   

                     冠羽を立てたカンムリウミスズメ


世界的な希少種

 カンムリウミスズメは、環境省のレッドリストでは絶滅危惧U類で、現在のところその危機のランクはそれほど高くありません。
しかしカンムリウミスズメは、同時にIUCN(世界自然保護連合)のレツドリストでは、日本で繁殖する海鳥の中でアホウドリPhoebastria albatrusと同一ランクのVulnerable(危急)種に指定されています。このようにカンムリウミスズメは、国際保護鳥であるアホウドリと同じランクにある日本で最も緊急に保護が必要とされる海鳥であり、国際的な保護鳥であるといえます。

 環境省のランクがこれまで比較的低かったのは、カンムリウミスズメの繁殖地が人の生活圏から離れた無人島であることが多く、あまり人の影響を受けることがないと考えられてきたためと思われます。しかし近年、こうした無人島でも釣りブームの影響などで人の影響が大きくなり、それに伴い、カンムリウミスズメの繁殖にも影響が出て来ています。また、環境省のレッドリストは主に国内の生息個体数や生息状況、それに生息状況の悪化の度合いなどを考慮して決められているため、世界的な個体数の少なさはなどは、これまであまり考慮されてきませんでした。
今後、環境省のレッドリストもIUCNのレッドリストを考慮したものになると思われ、それに伴いカンムリウミスズメのランクの上がることが予想されます。

 ※ カンムリウミスズメの生息個体数
 カンムリウミスズメの生息個体数は、多く推定しても最大約10,000羽程度ではないかと推定されています。この数は、分類上同じ仲間である他のウミスズメ類と比べても非常に少なく、他のウミスズメ類の中の個体数の少ない種類と比べても、その1/50〜1/100程度の個体数ではないかと言われています。

黒潮のペンギン

 世界でカンムリウミスズメの分布域は、日本の周辺、それも本州から九州にかけてに限られています。それは、分類上近い仲間であるエトロフウミスズメやエトピリカ、ウミガラスなど他のウミスズメ類が、ほぼ北緯40度(北海道)以北に生息するのと比べるとかなり南に分布しているといえます。さらにカンムリウミスズメの主要な繁殖地は、宮崎県や福岡県、富山県の無人島や伊豆諸島など、太平洋でも日本海でも、いずれも暖かい海流である黒潮の流れる海域にある小さな島です。そのためその海域で繁殖期にはその姿が見られるのですが、カンムリウミスズメの姿はペンギンに非常によく似ています。よく知られているペンギンは南極に生息し分類上はまったく別なものですが、その生態が似ているため、姿が似ているのでしょう。そのため私達は、カンムリウミスズメのことを「黒潮のペンギン」とか「日本のペンギン」と呼んでいます。ペンギンと同じような色彩に加え、ペンギンと同様に翼で海中を泳ぐことが、両者をさらに似て見えさせているようです。最も、本当のペンギンの仲間では最小の種類でも大きさは約40cmありますので、カンムリウミスズメのほうがはるかに小さいです。


謎の海鳥

 カンムリウミスズメは、保護が必要なことからその生態の解明が急がれていましたが、未だにその生態は謎に包まれています。その理由のひとつは、繁殖(子育て。この場合は抱卵)している島から孵化したヒナを連れて巣立ってしまうと、以後どこでどのような生活を送っているかがわからなかったためです。つまり、繁殖期に、繁殖している島とその周辺の海上でしか、確実にその姿を見ることができない種類で、繁殖生態以外がまったく解明されていない「謎の海鳥」だったのです。それは今現在でもほとんど変わりありませんが、2007年、定説を覆し、それまで生息していないとされていた瀬戸内海に非繁殖期に生息していることが確認されて以来、少しずつですがその繁殖期以外の生態が解明されつつあります。 (注:下記瀬戸内海での生息確認の項を参照してください)。


瀬戸内海での生息確認について

 2007年、カンムリウミスズメの生態解明に向けて大きな発見がありました。非繁殖期(繁殖していない時期)にカンムリウミスズメが生息している場所が初めて確認されたのです。それはそれまで生息していないと考えられてきた瀬戸内海でした。また、同時に幼鳥も多数確認されました。これらは共にこれまでカンムリウミスズメの生態の謎の部分を埋める重要な発見で、カンムリウミスズメの保護を考える上で欠かせない重要な部分でした。以後瀬戸内海では積極的に調査が行われ、現在では少数が繁殖している可能性があることも確認されています。(このホームページの作者である 飯田 知彦 が発見しました。現在、日本鳥学会の英文誌に報告を投稿中)


                

                 初めて確認されたカンムリウミスズメの幼鳥の発見時の状況 (2007年 6月27日)
                 山口県 周防大島沖



                

                 初めて確認されたカンムリウミスズメの幼鳥 (2007年 6月27日)
                 山口県 周防大島沖



                

                 広島県でも確認 (2007年 7月31日)
                 広島県 呉市倉橋島沖


 カンムリウミスズメの生態等の写真


                

                 家族群(成鳥(親鳥:手前右側)とヒナ2羽)



                

                 夏の幼鳥 1



                

                 夏の幼鳥 2






ご質問等は、こちらへ

飯田 知彦

  E-mail : tiida@bronze.ocn.ne.jp

  ※ メールをお送りいただく際は、@を半角@に変えてお送り下さい。


なお、このページに掲載してあるカンムリウミスズメの写真は、すべてこのページの作成者である飯田知彦が撮影したものです。



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