アンケート調査から見た口腔アレルギー症候群


北欧や北海道のシラカンバ花粉症、六甲山麓のオオバヤシャブシ花粉症の患者さんに、リンゴなどの果実で口腔のアレルギー症状が起こることが知られていて、口腔アレルギー症候群という名前が付けられています。九州にはハンノキやヤシャブシがあり、昔から木炭用に利用されていて、里山にはこうした樹木がまだかなり残っていると思われます。口腔アレルギー症候群の患者さんが果たしてどのくらいいらっしゃるのか調べてみようと、アンケート調査を行いました。

 


調査方法

4月27日より、500名をめどに、対面調査形式で、受診患者さん全員に対して聞き込みをいたしました。

 


回答者像

518名の回答を得ました、男性が238人、女性が280人で、その年齢構成です。10歳未満の子供が多くなっていますが、これが今回の調査の母集団ということになります。

 


OAS症例年齢構成

何らかの口腔アレルギー症状を起こした方は、518名中33名でした。6.8%にあたります。印象としては結構多いように感じますが、この方達は、こちらから尋ねて初めてお答えになった方ばかりでした。すぐ思い出す方もありますが、中にはいろんな果物の名前を挙げて初めて思い出す方もたくさんいらっしゃいました。

住所については、特に偏りは見られませんでした。

33名の年齢構成です。発症率で見ますと10代から30代に多く、男性はほとんどが20歳未満でした。男女比は4対7で女性に多いようです。

 


症状

症状(複数回答、多い順)
 

症状のほとんどは、口や咽のかゆみ、ジガジガ感といった軽いもので、咽の腫れが若干ある程度です。呼吸困難、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状はありませんでした。

口や咽のかゆみ

17

口や咽のジガジガ感

10

じんましん

3

口や咽の腫れ

3

口周囲の発赤

1

口内水疱

1

唇の腫れ

1

唇の痛み
 

1

総合計

37

 


起因食物

メロン

13

口腔アレルギー症状を起こした果物・野菜の一覧です。

メロン、キウイ、スイカが圧倒的に多く、しかもメロンとスイカの両方をあげる方が多くありました。

パイナップルは、どうもその味質に原因があるような印象です。文献などではリンゴなどバラ科の果物が多く出てまいりますが、リンゴ、イチゴなど、あまり多くありませんでした。

キウイ

8

スイカ

7

パイナップル

6

山芋

3

いちご

2

プチトマト

2

リンゴ

2

2

2

2

グレープフルーツ

1

なす

1

バナナ

1

ピーナッツ

1

レタス
 

1

総合計

51

 


アレルギー素因

鼻アレルギー

17

鼻アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、じんましんなどのアレルギー疾患を持っている割合は、33名中23名で、約70%でした。

アトピー性皮膚炎

4

気管支喘息

4

じんましん
 

4

総合計

29

 


症例の検討

上の段がアンケート調査期間に来院された症例で、下の段はそれ以降に来院された方です。

ハンノキ、シラカンバ花粉の特異的IgE抗体を測定できた22例中、RASTscoreが2以上の陽性者は10名で45%にあたり、これは結構高い数値だと思います。

4月末から5月という調査期間にもよるのですが、スギ花粉症ではなく、カモガヤ花粉症の方に多いように感じます。ハンノキ、シラカンバ花粉症の患者さんは、自分はカモガヤ花粉症だと思っていると思われます。

果物類に対する反応では、RAST陽性者は、症例7,18,40,42の4例しかなく、しかも症状を起こした果物類でRASTが陽性にでたのは22例中3例と意外と少ないです。

キウイで反応のあった症例7と18を見るとハンノキ、シラカンバ花粉のみならず、スギやカモガヤといった花粉にも反応がなく、キウイの場合花粉症との関連性は低いのではないかと思われました。一方症例40はイチゴ、メロンとともに、ハンノキ、シラカンバでも反応が見られ、典型的な口腔アレルギー症候群といえます。

 


ブナ目の樹種・分類

ブナ目の樹種はかなり多く、ご覧の通りです。濃い字のものは九州で見られるものです。シラカンバは九州では見られません。ハンノキは熊本には多いという報告もあり、これで感作されたものかもしれませんし、次に示しますが、ブナ科の花粉はこの時期かなりたくさん飛んでいて、ブナ科の花粉との共通抗原性を指摘した報告もあります。

GOOの樹木図鑑」より 


花粉飛散状況

これは当院で計測している花粉飛散量をグラフ化したものです。ハンノキ、シラカンバの飛散時期は3月中旬から5月上旬頃までで、この時期に飛ぶ花粉は、ヒノキ、ケヤキ、マツの他カモガヤがあります。ハンノキ・シラカンバ花粉症の方はその飛散量からハンノキあるいはミズメで感作されたものと単純に考えて良いものか、あるいは大量に飛散するブナ科花粉によるものかもしれません。またカモガヤ花粉との共通抗原性についても興味あるところです。

 


平成13年6月16日、日本耳鼻咽喉科学会 熊本県地方部会にて発表予定。

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医療法人 祐恵会 前原耳鼻咽喉科医院