医療事故豆知識 
 Medical Malpractice Information Center


医療事故に関連する様々な記事をご紹介していきます。
最初は弁護士費用について参考になるような記事をピックアップしてみました。


なお、金額の表記はいずれも記事発行当時の状況に基づいて執筆されている事にご留意ください。

医療訴訟の弁護費用の決まりを素人に教えてほしい 池田伸之(名古屋) 1989年9月1日発行
医療過誤入門(11) 受任時の注意事項 上田和孝(名古屋) 1997年8月1日発行
給料日前は弁護士に依頼しない方がいい? 中公新書「ドキュメント弁護士」より 2000年4月25日発行
医療事故と医療過誤 厚生省HPより


■医療訴訟の弁護費用のきまりを素人に教えてほし

医療被害者の方からご相談を受け、弁護士が受注して医療機関に責任追及をする場合、直ちに訴訟手続を取ることはほとんどなく、その前提として証拠保全手続を取ることが大半です。この手続は、カルテ等の改ざんを防止するため、裁判所の決定によってカルテ等の医療機関側にある証拠の現況を写真等によって保全・検証する手続ですが、過失責任の有無を検討する上で、医療機関側に偏在するカルテ等の証拠を被害者側が入手するための不可欠の手続です。弁護士はこの入手したカルテ等を翻訳・検討し、協力医とも協議し、医療機関側の過失責任の有無を検討します。(※1)ここまでの費用としては、当地では20万円+写真代等の実費が弁護士に支払う標準的な費用ではなかろうかと思います。
証拠保全手続き後に医療機関側と示談折衝がなされることもありますが、勝訴の見込みが高いと判断されるにもかかわらず、医療機関側が損害賠償に応じない場合には、訴訟手続によって権利実現をはかることになります。その際に要する弁護士費用としては、訴訟手続を依頼する時に支払う着手金、勝訴時に支払う成功報酬、裁判所に納付する印紙代、記録謄写費、鑑定料等の実費があります。着手金、成功報酬については、それぞれ請求金額、判決による容認額を基準に額に応じた料率を乗じて算出されます。たとえば死亡事故により5,000万円の損害賠償を請求する場合、着手金、報酬の標準額は各285万5,000円となり、印紙代、謄写代等の実費の概算は30万円となります。(※2)但し、着手金は訴訟手続依頼時に弁護士に支払うものであるため、依頼者側の負担を軽減するため、相当減額したり、あるいは一部内金払をし、残額は医療機関側から賠償金を領収した後に報酬とともに清算する(後払)とされる場合が多いものと思います。
 また、医療訴訟においては、医療機関側の過失責任の有無につき専門医の判断を求めるため、鑑定が行われることが多く、患者側からこれを求める場合には、数十万円程度の鑑定料を納付しなければなりません。弁護士費用を支払う経済力がない場合には、費用の立替制度である法律扶助の制度もありますので、弁護士や各地の弁護士会にご相談下さい。医療の世界でインフォームドコンセントということが問題とされていますが、弁護士に手続を依頼する場合にも、費用や事件の見通しについては予め弁護士から十分に説明を受け、納得されたうえで依頼するようにして下さい。

(※1) 一連の手続を行う弁護士の手数料については、地域により多少異なりますので、納得がいくまで具体的に説明をしてもらってください。(センターパンフbQ「証拠保全のはなし」参照)

(※2) 日弁連報酬等基準の改訂に伴い、2000年現在、5000万円の請求の場合の弁護士着手金標準額は219万円、成功報酬標準額は438万円とされています。

センターニュースNO.18掲載(1989年9月1日発行)


■医療過誤入門(11)受任時の注意事項 上田和孝弁護士(名古屋)

1、「受容」の重要性
 カウンセリング辞典(誠信書房)によれば、受容とは「クライエントの表明に評価や判断を加えず、それをそのまま受け取ろうとすること」です。医療過誤事件では、患者あるいはその親族は肉体的にも精神的にも傷つき人間不信となっています。そのような状況下では、とりわけ「受容」の姿勢が求められます。受容を妨げる弁護士側の要因としては、・経験不足、知識不足、準備不足から来る自信のなさ、・事件の筋、調査カードなどによる予断、・弁護士の性格などがあげられ、患者側の要因としては、・過大な被害者意識、・第三者の意見の押しつけ、・患者側の性格などがあげられると思います。

2、医療裁判の困難性についての説明
 この点について十分な理解を得ないまま提訴することは、後々のトラブルの原因となります。そこで、口頭での説明にあわせて、自身で作成した説明書や、情報センター発行のパンフレット「医療過誤裁判のはなし」「鑑定のはなし」(加藤良夫著)を依頼者に渡すことをお勧めします。

3、費用の説明
 弁護士費用については、月払い方式を採用することも多いようです。主張のやりとりの間は、弁論期日の間隔も短いうえに、その準備に時間がかかることは依頼者にとっても理解しやすいので、この方式も特に問題はないでしょう。しかし、尋問手続きに入ると、期日の間隔が長くなり、しかも期日間の弁護士の労力が見えにくいだけに(あるいは実際に労力が費やされていないだけに)、上記方式は不満の種となります。審理の空白期間である鑑定期間中はさらに問題です。そこで、最初の一年間は月払いとし、その後は期日ごとの支払いにするとか、いっそのこと全期間につき期日ごとの日当方式にするといった工夫が必要です。訴訟が長期化した場合には、この方式でも依頼者の負担が大きくなりますから、金額を低減していくことも検討されるべきです。
 なお、訴状や判決書に記載された弁護士費用が実際の費用と誤解されることがありますので、この点の説明が必要です。
 裁判所の鑑定や私的鑑定の費用は多額ですし、当事者の念頭にないことが多いので、その必要性と見積もりを明示しておくべきです。

4、法律扶助について
 法律扶助を受けることは依頼者の権利ですから、これにつき説明すべきことは当然です。しかし、扶助では医療過誤事件の困難さは十分考慮されませんし、立証のための費用に制約があります。そこで、扶助の対象となりうる事件については、依頼者の承諾を条件に、扶助手続きを利用する代わりに、着手金の先払い分を扶助と同額にするなどの工夫もあってよいでしょう。ただし、法律扶助事件でないと訴訟救助が受けられにくいようです。
センターニュースNO.113掲載(1997年8月1日発行)


■給料日前は弁護士に依頼しないほうがいい?

 一般に、依頼者は報酬の相場を知らない。このため、弁護士の言い値に従わざるをえないケースも多くなる。ある弁護士は、「給料日前は弁護士に依頼しないほうがいい、というジョークがある。事務員に給与を支払うため、弁護士がつい依頼者に報酬を高めに請求してしまうという笑い話だが、実際にないわけでもない」と打ち明ける。
 埼玉県川越市に事務所を開くA弁護士(五十七歳)は、「街の弁護士」として民事、刑事何でも扱うが、なかでも医療過誤事件には数多く取り組んでいる。そこで、仮に病院のミスで新生児が障害を負ったとして、一億円の損害賠償請求訴訟を起こす場合、A弁護士に頼むといくらかかるか、尋ねてみた。
 まず、裁判の前にカルテなどの重要書類を保全する手続きが必要だが、保全後の対応も含めた報酬が約三十万円、コピー代などが五万円から十万円。病院側の責任追及ができる、と判断すれば裁判所に提訴となる。日弁連の規程では、一億円請求の場合の着手金は、訴訟の困難さに応じ約二百五十八万円から約四百七十九万円。ほかに印紙代が約四十万円かかり、裁判の証人の日当用などに二十万円くらいを預かることになるという。
 A弁護士は「医療過誤は本来困難な訴訟だから、着手金は高いほうでもいいかな」とも思うが、依頼者は障害のある子を抱えて生活が苦しい場合が多い。できる範囲で準備してもらう。
 一審が何年かかっても、準備書面を何通書いても、判決や和解前にもらうのは基本的にこれだけだ。
 「勝ったら、成功報酬で調整してください。負けたら要りません。そのときは一緒に泣きましょう」と依頼者に話している。敗訴すれは「持ち出し」になることも多い。
 医療過誤訴訟は和解が四割強で、判決での原告勝訴率は三割にすぎないこと、負けても着手金などは戻ってこないこと、勝っても相手が控訴すれは裁判は続き、費用も別にかかること。
必ず事前に十分な説明をし、同意を得る。
 「きちんと話すことが、結局はのちのちのトラブルを防ぐんです」とA弁護士。依頼者側にも、弁護士に情報公開を求める権利がある、と考えている。
中公新書 「ドキュメント弁護士」より(2000年4月25日発行)


■医療事故と医療過誤

 「医療事故」は、医療にかかわる場所で、医療の全過程において発生する人身事故一切を包含する言葉として使われている。医療事故には、患者ばかりでなく医療従事者が被害者である場合も含み、また、廊下で転倒した場合のように医療行為とは直接関係しないものも含んでいる。医療事故のすべてに医療提供者の過失があるというわけではなく、「過失のない医療事故」と「過失のある医療事故」(医療過誤)を分けて考える必要がある。
 「医療過誤」とは、医療の過程において医療従事者が当然払うべき業務上の注意義務を怠り、これによって患者に傷害を及ぼした場合をいう。過失の有無については、事例によっては、必ずしも明確でない場合がある。
 また、事実認定が医療事故の発生時点における医療水準に照らして判断されることから、医療過誤の範囲は時代とともに変化することになる。
厚生省HPより



ご意見・ご感想をお寄せください mmic001@mint.ocn.ne.jp