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| ●日医が制度構築主導を意思表明 本年7月13日、日本医師会は、医療事故調査に関する検討委員会(寺岡暉委員長)による答申「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言について」を公表しました。 この答申では、医療事故調査制度の柱を「院内医療事故調査」と「第三者的機関」であると位置づけた上で、最大の医療団体である日本医師会に本制度の構築を主導・調整する責務があると提言しています。 ●全医療機関に院内事故調設置を提言 答申は、すべての医療機関に院内事故調査委員会を常設し、事故発生時には、外部委員(専門委員、法律家、有識者)を交えて調査を行い、結果を院長から患者家族へ報告することとし、小規模医療機関については、医師会・大学等からの支援を依頼できる体制を築くとしています。 答申が「外部の第三者機関において調査分析、再発予防策の提言が行われていようとも、院内の医療安全活動が活発に行われなければ医療の質の向上には貢献しない」と述べているように、個々の医療機関が自らの適切な調査検討を行うことは望ましいあり方であるといえます。 また、答申では「院内事故調査は、身内による内部的な調査であることから、調査の質を担保するために一定の基準を設ける必要がある」とした上で、医療事故収集等事業などへの報告義務も検討課題となるとしています。このように答申が中立性や透明性の確保を重視している点は評価に値するものと考えます。 ●届出対象は「院内調査の能力を超えるもの」に限定 答申は、「第三者的機関」を日本医療安全調査機構を基本とした上で組織を再構築して創設し、各都道府県に1箇所以上の地方事務局を設置することを提案しています。 そして診療関連死は、医師法21条の対象外とした上で、院内事故調査委員会において可能な限り調査分析を行ったにもかかわらずその分析能力を超えるものを「第三者的機関」へ届け出る(調査依頼を行う)としています。 答申では患者家族から「第三者的機関」への調査請求も可能としており、この点は公正性や中立性の確保を重視する見解として、特筆に値します。 ただ、院内調査の能力を超えるものだけを届出対象とした点は、今後の大きな論点となると思われます。 ●「間口」の設計は原点に立ち戻るべき 今回の答申内容では、 1)届出なき診療関連死事例が生じる 2)届出が院内の裁量的判断に左右される余地が残る 3)届出時期が院内調査後となる という3点に課題が残ります。 医療の質の向上のためには、事例を漏れなく捕捉して教訓を抽出することが有効です(たとえば、産科医療補償制度では、周産期脳性麻痺をほぼ全例捕捉可能となったことが、緻密な分析と再発防止提言の実施に大きく寄与しています)ので、全例を届出対象とすべきです。しかも、院内調査の能力を超えるかどうかを基準とした場合、真摯な姿勢の医療機関からは届出がなされる反面、そうでない医療機関からの届出が滞るおそれがあります。そして、事故発生時から届出時期がずれ込むほど、剖検実施機会が損なわれたり、重要な資料が散逸するおそれが生じます。 医療事故調査制度の議論の原点である日本医学界加盟主要19学会の声明「診療行為に関連した患者死亡の届出について〜中立的専門機関の創設に向けて〜」(平成16年9月30日)では「診療行為に関連して患者死亡が発生したすべての場合について、中立的専門機関に届出を行なう制度を可及的速やかに確立すべき」と提言されています。 従来、日本医師会も、診療関連死発生時点で保健所に全例を届け出るという制度設計を提案していました(平成19年5月日本医師会医療事故責任問題検討委員会「医療事故に対する刑事責任のあり方について」)。つまり、発生時点でもれなく早期に届け出るという点では、上記19学会声明の趣旨に沿った形で、上記3点の課題を回避可能な制度設計が想定されていたといえます。 今回の答申で、日本医師会は「間口」の設計を大きく変更しましたが、答申には変更理由の説明は見当たりませんでした。 院内事故調査に一定の役割を委ねるとしても、医療事故調査の透明性や公正性を確保するためには、全例について早期に外部へ届出を行う制度とすることが不可欠です。また、院内事故調査委員会の質を担保するための基準設定や、医療事故情報収集等事業への報告義務の設定の議論の際には、「間口」緩和による上記3点のデメリットへの対処を意識した検討が必要です。 ●議論再開の機運 以上のような課題はありますが、この数年の間、この問題は停滞を続けていましたので、日本医師会が制度創設に向けた動きを再開したことは、積極的な評価に値します。 よりよい制度創設に向けて、引き続き、患者の視点からのより一層の働きかけを行っていきたいと思います。 |
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| (2011年8月 センターニュース281号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●新モデル事業スタートから半年 平成17年にスタートした「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」は、本年4月から2年間、実施期間が延長され、新たに設立された日本医療安全調査機構が実施主体となりました。新モデル事業の実情について、同機構の公表した資料に基づいて整理したいと思います。 ●第1回運営委員会議事録より 新モデル事業の第1回運営委員会は本年6月3日に開催されました。 この会合では、厚労省から、モデル事業見直しに当たっての主な留意事項として、1)全国展開を視野に入れ、実現可能性を十分考慮すること、2)死亡時画像診断を活用すること、3)院内事故調査委員会の調査内容をレビューする方式も取り入れること、の3点が提示されました。また、遺体を移動について遺族の了解を得られない場合には、事例が発生した医療機関において、その医療機関の病理医が解剖する(中立性確保のためにモデル事業から立ち会いを派遣する)という方法も選択できるようにすることや、経験を活かすために評価委員会のメンバーの一部を固定化することに加え、調査手順の簡素化・標準化、受付事例の拡大にむけた積極的広報、再発防止策の全国展開のために日本医療機能評価機構と連携をはかること等、新モデル事業の方向性について意見交換がなされました。 ●第2回運営委員会配付資料より 本年9月7日には、第2回運営委員会が開催されたようですが、11月22日現在、その議事録は公表されていませんので、当日の議論の詳細は不明です。 ただ、配付資料によれば、本年8月30日にワーキング部会が開催され、1)死亡時画像診断活用については、日本医学放射線学会と連携を進め、体制のとれる地域から暫定的に、運用フローチャートに基づいて試行すること、2)事例が発生した医療機関において解剖を行う場合には、解剖調査担当医(法医又は病理医)1名と臨床専門医1名が立ち会い、モデル事業から解剖施設利用費用を支払い、ホルマリン固定された臓器は、解剖調査担当医の解剖施設に5年間保存すること、3)診療関連死調査人材育成班平成21年度報告書の提案する「外部参加型院内事故特別調査委員会による先行院内調査」を想定して、院内調査レビュー方式を試行していくこと等について、叩き台としての議論がなされたことがわかります。 また配付資料からは、本年4月〜8月末までの5ヶ月間に、新たに26例の相談があり、うち8例について評価が開始されたことが明らかとされています。新モデル事業の広報活動は、各地地域代表らが地元関係各所に訪問して説明を行う等、てこ入れが図られていますが、このペースを前提とした場合、評価対象となる事例は年間20件程度と予想されますので、事例拡大に向けた努力はこれからも必要となるものと考えられます。 ●時間との勝負 以上のように、モデル事業は、全国展開可能な方式の在り方を模索しながら継続されていますが、事例数の大幅な拡大傾向はみられないまま、残る事業期間が1年半を切っています。新モデル事業では、以前にも増して、スピード感あふれる作業が求められていますが、運営委員会の議事録公開に2ヶ月以上を要しており、大変残念です。同種の事業である産科医療補償制度の各種会合の議事録は、概ね1ヶ月程度で公表されています。予算規模の違いなど、いろいろな壁はあるかもしれませんが、社会の関心を集めて事例を拡大していくためにも、オープンでタイムリーな議論を行うことを可能とする情報提供体制が強く期待されます。 |
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| (2010年12月 センターニュース273号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●前号記事の訂正と補足について 前号の本欄で、国内の年間入院患者数を約140万人と記載しましたが、厚労省患者統計では、ある特定の1日に入院中の患者数が約140万人とされていますので、年間入院患者数を140万人としたのは誤りでした。この点、お詫びの上訂正いたします。厚労省の統計によると、病院における平均在院日数は約34日(一般病床に限定すれば約19日)ですので、非常におおざっぱな推計ではありますが、年間入院患者数は140万人の10倍前後に及ぶと考えられます。 また、前号で、有害事象発生率6.8%、うち予防可能性が高いものが31.3%とした数字は、堺班の調査の際に、国際比較の目的で、カナダでの同種調査の判定基準を当てはめた結果によるものですので、この点も補足します。 ●堺班の調査結果の詳細 前号で触れた堺班の総括研究報告書のポイントをあらためてご紹介します。 ・対象機関:無作為抽出された18医療施設(特定機能病院3施設と200床以上の急性期病院15施設)。 ・対象診療録:各病院で無作為抽出された平成14年度の退院患者の診療録(精神科を除く)4,389 冊。 ・有害事象数:4,389件中、入院前の有害事象発生例が178件(4.1%)、入院中の発生例が263件(6.0%)。総数441件。 ・死亡が早まった例は、入院前が178件中4件(2.2%)、入院中が263件中10件(3.8%)。 <入院前有害事象で死亡が早まった事例> (1)前医で乳癌を見落とした (2)前立腺癌の診断の遅れ (3)胃内視鏡中に潰瘍が穿孔して心停止 (4)心不全、肺炎に対する不適切な外来治療により急性腎不全を発症 (5)施設で発症した誤嚥性肺炎 ※有害事象一覧には死亡が早まった件が5件掲載されている。 <入院中有害事象で死亡が早まった事例> (1)調査対象入院中に貧血を認めたが精査されず、退院後多量に下血した (2)不適切な経口摂取指示により誤嚥性肺炎を発症 (3)抗生物質を点滴中、けいれん発作が誘発された (4)敗血症患者に対する緊急手術のための麻酔導入後に心停止 (5)食道癌術後に胃管が壊死して膿胸となった (6)心臓手術後、創部感染、MRSA肺炎を発症 (7)膵臓癌術後の腹腔内出血 (8)心臓大血管術後の低心拍出量症候群 (9)緊急開腹手術後、誤嚥性肺炎を発症 (10)不整脈患者が一般病室で心室細動となったが、看護師がアラームに気付くのが遅れた ・有害事象441件中、明らかに誤った医療行為や管理上の問題が認められたものは7件(1.6%)、医療行為や管理上の問題が原因となった可能性が高い(50%以上)ものは149件(33.8%)。 ・有害事象441件中、予防可能性が高い(50%以上)と判定されたものは61件(23.2%)。 ●重大な有害事象を把握するための指標 このように、堺班の調査結果は、入院患者4,389件のうち、入院中の有害事象で死亡が早まったものが10件(約0.23%)あったとするものです。 このことから、急性期病院のインシデントレポート上で、入院患者の死亡事例数が入院患者総数の0.23%から大きくかけはなれている場合は、重大事例全体を把握できていない可能性が示唆されます。500床の病院で平均在院日数20日の場合なら、年間20人前後となります。 以上は大変おおざっぱな推計ですが、より精緻な検討を加えた上で、堺班の貴重な調査結果が、安全管理の達成度を評価する際の指標として活用されることが望まれます。 ※(500×365/20)×0.0023=20.9875。ただし常時満床と仮定。 |
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| (2010年8月 センターニュース269号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●最高裁が速報値を公表 最高裁が平成21年の医事関係訴訟統計(1審の審理状況)を公表しました。 ●提訴件数の激減 平成21年の新受件数(地裁で新たに提訴された件数)は733件で、過去10年で最低の値となりました。前年の877件に対し16%も減少しており、ピークであった平成16年との比較では、実に1/3以上の減少となりました(グラフ1)。 ●審理期間の微増傾向が続く 平成21年の既済事件の平均審理期間は25.2ヶ月となり、平成19年を底に、2年連続で微増となりました。裁判迅速化法が目標とする2年という目安を、再び超えたことになります(グラフ2)。 ●判決数は横ばい、和解は減少 平成21年の既済事件のうち、判決は366件、和解は473件でした。判決件数はこの10年でほぼ横ばいであるのに対し、和解件数は3年連続で減少しています(グラフ1)。 ●勝訴率は2年連続で2割台 既済事件のうち判決で終了した事件における勝訴の割合(一部認容を含む)は25.3%でした。昨年、過去10年で初めて2割台(26.7%)に落ち込んだことをご報告しましたが、今年は更に低下し、低勝訴率の固定化傾向が見受けられます(グラフ3)。 既済事件のうち勝訴的な結論に至ったもの(認容判決・一部認容判決・和解の合計)の割合をみても、過去10年で最低の59.4%まで低下しました(グラフ4)。 ●安全文化に後退の兆し? 日本国内で行われた調査結果(堺班)では、入院患者の6.8%に有害事象が発生しており、そのうち31.3%については予防可能性が高い有害事象であったとされています。平成20年の厚労省患者統計によれば、年間入院患者数は約140万人とされていますので、毎年約3万人に予防可能性の高い有害事象が生じていることが想定されます。この10年で医療安全管理や訴訟前の紛争解決の枠組みの整備が進んだことは事実ですが、患者さんからの相談に日々対応してきた弁護士の実感としては、統計から推測される膨大な有責事故件数を吸収しうるほどの変化があったとは思えません。 そうした状況の下での提訴件数の減少は、被害を受けた患者がフォーマルな場で声を挙げにくい環境に逆戻りしつつあるのではないかとの危惧を覚えます。そして、判決の認容率の低下や和解件数の減少は、こうした傾向に拍車を掛けるおそれがあります。 統計の示す訴訟の姿が、この10年でようやく進展してきた医療安全文化の後退の兆しを示すものでないことを、祈らずにはいられません。 |
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| ※グラフ1〜4はこちら(PDF)をご参照ください。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| (2010年7月 センターニュース268号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●17事例の補償が決定 昨年1月からスタートした産科医療補償制度では、昨年6月から補償申請がスタートしました。本年1月25日に開催された第5回審査委員会までの間に、合計17事例への補償が決定されています。うち16事例は出生体重2000g以上かつ在胎週数33週以上の事例でしたが、残る1例は、この要件を満たさないものの、個別審査によって一定の要件(標準補償約款別表第一)を満たすと判断された結果、補償されることになりました。 ●pH7.1未満とされた意義 この個別審査の要件は、米国産婦人科学会(ACOG)特別委員会の定めた「脳性麻痺を起こすのに十分なほどの急性の分娩中の出来事を定義する診断基準」を参考として策定されました(平成20年1月23日開催の第12回運営組織準備委員会配付資料・参考3)が、臍帯血pHについては7.1未満とされています。このことからは、ACOG特別委員会診断基準(pH7.0未満)を満たさない場合でも、分娩経過中のエピソードによって脳性麻痺に至った可能性が一律に否定されるわけではない(=ACOG特別委員会診断基準は十分条件に過ぎない)ことが、一層明らかになったと言えそうです。 ●6部会で原因分析がスタート 昨年9月1日には、原因分析委員会部会委員54名が委嘱を受け、6部会体制で個別事例の原因分析を開始しました。各部会は、産科医3名、小児科医1名、助産師1名、弁護士(患者側・医療側)各1名で構成されており、他に部会に属しない委員が12名となっています。部会に属する委員としては、患者側弁護士からは、増田聖子委員、加藤高志委員、福武公子委員、中山ひとみ委員、松井菜採委員及び安東宏三委員が、医療側弁護士からは、南出行生委員、木崎孝委員、加藤愼委員、金田朗委員、中村勝己委員及び水澤亜紀子委員が、それぞれ選任されています。 本年1月18日付で公表された原因分析報告書作成マニュアルでは、脳性麻痺発症の回避可能性には言及しないとされていますが、原因分析委員会での議論では、有識者委員から回避可能性についても言及すべきとする強い反対意見が残されました(第10回原因分析委員会会議資料及び議事録参照。なお、患者・家族から回避可能性について質問が出た場合には、報告書とは別に回答書を交付するという妥協案が岡井崇委員長から提案されています)。この点については、今後実際に作成された原因分析報告書の検証作業において、議論が継続されることと予想されます。 ●剰余金の一部は戻入れ 本制度については、運用開始前から、公的資金(出産育児一時金)によって運営される制度でありながら、脳性麻痺の推定発生率を高めに想定した結果として、保険会社に多額の剰余金利益が生じる可能性が指摘されていました。この剰余金問題については、運営委員会でも議論がなされた結果、昨年6月26日、日本医療機能評価機構は、1)掛金総額から経費を控除した額(補償原資)から20年分の補償金支払に必要な額を差し引いた残額を、保険会社から運営組織に戻し入れる、2)補償対象者が300人を下回った場合は、300人相当分を超える部分が戻入れとなり、残額は保険会社が取得する、3)余剰金は本制度のために用いる、との方針を公表しました。 この方針決定によって、剰余金すべてが保険会社の利益となることは回避されますが、300人相当分を基準とした点の合理性や、運営経費の適正性については、引き続き今年5月に報告される決算を注視していく必要があります。 |
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| (2010年3月 センターニュース264号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●名古屋で記念集会を開催 本年10月31日、名古屋市内にて、「今こそ患者の権利医療・基本法を!」と題し、患者の権利宣言25周年を記念したシンポジウムが開催されました。 シンポジウムでは、まず基調報告として、内田博文氏(ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会座長代理・ 九州大学大学院法学研究院教授)が「医事法におけるパラダイムの転換〜国策に奉仕する医療から国民の命を守る医療へ」との演題で、医療の歴史を振り返りつつ、患者が主体であるとの視点からの基本法制定の必要性が解説されました。 引き続いて行われたパネルディスカッションでは、隈本邦彦氏(江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授)によるコーディネートの下で、伊藤たてお氏(日本難病・疾病団体協議会代表)、勝村久司氏(医療情報の公開・開示を求める市民の会世話人)、平野亙氏(NPO法人患者の権利オンブズマン副理事長)、藤末衛氏(全日本民医連副会長・神戸健康共和会理事長)、山口美智子氏(薬害肝炎全国原告団代表)の各氏から、この25年で何が変わり、何が変わらなかったのかについて、それぞれの経験と実践に基づく実感のこもった発言がありました。 ●医療基本法制定を求めるアピールを採択 この集会を終えるにあたり、集会参加者一同によって、「医療基本法制定を求めるアピール」が採択されました。 このアピールでは、日本における患者の権利運動の嚆矢である、1984年10月の患者の権利宣言全国起草委員会による「患者の権利宣言案」発表から25年間が経過する中で、インフォームド・コンセントの普及、カルテ開示の制度化、医療安全に対する取組の強化等の成果が得られたことを確認しました。 その上で、経済的理由で医療機関を受診できない患者の増加や、医師不足・医師偏在等によって、患者の権利の根本である「医療を受ける権利」の空洞化が危惧される現況を乗り越えるためには、「安全かつ質の高い医療を受ける権利」及び「患者の自己決定権」を柱とする患者の権利を国民に保障し、その権利の実現のために、国及び地方公共団体の責務を明らかにする法律を、日本の医療制度全ての基本法として制定すべきであり、参加者一同その実現に向けて努力することを宣言しました。 ●笑顔の「解散宣言」の早期実現を 集会には、李啓充氏(医師・作家・元ハーバード大学医学部教授)より、 「患者の権利宣言」から25年もの年月が経ったとのこと、慚愧に堪えません。 「患者の権利法をつくる会」が所期の目的を達成し、解散を宣言する日が、一日も早くやって来ることを祈念してやみません。 とのメッセージが寄せられました。 本年4月には、「ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会」が「患者の権利擁護を中心とする医療の基本法」の制定を厚労大臣に提言しました。本年6月には、安全社会実現会議が、「患者の自己決定権と最善の医療を受ける権利を明確に規定する基本法の制定を2年を目途に推進する」との最終報告書を提出しました。 こうした動きによって、患者の権利法制定の機運は高まりつつあります。 李氏からのメッセージのとおり、「権利法をつくる会」が笑顔で解散を宣言できる日を、私たちの手で、一日も早く実現しましょう。 |
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| (2009年12月 センターニュース261号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●制度創設なき今日という日を迎えて 現在からちょうど5年前の2004年9月30日、日本医学会加盟の主要19学会は、「診療行為に関連した患者死亡の届出について〜中立的専門機関の創設に向けて〜」という声明を発表しました。 この声明は、医師法21条の異状死届出制度に代わる制度を創設することへの決意を対外的に宣言するものであり、医療安全実現に向けた医療界の「公約」とも言えるものです。 不幸にして発生した医療事故が、そのまま患者・遺族にも知らされないまま埋もれてしまうことなく、中立的専門機関が事故発生を把握し、透明性の確保された調査が実施されることによって、医療安全の実現のための教訓が抽出される仕組みは、医療事故被害者の悲願です。 しかしながら、声明から丸5年が経過した今日という日を、制度の実現を見ないまま迎えることとなったのは、誠に残念と言わざるを得ません。 ●もう一度、「公約」の内容を振り返る 5年前、医療界は、どのような考え方に立脚して、どのような制度の創設を宣言したのでしょうか。あらためて声明原文に立ち返ると、次のとおりです。 1)制度創設を裏付ける理念 ○解剖所見による公正な検証の必要性 「医療の過程においては、予期しない患者死亡が発生し、死因が不明であるという場合が少なからず起こる。このような場合死体解剖が行なわれ、解剖所見が得られていることが求められ、事実経過や死因の科学的で公正な検証と分析に役立つと考えられる。」 ○遺族の疑問への対応の必要性 「診療行為に関連して患者死亡が発生した事例では、遺族が診断名や診療行為の適切性に疑念を抱く場合も考えられる。この際にも、死体解剖を含む医療評価が行われていることが、医療従事者と遺族が事実認識を共通にし、迅速かつ適切に対応していくために重要と考えられる。」 2)創設される制度の姿 ○中立的第三者機関であること 「届出制度を統括するのは、犯罪の取扱いを主たる業務とする警察・検察機関ではなく、第三者から構成される中立的専門機関」 ○診療経過の検証機能をもつこと 「諸々の分析方法を駆使し、診療経過の全般にわたり検証する機能を備えた機関であることが必要」 ○法的根拠による公共性と全国的運営の確保 「また、制度の公共性と全国的運営を確保するために、中立的専門機関は法的にも裏付けられ、その必要な機能の一部には医療関連の行政機関の関与が望ましい」 ●医療界は、原点に立ち返った決意を 19学会声明は次の文言で結ばれています。 「医療の安全と信頼の向上のためには、予期しない患者死亡が発生した場合や、診療行為に関連して患者死亡が発生したすべての場合について、中立的専門機関に届出を行なう制度を可及的速やかに確立すべきである。われわれは、管轄省庁、地方自治体の担当部局、学術団体、他の医療関連団体などと連携し、在るべき「医療関連死」届出制度と中立的専門機関の創設を速やかに実現するため結集して努力する決意である。」 医療界には、制度創設の障害となった様々な要因を粘り強く克服して、5年前の「公約」を実現するという新たな決意と努力を、心から期待したいと思います。 |
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| (2009年10月 センターニュース259号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●木村班が中間報告書を公表 本年3月、診療行為関連死調査人材育成班(研究代表者・木村哲東京逓信病院病院長)は、平成20年度の総括研究報告書を作成しました。同班では、平成17年度より日本内科学会が実施主体となって行われている「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を踏まえて、診療関連死の調査に必要となる各種マニュアル類の整備と、それらを適正に運用できる人材の育成や教育の手法確立をテーマとして、平成20年度から2年の予定で検討を実施しています。 同班には6つのグループが設置され、1)届け出等判断の標準化、2)事例受付対応マニュアル、3)解剖調査マニュアル、4)事例評価法・報告書作成マニュアル、5)調整看護師業務マニュアル、6)遺族等の追跡調査について、1年間検討が進められてきました。 今回の報告書は、中間とりまとめとなるものであり、本年6月21日には、東京において、同報告書を踏まえた中間報告会が公開講座として開催されました。 ●手術で死亡しても届出不要? 同報告書では、第1グループによって、届出範囲のフローチャート案が提案されています。そこでは「いわゆる合併症として、医学的・合理的に説明できるかどうか」という項目を設けた上で、合併症として説明ができる場合は届出不要とされています。そして、合併症の具体例が9つ例示されていますが、その中には、手術手技による直接死亡例(腸骨動脈閉塞に対する血管カテーテルによる拡張中の動脈穿孔、心筋梗塞に対するステント留置中の冠動脈穿孔、肺癌摘出時の腫瘍癒着部剥離部位からの大量出血等)も含まれています。 診療関連死の調査の目的は、診療経過の透明性を確保するとともに、同種の不幸な結果を減らすために原因を真摯に究明するというところにあるはずです。術中の血管損傷事例では、出血源となった血管の部位や、破綻部の性状等を調べることによって、出血に至ったメカニズムを解析し、そこから得られた情報を共有することで、同様の出血を回避するために有用な機器の開発や、より安全な手技手順の普及へと繋げていくことが望まれますが、例示された症例はすべて届出対象外となります。遺族の側から見ても、手術で直接死亡したにも関わらず、大事な家族の体に何が起きたのかを客観的に確認する機会を失いかねないという危惧が残ります。 ●客観基準の設定が必須 過去、「不幸な合併症でした」との説明に疑問に感じた遺族が調査を行った結果、病院側の注意義務違反が認められるに至ったケースは少なくありません。「合併症として説明が可能かどうか」という基準では、患者の側から見て客観性が確保されているとは言い難く、病院側の裁量的判断の余地が大きすぎるように思われます。少なくとも、手術手技による直接損傷によって術後まもなく患者が死亡したようなケースについては、合併症として説明が可能であったとしても、届出範囲内とする必要があるはずです。 三重大学医学部附属病院では、一定の客観基準に該当する事例(術後30日以内の死亡事例、侵襲を伴う処置の3日以内の死亡事例、入院後24時間以内の死亡事例、退院後14日以内の死亡事例等)については、院内での精査の対象としています。 こうした貴重な実践を参考としながら、「合併症」として説明が付くケースであっても、最低限、一定の客観的基準に該当する事例(例:予定手術後の意識回復なき死亡事例、術後○日以内の死亡事例等)については届出対象として精査する仕組みが望まれます。仮に対象外とするのであれば、一定の客観基準に該当する事例については、別途、その病院の責任において解剖を実施し、独自に精査して患者に結果を報告することが求められます。 同班には、今年度から、院内事故調査のあり方を検討するグループが新たに設置され、筆者もそのメンバーに加わりましたので、客観的な届出範囲のあり方や、院内事故調査と届出の役割分担等について、引き続き考えていきたいと思います。 |
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| (2009年8月 センターニュース257号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●制度加入の進展 本年3月25日、産科医療補償制度の第3回運営委員会が開催されました。 公表された配付資料によれば、全国3,293分娩機関のうち、3,267機関が加入(99.2%)済で、特に病院については加入率100%に達したとのことです(3月24日現在)。また、妊産婦情報の登録は、61万4,290件で、分娩済みを除く件数は41万6,843件とされています(前同)。 ●6部会体制で原因分析 同制度には、1)運営委員会、2)審査委員会、3)原因分析委員会、4)再発防止委員会、5)異議審査委員会、6)調整委員会を設置するとされています。このうち、原因分析委員会には、産科医3名、小児科医・助産師・弁護士各1名の合計6名による部会を、当面6つ設置するとの方針が示されており、本年9月ころの立ち上げが予定されています。 部会では、1回あたり3件程度の事案分析を予定しているとのことで、事例数が漸次増加した後の2012年9月期時点では、月平均67件の事案に対し、6部会をそれぞれ月4回程度開催して対応する計画が示されています。 ●求償調整の明確化は次回に持ち越し 上記の調整委員会については、有責事案の求償調整を判断する部門として、調整委員会が不定期に開催され、「原因分析の結果、重大な過失が明らかであると思料された事例について、補償金の調整(求償)を行うことについて審議を行う」とされています。 同会合議事録によれば、この表現では重大な過失でないものは調整されないと理解されてしまうため、重大な過失でなくとも調整が必要な部分があることを明確にすべきではないかと、委員から指摘されたようです。この点について、事務局からは、重過失ケースは調整委員会に諮って事前調整を行い、その後に訴訟等で過失が認定されたケースについては、事後的に連絡が入る仕組みになっているので、医賠責保険を使ったケースは、標準約款に基づく事務的な調整により、必ず求償対象となると説明されましたが、この点の明確化については、次回運営委員会において、更に説明がなされることとなりました。 ●仮想事例の検討を開始 本年5月19日には第4回の原因分析委員会が開催されました。ここでは仮想事例を用いた模擬部会を実施し、報告書のあり方を議論した模様です。 今回の仮想事例は、自宅で生理痛様の痛みを自覚した妊婦が、3時間後に医療機関に連絡し、外来受診後に胎盤早期剥離に対する迅速な対応を受けたものの、児に障害が残ったというものです。事前に公表された仮想事例の原因分析報告書では、この事例について、今後の産科医療の向上のために検討すべきではないとされていましたが、より早期の外来受診のために、妊娠後期や電話受信時の療養指導のあり方について検討が必要ではないかとの指摘を受け、報告書の記述の修正案が作成されたようです。 仮想事例では、医療機関に到着後の診療経過に特段の問題点がないと考えられたことから、当初の報告書において、改善すべき事項はないとされたと推測されます。しかしながら、本制度の目的が、脳性麻痺を回避するための改善点の分析にあることに鑑みれば、医療機関到着以前の経過も含めて、分娩経過全体をレトロスペクティブに検討し、脳性麻痺回避のための最善の方策を分析するという作業手法が、今後より浸透していくことが望まれます。その意味で、報告書の修正案が示されたことは、正しい方向性につながる動きとして評価できると思います。 |
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| (2009年6月 センターニュース255号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●「医賠責保険は破綻寸前」なのか? 近時の医療界では、「日本の医療過誤の賠償額は急速に高騰しており、医師賠償責任保険は破綻寸前である」とする趣旨の議論が見られるようです(上昌弘氏『絶望の中の希望〜現場からの医療改革レポート第24回』JMM2009年2月11日等)。そこで、今回は、医賠責保険の現況を、調べられる限りで考えてみたいと思います。 ●毎月1,000円で赤字は防止できた? 医賠責保険のうち、比較的情報をフォローしやすいものとして、日本医師会医師賠償責任保険制度があります。1973年に創設された同保険は、2003年末までの30年間で、総額791億円の保険料を損保会社に支払った一方、同時点までの既払保険金が842億円、同未払が88億円で、差し引きした累積赤字は139億円に達しており、2002年から上乗せ特約を導入し、2003年春には病院長等の保険料を5万5,000円から7万円に値上げしたと報じられています(2004年5月26日朝日新聞報道)。 この報道の推計では、損保運営の事務経費が加味されていません。保険料に占める平均的な損保の事務経費率を37.2%(2008年9月12日付社会保障審議会医療保険部会における疑義照会に対する厚労省の解説に基づく。なお、産科医療補償制度が前提とする事務経費率は17%)ですので、この数字を用いて推計すると、30年分の事務経費を含めた実質赤字幅は約394億円となります。これは30年で積み上がった数字ですので、2003年末の加入者数11万5,000人で頭割りにすると、毎年の平均赤字額は、加入者1人あたり年1万円強となります。30年間の加入者数の増減等を考慮する必要はありますが、月1,000円程度上乗せしていれば、赤字は生じなかった可能性が高いと言えそうです。少なくとも、過去の日医医賠責の運営にあたって、リスクの大きさに対応し、かつ、医師の負担能力とのバランスも維持された保険料を設定する余地がなかったとは、言えないように思います。 医賠責の累積赤字額を示して、医師の支払能力を凌駕する保険料が必要となる危機の到来を議論する際には、こうした数字を踏まえた観点からの検証が不可欠です。 ●医賠責の将来を考える上での視点 「医賠責崩壊」が論じられる際に参照される米国の保険料は、年4万ドル程度から年20万ドル超程度とされているようです。他方、日医医賠責保険の現行保険料は、上乗せ特約2万3,000円を加味しても、院長クラスで年9万3,000円です。日本の医療訴訟の件数は、過去10年程度でほぼ倍になっていますが、要因は不明であるものの、この数年は1,000件を切っており、むしろ減少傾向にあります。 今必要なのは、明日にも50倍〜200倍以上の保険料の支払を求められるかもしれないという、漠然としたおびえに立ちすくむことではなく、次のような論点を、1つ1つ客観的事実に即して冷静に検討する作業なのではないでしょうか。 1)有責事故の発生率と生じる被害の程度は、年間どの程度なのか。 2)かかる有責事故に対し、社会として公正と言える水準の賠償を行うには、総額いくら必要なのか。 3)これを医療界全体で分担することは不可能なのかどうか。病院保険、看護師保険等を含めた現行の保険料で足りているのか、足りていないのか。足りないならいくら足りないのか。 4)そもそも有責事故を(実態をおおい隠すのではなく、現実に)減らすことはできないのか。減らすためのコストはどの程度か。このコストを公費で捻出できないか。 5)有責事故を減らす努力をしても賠償金が不足するのであれば、公費を投入するための社会的合意を形成することは不可能なのか。 ●基礎情報は損保会社が蓄積済み この作業の基礎となる情報は、医師・医療機関を顧客とする損保会社が保有しているはずです。こうした客観資料に基づいた精緻な政策論が展開されることを、医療界に期待したいと思います。 |
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| (2009年4月 センターニュース253号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●事故調検討会でモデル事業のヒアリングを実施 昨年12月1日、診療行為に関連した死亡に係る死因究明等のあり方に関する検討会の第17回会合が、厚労省において開催されました。昨年10月に再開されてから、3回目となるこの会合では、2005年9月にスタートした診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業の現況について、モデル事業中央事務局長である山口徹委員から報告がなされた後、参考人3名(松本博志札幌地域代表、奥村明之進大阪地域臨床評価医、田浦和歌子東京地域調整看護師)からのヒアリングが実施されました。 ●モデル事業の現況 山口委員からは、モデル事業が全国10地域まで拡大し、これまでに医療系の38学会から2,595名の臨床医が事前登録を行い、75事例に対し679名が実際に事例評価に参加したことが報告されました。また、解剖体制についても、31施設が解剖協力施設として登録し、このうち20施設において、実際に解剖が実施されたとのことですので、モデル事業を開始したことによって、診療関連死を調査するためのシステム整備はそれなりに進展しつつあることがうかがわれます。なお、1件あたりのコストは、平均で94万円とのことでした。 ●予想を下回る受付件数 他方、モデル事業で受け付けた事例数は、平成20年11月17日現在で82事例に留まりました。これは予想をかなり下回る件数です。 地域別の事例数一覧表によれば、モデル事業事務局に何らかの連絡等が入りながら、正式の受付に至らなかった事例が150件あったことが指摘されています。うち、遺族の同意が得られなかったものは47例、司法解剖または行政解剖となったものは26例でした。問題は、当該医療機関からモデル事業実施の依頼がなかったため、正式な受付に至らなかったものが26例も含まれていることです。これらの医療機関が死因究明に対して協力する姿勢を示していれば、受付事例数が3割以上増えていたことになりますので、非常に残念です。また、解剖の体制が取れなかったために正式な受付に至らなかった例も11件存在します。 こうした事例が、正式な受付に至らないままとならないよう、運営上の工夫を進める必要があります。 ●事例抽出力に大きな地域差 また、地域別の事例数一覧表の数字を踏まえて、以下の表のとおり、各地域について、(受付事例数+受付に至らなかった事例数)÷(窓口開設月数×域内人口)という数値を概算し、開設間もない宮城と岡山を除いて比較すると、数値が最小となった愛知と、最大の札幌との間には、約27倍もの開きがあることがわかります。 上記参考人らからは、モデル事業の現場では、遺族から感謝されることも多いということが報告されています。そうした有意義な事業を、より充実させていくためにも、事例抽出能力の高い地域でモデル事業窓口の周知・活用が進んでいる理由を探るとともに、事例抽出能力の低い地域に関しては、早急に、窓口が活用されない理由を検証することが必要です。 |
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| (2009年2月 センターニュース251号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●検討会が半年ぶりに再開 厚労省の設置する「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等のあり方に関する検討会」は第13回の会合が本年3月12日に開催された後、長らく中断していましたが、10月9日に半年ぶりに再開されました。 10月9日の第14回会合では、第三次試案と大綱案に対するパブコメの集約結果と、これらに対する「現時点における厚生労働省の考え」とのペーパーが配布されました。このペーパーでは、寄せられたパブコメに対する厚労省としての見解が示されています。 ●院内事故調査委員会と連携 このペーパーの9項では、大綱案において必ずしも明確でなかった院内事故調査委員会の位置づけについて触れられています。これによれば、特定機能病院等については、医療法上設置が義務づけられている「安全管理委員会」の業務として、地方委員会に届け出た事例に関する調査を実施する仕組みとし、中小病院や診療所については、自施設での調査に伴う困難に対応するための支援体制を検討するとのことです。 実効的な原因究明や再発防止のためには、国の設置する事故調査委員会に丸投げすることなく、各医療機関が自ら原因を考える営みが重要となります。厚労省が、院内事故調査との適切な連携の必要性をあらためて示した点は、評価に値すると考えます。 しかしながら、適切な連携の具体的な姿については、まだ明らかにされているとは言えません。本年10月に富山で開催された人権擁護大会において、日弁連が提案した「院内事故調査ガイドライン」等を参考としつつ、地方委員会の調査チームと院内事故調査委員会の関わりのあり方について、より具体的な議論を進めていく必要があります。 ●医療関係者以外も調査チームに また10項では、地方委員会の調査チームは、医療関係者のみで構成すべきとの意見に対する厚労省の見解が示されています。その内容は、透明性・中立性・公正性の担保のためには、医療の専門家のみでなく、法律家や医療を受ける立場にある者等の参加も必要であり、医療の専門家以外の者も委員として任命することが必要との立場を、あらためて明確にするものとなっています。 モデル事業等におけるこれまでの事故調査の実践を振り返っても、患者・遺族の視点から意見を述べることができるメンバーが調査チームに加わる事は、透明性・中立性・公正性の担保のために極めて重要ですので、今後も、こうした方針が堅持されることが必要です。 ●「公約」実現に向けて結集を 引き続いて開催された、10月31日と11月10日の会合では、合計6名の参考人からのヒアリングが実施されました。 患者・被害者の視点に関わる関係者としては、医療過誤原告の会の宮脇正和会長が参考人として出席し、第三次試案が医療側に大幅に配慮した内容となったことから、偏向なき公正な事故原因究明がなされるかはなはだ危惧されるが、これ以上懸案の先送りは許されるものではないとの意見書を提出して、医療版事故調の早期設立を要請しました。 他方、医療界からの参考人の中には、医療系の検討会メンバーとの間ですら、いささか感情的ともおもわれるやりとりを繰り広げる方もみられたようです。 平成16年9月、日本医学会加盟の主要19学会が発表した声明『診療行為に関連した患者死亡の届出について〜中立的専門機関の創設に向けて〜』は、「われわれは、管轄省庁、地方自治体の担当部局、学術団体、他の医療関連団体などと連携し、在るべき「医療関連死」届出制度と中立的専門機関の創設を速やかに実現するため結集して努力する決意である。」と結ばれています。医療版事故調の創設は、医療界の公約とも言える政策課題です。今、社会からは、医療界の側から、公約実現に向けて、総力を結集した自発性ある取組みがなされるのかどうかが、問われています。 創設までのプロセスにおいて、プロフェッションの名に相応しい医療界の姿を見られることを、切望して止みません。 |
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| (2008年12月 センターニュース249号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●80施設が「報告ゼロ」 本年8月、日本医療機能評価機構は、医療事故情報収集等事業平成19年年報を公表し、医療法施行規則11条の2で事故報告義務を負う273施設が、平成19年の1年間に報告した事故件数を明らかにしました。同年報によれば、年間50件以上を報告する施設がある中で、80施設が「報告ゼロ」であったことがわかります。 ちなみに、平成18年は273例中78施設が「報告ゼロ」でした。また、同事業第9回報告書では、平成16年10月から平成19年3月までの約2年半の間に、53施設が「報告ゼロ」だったと指摘されています。障害残存の可能性の低いケースや、再発防止に資するケースも報告対象とされています。2年以上にわたって、教訓となるケースを1件も見いだせない施設が存在することや、500床を超えるような大規模施設でも「報告ゼロ」が少なからず見受けられること(グラフ1)からは、医療安全文化の定着は、未だ「まだら模様」であることがうかがわれます。 ●厚労省が初の「警告」 厚労省は、本年9月1日、「医療事故情報収集等事業における報告すべき事案等の周知について」(医政総発0901001号)との通知を発し、報告義務対象病院に対し、適切な報告実施を促すに至りました。厚労省は「報告ゼロ」施設を特定する情報を有していないので、これ以上の指導を加えることは不可能です。もし、今後も報告義務が守られない傾向が続くなら、「正直者が馬鹿を見る」ことのないよう、報告懈怠に対して明確なペナルティを課すことが必要となるのかもしれません。 医療安全調査委員会に関する議論では、刑事免責を求める意見も見受けられます。しかし、義務的報告すら不十分という実情に照らして、医療界の自律性・自浄努力に疑問が残る中で、交通事故や労災等と区別して、医療刑事免責に社会の理解を得ることは、非常に難しいだろうと思います。平成20年年報には、医療界の本気を示す数字が掲載されることを、願わずにはいられません。 ●鋳型のサイズで実態が決まる? 事故の発生件数は、病院の規模(病床数)にほぼ比例するのではないかと想像されるところです。しかし、同年報の数字から病床規模毎の平均報告件数を割り出すと、病床数と報告件数との相関関係が見られるのは500床あたりまでで、500床から1,000床の間では相関関係は乏しくなるようです(グラフ2)。 規模が大きいほど安全対策も進んでいる可能性はありますが、医療安全管理のための人員配置が、病床数に対応した人数に達していないために、事故の全容を把握できなくなっているのではないか?との疑問も残ります。 各病院の医療安全管理部門の人員数と報告件数の相関関係を調査することが望まれますが、医療安全調査委員会を小さな規模でスタートした場合、そのキャパシティに応じた件数しか事故を把握できない結果となって、全貌を把握できないまま小さなサイズで固定されてしまうのではないか、との危惧を感じました。 調査委員会を「小さく産んで大きく育てる」つもりが、「鋳型のサイズで実態が決まってしまった」ということにならないよう、初期設計での手当はもちろんのこと、その後の予算・人員拡大のロードマップを、あらかじめ具体化しておく必要があるのではないでしょうか。 ※グラフ1、2はPDFをご参照ください |
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| (2008年10月 センターニュース247号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●最高裁が速報値を公表 最高裁は、平成19年の医事関係訴訟統計の速報値を公表しました。裁判所HPの「公表資料」→「医事関係訴訟委員会について」とたどると、一覧表が掲載されています。 ●提訴件数は微増 年間の新規提訴件数(新受件数)は平成16年の1,110件をピークに、2年連続で減少していましたので、減少傾向がどこまで続くか注目されていましたが、平成18年の913件に対し、平成19年は944件と微増に転じました(図1)。 ●平均審理期間はついに2年未満に 平均審理期間は過去10年一貫して短縮傾向にありましたが、平成19年は23.6ヶ月となり、ついに2年未満となりました。平成10年には35.1ヶ月でしたので、10年で3分の2まで短縮されたことになります(図2)。 ●和解率は2年連続で5割超に 平成19年の終局区分別の比率は、判決が35.5%、和解が52.2%でした。平成18年に続いて、和解で終了した事案が半数を超えたことになります。判決件数に対する和解件数の比率は、過去10年の平均で121%ですが、平成18年は151%、平成19年も147%となっていますので、終局区分にしめる和解の比率の高まりが顕著となっているようです(図3:件数ベース)。 ●判決認容率は低迷するも実質認容率は6割台で横ばい 判決で終局した事件における請求認容率(一部認容も含む)は37.8%と、相変わらず低迷しています。ただ、認容判決件数と和解件数を合算して終局事件総数に占める割合を計算すると、65.6%となります。この値は過去10年通じてほぼ60%台で横ばいとなっています。このことからは、かつては判決を仰ぐところまで進まざるを得なかったケースが、近年は和解によって解決できるようになった可能性が示唆されます(図4)。 ※図1〜4はPDFをご参照ください |
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| (2008年8月 センターニュース245号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●第三次試案に対する意見を提出 本年5月8日、当センターは、厚労省に対し、「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案−第三次試案−」に対するパブリックコメントを提出しました。 ●医療界からの反発に対して 第三次試案は、第二次試案に対する医療界の反発に大きく配慮した内容となっています。そこで、今回のパブコメでは「『医療安全調査委員会』は、単に医療事故に関する刑事責任や行政責任を免責するための道具となってはならず、その創設にあたっては、多くの苦しみや悲しみを背負ってきた被害者・遺族、そして患者となる市民が納得し、信頼を寄せることができるよう、公正性・透明性・実効性が確保された制度として設計されることが不可欠である」ことを指摘しました。 また、第三次試案では、診療行為に危険性や不確実性が伴うことが強調されていますので、今回のパブコメでは、医療界にピアレビューが根付いていないことを指摘しつつ、「一般論として『医療に不確実性が伴う』ことは事実であるが、そのことによって、1つ1つの事故について丁寧に原因を究明していく作業の重要性には、何ら変化を生じるものではない。医療事故の死亡原因を究明する制度は、こうした視点に基づいて設計されることが不可欠である」と述べました。 ●届出範囲の狭さに医療界からも異論 2月号の本稿でも指摘しましたが、届出範囲については、第三次試案でも不十分な定義のままでした。そこで今回のパブコメでは「第三次試案では、届出範囲の定義に恣意的な解釈の余地が残るため、制度の発足にあたり、この点の修正は不可欠である。また、第三次試案が想定する医療事故は、死亡事故の中の一部の類型(医原病型事故・作為型事故)に偏重しており、画像上の異常陰影の見落とし・検査の懈怠・診断の遅延等といった医師らの不作為を原因とする死亡事故については、届出がなされない可能性がある」ことを指摘しました。 第三次試案の定める届出範囲については、財団法人生存科学研究所(創設者:故武見太郎元日本医師会会長)の医療政策研究会が4月23日に発表した意見においても、「届出が医師の責任追及につながるとする短絡的な反対論に大きく影響を受け、委員会の守備範囲が実質的に狭められたことは、医療の安全の向上という設立目的そのものを実質的に損なうものとして問題視せざるを得ません」「判断に迷うグレー部分をできるだけ幅広く届け出て初めて、医療安全を目指す委員会は警察に代わる診療関連死の届出先として国民の認知を受けるであろう」との、厳しい批判が加えられています。 制度発足にあたっては、幅広く届出がなされる制度設計を求め続けていく必要があります。 ●調査チームには医療界以外のメンバーを 第三次試案では、事故の調査チームの構成について、診療関連死因調査モデル事業における構成を参考とし、医療関係者以外に法律家等を加える方針を打ち出しています。今回の当センターパブコメでも、調査チームには、患者側代理人業務に精通する弁護士の参加が不可欠であることを指摘しました。 一部の学会からは、調査チームを医療関係者のみで構成すべきという意見が出ているようです。これは、医療関係者以外の専門家をメンバーに加えて、調査結果の透明性・公正性・中立性を確保してきた、モデル事業の試みに逆行する見解と言えます。 調査チームの構成が不透明なものとならないよう、今後の制度具体化作業を見守りたいと思います。 |
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| (2008年6月 センターニュース243号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●高裁管内別統計値 そろそろ平成19年度の医事関係訴訟統計が明らかにされる時期が近づいてきましたが、平成18年度の同統計の高裁管内別数値が明らかにされましたので、以下にご紹介します(数字はいずれも概数)。 ●新受件数 各高裁管内別の平成18年度の新受件数は、図1のとおりです。 この数字から算出した高裁管内別の新受事件比率は図2のとおりです。 このように、東京高裁管内が全体の4割超、大阪高裁管内が2割超となっており、両高裁で全国の3分の2を占めていることがわかります。 ●既済事件数と鑑定実施率 図3は、各高裁管内の平成18年度の既済事件数と既済事件のうち鑑定を実施したものの実数を示しています。この図からは、既済事件数・鑑定実施事件数とも、東京、大阪の順で多いことがわかります。 図3の数字から、高裁管内別の鑑定実施率(既済事件総数の中に鑑定実施事件が占める割合)を計算すると、図4のとおりとなります。 この図からは、広島・高松両高裁管内における鑑定実施率が顕著に高くなっていることがわかります。他の地域における鑑定実施率は、10%台で横並びとなっており、それほどばらつきはありませんので、中国四国地方の鑑定実施率の高さには、有意差があるように思われます。 ●訴訟進行に地域差? いわゆる集中部型の審理方式の下では、争点整理を裁判所が積極的に進める結果として、鑑定の必要な事件と不要な事件の仕分けが進み、鑑定実施率が下がる傾向にあるようです。鑑定実施率の地域差は、裁判所が医療過誤事件に臨む際の積極性や意欲の度合いを反映したものである可能性も考えられます。 これまで高裁管内別の統計値に接することはほとんどありませんでしたので、今回の数字は、地域ごとの医療過誤訴訟の姿を知る上で、非常に貴重な資料と言えます。今のところ単年度の資料しか得られていませんが、今後、こうした傾向が永続的なものであるのかどうか、分析を続けていきたいと思います。 ※図1〜4はPDFをご参照ください |
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| (2008年4月 センターニュース241号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●自民党が政府に提言 昨年12月21日、自由民主党社会保障制度調査会の医療紛争処理のあり方検討会は、「診療行為に係る死因究明制度等について」という見解を発表しました。これは、診療行為に関連する死亡の死因究明制度について、昨年10月に公表された厚労省第二次試案と、これに対するパブリックコメントの結果を踏まえて、政府に対する留意事項を示したものです。 ●自民案の概要 自民案は、まず、医療安全確保が日本の医療政策上の重要課題であり、とりわけ死亡事故の原因の究明と再発防止は「国民の切なる願い」であるとした上で、国の組織として医療安全調査会(仮称)を創設することを提案しています。 この調査会には、中央委員会と地方ブロック単位の委員会及び調査チームが設置され、医療専門家を中心に、法律関係者、患者遺族の立場を代表する者がメンバーとなることが予定されています(ただし個別事例の関係者は含まない)。 そして、調査チームが解剖、関係者聴取、臨床評価等を行って報告書原案を作成し、これを地方委員会が報告書として決定し、遺族に対する説明が行われます。中央委員会は、基本的方針を定めるとともに、全国の医療機関に対して再発防止策を提言し、関係大臣への勧告・建議を行う役割を担うとされています。 また、自民案は、院内事故調査委員会の体制整備の具体的方策や、同調査会の組織定員や予算の確保も政府に要請しています。 自民案では、厚労省等からの独立性の確保についての指摘がありませんので、内閣府に独立行政委員会として設置するべきであることを明確化する必要があります。それ以外の組織のあり方や運営の流れについては、医療事故情報センターの見解におおむね合致する内容であり、前向きに評価することができると思います。 ●届出範囲の規定がカギ 自民案では、死亡事故発生時の委員会への届出を制度化するとともに、遺族からの調査依頼にも対応すべきであるとの方針が提言されており、届出が必要な事故の基準を明確化することが要請されています。 昨年末に開催された厚労省の検討会でも、届出範囲の検討がなされていますが、ここでは、次のような案が示されています(下線は筆者)。 以下の1)又は2)のいずれかに該当すると、医療機関において判断した場合に、委員会への届出を要する。 1)誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った医療に起因して、患者が死亡した事案 2)誤った医療を行ったことは明らかではないが、行った医療に起因して、患者が死亡した事案(行った医療に起因すると疑われるものを含み、死亡を予期しなかったものに限る) 我が国では、すでに医療事故情報収集等事業が実施されており、一定の医療機関には事故の届出が法的に義務づけられています(医療法施行規則9条の23)。ここでは、上記1)2)とほぼ同趣旨の定義に該当する医療事故が「発生した場合には」届出を要するとされていますので、診療関連死の届出範囲について、厚労省提示の上記の案のような表現を用いた場合には、医療事故情報収集等事業における届出範囲との異同や整合性について疑義が生じる可能性があります。 また、1)と2)のいずれについても届出を要するのであれば、「誤った医療を行ったことが明らか」かどうかにあえて触れる必要はなく、端的に 行った医療に起因して患者が死亡した事案(行った医療に起因すると疑われるものを含み、死亡を予期しなかったものに限る) と定義すれば足りるはずです。 幅広く事案を集積して再発防止を実現するためにも、適切な形で届出範囲が規定されることが望まれます。 |
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| (2008年2月 センターニュース239号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●第二次試案に対するパブコメを提出 2007年11月2日、医療事故情報センターは、厚労省による診療関連死の死因究明に関する第二次試案に対し、パブリックコメントを提出しました。 ●死因究明の位置付け 第二次試案は、医療事故の再発防止、医療の質・安全性の向上を診療関連死の死因究明の目的として位置付けており、こうした点は、当センターがこれまで表明してきた認識と合致しています。そこで今回のパブリックコメントでは、かかる位置付けで診療関連死の死因究明を進めることへの賛意を示した上で、こうした目的にふさわしい組織作りのため、行政が一層尽力することを求めました。 ●組織のあり方〜内閣府下の独立行政委員会 他方、第二次試案では、診療関連死の死因究明を行う組織を「医療事故調査委員会」と仮称した上で、これを厚労省内の行政機関として設置することが提案されています。 しかしながら、診療関連死の死因究明を通じた医療安全の実現は、国民全体の願いであり、今回の制度は国家的事業として位置付けられる必要があります。また、死因究明組織が調査の結果を踏まえて医療安全を実現するためには、厚労省のみならず、文科省(医療従事者養成)、総務省・消防庁(救急搬送)、経産省(医療機器規格)、財務省(安全対策財源)等にまたがる広汎な行政領域について、独立した立場から勧告・建議を行うことが求められます。 そこで当センターは、今回のパブコメで、調査組織の名称を「医療安全委員会」とした上で、行政全体を統括・調整する立場にある内閣府の下に、独立行政委員会として設置すべきことを提言しました。 なお食品安全分野については、内閣府の下の独立行政委員会として食品安全委員会が設置され、厚労省・農水省等の関係省庁から独立した立場が確保されています。食品安全と同様に国民的関心事である医療安全についても、同じ位置付けによる組織の設置を実現すべきです。 ●診療関連死の届出について 診療関連死の死因究明を行うには、まず、医療安全委員会が診療関連死をすべて把握することが不可欠です。そこで、当センターは、診療関連死の医療安全委員会への届出を医療機関に法的に義務づけるべきであり、届出懈怠には何らかのペナルティを科すことを法的に明確化しないかぎり、診療関連死を医師法21条の異状死届出義務から除外してはならないことを提言しました。 ●院内事故調査との関係 第二次試案では、診療関連死の死因究明における院内事故調査の重要性が指摘されていますが、その記述はわずか2行に留まっており、具体的位置付けが明確にされていません。 他人が検討したお仕着せの対策に従うだけでは、真の医療安全の実現は期待できません。一定規模以上の医療機関は、死因究明や再発防止策の立案をなしうる力を、自ら備えることが不可欠です。 そこで当センターは、医療安全委員会による調査プロセスの中に、院内事故調査の実施が不可欠であることを法的に明確化し、院内事故調査のクオリティを確保するために、その組織・調査手法等について法律やガイドラインで規定すべきであることを提言しました。なお、一定規模以下の医療機関の場合には、学会等が設置する院外事故調査委員会を活用すべきであることについても触れました。 ●制度の全体像 診療関連死の死因究明組織の議論は、いよいよ大詰めとなってきました。今回のパブコメでは、当センターが考える制度の全体像を、2007年10月26日に厚労省検討会で配付された加藤良夫委員の私案(前頁参照)のとおりに捉えることが適切であることを指摘しました。 こうしたグランドデザインに沿った制度が実現できるよう、当センターは引き続き行動を続けていきます。 |
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| (2007年11月 センターニュース237号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●昨年に続いて2度目の年報 本年7月、日本医療機能評価機構の医療事故防止センターは「医療事故情報等収集事業平成18年年報」を公表しました。これは平成17年に続いて2度目の年報となります。ここには医療法で事故報告義務の対象とされた医療機関と、任意参加医療機関双方の数字が出ていますが、以下では、施設数や病床数等に年次変動が少ない報告義務対象医療機関の数字を追ってみたいと思います。 ●事故数は漸増、死亡事故は8.5件に1件? 平成18年末の報告義務対象医療機関は273施設、病床総数は14万7,836床(平成17年末は272施設、14万7,627床)です。ここから報告された平成18年1年間の事故総数は1,296件、うち死亡事故が152件、障害残存の可能性の高い事故が201件でした。平成17年はそれぞれ1,114件、143件、159件でしたので、いずれの数字も漸増傾向にあると言えます。この数字からは、年間114床あたり1件の医療事故、736床あたり1件の後遺障害事故、972床あたり1件の死亡事故が起きているということになります。日本の病床数は163万1,473床(平成17年10月1日現在)ですので、非常にラフな推計ですが、単純にあてはめると、全国で年間1,600件を超える死亡事故が生じている可能性が示唆されます。また、今回の数字からは、報告された医療事故のうち、8.5件あたりに1件が死亡事故だったということになります。 ●水面下に潜む暗数〜500床以上の40施設が報告ゼロ さて、以上の数字は実態を適切に反映したものとなっているのでしょうか。 今回の年報では、病床規模別の報告医療機関数が明らかにされていますので、年間報告がゼロ件の施設数を割り出すことが可能です。 表に示したとおり、報告義務対象医療機関のうち、500床規模以上の医療機関は130施設存在しますが、うち21施設は年間報告ゼロとなっています。年間に114床あたり1件の事故が報告されているという全体の事故頻度からすれば、1,000床の病院であれば年間8−9件程度の報告対象事故が発生していることになります。500床を超えるような大規模医療機関において、1年間に報告義務対象となる事故の発生がゼロというのは、いかにも不自然と言わざるを得ません。 ●法的報告義務履行の徹底を 以上からは、少なくとも一部の医療機関において医療法上の義務である事故報告を懈怠している可能性が濃厚にうたがわれます。仮にそれが特定機能病院であれば、承認取消の要件にも該当します。厚労省は、施設規模に照らして極端に報告の少ない医療機関に対しては、院内事故報告体制の不備の有無を早急に調査し、適正な事故報告の実施を強く指導すべきです。 |
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| (2007年9月 センターニュース234号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●補正予算で制度調査がスタート 国は、平成18年度補正予算において「産科無過失補償制度支援事業」として制度調査費用を予算化しました。これにより、日本医療機能評価機構内に産科医療補償制度運営組織準備室が設置され、運営組織準備委員会(委員長:近藤純五郎弁護士・元厚労省事務次官)が会合を重ねています。 ●準備委員会と調査専門委員会が作業を開始 本年2月23日の初回会合では、資料・議事録を公表することや、以後の会合を公開することが確認されました。また、日医の審査への関与と利益相反の問題(過失事案での求償実施と医賠責の関係)や、補償制度と行政処分(特にリピーター再教育)とのリンクのあり方、患者・家族に対する説明責任等についても、今後検討を加えていくこととなりました。第2回会合(4月11日)では、患者家族・産科医・弁護士らからのヒアリングが実施され、第3回会合(5月16日)では、小児神経の専門家が参考人として脳性麻痺に関する基礎知識を解説しました。 準備委員会には調査専門委員会が設けられており、8月ころまでには、過去に国内3箇所で実施された脳性麻痺児の調査結果に基づいて、基礎調査結果を準備委員会に報告する予定となっており、準備委員会では、この基礎データを踏まえて更に制度設計の議論を進め、平成19年度中にも意見を一本化する見通しとなっています。 ●再発防止の重要性は共通認識に 医療事故情報センターでは、昨年12月に公表の意見書において、訴訟回避を主目的として制度設計すべきでないことを指摘しましたが、これまでの議論を見る限り、補償制度による脳性麻痺児の救済と再発防止の重要性については、準備委員の間でも共通認識となっているようです。また、調査専門委員からも、「産科医不足と訴訟の問題をきっかけとして議論がはじまったとしても、基本は脳性麻痺児とその家族の救済である」とする意見が出されていますので、これまでのところは、あるべき制度趣旨に沿った議論が進んでいると思います。 しかしながら、第1回会合では、制度設計にあたって法改正は予定しないとの方向性も示されています。過去、医賠責保険が再発防止のための役割を果たしてこなかったという歴史を振り返った場合、単に民間保険商品を開発するだけで、実りある再発防止システムを構築できるのかどうか、大きな疑問が残ります。今後は、法的裏付けの整備も視野に入れた議論が望まれます。 ●体重・週数基準に合理性なし〜幅広い対象への補償を 昨年公表された日医原案では「体重2200g以上、週数34週以上」が補償基準とされていましたが、準備委員会では、この点についての疑義が相次ぎました。その結果、日医原案の基準は財源見通しとの関係で提案されたにすぎず、医学的合理性は認められないことが明確となりました。また、調査専門委員の間からも「同じ状態の子が平等に救われる制度であってほしい」との要望が出ています。 当初日医・自民党の示した枠組みの理念があいまいだったこともあり、補償対象の検討については、今後相当に難航することが予想されます。 準備委員会では、この補償制度が、何よりも患者・家族のためのものであることを明確に位置付け直した上で、可能な限り幅広く補償する仕組みの実現に向けた議論を進めるべきです。 |
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| (2007年7月 センターニュース232号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●日産婦学会が産科医療提供体制の将来像を提示 4月12日、日本産科婦人科学会産婦人科医療提供体制検討委員会は、「わが国の産婦人科医療の将来像とそれを達成するための具体策の提言」と題する最終報告書を公表しました。 ●産科医療圏内で地域分娩施設群を構成 この報告書は、産婦人科医の不足に対しては、産科医療のスタッフ配置状況を常時評価する体制を整備して、スタッフ不足に関する情報を地域に公開するとともに、労働条件を改善し医療資源の再配分による効率的運用を図ることで対応していくとの考え方に基づき、次のような具体像を提示しています。 1)人口30万〜100万人、出生数3,000人〜1万人を目安として「産科医療圏」を設定する。 2)分娩施設(産科病院、診療所、助産所等)は「地域分娩施設群」を形成し、相互に連携して、群内で正期産の緊急帝王切開(30分以内を目指す)・緊急手術に常時対応する。全ての分娩施設は緊急時の体制に関する情報を公開する。 3)産科医療圏には24時間体制で緊急対応が可能な「地域産婦人科センター」(産科医10名以上を目標)を置く。同センターは臨床研修・研究の中心施設としての役割をも果たす。 4)大学病院や総合周産期母子医療センター等は、産婦人科医療の「中核病院」を構成する。中核病院の役割を明確化し、情報公開と機能評価を行う。総合周産期母子医療センターは、都道府県内の各産科医療圏の連携の中心に位置付ける(同報告書p14イメージ図参照)。 ●医療紛争解決システムの提案 また、この報告書は「現行の制度では、不幸にも医療事故の当事者となった場合、患者側には事実関係を明らかにし、補償ないし救済を受ける権利を行使するためには、医療機関側に対して法的手段に訴える以外に方法はない」「医療事故の中には責任が問われなければならない事例もあるが、その多くは、専門家による調査によらなければ、当事者にとってすら事実関係が明確でない複雑な経過を含んでいる」との認識を示しつつ、医療事故関連の紛争は、 (ア)ADR機関による患者・医療側双方の感情的軋轢の解消 (イ)原因究明機関による事実関係と責任の所在の明確化 (ウ)無過失救済制度による患者救済 (エ)必要に応じた刑事処分、民事訴訟、行政処分 という順序で解決が進められるべきである、と提言しています。 ●同一の地平で議論し合う素地に? この報告書は、看護師内診の容認を求める内容となっていますので、患者の側から見て見解が相違しうる点も含まれています(助産師の充足の必要性を明示した点は評価できますが、過渡期において看護師内診を容認することは、助産師の充足を遅らせるおそれがあります。その点にどう配慮するのか、具体策は明示されていません。また、看護師内診の安全性確保の方法も、具体的には提案されていません)。 ただ、同検討会が、個々の産科医にとっての負担の大きい勤務形態を「診療科の特性として当然視して改善の努力を怠り、各施設における少人数での勤務状態を放置してきたという点で、大学医局等、産婦人科医の配置に関与してきたものにも責任の一端があると考えなければならない」との認識を示した点や、産科医療の実情に対する患者側の理解を求める前提として、分娩施設の情報開示を重視する姿勢を示した点からは、産科医療のあり方を同一の地平で議論し合える素地が、徐々に形成され始めたようにも感じています。 今後、患者側から産科医療に対するさらなる提案をするにあたっても、この報告書に対する十分な検討・評価が不可欠だと思います。関心をお持ちの方は是非ご一読下さい。 |
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| (2007年5月 センターニュース230号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●緊急シンポに多数の来場者 2月12日午後、東京・市ヶ谷において「産科医療における無過失補償制度を考える緊急シンポジウム」が開催されました。陣痛促進剤による被害を考える会(代表・出元明美氏)が主催したこのシンポには、医療事故情報センターと医療問題弁護団(代表・鈴木利廣弁護士)が共催参加しました。準備期間は約3週間という緊急企画でしたが、100人近い参加者が集まりました。多数のメディア関係者やジャーナリスト、医療関係者も来場しており、この問題に対する社会の関心の高さをあらためて感じました。 シンポ第1部では、私、松井菜採弁護士(医療問題弁護団産科部会幹事)、打出喜義医師(金沢大学病院産婦人科)、出元氏の順で、無過失補償制度に関する議論の経過や、日医・自民党の構想の内容とその問題点等について発言し、論点整理を行いました。 休憩をはさんで行われた第2部では、勝村久司氏(陣痛促進剤による被害を考える会・中医協委員)の司会の下で、パネルディスカッションと会場質疑が行われました。 ●来場した家族からの切実な声 今回のシンポの最大の成果は、第2部の冒頭で、脳性麻痺児を持つ4家族の生の声を、会場発言として紹介できたことでした。 最初に発言したご家族からは、勝訴的な和解には至ったものの、その後も年の半分以上は入院が必要で、介護施設等の選択肢も乏しく困っているという現状説明がありました。 次に発言した女性は、自身の分娩において、通常用いられるはずのない薬剤で陣痛誘発が行われ、仮死状態で生まれた後に児の転送が遅れた等の問題点があったことを述べ、それなりの理由があるからこそ提訴に至っているという実情をわかってほしいと訴えました(この方の夫は現役の医師とのこと)。 3番目に発言した方からは、転送された先での児の診断結果も判明していないような時点で、分娩を担当した医師から、今の医学では判断できない、訴訟では負けたことがない等々と言われた経験が紹介されました。 最後に発言した方は助産師でもあるとのことでしたが、自分の疑問に対して答えてくれなかったために裁判に至ったことや、勝訴的和解に至ったが、気管切開している児を引き受けてくれる施設が乏しいために今なお苦労していることを、淡々と述べられました。 ●被害者の声を聞くことの大切さ このような切実な発言の数々から、事実調査や再発防止の重要性、介護環境整備の必要性を感じました。これらを抜きにして、医療事故被害者の納得する無過失補償制度を構築することは不可能です。無過失補償制度を議論するならば、まず何よりも患者・家族の声に十分に耳を傾け、現にどのような診療行為の結果として脳性麻痺が生じているのかを、過去の事例(その情報は損保会社が十二分に集積しているはずです)に即して分析することが必須です。 このような検討がないまま創設される制度に、賛意を示すことはできません。 |
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| (2007年3月 センターニュース228号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●邦訳が完成 本年11月、東京大学医療政策人材養成講座の有志が、ハーバード大学関連病院16施設が使用する、医療事故時の対応についての合意文書の邦訳を発表しました。「医療事故:真実説明・謝罪マニュアル〜本当のことを話して、謝りましょう」との邦題が付されたこのマニュアルは、以下のサイトで全文が紹介されています。 ■真実説明・謝罪普及プロジェクト http://www.stop-medical-accident.net/ ●マニュアルの構成 内容は3部構成となっており、第1部では事故が起きた際の患者とのコミュニケーションにおいて配慮すべき点が非常に実践的に解説されています。第2部では事故の当事者となった医療従事者への支援の方法と事前の教育に関する点が述べられています。第3部では医療機関が医療事故を管理する上で必要となる理念と初期対応、さらには事故調査の手法等についてまとめられています。 ●全院的コンセンサスの大切さ ここで指摘されている点は、ある意味、当たり前のことばかりとも言えます。しかし、医療事故の相談を受けていると、事後説明が全くなされていなかったり、当初の説明内容が医学的に不合理であることが後日判明するようなケースに遭遇することがあります。また、大切な説明を立ち話で伝える、代理人間で話し合っている最中に医事課から直接遺族に対して医療費の支払が督促される等の不適切な対応を見聞きすることもあります。当たり前のことを1つ1つきちんと実施している医療機関は、まだまだそれほど多くないというのが実感です。 このマニュアルの原題「A Consensus Statement of the Harvard Hospitals」からは、事故に適切に対処するためには、単にマニュアルが存在したり、リスクマネージャーが事故対応の技術を熟知しているだけではなく、病院全体としてのコンセンサスを形成している必要があることを強く感じました。 ●あるべき対応を引き出すための資料として 病院がなすべきことと、事故に遭遇した患者の側が求めることとは、表裏一体の関係にあります。このマニュアルは、患者の側においても、事故後に病院から適切な扱いを得られているのかどうか、次に病院に何を求めればよいのか等を考える上でのわかりやすい指針として利用が可能です。マニュアルには携帯・掲示用のエッセンス版(全2ページ)が用意されており、要点が簡潔にまとめられていますので、エッセンス版を見るだけでも、本来あるべき対応がどのようなものかをイメージできると思います。 ●日本での定着を 今回の邦訳を読んで、「本当のことを話して謝る」ことが世界のスタンダードであることをあらためて感じました。日本においても、この邦訳を手がかりとして、同様のコンセンサスの形成が進むことを期待したいと思います。 |
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| (2007年1月 センターニュース226号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●日医による無過失補償制度原案 本年8月、日本医師会「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」の制度化に関するプロジェクト委員会(山口光哉委員長)は、制度化原案をまとめました。概要は以下のとおりです。 ●制度の概要 *補償の要件 ・生下時2,200g以上または在胎34週以上で出産。 ・脳性麻痺で身障者等級1級または2級に該当との診断。 ・先天異常、染色体異常等は除外。 *補償金額等 ・一時金:2,000万円一括払い。 ・年金 6歳〜:介護料(日額1級6,000円、同2級3,000円)。 18歳〜:逸失利益(男女全年齢平均の8割)。 ・障害者年金分は控除。 ・賠償受領時には返還。 ・医師等に「明白かつ重大な過失がある場合」には求償。 ・財源は少子化対策予算、出産育児一時金等を想定。 ・250件/年で年総額60億(+運営費6億+医賠責求償20億)。 *主な組織 ・調査委員会:障害発生経緯、程度、過失等を調査。裁定委員会に報告。必要な場合には医師等への質問や診療記録等のコピー提出を要請。月1回開催。周産期医4名、小児脳神経医2名、弁護士3名で構成。 ・裁定委員会:支給可否を決定。明白かつ重大な過失の有無を裁定。月1回。周産期医3名、小児脳神経医2名、弁護士3名、有識者1名。 ・医療事故分析安全委員会:裁定案件について事故原因分析を実施。悪質事案は医道審へ。医療安全に有用な事例等を公表。脳性麻痺の統計処理や分析も。必要の都度適宜開催。医師3名、法律家3名、有識者3名。 ●調査の形骸化は必至 私見ですが、原案には、次のような問題点があると考えます。 まず、調査委員会では毎月20件超を調査することになります(年250件/12ヶ月)。有責性の十分な調査はほとんど期待できません。調査委員会は迅速な補償実施のために補償要件該当性のみを判断し、有責性を含む詳細な調査は医療事故分析安全委員会に委ねるといった役割分担が必要です。また、全例を詳細な調査の対象とするためにも、医療事故分析安全委員会は都道府県単位(最低でも全国10ケ所程度)で設置するべきです。 ●充実した診療記録があってこそ また、充実した調査には、詳細な診療記録が不可欠です。しかしながら、分娩監視記録が廃棄されたり、臍帯血液ガス検査が実施されていない例は少なくありません。診療記録の作成や保存、必要な検査項目等に関するガイドライン等を設定し、これらを守らずに診療経過が不分明となった場合には、明確に有責と判定できない場合であっても求償や懲戒的措置の対象とし、診療の質向上を誘導すべきです。 ●医賠責制度との関係がカギ 今回の原案では、明白かつ重大な過失のある場合には医師等に求償するとされていますが、公費を投入するのであれば、明白かつ重大な過失の有無を問わず、有責事案は原則として求償すべきです。仮に求償免除を認めるなら、実効性ある再発防止策が継続されることが必須条件です。現行の医賠責保険の保険料の妥当性や、保険審査手続の透明性についてもメスを入れる必要があります。 また、有責裁定が下されても、医賠責保険が独自に有責性を争うならば、結局患者の提訴が必要です。医賠責保険が有責裁定に拘束される制度とすべきです。 ●「お金を払うだけの制度」にしないために 無過失補償制度の必要性については異論のないところですが、今回の原案を見る限り、原因究明や再発防止に資する制度となるのか疑問が残ります。医療事故情報センターではこの件について提言の準備を進めています。是非、ご意見をお寄せ下さい。 |
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| (2006年11月 センターニュース224号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●日本医師会が制度化プロジェクトを始動 2006年6月、日本医師会は「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」の制度化に関するプロジェクト委員会を設置したことを明らかにしました。 日本医師会の医療に伴い発生する障害補償制度検討委員会は「医療に伴い発生する障害補償制度の創設をめざして」を今年1月に答申し、分娩に関連する脳性麻痺に対する無過失補償制度の先行創設を提案しています。 制度化プロジェクト委では、この答申を踏まえて、補償の対象・補償額・基金・制度運用方法といった具体的な制度の内容を検討し、今年7月末を目途に結論をまとめるとのことです。 ●日医1月答申を読み解く 上記答申は、医療に伴って発生する障害の補償制度全体の創設に先立ち、分娩に関連する脳性麻痺に関して補償制度を先行実施することを柱としています。答申原文が簡潔であるため、方向性が不明の点もありますが、概要はおおむね以下のとおりです。 *補償対象 ・分娩に関連する脳性麻痺児(出産体重2,000g未満は別途審査) ・発生頻度は分娩100万人あたり567人程度と推計 *認定手続 ・保護者、医師、助産師らが医師意見書を添付して申請 ・調査委員会が検討し報告書作成 ・裁定委員会が報告書に基づき給付を決定 ・不服、再審査請求制度も設置 *補償内容 ・一時金・逸失利益・介護料の3本立て ・出生後5歳児健診までに一時金1,000万円を給付 ・5歳時までに症状固定を待ち、障害判定と医師過失の有無を審査 ・障害は労災5級程度以上を対象 ・逸失利益は交通事故基準でセンサスを基準に計算し、その8割相当額を補償 ・介護料は障害1級と2級のみ、日額6,000円を平均余命まで ・介護料は介護支援制度等の整備の程度に従って減額する ※支払方法は一時払いと年金払いの双方を視野に入れて検討される模様 *運用 ・補償基金を創設し、保険会社に運用を委託 ・財源は公費(社会保険料・税金)、医師負担金、寄付金、援助金等 ・上記とは別個独立に医療事故検討委員会を設置し、原因分析、防止対策、注意勧告等を実施 ※有過失の場合の医師への求償、故意・重過失の場合の医道審等への通告も視野か? (先行実施構想中では特段の言及はないが、医療事故全体の無過失補償構想部分では求償や通告に言及あり) ●予算規模 年間約567名と推計される対象児の障害等級の内訳を想定することは容易ではなさそうですが、答申に書かれた算定例からすると、障害1級の男児1人について合計1億円弱となりますので、構想の実現には年間数百億円規模の予算が必要になると思われます。 ●患者側の声の集約が急務 無過失補償制度については、「医療被害防止・救済システムの実現をめざす会」(仮称)準備室による「医療被害防止・救済センター」構想や、患者の権利法をつくる会による「医療事故被害防止・補償法要綱案」等の様々な提案がなされてきましたが、今回の日医の構想では、分娩に関連する脳性麻痺の後遺障害領域に補償対象を限定することにより、当面の予算規模をも想定した提案となっている点に特徴があります。日本医師会によれば2007年の法案提出を目指しているとのことですので、具体化の動きは今後急速に進みそうです。 部分領域における無過失補償制度が創設されれば、これが医療事故全体に対する無過失補償制度のひな形となる可能性が高いと思われますので、こうした動向に対する患者側の声の集約を急ぐ必要があります。 |
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| (2006年8月 センターニュース221号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●診療関連死の調査と届出について議論 5月27日、名古屋市内にて、医療事故情報センター総会記念シンポジウム「不審な死をどう裁く」が開催されました。甲斐克則氏(早稲田大学大学院法務研究科教授)、田原克志氏(厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長)、畑中綾子氏(東京大学COE特任研究員)に参加いただいて、診療関連死の調査や届出制度に関してご発言いただきました。会場では例年以上に医療関係者の参加が目立ちました。 ●医療事故に特化した届出規定が必要 シンポでは、まず甲斐氏が、異状死届出義務にまつわる論点(異状死の定義、届出と憲法の自己負罪拒否特権との関係等)について簡潔に論点を整理し、医療事故に特化した届出規定、一定の刑事免責制度、被害者救済・補償制度、原因究明型の医事審判制度等の必要性を指摘しました。 ●死因調査モデル事業の実情 田原氏からは、全国6地区で実施中の「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の実情が報告されました。すでに21例(東京12、大阪5、愛知1、兵庫1、茨城2、新潟0)が検討されていること、結果報告に至ったのは1例であること、21例中18例は警察を経た後にモデル事業の対象とされており、警察の協力を得ながらモデル事業が運営されていること、札幌・神奈川・福岡でも事業開始を検討中だが、これら9地域以外への拡大の予定は当面ないことが紹介され、結果の出た1例を含む6例については、事案概要が説明されました。田原氏からは、モデル事業の調査方式は人員・費用が大がかりである、1県1医大という地域への展開可能性が課題であるとの指摘がありましたので、茨城(医学部は筑波大のみ)の経験が今後の試金石となりそうです。 ●モデル事業の先駆性と問題点 畑中氏は、英国におけるコロナー制度を解説し、日本の解剖制度(司法・行政・病理等)の複雑さや解剖医の不足を指摘しました。畑中氏は、医療と司法の双方の立場から検討を加えるモデル事業は、世界的に見ても先駆的な試みであると評価した上で、その成功のためにも統一的な解剖制度が必要と提言しました。 ●貴重な成果を皆の手に 本欄筆者には、モデル事業の調査結果第1例が出たとの報道に接した際、モデル事業のウェブサイトに全く情報が掲示されていないため、厚労省医療安全推進室に問い合わせて、報道機関発表資料の提供を求めたけれども入手できなかったという経験があります。後日になって、報道関係者から入手しましたが、十分な匿名化が施されており、ウェブサイトに掲示することに問題があるとは考えがたい内容でした。各地のリスクマネージャーにとっても非常に有益な情報ですので、公表されていながら、簡単な方法で入手できないのは非常に残念です。この日の田原氏との質疑からも、モデル事業の運営委員会では、調査成果の社会への還元方法について議論が進んでいない様子がうかがわれました。 モデル事業は「患者やその家族のみならず、社会に対しても十分な情報提供を図り、医療の透明性を高めること」をも目的としています。その目的に沿った情報提供体制が早急に整備されることを、今後も求め続けていきたいと思います。 |
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| (2006年7月 センターニュース220号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 日本医療機能評価機構は、本年3月、医療事故情報収集等事業第4回報告書を公表しました。この報告書では平成17年の1年間の集計結果が紹介されています。 ●任意参加は頭打ち? 同事業では、法的報告義務の対象とされた施設と、任意に参加登録申請した施設の双方から事故報告を受けています。平成17年末時点で、前者は272施設、後者は283施設です。平成16年末以後の1年間であらたに43施設が参加登録していますが、新規登録件数は1月〜4月に集中していますので、昨年前半までに任意参加施設数はほぼ頭打ちとなったようです。 ●施設間の温度差 平成17年の報告件数は合計で1,265件でした。うち1,114件は報告義務対象施設からのものですので、任意参加の施設に報告を求めることの難しさがうかがわれます。 また、報告義務対象施設でも、33施設からは年間10件以上の報告がなされている反面、96施設では1年間で報告が0件となっています。行った医療又は管理によって予期せぬ処置が必要となった事案については、過誤が明らかでなくとも報告の対象とされていますので、報告義務対象施設の約1/3で報告なしという結果からは、報告制度に対する施設間の温度差が強く感じられます。 ●死亡事例は143件 報告義務を負う医療機関からの1,114件の報告中、死亡事故は143件、障害残存可能性が高度な事故は159件でした。死亡143件の概要別内訳は、治療・処置によるもの48件、療養上の世話によるもの18件、医療用具等によるもの11件等となっていますが、その他として50件が報告されており、死亡事故の多様性がうかがわれます。 ●警鐘事例の公表は6件に 評価機構は、これまでに「共有すべき医療事故情報」を6例公表しています。 薬剤に関連する事例としては、1)タキソールとタキソテールの取り違え、2)DIC治療の際の、高濃度のメシル酸ガベキサートの末梢静脈点滴による皮膚壊死・潰瘍形成(添付文書違反)、3)抗リウマチ薬メトトレキサート投与中の白血球減少による感染死(検査頻度不足)や、同剤の過量投与(以上第3回報告書)、4)インスリン投与準備に際して量を誤った例(看護師の知識・経験不足)(第4回報告書)が指摘されています。 医療機器に関連する事例としては、5)心臓カテーテル穿刺部位の止血用デバイスに空気を注入して圧迫止血する際に、誤って動脈に挿入したシースに空気を入れて空気塞栓を生じたケースが紹介されています(第3回報告書)。 医療処置に関連する事例としては、6)トイレにおける立位でのグリセリン浣腸による腸管穿孔が6件報告されたことが警告されており、うち2件について訪問調査が実施されています(第3回報告書)。 ●進む事例分析 同事業では、現在、1)手術等による異物残存、2)医療機器の使用に関する事故、3)薬剤に関連した事故、4)医療処置に関連した事故を、重点分野に指定して分析中ですが、第4回報告書では、1)についての詳細な分析結果がレポートされています。 平成17年4月以降、11件の訪問調査が行われているようですので、今後も具体的事例に着目した提言の継続が期待されます。 |
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| (2006年5月 センターニュース218号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●過失を否定した高裁判決を破棄 平成18年1月27日、最高裁第二小法廷は注目すべき判断を示しました。事案は、脳梗塞の後遺症で入院中の80歳代の患者が、発熱・下痢等の治療のために平成4年12月末から約8ヶ月にわたって多種類の抗生剤が断続的に投与された後、多臓器不全で死亡したという件です。過失としては、1)発症初期に広域抗生剤が投与されてMRSA感染症に至った、2)MRSA感染症に対するバンコマイシンの投与が遅れた、3)治療期間中に多種類の抗生剤の投与によって抗生物質関連性腸炎等を発症させた、という3点が争われており、鑑定的意見としては、患者側からF意見書、I意見書、医療機関側からG意見書、裁判上の鑑定としてH鑑定が出されていました。 原審はいずれの過失も否定しましたが、最高裁は、過失を否定した判断に経験則又は採証法則違反があるとして原審判決を破棄し、審理を東京高裁に差戻しました ●反対尋問の重要性 1)について原審は、F意見書によると当時は広域抗生剤が一般的だったとうかがわれること、G意見書が本件では妥当な選択がなされたとしていること、H鑑定は広域抗生剤投与の個別的当否に触れていないが、特に問題があったともしていないことを指摘し、過失を否定しました。これに対し最高裁は、G意見書は狭域抗生剤に代えるべきかどうかは検討していないこと、G意見書が医療機関側提出の意見書であって反対尋問にさらされていないこと、H鑑定には使用された広域抗生剤について医療水準にかなうものではないと理解できる記載があることを指摘しました。 ●「つまみ食い」への警告 2)について原審は、H鑑定は早期にバンコマイシンを使用すべきとしつつも、安易な投与による耐性菌の問題をも指摘していること、時間は要したが他の抗生剤によってMRSAが消失していること、F意見書やG意見書が早期のバンコマイシン投与に触れていないこと等を指摘して、過失を否定しました。これに対し最高裁は、H鑑定には、安易な投与を警告する記載はあるが、便からMRSAが検出された時点で経口投与していれば最悪の事態は避けられた可能性の指摘もあること、F意見書には、この当時でもMRSA感染症またはその疑い例にバンコマイシンが第一選択であったとする記載があること、G意見書にはバンコマイシンを投与しなかったことが当時の医療水準にかなうとする記載もないことを指摘しました。 ●「医療現場の実情=医療水準」ではないことを再確認 3)について原審は、F意見書には当時の実情として多種類投与が一般的だったとする記載があること、H鑑定が多種類の抗生剤の投与を問題としていないこと、G意見書が本件での抗生剤の使用は全体として許容範囲内のものとしていることを指摘し、過失を否定しました。これに対し最高裁は、F意見書の述べる現場の実情が直ちに当時の医療水準にかなうものと判断することはできないこと、H鑑定が問題としていないのは鑑定事項とされなかったためとうかがわれること、G意見書にも不要な抗生剤の投与がなされたと理解できる批判的記載があることを指摘しました。 ●鑑定的意見の丁寧な吟味を求めた最高裁 このように、最高裁は、原審による3つの過失判断のすべてについて鑑定的意見に関する経験則又は採証法則違反があったとする非常に厳しい判断を示しました。この判決を契機として、鑑定的意見の評価は丁寧に行うべきとする実務の定着が望まれます。 |
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| (2006年3月 センターニュース216号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●3対2の僅差で賠償責任を否定 平成17年12月8日、最高裁第一小法廷は、拘置所に勾留中に脳梗塞を発症した患者に重大な後遺症が残存したという医療過誤事件について、判事5名中3名による多数意見という異例の僅差で、適時の転送によって重大な後遺症が残らなかった「相当程度の可能性の存在」が証明されたとはいえないとして賠償責任を否定する判決を下しました。 (参考:一審判決URL) ●多数意見は「平成15年最判=保護範囲限定」説に立脚 多数意見を構成した島田・才口各判事は、補足意見として、「重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性」が侵害された場合の賠償責任を認めた最高裁第三小法廷平成15年11月11日判決は、「相当程度の可能性の存在」を要件とすることで賠償責任が認められる範囲を合理的に画した判決であるとの理解に基づき、「相当程度の可能性の存在」が立証されない場合には、その医療行為が「著しく不適切不十分な場合」(島田)・「医療行為の名に値しないような例外的な場合」(才口)でなければ賠償責任は生じない、とする見解を示しました。 ●反対意見は「適時転送利益」を別個の法益として構成 他方、本判決には、平成15年最判は「相当程度の可能性の存在」が立証されない場合の賠償責任を否定するものではないとする立場から、横尾・泉各判事による詳細な反対意見が付されています。この反対意見は過去の最高裁判例が、輸血に関する意思決定権(第三小法廷平成12年2月29日判決)、乳房温存療法に関する熟慮判断機会(第三小法廷平成13年11月27日判決)、末期癌であることを家族へ適時に告知されることで患者本人が得られる家族等の協力と配慮(第三小法廷平成14年9月24日判決)、経腟分娩実施に関する判断機会(第一小法廷平成17年9月8日判決)等を保護法益として認めたことと比較して、「適時に適切な医療機関へ転送され、同医療機関において適切な検査、治療等の医療行為を受ける利益」は「保護すべき程度において勝るとも劣らない」とし、本件でも賠償責任を認めるべきと述べています。 ●「期待権」の行方は? 本件には、治療可能性の幅が狭い疾患である脳梗塞が拘置所内で生じたという特殊性がありますので、平成15年最判が比較的緩やかに「相当程度の可能性」を認めたことをも考え合わせると、実務的には、本件のように「相当程度の可能性の存在の立証がない」とされる事案はそれほど多くないだろうと思われます。 しかしながら、今回の判決が「期待権侵害」と呼ばれてきた領域に与える理論面での影響は小さくないはずですので、本判決については、引き続き詳細に検討を加える必要がありそうです。 |
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| (2006年1月 センターニュース214号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●日本学術会議が報告書を公表 平成17年6月27日、日本学術会議は「異状死等について−日本学術会議の見解と提言−」を取りまとめ、医師法21条における異状死体届出義務と医療関連死の関係を明確にするとともに、医療事故防止と被害救済の仕組みの必要性を提言しました。 ●異状死を巡る議論の推移 平成6年、日本法医学会は『「異状死」ガイドライン』を提示し、医療関連死の異状死該当性の判断にあたっては診療行為の過誤や過失の有無を問わないとする見解を示しました。その後、都立広尾病院事件等を契機として異状死の解釈に注目が集まるようになり、外科系13学会・日本内科学会等により、異状死の範囲を狭く解釈する見解が相次いで公表されました。他方で患者側からは、医療問題弁護団が日本法医学会ガイドラインの解釈を支持する意見書を発表する等、異状死の解釈上の争いが続きました。そして平成16年4月13日の最高裁第三小法廷判決により、診療行為における罪責を問われるおそれがある場合に届出義務を課すことが憲法38条1項の自己負罪拒否特権に違反しないことは明確となりましたが、異状死の定義については未解決のままでした。 ●提言は第三者医師・遺族の判断を重視 今回の日本学術会議の提言は、第7部(医・歯・薬学関連)と第2部(法律学・政治学関連)の合同拡大役員会において、これまでの議論の経過を踏まえつつ、医療界、法曹界等から幅広い意見を聴取した上でまとめられたものです。 この提言は「担当医師にとって医学的に十分な合理性をもって経過の上で病死と説明できたとしても、自己の医療行為に関わるこの合理性の判断を当該医師に委ねることは適切でない」とした上で、「第三者医師(あるいは医師団)の見解を求め、第三者医師、また遺族を含め関係者(医療チームの一員等)がその死因の説明の合理性に疑義を持つ場合には、異状死・異状死体とする」との定義を示しています。 担当医師だけで判断することを不適切としたことについては、日本学術会議としても医療における透明性や説明責任を重視したことがうかがわれます。特に「遺族が死因の説明の合理性に疑義を持つ場合」を異状死とすることが明記された点は、患者側の納得に着目した定義として高く評価できるものと言えます。 ●再発防止・被害者救済の必要性も指摘 また、今回の提言は「医療関連死の問題を総合的に解決するための第三者機関を設置し、医療関連死が発生した場合、その過誤・過失を問うことなく、この第三者機関に届け出ることとすべきである。この第三者機関は、単に異状死のみならず、医療行為に関連した重大な後遺症をも含めた広範な事例を収集するものとすべきであり、この上に立って医療事故の科学的分析と予防策樹立を図る」として、医療事故全般を調査分析する第三者機関の必要性を指摘しています。 被害者救済についても「この第三者機関は、事例の集積と原因分析を通じ、医療事故の再発防止に資するとともに、医学的に公正な裁定を確保し、被害者側への有効で迅速な救済措置の実施のために裁判以外の紛争解決促進制度(ADR)の導入や労働者災害補償保険制度に類似した被害補償制度の構築などを図るべき」と述べ、行政・法曹界・医療界・患者・保険会社等が協力して被害救済システムを構築するよう呼びかけています。 「学者の国会」とも呼ばれる日本学術会議がこうした公式見解を示したことは、医療安全と被害者救済の実現に向けた国民的取り組みのための大きなステップとなるはずです。 |
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| (2005年11月 センターニュース212号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●公表された迅速化検証報告書 平成17年7月15日、最高裁判所は「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」を公表しました。この報告書は、平成15年に「裁判の迅速化に関する法律」が施行された後の審理期間を検証したものです。この中では、専門的知見を要する類型の一つとして医療過誤訴訟も検証対象とされており、平成16年4月から12月までの9ヶ月間に全地方裁判所で第1審が終局した医療過誤事件(719件)について様々な分析が加えられています。 今回公表された資料からは、これまでの統計では明らかではなかった医療過誤訴訟の姿が浮かび上がってきます。 ●7件に1件は単独審理 検証の対象とされた719件の医療過誤訴訟のうち、裁判官3名の合議で審理されたものは606件で、単独の裁判官によって審理されたものは113件でした。およそ7件につき1件が単独事件として審理されていることになりますので、合議事件が大半ではあるものの、単独事件も相当数にのぼることが明らかとなりました。 ●単独審理はどうして早い? 平均審理期間については、合議事件が29.4ヶ月、単独事件が15.2ヶ月となっており、単独事件の方が1年以上短いことがわかります。 規模の大きい裁判所(特に医療集中部が設置されている裁判所)では、ほぼ全件が合議で審理されているはずですので、113件の単独事件は、地裁支部等の小規模裁判所の事件が大半と思われます。こうした小規模裁判所では専門訴訟への対応体制が相対的に整っていないはずで、審理が長期化しているのではないかという印象を受けますが、統計的には逆の数字が出ています。 事案の難易度が低いものだけが単独審理に割り振られている可能性もありますが、各地の医療集中部の平均審理期間でさえ1年半前後を要していることや、訴訟の初期の時点で難易度を判断して単独・合議の振り分けをすることの困難性等を考えると、小規模裁判所では十分な審理期間を確保しないまま訴訟が終結している可能性も否定できませんので、これまであまり注目されてこなかった単独事件の実情について検証の必要がありそうです。 ●鑑定実施率は2割超、集中部との差は顕著 鑑定実施事件は719件中161件(22.4%)で、実施事件の平均審理期間は52.2ヶ月でした。非実施事件は558件(77.6%)で同19.9ヶ月となっていますので、鑑定が訴訟長期化の重要な要因であることがあらためて浮き彫りとなりました。 このように2割を超す訴訟で鑑定が実施されていますが、東京地裁医療集中部における鑑定実施率が4〜7%程度(「医療訴訟の現場から」東京弁護士会LIBRA Vol.4 No.3 p3,2004年3月)とされているとおり、各地の医療集中部の鑑定実施率は極めて低くなっていますので、全国的には十分に必要性を吟味しないまま鑑定が実施されている可能性があります。 ●専門委員関与は6件、短期終局傾向顕著 専門委員が関与した事件は719件中6件(0.8%)で、平均審理期間は12.0ヶ月となっています(専門委員非関与事件は713件、同27.2ヶ月)。 実数が少ないので今後の推移を確認する必要がありますが、専門委員関与事件は著しく短期間で終了する傾向にあるようです。本来証拠とはなりえない専門委員の「説明」による事実上の心証形成を経て早期終結している可能性の有無についても、引き続き検証が必要と思われます。 |
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| (2005年9月 センターニュース210号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 最高裁から平成16年の医事関係訴訟統計(概数)が発表されました。 ●新規提訴は1,100件を突破 平成16年(1月〜12月)の新受件数(地裁で新たに提訴された件数)は1,107件で、過去最高だった昨年(998件)から更に100件以上の伸びを見せました。平成7年(488件)と比較すると10年で227%増えたことになります。 新受件数を診療科別にみると、総数1,087件(複数該当事案は重複計上)中、内科(272件)、外科(228件)、整形・形成外科(148件)、産婦人科(143件)、歯科(83件)の順となっています。 ●既済は微減、未済は再び増加し2,100件超に 既済件数は1,004件で、平成15年(1,036件)に続き2年連続で1,000件を越えましたが、前年比では平成11年以来の減少に転じました。その結果、未済事件数は昨年より103件増加し、2,138件となりました。未済事件数は平成15年に一旦減少に転じました(平成14年:2,073件→平成15年:2,035件)ので、このままわずかずつでも減少傾向が続くかと思われたのですが、新受件数の伸びと既済件数の微減によって、再び増加に転じました。 ●審理期間短縮幅も鈍化 平成16年の既済事件の平均審理期間は27.3ヶ月でした。平成12年(35.5ヶ月)以降、毎年2〜3ヶ月ずつ短縮してきましたが、平成16年は短縮傾向こそ維持したものの、短縮の幅はぐっと狭くなりました(平成15年は27.7ヶ月)。 ●判決と和解の比率、認容率に著変なし 平成16年の既済事件の終局区分は、判決405件(40.3%)、和解463件(46.1%)でした。また、判決の勝訴率(一部認容を含む)は39.4%でした。いずれも例年の傾向と大きな変化はなく、医療過誤訴訟の特徴である勝訴率の低さと和解率の高さは従前のままと言えます。 |
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| (2005年7月 センターニュース208号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●6ヶ月分の情報を公表 4月15日、日本医療機能評価機構医療事故防止センターは医療事故情報収集等事業第1回報告書を発表しました。この報告書によって、2005年3月の本欄(204号)でご紹介した義務的報告制度(任意参加医療機関を含む)を通じて平成16年10月から平成17年3月までの半年間に集められた医療事故の情報の分析状況が明らかとなりました。 ●報告もれはないか? この報告書によれば、533医療機関(平成17年3月31日現在)からこの半年間に丁度533件の事故があったとのことですが、報告義務医療機関(278施設・合計病床数147,986床)からの報告が482件で、全体の9割以上を占めていますので、任意参加医療機関の事故報告体制が整うまでにはまだ時間がかかりそうです。 また、今回の報告義務医療機関による半年間の事故報告数を日本の病床数(厚労省統計によると平成15年10月1日現在で1,820,212床)にあてはめて単純に推計すると、年間で1万件を超える医療事故が生じている可能性が示唆されます。 ただ、2004年5月の本欄(194号)でご紹介したように「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」では別の手法(診療録無作為抽出)による調査が進められていますので、こうした分析結果とも照合しながら、事故報告制度を通じて医療事故がもれなく報告されているかどうかを検証することも必要となりそうです。 ●不作為型過誤は誰が分析する? 同報告書における事故発生場面等の分類項目や、同報告書が今後の重要テーマとして1)手術等における異物の残存と2)医療機器の使用に関する事故の2点をピックアップしていること等からすると、報告されたのは医原病型(作為型)事故が中心であるように想像されます。こうした医原病型事故について全国的に事例情報を集約して集中的に対策が検討されたことはありませんでしたので、今後の成果には是非期待したいと思います。 ただ、2004年9月の本欄(198号)でも各病院の事故公表制度からは医師不作為型過誤(=医師の適切な判断や指示を欠いたため病状が進行したようなケース)への対応が抜け落ちているのではと述べましたが、今回の報告書からも、各病院において医師不作為型過誤の把握が著しく遅れているのではないかという懸念を感じました。 ●監視の視点〜守備範囲の内、そして外 事故情報収集事業は、制度設計上、医原病型が中心にならざるを得ないのかもしれませんが、そうであれば別の方法(行政処分制度や専門医認定制度等)を通じて医師不作為型過誤の実情を明らかにし、個々の医師の診療水準の向上を図る必要があるはずです。 今後は患者の側からも、1)事故情報収集等事業で守備範囲とされている領域で実際に成果が上がっているか、2)同事業でカバーされていない領域の問題をどのような手法で顕在化させるのか、という2つの視点を意識しながら、事故報告制度が実のある制度となるように監視を進める必要があると思われます。 |
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| (2005年5月 センターニュース206号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●評価機構が医療事故収集等事業を開始 日本医療機能評価機構は機構内に「医療安全防止センター」を設置し、平成16年10月1日より「医療事故情報収集等事業」を開始しました。 これは、特定機能病院と事故等報告病院(国立高度医療センター、国立ハンセン病療養所、国立病院機構の開設する病院、大学附属病院本院)は、医療事故が発生した場合、発生日から2週間以内に事故等報告書を作成して、厚労大臣の登録を受けた分析機関に対して提出しなければならない(医療法16条の3第7号、同法施行規則9条の23第1項第2号、同11条の2、同12条)とされたことに基づき、登録分析機関となった評価機構が事故等分析事業(同法施行規則12条の6第1項)として実施されることとなったものです。 ●報告と分析の流れ 今年1月24日にWeb上で公開された同事業要領によれば、同事業には事故報告が法的に義務づけられた前記医療機関(合計255医療機関)以外でも、希望する医療機関が任意に参加できる(ただし報告時には患者の同意を要する)とされています。そのため評価機構には義務的報告と患者の同意を得た任意的報告の双方が集積されることになります。 報告の方法は、原則として事故発生日もしくは発生を認識した日から2週間以内にネット上の専用回線を通じて報告を行うこととされており、報告された事例に関する追加情報は、郵送、医療事故防止センターにおける面談、専門家による現地訪問といった方法で収集されるとのことです。 こうして収集された情報は医療事故防止センターにおいて専門家が分析を行い、プライバシーに配慮した報告書として広く公表されるそうです。また報告書を踏まえて行政や関係団体、個別企業に対して提言や要請を行うことも予定されています。 ●期待と不安〜膨大な報告事例をどう分析していくのか スタートから5ヶ月が経過した現時点では、同事業に基づく報告書が公表された事例は未だ見あたらないようですが、全国の主要病院の相当の割合をカバーする事業ですので、日本の医療事故の実態を知るための貴重な情報が集積・分析・公表されることを期待したいところです。 しかしながら、2003年度中に全国81カ所の特定機能病院において発生した死亡事故だけでも83件が把握されています(阿部知子衆院議員の質問主意書に対する厚労省回答による)。今回の事業の対象となる医療機関から死亡事故以外をも含む事故が報告された場合、その件数は膨大なものとなることが予想されます。 たった1つの事故であっても、十分に原因分析して教訓を医療現場にフィードバックするには非常に大きなマンパワーを要すると思われますので、押し寄せる膨大な事故情報が十分に分析されて適切な報告書が作成されることになるのかどうか、引き続き注目していきたいと思います。 |
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| (2005年3月 センターニュース204号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●国に申入書を提出 平成16年11月18日、医療事故情報センターは、厚生労働大臣に宛てて「保健師助産師看護師法の遵守徹底に関する申入書」を提出しました。 この申入書を提出した経緯は次のとおりです。 ●厚労省通知の撤回を求めた日本産婦人科医会 平成16年9月13日に発せられた厚労省医政局看護課長通知は、「産婦に対して、子宮口の開大、児頭の下降度等の確認及び分娩進行の状況把握を目的として内診を行うこと(但し、その際の正常範囲からの逸脱の有無を判断することを行わない)」は「診療の補助」(保健師助産師看護師法5条)には該当せず、「助産」(同法3条)に該当するとの判断を示しました。 これに対し、日本産婦人科医会は、同年10月8日、厚労省医政局長宛に要望書を提出し、同通知の撤回を求めました。 同医会の要望書は、看護師による助産行為が広く行われているという違法な実態を追認せよと迫る趣旨のものですので、当センターは、上記の申入書を国に提出し、違法な業務慣行の実態を早急に調査の上で、産科関係者に対してこうした業務慣行を改めるよう強く指導せよと申し入れました。 ●厚労省担当者との意見交換 申し入れの後、同年12月1日には厚労省担当者(看護課長補佐ら)と面談して意見交換をし厚労省としては、1)看護師による産婦内診は違法であると認識しており同通知の撤回は考えていない、2)同医会の要望書によって、看護師による産婦内診が広く行われていることをはじめて知るに至った、3)助産師の数自体は足りているので、日本看護協会を通じて就職あっせんの促進を図っている、との説明でした。 厚労省担当者によれば、同医会には口頭で通知を撤回しない旨を伝えたが、同医会は要望書に記載した見解を改めておらず平行線のままであったそうです。そうであれば、厚労省は、違法な業務慣行が存在することも、看護師による産婦内診を禁じた通知が開業医らに周知徹底されていないことも認識しているわけですから、早急に実態を調査の上で、通知の趣旨を産科の現場に徹底させるために強く指導をすべきです。しかし厚労省担当者は、同医会に対しても折に触れて指導しますと繰り返すだけで、助産師の就職あっせん促進以外の具体的な対応策の説明はありませんでした。 ●医会要望書はHPから削除 なお、ホームページに掲載されていた同医会の要望書は、当センターが国に対して申入書を提出する直前に削除されてしまいました(※2005年1月5日現在の状況に基づく)。「母子の生命健康を保護する」(同医会定款第4条)ことを目的とする社団法人の説明責任のあり方として、極めて残念な対応であると感じています。 ●分娩の安全の実現はいつになる? このままでは、今回表面化した違法な業務慣行は事実上温存されかねません。助産のトレーニングを受けている有資格者は医師と助産師だけです。このまま看護師が内診等の助産行為を続けることになれば、いつまでたっても安全な分娩は実現しませんし、助産行為をさせられる看護師の側の不幸も続きます。国は早急に実態を調査し、違法な業務慣行を一掃するよう指導を行うべきです。 |
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| (2005年1月 センターニュース202号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●20周年記念集会を開催 1985年、我が国初の「患者の権利宣言」案が採択されました。この、日本における患者の権利運動の出発点から20年が経過したことを記念して、本年10月17日、名古屋市内において、「患者の権利宣言から20年〜この20年を振り返り、未来を展望する〜」と題した記念集会が開催されました。 ●権利法制定に向けたアピールを採択 集会の前半では、20年前の起草委員会の動きを一面トップで報じる記事をまとめた田辺功氏(現朝日新聞社編集委員)が、当時の記事や写真に基づいてそのころの状況を紹介する基調講演を行いました。引き続いて、小林洋二弁護士(福岡)と増田聖子弁護士(名古屋)が、この20年間の患者の権利宣言運動の展開と判例における患者の権利の位置づけの変遷をレポートしました。 後半は、患者の権利の確立を求めて活発な活動を行っている市民ら16名が、現在の活動内容と将来の展望を、リレートーク形式でスピーチしました。最後は、患者の権利は医療制度・医療政策の基本理念となるべきであり、そのためにも「患者の権利法」の制定が必要であるとした20周年記念集会アピールが、吉田嘉宏氏(医療を良くする会)から提案され、200名あまりの参加者の満場の拍手によって採択に至りました。 リレートークの内容からは、この20年で我が国にも患者の権利運動がさまざまな市民の手によって着実に根を張ったことが実感されました。次に集う時は、30周年記念集会ではなく「患者の権利法制定祝賀会」となることでしょう。 ※当日の集会の様子は記念集会のサイト(http://kenri20.exblog.jp/i2)でご覧いただけます。20年前の宣言案や今回のアピールの全文、木村利人氏(早稲田大学名誉教授)、李啓充氏(作家)といった方々からいただいたメッセージなども掲載してありますので、是非一度ご覧下さい。 |
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| (2004年11月 センターニュース200号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●公表基準の制定の広がり 事故情報の公表基準を明文化する動きについては本誌180号(2003年3月号)の本欄でも紹介しましたが、その後も公表基準制定の動きは急速に全国の医療機関に広がっており、把握できた限りでも次の病院がWeb上で公表基準を公開しています。 ・横浜市立大学医学部附属病院(H13/2〜) http://www.yokohama-cu.ac.jp/jimukyoku/kaikaku/iryouziko/iryouziko.html ・山形県立病院(H15/2〜) http://www.pref.yamagata.jp/kenbyo/692200/iryojikokijun.htm ・市立四日市病院(H15/3〜) http://www.city.yokkaichi.mie.jp/hospital/accident200405.html ・神奈川県立病院(H15/4〜) http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kenbyo/hyjirei/kouhyoukijun.pdf ・愛媛県立病院(H15/4〜) http://www.eph.pref.ehime.jp/oshirase/iryoujikokijun.pdf ・名古屋市立病院(H15/6〜) http://www.city.nagoya.jp/10eisei/byouin_kanri/hospital/iryou_jiko/houkatu.html 公表基準に基づく医療事故の包括的公表 http://www.city.nagoya.jp/10eisei/byouin_kanri/hospital/iryou_jiko/houkatu.html ・名古屋市立大学病院(H15/6〜) http://w3hosp.med.nagoya-cu.ac.jp/sections/sct_anzen_kouhyou.html 公表基準に基づく医療事故の包括的公表 http://w3hosp.med.nagoya-cu.ac.jp/topics_frame/topics_frame6.html ・高知大学医学部附属病院(H15/10〜) http://www.kochi-ms.ac.jp/~of_hsptl/anzenkanribu/jikokohyoukijyun.pdf 三重県立病院における医療事故等の公表について(H14包括的公表分) http://www.pref.mie.jp/KENBYO/plan/2003060072.htm 三重県立病院における医療事故等の公表について(H15包括的公表分) http://www.pref.mie.jp/KENBYO/kurashi/hoken/2004060001.htm ●実際の公表例は作為型事故が中心 最近では公表基準に基づいて実際に事故が公表される例も出てきました。三重県立病院ではすでに平成14年度と平成15年度の2年分の包括的公表を実施していますし、山形県立病院、名古屋市立病院及び名古屋市立大学病院もさきごろ公表基準作成後初めての包括的公表を実施しました。 これらの公表例では、誤薬や機器・器具の操作ミス等のベッドサイドにおける作為型事故が中心となっており、院内事故報告制度が看護師の間に定着しつつあることがうかがわれます。 ●水面下に眠る不作為型事故 他方、これらの公表例の中には、医師による画像見落とし、重篤度の見誤り、治療法選択の誤り等はほとんど含まれていません。医療過誤訴訟で頻繁に問題とされる医師による不作為型の医療事故は、医療機関内において「事故」として認知されていない可能性が濃厚です。 医師の知識や能力そのものが問われる不作為型の医療事故は、作為型事故に比べて事故の発生そのものが院内で認知されにくい傾向があります。不作為型事故は医師本人が黙っていればわからない状態がなおも続いているとすれば、ヒヤリハットレポートや院内事故報告制度を充実させるだけでは、実態把握と対策実施が困難な医療事故類型があるということになります。 ●ピアレビューの充実が急務 今後、各医療機関には、医師の不作為による病状の悪化についても医療事故として認識するとともに、死亡症例の定期的カンファレンス等を通じた積極的なピアレビュー(同僚評価)に取り組むことによって、不作為型の事故事例も院内で把握し、公表基準に従って適切に公表するという姿勢が望まれます。 |
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| (2004年9月 センターニュース198号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 最高裁から発表された平成15年の医事関係訴訟統計の概要は次のとおりです。 ●新規提訴はさらに増加 平成15年(1月〜12月)の新受件数は987件で、過去最高だった昨年(906件)を今年も上回りました。提訴件数増加の勢いはまだまだ衰えを見せていません。 ●既済件数が1,000件台へ大幅増、未済事件数は減少へ? 今年の統計で最も目立ったのは、既済件数が昨年に引き続いて大幅に増加し、ついに 1,000件の大台を突破するとともに、新受件数を上回るに至った点です(平成13年:722件→平成14年:869件→平成15年:1,035件)。 このため、平成14年には2,063件であった未済件数は、2,015件に微減しました。未済件数は過去10年以上にわたって一貫して著しい増加傾向にありましたので、事件の滞留にようやく歯止めがかかったと言えるでしょう。 ●平均審理期間は27.7ヶ月 平成12年以降、審理期間の短縮化傾向は顕著でしたが、今年もその傾向は変わらず、平均審理期間はついに27.7ヶ月(前年比−3.1ヶ月)となりました。 ●判決は年400件を超す 平成15年の既済987件中、判決で終了したものは406件(39.2%)、和解で終了したものは508件(49.1%)で、比率的には判決の比率が例年より若干下がりましたが、実数では判決数、和解件数とも過去最高となっています。 判決で終わったもののうち、勝訴率(一部勝訴を含む)は44.1%(平成14年:38.6%)で、若干の回復を見せましたが、通常事件の勝訴率が85.2%(人証実施事件については68.7%)であることに照らせばなお低い値に留まっています。 ●産婦人科、歯科は増加傾向? 診療科目別の新受件数は、総数1,019件(=複数科目該当事案あり)中、内科(258件)、外科(214件)、産婦人科(137件)、整形・形成外科(129件)、歯科(70件)などとなっています。昨年と比較すると、産婦人科の件数が増加して整形・形成外科の順位が入れ替わった点、歯科の件数がのびている点(平成13年:49件→平成14年:60件→平成15年:70件)が目に付きました。 |
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| (2004年7月 センターニュース196号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●第2回運営検討委員会を開催 本年3月19日、都内において「医療事故の全国的発生頻度に関する研究」(平成15年度厚生労働科学研究)の第2回運営検討委員会が開催されました。日本版ハーバードスタディともいえるこの研究については189号(2003年9月号)の本欄でも触れましたが、今回の運営検討委員会では、ここまでに行われたパイロットスタディと予備調査の経過が報告されました。 ●パイロットスタディと予備調査の概要 同研究では、昨年10月からまずパイロットスタディが行われました。これは調査手法の妥当性と信頼性を検討するために、某2病院における平成15年度の退院患者のカルテ(除く精神科)と、同年度にアクシデントリポートが提出された入院症例のカルテを、それぞれ各100冊ずつ(合計200冊)無作為に抽出し、看護師2名が評価シートに基づいて独立に評価してその結果を比較した上で、医師がこれら200冊のカルテを閲覧して看護師による評価の信頼性を検討するとの方法で行われました。また、この結果を院内アクシデントリポートとも照合することによって調査方法全体の妥当性が検討されました。 このパイロットスタディに引き続いて、昨年12月からは予備調査が行われました。これは調査手法の実施可能性を検証するためのもので、某5病院における平成15年度の退院患者のカルテ(除く精神科)各100冊(合計500冊)を無作為抽出し、可能であればこれらカルテのアクシデントレポートをも閲覧することとされました。これら資料について看護師2名が評価シートに基づく評価を行い、この評価結果に基づいて医師が有害事象の有無と予防可能性を判断する方法で実施されました。 ●700冊の検討結果は? これらの調査結果は各年度末に報告書として公表されるようですが、今回の運営委員会の席上では、パイロットスタディと予備調査で対象とされた診療録合計700冊の中に76件(10.9%)の有害事象が把握され、うち23.7%は予防可能性が高かったと評価されたことが報告されました。 また、76件中、明らかな誤りによるとされたものは0%でしたが、60.5%が医療行為や管理上の問題によるものであるとされ、また30.3%は医療行為や管理上の問題によるものである可能性が高いとされています。 正式調査前の暫定的数字ではありますが、退院患者の1割以上に何らかの有害事象が生じていることを推測させる結果となったことは、やはり我が国においても医療の安全確保が急務であることがあらためて示されたといえます。 ●いよいよ本格調査がスタート ここまでの成果をふまえて判定基準等を改訂の上、いよいよこの4月から2カ年計画で、30病院で無作為抽出された各250冊(合計7500冊)のカルテを対象とした本格調査がスタートしました。 この調査からは、国内における医療安全の「病状」の程度が明らかにされることとなりますので、医療事故情報センターでも引き続き注目していきたいと考えています。 |
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| (2004年5月 センターニュース194号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●総務省が厚労省・文科省に厳しく勧告 3月12日、総務省は厚労省と文科省に対し、医療事故に関する行政評価・監視結果に基づく勧告を行いました。これは全国217医療機関の医療事故防止対策の実施状況を調査した結果に基づいて、1)院内で事故報告を求める範囲の明示、2)重大事故の報告を全病院と有床診療所に義務づけ、3)類似名称に由来する薬剤事故等への個別改善要請の実施、4)医学部における安全教育の推進、5)立入検査による指導の充実、6)規模等の類似する医療機関による相互チェックの実施推進などを勧告したものです。 この4月から特定機能病院等には、重大事故の報告が義務づけられました。医療事故情報センターでは、この報告制度を全医療機関に拡大すべきとの意見書を提出していますが、早くも総務省からも、一部医療機関のみに報告を義務づけるだけでは不十分であると厳しく指摘されたことになります。 ●青戸病院事件に行政処分 3月18日、医道審議会の答申に基づき、厚労省は慈恵大青戸病院事件の医師3名と埼玉医大事件の医師1名に、それぞれ医業停止処分を下しました。 刑事事件判決前の時点で医師2名を処分した点、また刑事処分を免れた医師1名を監督責任に基づき処分した点で、異例の内容となりました。また、過去最長(1年6月)を大きく上回る処分(3年6月:1名、2年:2名)となったことも社会の注目を集めましたが、処分そのものの軽重について多くの議論を招くとともに、医道審独自の調査権限や再教育制度の欠落がもたらす問題点があらためて浮き彫りになりました。 今後も、否認中であることを理由として処分が見送られた青戸病院事件の医師1名に対する処分の行方や、行政処分制度改革の動向に注目していきたいと思います。 |
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| (2004年4月 センターニュース193号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●答申傾向に変化なし 2月3日、医道審議会医道分科会は医師・歯科医師合計34名の行政処分を答申しました。しかしながら今回の答申も従来どおり刑事事件の処分を後追いしたものにとどまり、行政処分としての独自性は発揮されませんでした。 ●「不誠実な事後対応」への視線の欠如 報じられたところによると、今後の処分対象者の選定基準の議論の中では、1)いわゆるリピーター、2)リピーター以外でも、患者が死亡するなど結果が重大な場合、3)医事に関する重大な不正があった場合、の3点が指摘されたとのことです。 しかし、上記基準では、事故そのものの態様について触れられてはいますが、事故後の対応の適否については触れられていません。 医療被害者は事故後の不誠実な対応について強い怒りを覚えています。医療事故市民オンブズマンが昨年12月にまとめた調査によれば、法的行動をとった医療事故被害者のうち、75.2%の方が「事故後の病院側の態度が許せなかった」ことを法的行動を選択した理由(複数回答)に挙げています。同じ事故を起こした場合でも、すぐに被害者側に事実を適切に報告した事案とそうでない事案とでは、処分の内容に差異を設けるべきですし、そうすることが「事実を知りたい」という被害者の願いをかなえる制度設計につながるはずです。 ●被害申立てはたなざらし状態 同分科会では、報道事例や国民からの申立て等によって処分対象者に関する情報を得るとしています。 国民からの申立ての対応窓口としては昨年7月に医師資質向上対策室が設置されましたが、すでに寄せられた多数の申立てについては、被害者側からの詳細な事情聴取を行うこともなく、形ばかりの報告を医療機関に求めただけで事実上たなざらしにされているというのが実態です。この状態を解消するには正確な事実関係を素早く行政が把握する仕組みが不可欠ですが、そのためには、被害者に対して正直かつ詳細に事後報告した医療機関以外は淘汰されるという仕組みが必要となります。 ●慈恵医大青戸病院事件が試金石に 今回の審議結果からすると、刑事事件を後追いしない行政処分の第1例目は慈恵医大青戸病院事件となりそうですが、この事件では病院長らによって「ご遺族が不満を持たれても、また医療についての大きな不信感を抱かれても仕方のない報告、説明」(同大学事故調査委員会報告)がなされたとされています。 今後の答申が、手術担当者の処分に終始して病院管理者の事後対応の是非をも問うものとならなかった場合には「行政は不誠実な事後対応を黙認した」と非難されてもやむを得ないのではないでしょうか。 |
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| (2004年3月 センターニュース192号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●坂口厚労大臣が異例のアピールを発表 平成15年12月24日、坂口厚労大臣により「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピール」が発表されました。 このアピールは「医療事故が話題にのぼらない日がない程、最近、医療事故が相次いでおり、さらには医療事故に起因して医師が逮捕される等、あってはならない事件も起こっております。」との認識の下に、「この様な状況が続けば国民の医療に対する信頼が大きく揺らぎ、取りかえしのつかぬ事態に陥るのではないか」と強い危機感に基づいて、全国の医療関係者に安全管理対策の更なる推進を呼び掛けるとともに、厚労大臣が省内担当部局に対し、「人」「施設」「もの」の三つの柱を立てて安全対策の推進・強化を強く指示したことを明らかにした内容となっており、国の強い危機感を異例の形で国民に示したものと言えます。 ●行政処分だけではなく、再教育制度も視野に このアピールでは、まず「人」に関する対策として、臨床研修や生涯教育の充実、刑事事件とならなかった医療過誤等に対する医師法上の処分強化に加えて、処分を受けた医師らに対する再教育制度をも検討するとの方針が示されました。 平成14年12月13日に医道審議会医道分科会が発表した「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」では行政処分の強化のみが強調されていましたが、単に処分を強化するだけでは再発防止は実現できませんので、再教育制度への言及はこれまでの対策からさらに一歩踏み込んだ動きとして、好意的に評価できそうです。 ●手術ビデオを患者に提供 また「施設」に関する対策としては、第三者機関による事故事例情報の収集・分析・提供等と並んで「手術の画像記録を患者に提供することによって、手術室の透明性の向上を図る」との大胆な方針が打ち出されました。 手術ビデオの提供については医療従事者の間でも賛否両論の大きな反響が広がっている様子ですが、医療の側から率先して、密室性の高い領域の透明性を実現しようとする姿勢が示されたことは、医療に対する信頼回復に大きく寄与するものと思われます。 ●患者参加の推進、輸血部縮小に対する警鐘も 医薬品・医療機器・情報等の「もの」に関する対策としては、 患者自身がバーコードリーダーを所持して自ら薬や検査の確認をするというような例を挙げられています。患者も安全管理に参加するという視点が示されたところに、今回のアピールの新規性がうかがわれます。 また、相変わらず発生し続ける輸血事故に対しては、特定機能病院等における輸血部門の強化といった対策が打ち出されています。これは国立大学病院の合理化策として輸血部や検査部等の中央管理部門が廃止・縮小される動き(参照:センターニュース172号ドクターインタビュー「輸血の安全を担って」柴田洋一医師)に対し、厚労大臣自らが強い警鐘を鳴らしたものと理解されます。 ●実行こそが信頼回復への道 このように今回の緊急アピールは、これまでになく踏み込んだ提言となっています。今後はこの提言の実現の有無で、国としての「本気度」が問われることとなります。 |
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| (2004年2月 センターニュース191号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●検討委員会が出した結論 昨年12月9日、厚労省の事故報告範囲検討委員会は、医療機関に報告を求める事故事例の範囲についての検討結果を発表しました。 <報告を求める範囲> 1 明らかに誤った医療行為や管理上の問題により、患者が死亡若しくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例 2 明らかに誤った行為は認められないが、医療行為や管理上の問題により、予期しない形で、患者が死亡若しくは患者に障害が残った事例、あるいは濃厚な処置や治療を要した事例 3 その他、患者の重症度の軽重を問わず、医療現場に対する警鐘的意義が大きいと考えられる事例 ※ 報告対象外:医療行為や管理上の問題とは何ら関係もなく予期せぬ結果となった場合 例)・疾患の自然経過にともなう事例 ・治療を行っていた疾患とは別の疾患の発症(心筋梗塞等) ・薬剤による副作用・アナフィラキシーショックや医療機器の誤作動による事例等 ●不作為型も報告範囲へ 医療事故情報センターは平成15年3月に提出した意見書において、「結果が重大な事例であれば、作為型であろうと不作為型であろうと、義務的報告の対象とするべき」と主張してきましたが、今回の検討結果では「管理上の問題には、療養環境の問題の他に医療行為を行わなかったことに起因するもの等も含まれる。」と付記されていますので、この点は一歩前進したと評価できます。 ●「予期」の有無での区別は必要か? 他方、私たちは、報告範囲は 1)結果の重大性 2)医療行為起因性の2点から定義すれば必要にして十分であり、「明らかに間違った医療行為」「当該行為実施前に予期できなかったもの」というようなあいまいな判断要素を混入させるべきではないと主張してきました。 その観点からすると、今回、明らかな過失が認められない事故についても報告対象としたことや、警鐘的意義の大きい事例をも報告対象としたことは、当初より一歩踏み込んだものとして評価に値すると言えそうです。 しかしながら上記範囲2において「予期しない形で」との要件が盛り込まれたために、なおも著しい曖昧さが残されたままとなっています。 ●薬剤副作用や医療機器誤動作も報告させるべき また、報告除外の例示として、「疾患の自然経過に伴う事例」などの他に「薬剤による副作用・アナフィラキシーショック」「医療機器の誤作動によるもの等」が挙げられていますが、これらを除外するべき理由はありません。 確かに医療機関には、平成15年改正薬事法77条の4の2により厚労大臣に対する医薬品・医療用具副作用事故報告義務が別途課せられていますので、今回の除外例示によって薬剤や医療機器に起因する事故の報告そのものが不要となるわけではありません。 しかし、医療現場における事故情報は、一元的に集約されてこそ、総合的な安全対策に資するはずです。今回の検討結果によれば事故報告は第三者機関(日本医療機能評価機構)宛てになされることが予定されていますが、薬事法上の報告は厚生労働省医薬局長通知(医薬発第0515014号)によって厚生労働省医薬局安全対策課宛になされることとされていますので、事故情報の分散化が強く危惧されます。 更にいえば、薬剤や医療機器に由来する事故であれば、同種の物品が他医療機関にて使用されている蓋然性が高いため、ほとんど常に「医療現場に対する警鐘的意義が大きい」はずですので、除外例とするのは全く不適切です。 ●平成16年度からの運用に向けて 今回の検討結果に基づく事故報告制度は、省令を改正の上、来年度から運用開始される予定となっています。総合的な医療安全対策を検討するために必要な基礎データのすべてが第三者機関に集約されるよう、あらためて報告範囲の定義からあいまいな要素を排した上で、報告除外範囲の例示についても早急に再検討することが求められます。 |
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| (2004年1月 センターニュース190号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●平成15年改正法が成立 司法制度改革審議会意見書を踏まえて民事訴訟法の改正作業が進められていましたが、平成15年7月、実際に改正法が成立しました。施行時期は本稿執筆時点では未定となっていますが、平成16年4月が有力視されています。 ●計画審理の推進 裁判迅速化法の施行ともあいまって、審理計画どおりの訴訟進行を求められる傾向はより強まると思われます。協議による審理計画の変更も可能と定められていますので、柔軟な運用を求めて審理充実を図る必要がありそうです。 ●提訴前証拠収集手続の拡充 新たに提訴予告通知制度が創設され、提訴前の当事者照会や文書送付嘱託、調査嘱託、専門家による意見陳述の嘱託等が可能となりました。 医療過誤分野では、証拠保全資料に基づいた提訴前説明会等が実施されるケースも増えていますが、提訴前交渉に応じない医療機関も少なからず存在しますので、そこを動かすカギとなるかもしれません。ただ、照会等に応じなかった場合のペナルティが必ずしも明確ではないため、照会拒否そのものが心証形成に負の影響を与えるという運用を実現することが不可欠と思われます。 ●専門委員制度 専門委員制度については、さまざまな議論がありましたが、結局は導入されることとなりました。しかしながら、適切な鑑定人の選定になお苦労している現状で、適切な能力を持つ専門委員を確保することが可能とは思われず、実効性には疑問を感じざるを得ません。医療機関側代理人からも、中途半端な「専門家」の関与による審理の混乱を懸念する声が聞こえてきます。 ●過渡期の重要性 紙幅の都合で全体像を論じることができませんが、来春に予想される改正法の施行に向けて裁判所も各地でさまざまな準備を進めることと思われます。私たちも地域間で十分な情報交換を行い、審理充実に資する制度運用を求める必要がありそうです。 |
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| (2003年12月 センターニュース189号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●医道審に意見書を提出 本年9月30日、医療事故情報センターは医道審議会医道分科会と厚労省医事課に宛てて、「医師・歯科医師に対する行政処分の意見書」を提出しました。 これは本年8月号の本欄でもお伝えしたように、国が医師・歯科医師の行政処分について処分基準を示すとともに、医師資質向上対策室を設置したことに対して、当センターの見解を示したものです。意見の要旨は、次の3点です。 ●刑事処分後追いからの脱却を まず、意見書では、刑事事件とならなかった医療過誤についても、一定の場合に行政処分の対象とする方針への賛意を示しました。 ●事前対応と事後対応の適否を重視した処分基準を 次に、行政処分制度の具体的運用にあたっては、不誠実な医師を排除するとともに、医師に誠実な行動を促し、医療の安全と被害者の救済の双方を促進するように、次のような点を重視した処分基準の策定を行うよう求めました。 <処分基準として重視すべき要素> 1)事前の事故防止の努力の有無 2)被害者側に対する事故発生の事実に関する速やかな報告の有無 3)被害者側に対する事故発生後の速やかな診療録等の基礎資料の提供の有無 4)公正さの確保された組織による詳細な事実経過の調査の有無 5)被害者側に対する4)の調査結果の報告の有無 6)4)の調査結果に基づいて過誤が明らかになった事案における、被害者側に対する率直な謝罪の有無 7)4)の調査結果に基づく科学的かつ具体的な事故再発防止策の検討及びその実施の有無 8)過誤当事者となった医療従事者に対する安全研修、再教育プログラムの実施 9)被害者側に対する速やかかつ適切な損害賠償の有無 ●医師資質向上対策室への期待 3点目として、厚労省が医師資質向上対策室を設置して患者からの苦情の受付に乗り出したことを前向きに評価した上で、今後は、受け付けた苦情に対する迅速かつ適切な対応がなされること、苦情を申し立てた人に対応結果の告知がなされること及び苦情対応結果全般について国民への説明がなされるべきであることを求めました。 ●まだ見えぬ医道審の姿勢 医道審は本年8月1日に今年度上期の処分答申を行いましたが、患者から受け付けた苦情に基づく答申はなされておらず、現在もなお対応方針を検討中と報じられています。医療の安全と被害者の救済を両立させるような方針が打ち出されるよう、今後の医道審の動向を見守り続けたいと思います。 |
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| (2003年11月 センターニュース188号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●弁護団・研究会の事務局長が意見交換 先月13日、名古屋において、医療事故情報センターの理事会に先立ち、全国医療問題弁護団・研究会事務局長連絡会が開催されました。この会合は、全国各地の弁護団・研究会の運営実務の責任者が定期的に情報交換することを目的として今年の1月からスタートしたもので、今回が第3回目の会合となりました。 ●意欲的取組みの数々 この会合では、毎回、各地における新しい取り組みの様子などが報告されますが、今回も次のような意欲的な活動が紹介されました。 ・札幌:医学の基礎について3日間連続の集中勉強会を実施 ・埼玉:弁護団結成20周年記念企画を準備中 ・東京(医療問題弁護団):産科部会、歯科部会を立ち上げて継続的に活動中 ・東京(医療事故研究会):相談者向けにホームページを開設 ・横浜:産婦人科医を招いて勉強会を実施 ・名古屋:病院を見学合宿を企画し、模型を使った気管内挿管の研修を受けた ・京都:医師向けの脳神経外科手術ビデオを用いた勉強会を開催 ・宮崎:病理医を招いて勉強会を実施 ●各地の裁判所の様子など また、各地域では地裁が地元の医療機関との連携を進めていますので、各地裁の動向についても情報交換しましたが、いずれの地域においても裁判所側が医療機関に対して積極的にアプローチを試みており、それぞれの地域で鑑定人を確保しようと言う動きが強まっていることが改めて浮き彫りとなりました。他方で、複数の地域から、医療機関側からも地元案件の鑑定の担当について消極的な意見が出ていることが報告されましたので、地域間相互乗り入れ方式の導入の必要性を再確認する結果となりました。 ●積極的な御参加を 以上のほかにも、各地で弁護団・研究会を運営する上での悩みや運営上のノウハウについても率直な意見の交換を行うことができました。 今後も継続的に会合を重ねて、各地の活動の活性化につなげていきたいと考えていますので、是非、次回以降も沢山の方にご参加いただけることを願っています。 なお、弁護団・研究会の運営実務担当者の方であれば肩書きを問わずどなたでもご参加いただけますし、日程があわない場合は代理の方でも差し支えありません。また、各地裁の動きについても情報交換をしていますので、弁護団・研究会といった組織の有無に関わらず、各地裁との協議会等のメンバーとなっていらっしゃる方の参加も大歓迎です。詳しくは医療事故情報センターまでお問い合わせ下さい。 <次回以降の開催予定> 第4回 平成15年11月22日 午後〜 宮崎にて(場所未定) ※宮崎での全国交流集会終了後に開催します。 第5回 平成16年1月17日午前11時〜 名古屋にて(医療事故情報センター) ※医療事故情報センター理事会の前に開催します。 |
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| (2003年10月 センターニュース187号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●厚労省研究班が初会合 先月21日、医療事故の全国的頻度に関する研究班(主任研究者・堺秀人東海大学病院副院長)が運営委員会を開催し、我が国初の医療事故頻度全国調査がいよいよスタートを切りました。 この研究班は、医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会が本年4月15日に発表した報告書において、全国的な医療事故発生頻度の把握の重要性が指摘されたことを受けて設置されたものです。 ●1万5000人のカルテの抜き取り調査へ 報道によれば、同研究班は医療事故被害者や弁護士を含む20数名で構成される運営委員会で調査の進め方を検討し、2003年度に10〜20の病院で試験的にカルテの抜き取り調査を実施した上で、翌年から本調査に入り、最終的には100の病院から合計1万5000人分のカルテについて分析を行うことを目標とするそうです。 80年代にニューヨーク州で行われた調査(いわゆるハーバードスタディ)では、51の病院から合計約3万人のカルテについて調査が行われ、その結果として入院患者の3.7%が医療事故を経験しており、うち27.6%が過失によるものであったことが判明しました。その後実施されたユタにおける調査では13病院の約4900人のカルテが、同じくコロラドにおける調査では15病院の約9700人のカルテが対象とされています。 今回の日本の調査は、これらの著名な調査に肩を並べる規模のものとなりそうです。 ●安全対策のための基礎情報の集積に期待 過去、日本では医療事故の大規模な実態調査が実施されていなかったため、どのような事故がどのような局面でどのくらい発生しているのかについては海外のデータに基づいて推計するしかありませんでした。そのため、実態把握なきまま対策を検討しているという状況が続いてきたことは否めませんでした。 今回の調査によって、日本の医療安全の礎となるような有益な基礎情報がもたらされることを期待したいと思います。 |
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| (2003年9月 センターニュース186号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その26 医療過誤の行政処分の動向 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●7月から医師資質向上対策室が発足 昨年12月、医道審議会医師分科会は「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」を発表し、刑事事件とならなかった医療過誤についても処分の対象とする方針を打ち出しました。 その後、厚労省は、本年7月1日、医政局医事課に医師資質向上対策室を設置して、刑事事件とならなかった医療過誤についての処分の具体的内容について検討を開始しています。 ●処分申立件数はすでに30件前後に 厚労省医政局医事課(電話:03-3595-2196直)から聴き取りをした結果では、1)同室には10名が配属されているが専従者はいない、2)医師に対する苦情受付そのものは同課試験免許室が取り扱い、医師資質向上対策室は刑事事件とならなかった医療過誤についての処分の枠組みを検討を進めている、3)処分の枠組みについては現時点では何も固まっていない、ということでした。 なお、昨年12月の方針発表以後、被害者らからは既に30件前後の処分申立がなされているが、現時点では申立に関する書式等の様式は全く定まっていないとのことでしたので、問い合わせがあればその都度事情を聴き取りしているというような実情がうかがわれました。 ●患者の視点からの意見提出が急務 医道審の処分方針に対しては、本年5月に日本産婦人科医会が要望書を提出し、「医療事故の多い産婦人科にとっては死活問題であり」「国の今回の方針の実施によって、今後は患者さん(被害者)への思いやりを考慮した妥協的解決はせずに、限りなく無責で、最終的には最高裁まで争う気構えで紛争解決への対応を執らざるを得ないと考え」「討議運用に際しては慎重を期すよう切に要望します」という意見を述べています。 なお、この要望書は、いわゆるリピーターに対しては医道審が厳重な処罰をすべきと結論付けていますが、同時に患者からの処分申立には反対しており、リピーター把握のための具体的方策については全く触れていません。 刑事事件とならなかった医療過誤についての行政処分については、何よりも患者の視点に立って運用を考えることが不可欠です。具体的には、1)医療安全に向けた事前の取り組みの有無、2)事故後の誠実な対応の有無、という2つ視点から検討を加え、医療の安全と被害者の救済に無関心な医療機関を排除するという方向性で運用がなされるべきです。またリピーターの把握には患者からの申立の受付が不可欠です。 以上の観点から、現在、医療事故情報センターとしても早急に医道審に対して意見書を提出すべく準備を進めています。 |
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| (2003年8月 センターニュース185号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その25 平成14年度の医療過誤訴訟の概況〜最高裁の統計より | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 最高裁から発表された平成14年の医事関係訴訟統計の概要は次のとおりです。 ●新規提訴はなおも増加、既済件数も大幅増 平成14年度(1月〜12月)の新受件数は896件に達し、過去最高だった昨年(814件)をまたも上回りました。他方で年度中の既済事件数も853件(昨年度:725件)と大幅に伸びています。未済件数は2010件(同:1967件)に達しました。 ●一審審理2年半時代の到来 平均審理期間は30.4ヶ月(前年比-2.3ヶ月)となり、過去最短だった昨年から更に大幅な短縮が見られています。訴訟の短縮化傾向はますます顕著になりました。 ●取下げ件数が急増? 平成14年度の既済853件中、判決で終了したものは373件(43.7%)、和解で終了したものは374件(43.8%)と比率的にはほぼ例年どおりでした。 判決で終わったもののうち、勝訴率(一部勝訴を含む)は38.6%(昨年度:38.5%)で、ほぼ例年どおりの低い値に留まりました。 なお、取り下げで終了した件数が66件(7.7%)に達し、件数、比率とも過去10年の最高値(平成12年度:39件、平成7年度:6.8%)を更新している点が目を引きます。 ●診療科順に変動なし 診療科目別の新受件数は、総数922件(=複数科目該当事案あり)中、内科(241件)、外科(210件)、整形・形成外科(140件)、産婦人科(113件)、歯科(60件)などとなっています。診療科毎の順序は昨年及び一昨年と同様であり、変動はありませんでした。 |
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| (2003年7月 センターニュース184号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その24 『岐路に立つ医療過誤訴訟』 〜総会記念シンポジウムを開催 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●鑑定人経験者や病院側弁護士を交えて開催 平成15年5月24日、医療事故情報センター総会恒例のシンポジウムが愛知県産業貿易館で行われました。今年は『岐路に立つ医療過誤訴訟』と題し、ここ数年の医療過誤訴訟を巡る急激な変化の実情と今後の展望について、病院側弁護士や鑑定人経験者を交えて意見交換を行いました。 ●患者側の期待と危惧 シンポでは、まず、鈴木利廣弁護士(東京)が、患者側代理人の視点から医療過誤集中部を中心とした実情を説明し、これまでの問題点が医学の側の封建的体質と司法の側の専門家依存体質に由来していたことを指摘した上で、集中部では既に相当の意識改革が進んでいることが紹介されました。 患者側弁護士の間でも集中部に対する期待派と危惧派が混在する中、(1)裁判官の転勤等で一時的改革に留まることはないか?(2)集中部以外の裁判所はどう変化するのか?(3)審理標準化の動きの中で、個別事件の特殊性が切り捨てられないか?(4)経験を積んだ裁判官が職権主義化し、結論先取り傾向の下で両当事者の納得が軽視されないか?といった4点については、期待派を自認する鈴木弁護士としてもなお慎重な評価が必要と考えているとのことでした。 ●当事者の納得の大切さ つづいて金田朗弁護士(大阪)から、病院側代理人としての視点から、大阪での新審理方式の状況が紹介された上で、4つの大学医学部との間で構成されている関西の地域ネットワークについて基盤をより広げるべき必要性があることや、集中部裁判官が集積した知識を事件間で流用することについては原理原則(弁論主義)との関係で危うさもあると感じていることが述べられました。 また、金田弁護士からは、病院側としても、医療現場で不足していたインフォームドコンセントを訴訟の場を借りてもう一度やり直しているという意識で訴訟を担当しており、専門化する裁判所の側でも独りよがりに陥ることなく患者や家族が納得できる解決をめざすことが大切であることが指摘されました。 ●医療の側には自衛の動きも? また、我妻堯尭医師(国際厚生事業団)からは、実際の鑑定経験を踏まえて、近時の鑑定人に対する配慮の変化が紹介された上で、根強く残る医療界の封建性が鑑定内容を歪めてきたという問題点が指摘されました。 我妻医師からは、日米の分娩環境の違いを踏まえないまま低酸素性虚血性脳症に関する米国産婦人科学会の委員会意見が引用されること等々例に挙げながら、産婦人科分野の訴訟防衛的な動向が紹介され、最後に産科事故防止に向けての具体的な提言をもいただきました。 ●社会の強い関心〜会場は市民でほぼ満席 以上のパネラーからの発言の後、名古屋、長野等の状況やカンファレンス方式の鑑定の評価なども含め、最後まで活発な意見交換がなされました。 必ずしも市民向けのテーマ設定ではなかったにも関わらず、会場は多数の一般参加者でほぼ満席状態となり、報道機関3社がTV取材に来訪するなど、医療過誤裁判に対する社会の関心の強さを改めて感じたシンポとなりました。 なお、今回は事前に各地の集中部裁判官に対してもパネラーとしての参加を呼びかけたのですが、諸般の事情で実現には至らず、その点が大変心残りでした。今後も裁判所には積極的な参加を呼びかけていきたいと考えています。 |
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| (2003年6月 センターニュース183号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その23 厚労省と最高裁に2つの意見書を提出 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●第三者機関の充実を求めて 医療事故情報センターは、4月1日、医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会(厚労省)に対し、意見書を提出しました。 意見書の内容は、国が第三者機関を設置して幅広く事故事例情報を収集分析することに賛意を表明しつつ、(1)義務的報告の主体をより幅広くすること、(2)義務的報告の範囲は医療機関の主観で左右されない定義とすべきこと、(3)第三者機関に一定の範囲で調査権限をも付与すべきこと、(4)第三者機関の分析体制を充実させて分析結果の迅速なフィードバックを実現すること、(5)第三者機関のために十分な予算措置をとるとともに天下りを厳格に禁ずること、等を提言するものとなっています。 なお4月15日に開催された同検討部会では報告書の最終案がとりまとめられ、平成16年度からまず国立高度専門医療センター、国立病院、国立療養所、大学病院(本院)に重大事故の報告を義務付けるという方針が打ち出されました。今後は、報告先となる第三者機関の設置と報告すべき重大事例の範囲確定のための作業がそれぞれ開始されることになります。 ※医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会宛意見書 http://www3.ocn.ne.jp/~mmic/042ikennsyo.htm ●鑑定人推薦制度の透明化を また、医療事故情報センターは、4月15日、医療問題弁護団(代表:鈴木利廣弁護士)と医療過誤問題研究会(代表:増田聖子弁護士)と連名で、医事関係訴訟委員会(最高裁)に対して意見書を提出しました。 意見書の骨子は、(1)鑑定書の公表の実現、(2)推薦依頼先の学会内における推薦手続の透明化と学会内鑑定事後評価制度の確立促進、(3)同委員会による司法的見地に基づく鑑定書評価の実施、の3点を要請するものとなっています。 なお、4月17日に開催された第9回医事関係訴訟委員会では、本年6月を目途として発足後2年を経過した同委員会の活動に関する報告書をまとめる方針が確認された模様です。また一部の学会では、学会自身による鑑定書の公表を検討する動きがあるようです。 今後は、次第に明らかにされつつある鑑定関連情報を、患者の側でどのように収集・分析するのかが問われることになりそうです。 ※最高裁判所・医事関係訴訟委員会に対する意見書 http://www3.ocn.ne.jp/~mmic/043ikennsyo.htm |
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| (2003年5月 センターニュース182号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ●急転直下、義務的報告制度の導入へ 以前本欄(175号)でお伝えした厚労省検討部会における医療事故事例情報の取扱いに関する検討がいよいよ最終段階を迎えています。 事故報告の義務化について当初部会内では消極論が支配的でしたが、本年2月21日には超党派国会議員による勉強会が開かれ、医療問題弁護団(東京)が意見書を発表して記者会見を行い、これらの動きを受けて坂口厚労相が報告義務化に前向きな発言(2月25日)をするに至った結果、3月11日の検討部会で示された報告書原案には、特に重大な事例について報告を義務化する方針が盛り込まれました。また、医療機関からのルートだけではなく、ユーザーである患者さんの側からも幅広く情報を受け付けるという方針がほぼ確定的となっています。 ●義務化の範囲と第三者機関の具体像 最終の部会が開催される4月15日には報告書の内容が固まる見通しです。今後は、義務化の範囲や情報を集約する第三者機関の具体的中身が焦点となると思われます。 第三者機関の具体像は明らかではありませんが、集めた情報を迅速かつ適切に分析検討することができるだけの十分な人的・物的資源が不可欠です。特に医療分野では事故から対策を学ぶというノウハウが十分に積み上げられてこなかった歴史がありますので、安全対策で先行する他の産業分野の専門家を大胆に登用することが強く望まれます。 |
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| (2003年4月 センターニュース181号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その21 事故公表基準〜公立病院で明文化進む | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●基準の明文化の動き 医療事故に関する情報が迅速に幅広く共有されることは、同種の事故の再発防止のために大変重要です。現在、厚労省の医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会において事故情報の取扱いについて意見の最終とりまとめが行われていますが、各地の公立病院では独自に事故情報の公表基準を明文化する動きが現れています。報道やウェブ上から確認できた例は次のとおりです。 ・新潟県立病院(H12〜)※ ・長野県立病院(H13〜) ・三重県立病院(H14〜)※ ・岐阜県立病院(H14〜)※ ・磐田市立総合病院(H15〜)※ ・四日市市立四日市病院(H15〜 予定) ・山形県立病院(H15〜 予定) ・群馬県立病院(H15〜 予定) (※印はウェブ上に公表基準が掲載されていることが確認できたもの) ●公表基準の内容は? 明文化された内容を見ると、発生した結果の重大性によって公表するかどうかの区別を行い、患者さんのプライバシーにも配慮しつつ、事故の情報を公表して、同種事故の再発防止のための基礎情報とするとともに、病院としての説明責任を果たすという点でほぼ共通しており、大変望ましい方向性であると思います。 ただ、基準の具体性という点では、極めて詳細に公表すべき内容や公表までの手順が定められているものもある反面で、具体性がやや乏しいのではと思われるものも散見されます。 今後も各地で同種の明文化が加速すると思われますので、今後の実際の運用状況も踏まえつつ、より良い公表基準のあり方をユーザー側からも提案していくことが望まれます。 |
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| (2003年3月 センターニュース180号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その20 医道審が「行政処分の考え方」を公表 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●4つの基本方針 昨年12月に開かれた医道審議会医師分科会は行政処分に関する方針を公表しました。基本方針は次の4点です。 1)業務上当然に果たすべき義務を果たしていない行為には厳正に対処する。 (応召義務や診療録に真実を記載する義務等職業倫理上当然に遵守すべき義務を含むとの注記があります) 2)医療提供機会や医師の身分を利用した行為についても処分対象とする。 3)業務外の場面でも他人の生命・身体を軽んずる行為には厳正に対処する。 4)業務を行うにあたって自己の利潤を不正に追及する行為には厳正に対処する。業務と直接関係のない場合でも、経済的利益を求める不正行為は処分対象とする。 ●医療過誤に関する方針は? 基本方針の他に、医師法違反等12の事例毎に対処方針がそれぞれ解説されています。 その中の1類型として医療過誤も挙げられており、過失の度合いと結果の大小を中心として処分の程度を決定し、刑事処分の量刑等を参考としつつ、明らかな過失やリピーターの場合には重めの処分とするとされています。 また病院の管理体制や他の医療従事者の注意義務の程度、生涯学習努力の有無等も参考とすると書かれていますが、謝罪や賠償の有無といった点は明記されていません。行政処分の強化が民事訴訟での対立激化を誘発することがないよう、これらの点も処分程度の決定にあたって考慮する方針を早急に明確化すべきです。 ●刑事事件以外の医療過誤も処分対象へ 医療過誤については、刑事事件とならなかったケースであっても明白な注意義務違反の認められれば処分対象とする方針が総論部分に明記されました。具体的な運用方法等は今後早急に検討されるとのことです。 なお一部では、被害者からの処分申立を積極的に受理する方針と報じられましたが、今回公表された資料中には特別の言及はなされていませんでした。この点は被害者側にとって重大な関心事であり、今後の医道審の姿勢が注目されます。 |
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| (2003年2月 センターニュース179号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その19 医学は建築に追いつけるか?〜鑑定への対応の違い | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●建築訴訟と鑑定 建築訴訟は医療過誤訴訟と同様に専門的知識を必要とする訴訟類型ですので、鑑定人確保については医療過誤訴訟と同様の問題を抱えています。最高裁は平成13年7月に建築関係訴訟委員会を設置し建築訴訟における鑑定人確保に乗り出しました。最高裁の動きにに対する建築界の反応は、医療と鑑定の問題を考える上で極めて示唆的です。 ●日本建築学会の取り組み 日本建築学会では、建築関係訴訟委員会に呼応して、会長直属の組織である司法支援建築会議を設置しました。同会議には4つの部会が設置され、鑑定人候補者選定を担当する支援部会では「鑑定人・調停委員の選任に当たって中立性、公平性を維持して行くために、その選任基準を策定中」(司法支援建築会議会報2号p1)です。また調査研究部会では、1)建築紛争の調査分析、2)鑑定・調停事例の調査分析、3)裁判例の分析を目的として活動しており、「現在、東京地裁よりいただいた最近の資料の分析手法の検討を行っており、一方で学会推薦の調停委員、鑑定人アンケート調査の結果をとりまとめ中で、その一部は近日中に運営委員会に提出する予定」(前同)とされています。これらの情報は日本建築学会のウェブサイトで同会議の運営規定や会議登録会員名等とともに公開されています。 このように建築訴訟の分野では、鑑定人推薦の母体となる団体が、社会に向けて積極的に活動状況を説明しており、推薦基準の策定や鑑定結果の分析検討といった取り組みも始めています。 ●医学界の動向は? 現時点で日本医学会には司法支援建築会議に相当するような組織は設置されていません。各学会でも、日本脳神経外科学会や日本集中治療医学会、日本癌治療学会等のように鑑定人候補者選定のための委員会等を立ち上げたところもあるようですが、まだまだ少数派ですし、既に委員会を設置した学会のウェブサイトを見る限りでは、日本建築学会ほど積極的に情報を発信しているとは言い難い状態です。 ●組織としての公的な対応を 公的機関からの鑑定人推薦依頼に適正に対応するには、インフォーマルな処理ではなく、組織として説明責任を果たしうるだけの公的な対応が求められます。 日本医学会長は「訴訟に関連して、公正中立の立場にたつべき鑑定人を選ぶにあたり、裁判所から日本医学会にその世話をするよう依頼があった。こうして次第に、日本医学会は以前よりもさらに「信ずるに足る団体」になりつつある。」(日本医学会だより27号p1)と述べていますが、建築界に後れを取ることなく「信ずるに足る団体」となりうるかどうか、今まさにその真価が問われています。 |
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| (2003年1月 センターニュース178号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その18 「地元完結型」交流からの脱皮〜「相互乗り入れ」方式への転換は急務 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●地域内交流は35の地裁へ拡大 各地裁における今年度の医療訴訟ガイダンス・連絡協議会開催状況(平成14年11月22日現在。実施予定も含む)は以下のとおりであることが判明しました。 <ガイダンス> 釧路、秋田、盛岡、前橋、東京、横浜、静岡、名古屋、金沢、大阪、神戸、和歌山、岡山、広島、鳥取、松江、高知、松山、福岡、大分(20カ所) <連絡協議会> 札幌(+函館が共催)、旭川(+釧路が参加)、青森、仙台、宇都宮、さいたま、千葉、東京、甲府、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、山口、高松、徳島、福岡、鹿児島(19カ所21地裁) 従って今年度末までには少なくとも35の地裁が地元医療界との接点を持つことになります。 ●地元完結型に対する医療界側の抵抗感 このように各地裁単位で法曹界と医療界との連携をはかる動きは一気に広がりつつありますが、現状では各地裁間で連携をはかる動きは見られません。 名古屋で実施されたガイダンスでは、大学病院側から「医療界の封建性が鑑定意見を述べにくくさせている」「近隣病院の事件を鑑定することには抵抗感がある」「被告病院名を知ってしまうとどうしてもバイアスがかかってしまうので、被告名を匿名化した形で鑑定を依頼してもらえれば中立な意見を言えるのだが」というような声が聞かれました。同様の意見は各地の連絡協議会でも報告されています。 ●相互乗り入れ開始は急務〜高裁、最高裁は積極的にアレンジを すでに全国の地裁の7割が地域内連携を開始していますので、各地裁が相互に連絡を取り合うことによって、医療界が指摘する地元完結型への抵抗感を解消することは可能です。地元完結型から脱皮することは裁判所の中立公平性に関する疑念の払拭にもつながります。より幅広い地域から多様な鑑定人の選定を可能とする「相互乗り入れ方式」の実現にむけて、各高裁や最高裁は各地裁相互の連携を積極的にアレンジすべきです。 |
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| (2002年12月 センターニュース177号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その17 これからの1年に向けて〜情報量の増大に対応しうる仕組みを | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 2000年11月に医療事故情報センターの嘱託となってから、今月でちょうど丸2年が経過しました。当初予定の任期は2年間となっていましたが、当面もう1年、従来同様に嘱託職を務めることになりました。 この2年の間、医療界と法曹界がかつてない変革期を迎えたことに追われるように夢中で走ってきましたが、新たに手をつけてみたものの明確な形にできていない案件も数多く、大変忸怩たる思いで毎日を過ごしています。 今年に入り、各裁判所がweb上で重要判決を速報するようになりました。医事関係訴訟委員会や医療過誤集中部、さらには各地裁における地元医療界との協議会等の動向に関しても、今後数多くの重要な情報が発表され続けることでしょう。近い将来、より多数の医療関係者が鑑定人や専門委員として訴訟の現場に参入する可能性があり、それら専門家の質に対して厳しい監視を加えるためにも、鑑定事例等の情報分析は欠かせません。 このように、私たちが入手しうる情報も、そして入手すべき情報も、ともに増加の一途をたどることが予想されます。 これからの1年は、増大する情報を迅速に分析して活用可能とする仕組みの構築を、嘱託としての最も重要な課題と位置付けて日々試行錯誤を重ねていくつもりです。各地の皆さんのお知恵をお借りできると幸いです。 あらためて、これからの1年間、よろしくお願いいたします。 |
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| (2002年11月 センターニュース176号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その16 医療事故情報は活用されるか?〜厚労省検討部会がスタート | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 平成14年7月29日、厚労省医療安全対策検討会議内に設置された「医療に関する事故事例情報の取扱いに関する検討部会」が第1回会合を開きました。 今年4月に同検討会議が発表した『医療安全推進総合対策』では、インシデント事例(=悪しき結果は未発生の事例)の情報については、厚労省が既にスタートさせている医療安全対策ネットワーク整備事業に全ての医療機関が参加できるようにするという方針を打ち出されました(現行の参加医療機関は特定機能病院と国立病院・療養所)。しかし、実際に悪しき結果が発生してしまった事例(=医療事故事例)の情報の取扱いについては、今後の検討課題として具体的提言が先送りされていました。 この先送りにされていた課題の具体的検討が、今後同検討部会において進められることになりました。医療事故の情報が患者のために十分活用されることになるのかどうか、議論の行方を注視する必要があります。 検討部会の第1回会合では、事務局から事故事例情報についての論点が説明されましたが、その中では、医療機関や行政からの情報提供のみならず、損保会社保有の事故情報の活用可能性についても言及されており、かなり幅広い論点について議論がなされるようです。また次回会合以降、同検討部会では医療事故被害者や有識者からの意見聴取も行われる見通しです。 検討部会は公開で行われていますので、是非傍聴等にご参加下さい(次回は9月26日。第3回会合は11月14日になりそうです)。なお、議事録や会議の日程については厚生労働省の「審議会議事録等(その他検討会、研究会等)」のページに随時掲載される予定です。 ■ 厚生労働省関係審議会議事録等:その他(検討会、研究会等) http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html |
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| (2002年10月 センターニュース175号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その15 迷走注意!〜「医療安全相談センター(仮称)」の行方 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●二次医療圏ごとに各都道府県が設置へ 今年4月に厚生労働省医療安全対策検討会議は『医療安全推進総合対策』の中で「医療安全相談センター(仮称)」の設置を提唱しましたが、その設置に向けた準備が各都道府県で開始された模様です。 この構想は、各都道府県が二次医療圏ごとに患者の苦情や相談に応じる窓口を設置し、それらを統括する中心的な評議会的組織を各都道府県毎に1つ設置するというような内容となるようです。しかしながら、相談を誰が担当するのか、苦情や相談にどう回答するのか、指導等の権限が与えられるのかといった具体像は一切明らかになっていません。現時点では国の音頭に従って各都道府県にて白紙状態からあれこれと模索している状況のようですが、本年末ころには予算措置の概況が明らかとなり、設置に向けての動きが急加速する見込みです。 ●窓口の中立性 二次医療圏ごとに相談窓口を設けるには、各都道府県がそれぞれ10個前後の窓口を設置することになりますが、各都道府県が独自に十分な資質のある相談担当職員を配備することは非常に困難と予想されます。おそらく各都道府県では、専門的知識を有する相談員を確保するために、地元医師会に協力を仰ぐだろうと予想されます。しかし医師会は賠償責任保険の運営主体としての一方当事者性を有しています。地元医師会関係者が苦情の対象とされることも多いはずです。設置される相談窓口の中立性確保については慎重な配慮が不可欠です。 各地研究会・弁護団単位で地元都道府県の担当者と早期に意見交換の機会を持つことでどのような窓口が設置されるのか注意深く見守るとともに、医療事故に関する相談については各地研究会・弁護団の窓口が受け皿となりうるよう、さらなる体制強化を図る必要があると思われます。 ※医療安全推進総合対策のURL http://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0110/tp1030-1y.html |
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| (2002年9月 センターニュース174号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その14 医事関係訴訟委員会〜第5回会合の動向 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ●新たに8件を推薦依頼 同会合ではあらたに8件について推薦依頼先学会が選定されました。また、前回の会合までに学会選定が完了した全事件について、その後の経過についての一覧表が公開されています。学会選定後1〜2カ月程度で各学会から鑑定人候補者の回答がなされているようですが、推薦された医師の氏名は明らかにされていません。また各学会内での推薦基準や推薦手続についての情報もありません。一覧的に情報が開示されることは望ましいことですが、より詳細な情報開示が臨まれます。 ●学会内推薦システム 議事録によれば、日本循環器学会では推薦依頼を同学会医療倫理委員会内で処理しており、日本外科学会では新たに鑑定人推薦のための委員会が設置されたとの情報が紹介されています。推薦プロセスの透明性確保には、各学会内での明快なシステム構築が不可欠です。これらの組織が透明性確保に先鞭を付けるものとなるのか、動向が注目されます。 ●委員会は地元連携重視? 同会合には千葉、東京、大阪の各地裁の医療過誤集中部の判事がオブザーバーとして出席し各地の状況を委員に説明していますが、地域医療機関と地元裁判所の連携の動きはますます進行しているようです。 議事録では、同委員会と地域ネットワークとの関係について、キャパシティとの関連から「まずは地元医療機関に依頼できるようにすることが望ましい」との説明がなされています。しかし各地で自助努力することと、地元医療機関に鑑定を依頼することの間に論理的な必然性はありません。地元医療機関=潜在的(あるいは実際に)被告であることが多い以上、各地裁はむしろ他地域との連携を強化すべきです。地域ネットワークは地元裁判所のためではなく、むしろ他地域の裁判所にとって有益なシステムとなるべきでしょう。地域完結型ネットワーク作りの動きについては今後も注意が必要です。 |
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| (2002年8月 センターニュース173号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その13 反論機会のない鑑定制度?〜法制審による「専門委員」導入論 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 司法制度改革審議会意見書が提言した専門委員制度については、法制審民訴人訴部会で議論されてきましたが、6月末に同部会から中間的な試案が公表される予定となりました。 司法審意見書では、争点整理のサポート、和解の担当・補助、専門的知見を要する問題点に関する調査・意見陳述、証拠調べへの関与等といった態様で専門家が訴訟に関与する制度が念頭に置かれていました。現在は同部会内において、導入を前提としつつ、当事者の同意なく専門委員を関与させることができるか、訴訟のどの段階で関与させるか、専門委員の発問権を認めるか否か等が議論の焦点となっているようです。 専門委員たる医師が公正な第三者的立場で関与するとは限らないこと、専門委員の意見に対する反論機会の保障が乏しいこと等に照らすと、内容によっては「反論機会なき鑑定制度」の創設につながりかねない危険性をはらんでいます。 中間的試案発表後の日程としては、今年の夏ころまでにパブリックコメント募集等で意見集約がなされ、9月以降さらに審議会で議論を加えた上で、来年の通常国会には改正法案が提出される見通しです。既に医療問題弁護団(東京)が平成14年3月1日付けで導入反対の論陣を張った意見書を公表済ですが、中間的試案の公表後にはあらためて各地の弁護団・研究会にて迅速な意見集約をお願いしたいと思います。 |
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| (2002年7月 センターニュース172号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その12 平成13年の医療過誤訴訟の概況〜最高裁の統計より | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 先頃最高裁から発表された平成13年の医事関係訴訟統計の概要をお知らせします。 ●提訴件数は800件を越し、未済件数も過去最高に 平成13年の新受件数は805件に達し、過去最高だった昨年の件数(775件)を上回りました。平成7年以降、毎年過去最高が更新され続けてきましたが、増加の勢いに衰えは見られません。年間の既済件数は715件、平成13年末時点で係属中の件数は1968件で、こちらの件数もともに過去最高となっています。 ●審理期間は過去10年で最短 平均審理期間については、平成12年までは35〜36ヶ月程度で横ばいとなっていましたが、平成13年は32.7ヶ月(前年比で−1.8ヶ月)となり、過去10年でも最短となりました。審理期間の短縮要因は医療過誤集中部の設置や集中審理の普及などが考えられますが、争点や証人の無理な絞り込みがなされることで審理内容が希薄化してはいないか心配される側面も感じられます。 ●相変わらず低い勝訴率 平成13年の既済件数715件のうち、判決で終わったものは331件、和解が315件、取下げ31件(残りは請求の認諾、放棄等)でした。判決で終わったもののうち、勝訴率(一部勝訴を含む)は38.4%でした。年によってばらつきはありますので、これらの数値に例年との顕著な傾向の違いは見られませんでした。 ●提訴前の証拠保全実施率〜6割以上は証拠保全を経ずに提訴 提訴前の証拠保全の実施率は、平成12年では37.3%、平成13年では38.3%と報告されています。実に6割以上の訴訟が証拠保全を行うことなく提訴されていることになります。医療過誤訴訟全体を俯瞰した場合、まだまだ提訴前に証拠を確保し、十分な準備や検討を行うことの重要性が浸透していないのでは、と危機感を感じました。 |
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| (2002年6月 センターニュース171号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その11 裁判所が下級審主要判例をネット公開へ 医事関係訴訟委員会〜第4回会合の動向 |
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| ●裁判所が下級審主要判例をネット公開へ 裁判所は平成14年3月から各地裁・高裁のサイトを開設し、各下級審裁判所の主要判決全文の公開を試験的に開始しました。この中には医療過誤訴訟判例も相当数掲載されていますので、同種事件を担当する際の参考になりそうです。 なお、小松弘弁護士のサイトでは、各地裁・高裁によって日々新たに掲載される判例情報が逐次整理されていますので便利です。 ◇裁判所のホームページ http://www.courts.go.jp/ ◇小松弘弁護士「今日の下級裁主要判決情報」 http://icrouton.as.wakwak.ne.JP/pub/courtsdomino/today.html ●医事関係訴訟委員会〜第4回会合の動向 同委員会第4回会合は平成14年3月6日に第2回鑑定人等候補者選定分科会と合同開催されました。第4回委員会ではあらたに5件が取り扱われました(推薦依頼先は日本整形外科学会×3、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会)。これで同委員会取り扱い件数は通算19件です(平成14年4月11日現在、依頼取り下げのあった1件を除き、18件が各種学会に推薦依頼済みであり、そのうち12件について既に学会から鑑定人候補者の推薦がなされています)。 現時点では推薦された鑑定人候補者の氏名や学会内での推薦基準が明らかにされていないなど、委員会の透明性には依然として問題が残っていますので、今後も注視が必要です。 ※同委員会に関するネット上の情報は裁判所のサイトのリニューアルに伴い最高裁のホームページの「お知らせコーナー」に移転しています。 |
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| (2002年5月 センターニュース170号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その10 徳島地裁「地元密着委員会」の欠陥 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 徳島地裁は「医事鑑定人候補者推薦委員会」を発足させました(H14/3/13毎日新聞)。報道によれば、徳島大学医学部附属病院長(=委員長)及び徳島大学医学部長が推薦した医師(5名)の計6名によって構成される委員会が、医療過誤訴訟の鑑定人候補者を徳島地裁に推薦する仕組みとのことです。 徳島地裁に係属する事件では、地元徳島大学医学部と密接な関連を持つ医師や医療機関が被告となっている事案も少なくないと想像されるところです。徳島大学関係者のみで構成された委員会が徳島地裁の訴訟について鑑定人候補者を推薦する仕組みは、同地裁における裁判の公平性を著しく害する可能性をはらんでいます。 今年に入ってから、各地裁では、医療過誤訴訟の迅速化に関連して、地元大学病院との連携を強めようという動きが加速しています(医療訴訟ガイダンス等。センターニュース167号嘱託日誌参照。) しかし、このような地元に密着した手法では、仮に訴訟の迅速性が実現できたとしても、訴訟の公正さが犠牲にされてしまいます。迅速さと公正さは訴訟という車の両輪であり、一方を犠牲にする「改善」には何の意味もありません。 地元密着が裁判の公正さに与える深刻なダメージについて全く無頓着な各裁判所の動きに対しては、更なる情報収集の上、批判的監視を加える必要があると感じています。 (嘱託日誌へのご意見・ご感想等は mmic001@mint.ocn.ne.jp までお寄せ下さい。) |
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| (2002年4月 センターニュース169号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その9 医事関係訴訟委員会〜第3回会合 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 医事関係訴訟委員会の動向ですが、最高裁民事局提供の資料によれば、平成14年1月16日に第3回委員会会合が第1回鑑定人等候補者選定分科会と合同開催され、新たに9つのケースについて推薦依頼先の学会を決定した様子です(日本循環器学会×3、日本神経学会×2、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本小児科学会、日本整形外科学会。なお、平成14年2月15日現在、最高裁のHPには第3回会合の議事録は掲載されていません)。 また第2回委員会で推薦依頼先が決定した5件(6件あったはずですが、今回提供の資料では日本老年医学会宛に推薦依頼がなされたはずの事案の状況が不明となっています)のうち、日本乳癌学会及び日本脳神経外科学会は、委員会に対する鑑定人候補者の推薦を完了しており、既に委員会を通じて各裁判体に候補者名が伝えられた模様です。 各学会相互の間にも、積極的に鑑定の質を確保・維持しようとする学会と、その点に関心のない学会の差が出てくることも予想されます。 今後は、(1)学会内でどのような推薦基準が用いられたのか(2)候補者を検討したのは学会内のどういった組織なのか(3)推薦結果が学会内で広く報告されたか(4)実際に作成された鑑定書のピアレビューを学会内で行ったかどうか等の追跡を行い、各学会の姿勢を外部から評価していくことが重要となると思われます。 |
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| (2002年3月 センターニュース168号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その8 「医療訴訟ガイダンス」の動向 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 最高裁民事局が地裁と地元医療機関との関係強化を目的として八高裁所在地の地裁等に開催を促した「医療訴訟ガイダンス」の概要が明らかとなりました。1/21の名古屋開催初回は、法廷で被告医師主尋問の傍聴見学が実施されたようです(鑑定人尋問の傍聴を予定していたが日程調整ができなかった模様)。各地裁には地元医療機関の訴訟が係属している可能性も高いと思われますので、鑑定人確保のためにこの種のガイダンスの必要性が否定できないとしても、地域単位で地裁と地元医療機関が連携を深めることについては訴訟の公正さを損なう面もあり、透明性の確保が必須かと思われます。 ○東京=2/27(東京医科歯科大)未定(地裁):東京医科歯科大 ○千葉=2/14(地裁?):千葉大、順大、帝京大市原病院、慈恵大柏病院、東邦大佐倉病院、日医大千葉北総病院 ○大阪=1/25(大阪市大)2/13(阪大):大阪市大、阪大 ○名古屋=1/21(地裁)3/19(名大):名大 ○広島=3/1(地裁)3/5(広大):広大、広島市民病院、県立広島病院、広島市立舟入病院、国立吉島病院、広島赤十字原爆病院 ○福岡=2/26(地裁):九大、福岡大 ○仙台=3/5(東北大)3/13(地裁):東北大 ○札幌=2/6(北大)2/25(札幌医大):北大、札幌医大 ○高松=2/6(地裁):香川医大 ※主催地裁=開催日(場所):出席者所属先。日付はいずれも平成14年。 |
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| (2002年2月 センターニュース167号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その7 医事関係訴訟委員会〜ネット上での公開状況 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 前々号及び前号でお伝えした最高裁医事関係訴訟委員会に関する資料がインターネット上で公開されました。本年10月31日に開催された第2回委員会の議事要旨まで掲載されています(12月15日現在)。最高裁のホームページ(http://www.courts.go.jp/index.htm)を開き「トピックス」→「医事関係訴訟について」とたどると誰でも関係資料を閲覧できます(同委員会設置規則や過去10年の医療過誤訴訟の統計等も開示されています)。 第2回議事要旨の中には「(別紙)推薦依頼のあった事案等について」として、6件の鑑定人推薦依頼事案の概要と、鑑定人推薦依頼先として選定された各学会名(日本外科学会、日本乳癌学会、日本老年医学会、日本内視鏡外科学会、日本新生児学会、日本脳神経外科学会)が明らかにされています。 このように、情報がオープンにされるということは大変望ましいことです。 今後は、具体的に推薦を依頼した結果(推薦された鑑定人候補者は誰か、どのような鑑定を行ったのか、鑑定結果を委員会としてどう評価したのか等)について、どの程度の情報が開示されていくのか、委員会の透明性にも注目していきたいと思います。 ◇医事関係訴訟委員会について http://courtdomino2.courts.go.jp/oshirase.nsf/0/8056f5d7e1b6060449256b7400192e8f?OpenDocument ◇推薦依頼のあった事案等について(第2回委員会) http://courtdomino2.courts.go.jp/shiken.nsf/0258b7a1680aa82849256467004875a6/ 3e90eaf5304184e449256b1b00200a21?OpenDocument |
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| (2002年1月 センターニュース166号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その6 鑑定問題等の日程について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 既に終了しているものも含め、現時点で把握できている各種日程をまとめてみました。情報集約がまだまだ不十分ですので、各地の状況がおわかりの方は、情報センターまでご一報下さい。 ○医事関係訴訟委員会 鑑定人確保のための最高裁の試み。各学会への協力要請等。
○鑑定人等協議会 八高裁が主催。鑑定経験ある医師や原被告側弁護士らを交えて裁判所が円滑な鑑定の実施等について協議(※札幌高裁、広島高裁の日程は未確認)。
○医療訴訟ガイダンス 八高裁所在地の地裁が主催。地元大学病院等を対象に訴訟や鑑定の実情等を裁判所がレクチャー。日程詳細未確認だがH13年度中には開催か。 ○法制審民事・人事訴訟法部会 司法制度審議会意見書の具体化について審議開始。敗訴者負担問題の検討時期は不明。
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| (2001年12月 センターニュース165号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その5 動き出した最高裁「鑑定人推薦構想」 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 今年1月に新聞各紙で報じられた最高裁による鑑定人推薦に関する委員会構想は着々と進行しています。今年6月には関連規則が整備され、同7月には医事関係訴訟委員会という名称で実際の活動がスタートしました(詳しい経過については林道晴「医事・建築関係訴訟委員会の設置及び活動について」判タ1066-26)。 同委員会による鑑定人候補者の推薦が医療過誤訴訟の現場にどのような影響を与えることになるのかは今後の推移を見守る必要がありますが、推薦の結果として適切な鑑定がなされたかどうかの検証については同委員会での運用に任されており、制度的な担保がなされていません。当方から独自に検証を加えていくためには、どのような推薦事例があるのかという情報を集めることが不可欠です。11月には同委員会内部に分科会が設けられて推薦の実務体制が固まりますので、実際の推薦事例が各地で出てくるものと予想されています。医療事故情報センターでは医療過誤集中部の動向等も含め積極的に事例収集を行っています。FAX(052-951-1732)等で結構ですので、各地の実例を是非お寄せ下さい。 |
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| (2001年11月 センターニュース164号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その4 弁護士費用敗訴者負担問題その後〜これからが正念場 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 司法制度改革審議会の中間報告で、民事訴訟において原則として弁護士費用を敗訴者に負担させるという構想が突如として打ち出されたのは昨年11月のことでした。このような制度では医療過誤訴訟は萎縮の一途をたどるとの危機感から、医療事故情報センターではアンケート調査を行い、その結果を踏まえて今年2月に司法審宛てに導入反対の意見書を提出しました(詳細は医療事故情報センターホームページをご覧下さい)。 敗訴者負担制度については、同様の反対意見が司法審宛てに多数寄せられた結果、今年6月に発表された司法審の最終意見書に「不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなく」という表現が入るに至りましたが、これだけ根強い反対意見にも関わらず、未だ原則導入という姿勢は崩れていません。今後も予断を許さない状況です。 司法審はすでに司法制度改革推進準備室に引き継がれ、司法制度改革は第2ラウンドに入って具体的法案検討が開始しています。これからが正念場です。同準備室でも引き続き意見を募集しておりますので、各地弁護団を初めとする皆様からも是非この点について反対の意思表明を繰り返し行っていただけることを切望しています。 |
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| ○意見書宛先 〒105-0001東京都港区虎ノ門1−18−1
虎ノ門10森ビル 司法制度改革推進準備室 |
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| (2001年10月 センターニュース163号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その3 資料収集 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| これまで医療事故情報センターでは、裁判資料を中心に事故情報を収集してきました。ただ、全国各地の裁判事例を網羅的に把握できているわけではありませんので、情報源は主として正会員から逐次寄せられる資料だけが頼りという面がありました。 ところで、この数年の医療事故やその訴訟に関するマスコミ報道の増加には著しいものがあります。そこで3ヶ月ほど前から、新聞報道等に基づいて、情報センター事務局から積極的に問い合わせを実施し、判決文などを集めるようにしたところ、一定の成果が上がりはじめました。今後はその情報の速報・分析の体制構築を通じて、情報を有効にフィードバックできるよう努めたいと考えています。 各地の正会員の方々や弁護団・研究会事務局には、報道事例を中心として事務局からいろいろな問い合わせを続けていきますので、お手数をおかけしますが、ご協力の程、よろしくお願いします。 |
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| (2001年9月 センターニュース162号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託日誌 その2 嘱託の業務 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 嘱託の具体的業務ですが、日常的には、事務局に常駐し、事務局メンバーが判断に困る事項について相談を受けたり指示をしたりといった仕事をしています。嘱託だけでは判断がつかない事項については、理事長や常任理事会に相談しつつ日常業務を進めています。医療事故情報センターに対するマスコミからの取材や問い合わせに対応するという広報的な仕事もありますし、アンケート調査やシンポジウムなどといった重点案件について遊軍弁護士として調査や折衝を行うという仕事もあります。個人的な弁護士業務と掛け持ちですので完全には嘱託業務に専念できないのが残念ですが、毎週21時間以上は事務局に在駐するという取り決めは今までのところ相当の余裕を持ってクリアできています。 今後は、迅速な訴訟情報の収集・分析、HP等を通じた密接な情報交換等を実現できるよう頑張りたいと考えておりますので、いろいろなご要望を嘱託までお寄せ下さい。 |
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| (2001年8月 センターニュース161号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 嘱託日誌 その1 はじめまして | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| このたび医療事故情報センターの嘱託として仕事をすることになりました堀と申します。これから2年間、名古屋においてセンターの運営実務に携わることとなりました。微力ではありますが、一生懸命取り組みたいと思いますので、どうか宜しくお願いいたします。 私は弁護士4年目の30歳です。修習期は49期、司法研修所が湯島から和光市に移転して2代目の修習生、という年代にあたります。私は生まれも育ちも名古屋なのですが、大学入学時に上京し、修習中も含めてつい先頃までずっと東京で生活していました。 医療事故訴訟に関心を持つようになったきっかけについては、実ははっきりとしたものがあるわけではなく、どうして?という質問を受けた際には返答に窮することもしばしばです。 いろいろ思い起こしてみたところ、修習生になった際、いろいろな弁護士の仕事の一つとして医療事故訴訟という分野があることを知り、漠然とした関心を持つようになった頃、実務修習先の指導担当弁護士のご厚意で徳島で開かれた医療問題弁護団・研究会全国交流集会に参加できることとなったのですが、その際に目にした参加者の方々の姿勢が自分が法律を勉強し始めた頃にイメージしていた弁護士像にぴったりと符合したことが、一つのきっかけのような気がします。 修習修了後は、東京の吉川総合法律事務所に就職し、吉川孝三郎弁護士の下、新人弁護士としてのスタートを切り、この10月まで医療事件を初めとする様々な業務について、指導を受けて参りました。 この間、いろいろな医療事故についての相談を担当し、実際に訴訟事件もいくつか担当するという経験を得ることができたのですが、実際に担当してみて、思った以上に大変な仕事であることを身に沁みて感じるとともに、医療事故に関連する問題の大きさ、根の深さなどをも思い知らされました。また、全国交流集会や海外視察などの際に、個性あふれる全国各地の諸先輩の取り組みを見聞きするにあたって、自分自身、より一層の専門性を身につける必要があることを痛感させられました。 そんな折りに、医療事故情報センターの嘱託弁護士として働いてみないかというお話をいただき、このたび名古屋において新たなスタートを切ることとなった次第です。医療事故訴訟を学ぶためのまたとない機会をいただいたことに深く感謝の念を申し上げます。また、私の勝手な希望にも関わらず快く名古屋へ送り出して下さった吉川先生には、この場をお借りして心より御礼申し上げます。 これからは400名を越える全国の医療事故情報センターの会員の方々の手となり足となって、医療事故訴訟に関連するさまざまな業務をお手伝いさせていただくことなります。 まだまだ全くの駆け出しですので、どのようなお役に立てるかわからないような状態ではありますが、会員の方々からいろいろなアイデアを出していただいて存分に活用していただければ幸いに存じます。 なお、センターにはほぼ常駐する予定ですので、お気軽に声をおかけください。 それでは、これからの2年間、どうかよろしくお願いいたします。 |
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| (2000年12月 センターニュース153号掲載) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ご意見・ご感想をお寄せください mmic001@mint.ocn.ne.jp