We CAN still SAVE Enneapterygius miyakensis !!

私たちは危急種ミヤケヘビギンポをまだ野生絶滅から救うことができる

完全な婚姻色を示すミヤケヘビギンポ
撮影:佐々木 聡
婚姻色が一時的にほぼ色あせたステージ、
長太郎池、水深約1m1996

 ミヤケヘビギンポEnneapterygius miyakensis は伊豆諸島三宅島で初めて発見された、生態や分布がよく知られていないヘビギンポ科の磯魚です(Fricke 1987)。これまでにこの海水魚は、伊豆諸島八丈島(中坊 1993)、伊豆諸島大島(今井圭介,宮本育昌,大賀 猛 私信)、伊豆海洋公園(Vinさん 私信)から知られていますが、日本での詳しい分布や生態はよくわかっていません。この海水魚の確実な繁殖場所は三宅島(Fricke 1987,山本 未発表)、八丈島(原崎 森 私信)で知られているのみであり、分布の限られる種であると考えられています。

 ミヤケヘビギンポは、これまでに三宅島南部にある通称「長太郎池(ちょうたろういけ)」、「富賀浜」、南西部にある通称「学校下」、北西部にある通称伊ヶ谷湾「カタン崎」の水深6m以浅、波が強い岩斜面で見られ、繁殖期間は例年3月下旬から5月下旬頃まで。繁殖期にのみ見られるオスの体色変化である婚姻色から、ヘビギンポ科同属他種とこの海水魚を誰でも識別できます。
 例年、三宅島の
3月から5月頃の平均水温は約15度〜17度です。これまでの観察から、ペア産卵を開始するタイミングの一つに水温が影響している可能性が高く、この海水魚は暖帯に適応していると思われます。益田・小林(1994)によると、この海水魚は琉球列島に分布すると記載され、Sato(1991)によれば、小笠原諸島から報告され、岡村・尼岡(1997)によれば、南西諸島の沖縄島に分布すると記載されています。しかし、私たちは上記の理由から、種の同定に疑問を持っています(Jack T. Moyer PC)。
 益田・小林
(1994)および岡村・尼岡(1997)に掲載された写真は、三宅島での繁殖期に見られる婚姻色が色あせた体色のミヤケヘビギンポとは、体形・体色が異なっており別種である印象を受けます。

 もっとも、非繁殖期に見られる体色は同属他種と相似しており、まったく区別がつきません。種に特有なオスの婚姻色が、この海水魚を発見するポイントです。遺伝的なものであるという繁殖期間や産卵生態が三宅島産の個体のデータと一致するかどうか比較する必要があります。

 1996年度の観察では、この海水魚より個体数が少なかったヘビギンポE. etheostomus との求愛行動におけるパターンの違いは認められませんでした。(1)1996年から1998年度にかけて、例年にない冬期の水温低下が長く続いた、(2)1995年の大型台風12号による生息環境への影響、(3)護岸工事などの人為的な影響などもあり、明確な原因は不明ですが、1996年度と比べ、1997年度はこの海水魚の個体数が減少する傾向が認められ、ヘビギンポが優占種でした。1996年度の調査では、両種のなわばりの重複および隣接が見られなかったのですが、1997年度の調査でなわばりの重複が見られます。これは、ヘビギンポとの空間や餌をめぐる種間競争が、自然攪乱などの影響からより激しくなったことが原因であると想像されます。

 繁殖期にのみオスはミヤケヘビギンポに特有の婚姻色を示し、約1m×1m前後の狭いなわばりを形成します。岩に波が直接あたらない側の、照度が比較的低い斜面で、静止しあまり動きまわりません。ペア産卵のほか、数尾のメスとの同所的産卵行動が認められています。産卵後、オスが卵を保護します。また、産卵期間でも、大潮の満潮時刻などで波やうねりがなわばりへ強くあたる条件下や、時折観察されたことですが、メスの産卵が始まると、婚姻色が一時的に色あせた体色に変化します(写真を参照)。この体色は、非繁殖期に見られる通常の体色とは異なりますが、経験を積み、注意深く観察することによって、同属他種と本種を識別することができます。
 体長に明かな雌雄差はなく
(メスより体長の小さな成熟したオスが存在する)、個体数データが少なく、性比は確定できません。ヘビギンポ科同属他種との産卵場所あるいは時間による産卵における種間競争についてもまったくわかっていません。

 ミヤケヘビギンポは生態や分布の良く知られていない海水魚です。私たちはこれまでの調査結果から、1996 IUCNレッドリストカテゴリー(Baillie and Groombridge 1996)基準B2cおよびD2に基づけば、この海水魚が伊豆諸島三宅島では危急種(VU)が妥当であろうと判断しました。人による活動の影響などから、この海水魚の代表的な生息地である三宅島南部の通称「長太郎池(ちょうたろういけ)」での生息環境が失われつつあります。毎年、繁殖の季節にミヤケヘビギンポ観察会を行っています。この海水魚の保護活動を行うにあたって、国内での分布の限界や現状を把握することは重要なことです。
 全国のダイビングポイントでこの海水魚を発見された方で、資料を提供いただける方は、日時・ポイント・水深・水温・生息環境・体長・行動習性・潮流の有無などの観察記録と、できれば写真・ビデオを添えた情報の提供をお願いします。

ミヤケヘビギンポに関する研究論文

これまで寄せられた本種の観察情報
 ・場所:伊豆大島「秋の浜」、1999731日、水深3m、朝、水温24度、産卵はオス1尾対メス1尾、婚姻色開始は大体7/下旬から(宮本育昌 私信)
 ・場所:伊豆大島「秋の浜」、
200277日、水深3m、流れ:けっこう、うねってた、水温20-21度ぐらい、オス1尾近くにメス3尾、9時頃は綺麗な色、11時頃はくすんだ色に(大賀 猛 私信)
 ・場所:伊豆海洋公園「エントリー口」、
200466日、水深1m、干潮時、水温20度、婚姻色、3-4週間観察されたという(Vinさん 私信)

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