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<目次> 平城宮について 木簡、遺物、遺構 世界遺産に登録 京奈和自動車道 最近の動き 2002.6.7 資料 シンポの意義 2002.4 高速道路 2002.6 地質について 2002.6 歴史の証人 2002.6 大気汚染 2002.6 |
第30回世界遺産委員会リトアニア会議に要請のためオブザーバー参加した守る会の小井事務局長(要請団長)からの報告書です。世界遺産委員会は平城宮跡バッファゾーンへのトンネルによる高速道路通過問題について正式議題に掲げ、30COM7B.67の決議(報告書の次項参照)をあげました。 11月にセンター長のバンダリン氏が来日され、来奈も予定されていることが明らかになりました。 決議は英語で成されています。決議の理解の便宜のために小井事務局長のメッセージを決議の次に掲載しました。 第30回世界遺産委員会(リトアニア・ビリニュス)に オブザーバー参加して 7月8日〜16日、リトアニア・ビリニュスで開かれた、第30回世界遺産委員会への要請団一行(小井修一団長)23名のうち、一行から3名のオブザーバーが参加し、所期の目的を果たし、15日帰国しました。 当初の目的であった世界遺産センター、アジア・太平洋部長、ジョバンニ・ボカルディ氏と、会議中の7月9日、午後3時30分から会場のホテルリトバで約40分間、会談しました。 ○ 「11月3日、世界遺産センターが日本を訪問する予定である、バンダリン氏が奈良も訪問する。その時に話し合う機会を持ちたい。」 ○ 「資料を送ってもらっているが、長いと忙しくて読めない。短くしてほしい。調査資料は客観的であるためには、第三者の調査である方が判断しやすい。」 ************ 会議初日から全体会議に報告を行うなど超多忙の中での会談でした。特に平城遷都1300年記念事業については、肝心の手続きを無視して事業を進めている奈良県のやり方に厳しい姿勢を感じました。そして、訪日の予定を明らかにし、奈良での会見を示唆するなど、今回も短い時間ながら内容のある会談になりました。 今回の第30回世界遺産委員会では、会場における議論はされませんでしたが、ドキュメント(文書)には「古都奈良の文化財の保存」について記載され、「決議」が一昨年に続き採択されました。 その内容は別紙の通りですが、今年は新たに日本政府に具体的な提言の要請をし、引き続き日本政府に経過報告を求めるなど、「守る会」の運動が一定の役割を果たしたことが伺えます。 @ 決議の第1は、「環境アセスを独立したコンサルタントに委ねなさい」と日本政府に要請していることです。 国や地方自治体が、公共事業を計画し、自らが環境アセスを実施することは、著しく不公正であり、環境アセスで公共事業計画が大幅に変更されたり、中止されたことはほとんどないことが批判されてきました。大和北道路建設計画の場合も、単に環境アセスだけでなく、地下水検討委員会、文化財検討委員会、そしてP.I(積極的な住民参加)導入と言いながら、国や県が一方的に任命した委員による各委員会の流れはまさしく、中立性がなく最初から高速道路計画ありきの流れでした。 その筆頭が環境アセスです。国土交通省が計画した高速道路計画の是非を検討するのに、建設をお願いし、国土交通省と一緒に計画した奈良県知事がその是非を判断するなど、住民の意見が反映されない非民主的なものです。 A 2番目に、日本政府に「環境アセスにおいては、高速道路ルートの代替案の検討と、コスト分析を含むことを保証すること、および、示唆される選択肢が、必要な緩和手段を講じることにより、奈良の世界遺産に対する潜在的影響を最小のものとなることの立証を要請」したことです。 これは、第28回世界遺産委員会(中国・蘇州)での決議を日本政府が修正した「地下トンネルが地下水低下を与えない保証をせよ」(要旨)という地下水低下の問題も、再度環境アセスの中で再検討することを要請したものとして、大変重要だと思います。 この問題は、単に地下水低下のことだけでなく、日本の環境アセスの基準の中に、文化財を守る基準が一切なく、奈良県の実施している環境アセスの中でも「守る会」の要求を無視し、文化財を守る基準をつくりませんでした。従って文化財を守るための環境アセスが特段に行われていないことに対する要求となっていることです。 B 3番目には、「環境アセスの結果とその作業のプロセスを説明する報告書を、…2007年2月1日までに世界遺産センターに提出するよう」要請しています。 しかも、「また、いかなる場合でも高速道路建設に関して、もはや元に戻すことが困難な決定がなされる前に、報告書は提出されるべきである」としていることです。 以上のように、今回の決議の内容は、3点について指摘していますが、その根底には、日本政府が報告している、「環境アセスにおいては、高速道路の計画を中止することも含めて十分に検討する」と世界遺産センターに報告していることへの「報告」を求めたものとして、今回の決議は高く評価できるものです。 現在行われている奈良県の環境影響評価検討専門委員会では、地下水検討委員会や、文化財検討委員会、「有識者委員会」で世界遺産や文化財を守る検討が終わっているとして、ほとんど検討されていないからです。 ただ、ひとつ留意しなければならないのは、67.古都奈良の文化財(日本)C870現在の「保存問題の争点」で、06年2月1日までに報告された「日本政府の報告書」の内容がそのまま引用し掲載されています。しかし、このうち、「日本国政府は、そのうえに、NGO『平城京を守る会』と公共のイベントの期間を含めて、6回にわたり協議した」とありますが、これは、署名提出及び要望書提出時の回数であり、協議ではなかった等等、3月11日付の「ユネスコ・世界遺産センター長フランチェスコ・バンダリン氏への06.2.1日本政府報告書に関する声明」で、高速道路から世界遺産・平城京を守る会が反論している内容が割愛されていることを指摘せざるを得ないことです。 2006.7.20 第30回世界遺産委員会要請団 団長 小井 修一 (高速道路から世界遺産・平城京を守る会事務局長) 第30回ユネスコ・世界遺産委員会(リトアニア共和国ビリニュス、06.7.8〜16) 67.古都奈良の文化財(日本)(C870) 世界遺産登録年 1998年 登録基準 C(2)(3)(4)(6) 世界遺産危機リスト登録年 N/A これまでの世界遺産委員会決議 27COM7B.49, 28COM15B.64 国際援助 N/A ユネスコ特別基金 N/A これまでの監視団派遣 N/A これまでの報告書で確認された主な脅威 N/A 現在の保存問題の争点 世界遺産委員会は、第27会期会議(ユネスコ、2003)において、世界遺産の近郊に建設が予定されている高速道路(京奈和高速道路)の潜在的な否定的影響を考察した。 また、世界遺産委員会は、日本国政府に対し、この世界遺産の真実性と完全性を保存する観点から、当事者の全てと十分に協議し、この問題を注意深く検討することを要請した。 さらに、世界遺産委員会は、日本国政府に対し、この計画に関する政策決定過程の事情を委員会に情報提供し続けるよう要請した。世界遺産委員会は、2004年にこれらの勧告を再度行った。 日本国政府は、2003年及び2004年に世界遺産委員会に提出した報告書のなかで、大和北道路有識者委員会が勧告を検討するために設置されたこと、および、それに続いて関連するコミニユテイとの広範な協議を含む、環境影響評価プロセスが実施されたことを述べた。 大和北道路有識者委員会委員長が、また環境影響評価専門委員会委員長に指名された。大和北道路有識者委員会が提案した選択肢の一つは地下高速道路の建設遂行であった。 世界遺産センターは、2005年7月に、NGO「平城京を守る会」より、地下高速道路案を含む、世界遺産に対する高速道路の影響を懸念する書簡を再び受け取った。その報告書は、特に、言及が必要な点として次の3点を強調した。すなわち、 a) 高速道路建設の必要性の原理的説明について NGO報告書は、高速道路建設の必要性を正当化する事故率と交通量の数字は、実際には大変小さい。それゆえに、このような公共事業の必要性それ自体に疑問がある。 b) 高速道路トンネル案(検討されている選択肢の一つ)の構造的影響について 地下トンネルの掘削は、地下水位に影響するであろう。それゆえに、「古都奈良の文化財」の下の土壌の沈下を惹き起こし、地下水位の安定性は繰り返し懸念されることになろう。 c) 地域住民とそれ以外の当事者を含む、真にオープンな協議プロセスの欠如について 世界遺産センターは、2005年9月16日付で、このNGO報告を日本国当局に送付し、 それらについて回答を要請した。日本国政府は、2006年2月1日付書簡により回答を寄せた。それによれば、NGOにより提起された3点について、次のように回答があった。 a) 高速道路建設の必要性の原理的説明について 日本国政府は、交通量と事故率に関するデータ収集のためにNGOが採用した方法に疑問があるとし、新しい公共事業(高速道路建設)の必要性を繰り返し述べた。 b) 日本国政府は、また、高速道路建設による地下水位の変動に関する情報を寄せ、日本国当局の専門家によりなされた正確な調査に基づく情報であり、世界遺産に対するいかなる影響も与えないであろうと主張した。 c) 日本国政府は、公共協議の問題に関して、標準的な法的措置の全てが続いてなされたことを確認した。特に、このプロジェクトに関する情報は、3回(ウエブサイトでも同様に行われた)公開された。7回のアンケート調査が地域住民に対しておこなわれ、4,693名から回答を得た。申し立てによれば、地域住民の79%が、交通渋滞のために、奈良県北部の道路事情改善の必要性を感じているということであった。また、このプロジェクトのために、およそ400万枚のパンフレツトの配布と新聞発表が行われた。日本国政府は、その上に、NGO「平城京を守る会」と、公共のイベントの期間を含めて、6回にわたり協議した。 日本国政府は、最後に、現在行われている環境影響評価の結果を作業の終了次第公表することを確認した。 ICOMOSは、日本国政府が、高速道路建設を提案し解消を意図する交通渋滞の本質の解明および予定ルートの地下水脈に与えるトンネル建設の影響の分析に努力したことを評価している。 NGOおよび日本国政府の、それぞれの報告書のなかで指摘された点の多くは、しかしながら、より多くの時間とより多くの情報がなければ、評価は困難である。必要な内部討論を促進する方法の一つは、中立の立場で、その目的のために雇用されたコンサルタントによる、日本国政府の外部の環境影響評価プロセスをおこなうことであろう。 また、環境影響評価においては、世界遺産に与える影響の評価に基づいた、コスト分析とともに高速道路の代替案の考察を含むことを保証することが重要である。 ICOMOSは、さらに、日本国政府が、トンネル建設とそれに続く高速道路建設作業の期間中に、適所で地下水位の変動を測定する監視行動と、万一地下水位の変動が世界遺産の表面近くの木簡に脅威を与えそうになった場合の緊急緩和手段を記述することを提案するものとなろう。しかしながら、ICOMOSは、日本国政府に対し、今後採用される選択肢が奈良の世界遺産に与える影響が最小なものであることを証明すること、そして、世界遺産の顕著な普遍的価値がいかなる危機にも瀕しないことを世界遺産委員会に保証することを要請するものとなろう。 決議:30COM7B.67 世界遺産委員会は、 ボカルディ氏との「会談」とユネスコ・第30回世界遺産委員会「決議」の意義 高速道路から世界遺産・平城京を守る会(「守る会」) タイトル(表題)の「意義」の解釈は「わけ」というより「重要さ」と読んでいただければと思います。 03年度の第27回世界遺産委員会(フランス・パリ)に参加して以来、今回は連続4回目のオブ参加となりました。当初の第27回の決議、そして第29回(中国・蘇州)の決議、そして今回と3回にわたる決議のうちでも、今回は具体的な内容ある決議であることが特徴であり、画期的なものと評価されるべきと思います。 世界遺産センター、アジア・太平洋部部長ジョバンニ・ボカルディ氏との昨年に引き続く会談も大変意義あるものでした。 私たちのボカルディ氏との会談の目的は、奈良県が計画している2010年の平城遷都1300年記念事業の、メーン会場を大極殿前を中心に半年間もパビリオンを建設するなど、地下埋蔵物や遺構に影響を与える危険性のため計画中止を求めること。そして、来年にも都市計画決定を行う(知事)とする、大和北道路の計画中止を求め、まず調査団の派遣を要請することでした。 私たちの要請に対し、ボカルディ氏は、当然ながら「世界遺産ゾーンの中でイベントを行う場合は、世界遺産委員会への申請が必要であること」など、手続きの必要性を明示し、日本政府から手続きが行われていないことも明らかにしました。 奈良県は現在、文化庁の許可を得て、パビリオン建設などで、地下埋蔵物等への影響がどのように及ぶのかを調査するとして、ボーリング調査24箇所を実施中で、これらのデーターが出来次第、世界遺産委員会に手続きするものと予想されます。 しかし、現在の「事業」の進行状況は、メーン会場は平城宮以外に考えていないとし、大阪や県内で企業や行政への大規模な説明会や、事業への協力、寄付金の要請などを行っており、世界遺産・平城宮跡の「真実性」と「完全性」の保存を無視した挙に出ています。 今、奈良県に求められているのは、まず、世界遺産委員会との協議を先行し、開催のメドをつけて宣伝や、事業の計画、準備を行うことでしょう。 もちろん、素人の私たちでさえ、世界遺産ゾーンの中で世界遺産の完全性と真実性を守ることに影響を与えること、すなわち、半年以上のパビリオン建設(10ヶ所)により、降雨による地下水への影響、圧密による地下遺構への影響、そして単なる人集めのイベントの連続した開催慣行(1回許可すれば、3年、5年10年毎の開催が日本のやり方)への危惧がされ、世界遺産委員会の許可が出るとは考えられません。 奈良県の土質調査は、パピリオン等を建てて土中の埋蔵物に影響を与えないか、力学的な証明をすることが目的と思われますが、ことの是非はそこにあるのではなく、そもそも世界遺産を保存するのに何をするのか、の視点が全くないことです。 今回のボカルディ氏との会談は、改めてこのことを実感しました。 そして、具体的な調査ではありませんが、世界遺産センター長、フランチェスコ・バンダリン氏が11月3日に訪日することを明らかにし、会談の機会を示唆してくれました。日本政府の招待によるものですから、日本政府の妨害も予想されますが、世界遺産を守る日本政府の仕事
―― 運動を私たち「守る会」が行っていることをアピールし、会談の実現を期待するものです。 別紙決議のうち、1〜4項目はユネスコ・世界遺産委員会の加盟国への挨拶文です。 ある新聞記者によれば、4項目目をとらえて「日本政府(国交省)の行っていることを高く評価してくれている」と国交省が自信を持った発言をしていると言っていましたが、この文章は、単なる挨拶文だと理解すべきでしょう。 私たちが高く評価するのは、5〜7の項目です。 5は、現在奈良県が行っている「環境影響評価を、奈良県ではなく第三者のコンサルタントに委ねなさい」させなさいと言っています。その理由は、別紙に書いていますが、国や県、つまり行政が計画した道路計画の環境影響評価を同じ行政(県)が行うのは信用おけない。ダメだという私たちの主張がその通りだと認めてくれたということです。 民間の開発計画を、国や県が地域住民に成り代わって、開発の良し悪しを検討するというならまだしも、国と県が計画し、施工主なのに、その良し悪しをいくら環境基準に沿って行うとしても泥棒が警察官を兼務して泥棒を取り締まる類と同様のことで、このようなシステムは世界に通用しないことを明らかにしたものとして、高く評価するものです。国交省に推奨ルートを決定した「国交省の有識者委員長が県の環境アセスの委員長に横滑り」という誰が見ても、あまりにもひどいたらいまわし任命に世界遺産委員会もあきれたことだと思います。 第三者のコンサルタントとは誰か。申すまでもなく、建設関係コンサルタントは行政べったりですから、対象にならないことは明らかです。残る政府側でない環境コンサルタントでしょうか。 次は6項です。一つは、「環境影響評価において高速道路の代替案を検討せよ」としています。これは、地下水検討委員会で「トンネルを建設しても地下水位低下は少ないわずか2cmほどだとシミュレーションでの予測を国交省が発表していますが、このことに納得せず、現在のルートは世界遺産平城宮跡からわずか700mしか離れていないため、改めて地下水位低下を懸念し、ルートの再検討を要請したものとして、大変重要なことです。 二つ目には、「代替案もコスト分析せよ」と、保証(障)という言葉を使っています。これは「有識者委員会」で検討された時に、「西側のルートは現在の地下ルートの半分で施工できる」とコストの比較で明らかにされており、なぜ2倍も費用がかかる現在のルートにしたのか、の解明もされることになります。 三つ目には、「いろんな手段を使って、奈良全体の世界遺産にとって、悪い影響が最小のものとなることを立証せよ」です。世界遺産を守るための非常に厳しい表現です。 これらは、日本政府が過去の報告で、「環境影響評価において、高速道路計画の中止も含めて検討する」と回答していることへの注文と見ていいのではないでしょうか。 最も重要なことは、日本政府が、世界遺産センターに報告している、地下水検討委員会、文化財検討委員会、そして大和北道路有識者委員会の詳細な報告にもかかわらず、現高速道路計画ルートは木簡等、地下遺構・地下埋蔵物、さらに景観等に与える影響ありと判断し、決議されたものと思われることです。 しかし、奈良県が行っている環境影響評価で以上の項目がほとんど論議すらされていないことからも、ことの重要性がわかります。 最後に7項です。この項は、環境影響評価の報告を求めていますが、条件を附しています。「また、いかなる場合でも、高速道路建設に関して、もはや元に戻すことが困難な決定がなされる前に報告せよ」ということです。 この際の困難な決定とは、一つは都市計画をする前ということと、併せて、第31回世界遺産委員会決定時、報告を承認すればOKだが、未承認の場合は再度の検討項目の追加となる可能性があります。 以上、私見も入りましたが、このような決議がされるのは、何よりも世界遺産条約、及び世界遺産条約履行のための作業指針による、世界遺産の真実性と完全性を保存していくことの厳しさを改めて明示されたものとして受け止めるものです。 以上 |