<目次>

平城宮について        2002.3.31

木簡、遺物、遺構
   2002.3.31

世界遺産に登録
   2002.3.31

京奈和
高速自動車道


不確定な予測で
地下トンネル建設を
決定してはならない

    2002.5.25

なたの力を
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お知らせします。


お知らせ
  2002.6.7


資料 
 シンポの意義 2002.4

 高速道路 2002.6

 地質について 2002.6

 歴史の証人 2002.6

 大気汚染 2002.4

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  ボーリング柱状図
  奈良県地質概念図


平城宮(京)跡の地形と地下水や地質を探る
     複雑な水脈、今も井戸水はかれていく


                    奈良県理科の会  園部 勝章

 奈良県理科の会の園部です。職場は奈良教育大学付属小学校です。レジメには「木簡と地下水」と書きましたが、実は地質について語っていただくのにふさわしい先生は、私を卒業させてくださった西田先生(奈良教育大学)とか肥塚先生(奈文研)がおられますので、この方々が話されるのが一番いいのですが、それぞれ学会と海外出張に行かれているので、しかたなく私がまいりました。それで、このお二人の先生から教えていただいたことをお話することでお許し願います。奈良県理科の会からは中村さんがきてくれているので、ご質問は中村さんが適切に答えてくれるものと思います。
 今からするお話の結論を先に申し上げると、木簡は地下水で保存されてきたのだということです。つまり、地下水がなかったらボロポロになっていただろう。それではとても読めない。地下水につかっていることで酸素に触れない。そのことで保存されてきた。生活の中では「漬物にすると長もちする」ということがあるが、それとよく似ている。
木簡が発掘される所は地下水が浅い(高い)。レジメ図 の柱状図で「孔内水位0.88」というのは、要するに雨水などかしみ込んで、4〜5mあたりの粘土層で雨水が溜まって地下水ができる。「この地下水が88cmですよ。」という意味だ。
 次に、「標準貫入試験N値」というのはボーリングしていくときに何回叩いたら通過するかの数を意味するので、「N値」が少ないことは土が軟らかいことを意味する。4mでは4回ぐらいで通過する数値だ。この間は水がたくさん入っているということだ。
地下水が高いのは4〜8mあたりの粘土層で地下水がためられているからだ。
 それでは、今から小学校の授業をします。
 まず「粘土って何か」ということだが、「粘土」とは直径が256分の1mm以下のものをいう。これを顕微鏡で拡大して見ると石と同じだ。ただ、粒の小さいのを粘土というだけだ。直径が16分の1mmから256分の1mmまでを「シルト」というが、「シルト」と「粘土」をあわせたものを「泥」という。だから「粘土」というのはいかに小さいものか分かるでしょう。
 では、今から付小の運動場の砂場の砂を篩で分けて見ます。
子どもたちは砂場の砂を投げてよく遊びますが、砂が遠くまで飛びますね。いわゆる砂煙ですが、これが「粘土」と考えたらいい。
 これは4mm以上ですが、「砂」ではなくて「礫」といいます。4mm以上のものを全て「礫」というので、直径1mの大きな石も「礫」ということになる。
これは1mm以下の砂。これは0.5mm以下の砂。これは0.24mm以下の砂。
 子どもたちにこれを全部顕微鏡で見せると、「どれも礫と同じ顔をしているなあ」という。つまり、「粘土」とか「砂」とかいう言い方は全て大きさだけで区別するのだといういい方を子どもたちにする訳だ。
 粘土がすばらしいのは焼くことでくっつきあうことだ。粘土は256分の1というとてつもなく小さなものだからくっつきあう。水が粒と粒の間に入ることでくっつきあって、上手に乾かせば割れない。そういうものに変わるのだという話もする。
 粘土のイメージはなんとなくコネコネできて・・・というイメージを持つが粒の大きさをいうのだ。このようなことを授業では押さえることにしている。
次に地下水位のことだが、図 ボーリング柱状図は水上池北西あたりのものです。地下水位が88cmだ。平城宮の井戸について田辺先生が『平城京を掘る』の中で、こんなふうに書いてくださっている。「井戸の深さは水脈の関係でまちまちだが、一般にあまり深くない。3mもあれば深いほうである。水位が高かったのであろう。発掘するときわき出る水の鉄分の強さを考えると、はたして古代人はこんな水を飲んでいたのかと首をかしげたくなる。」とあるように、水位3mとか88cmの井戸を使っていた。奈良市左京6丁目は4.1m。
 図 柱状図の下の部分は印刷できなかったが、29〜30mは均質な粘性土とあり、N値はうんと下がっている。
 後から説明しますが、井戸として使う地下水には2種類あって、自由地下水といって雨水がづっとたまってできた地下水と、深い地下水があり、これは深い粘土の上にたまった水である。このたまり方はあまり動かない。砂の粒にくっついたり粘土の粒のまわりにくっついたり、そういう地下水なのだ。地下深く掘れば温泉が見つかるというのは当然なことで、上部の自由地下水から漏れた地下水が下部の深いところでたまるというシステムになっている。
そういうことで、水上池北西は自由地下水の水位は88cm、それがたまるのは4〜8mの粘土層が水をためているからだ。
 粘土はイメージとしてくっつきあうといったが、実は地下水をつくるような粘土層は水と混じることで水を通さないというシステムになっているようだ。
 その証拠に、4〜8mでN値がうんと下がっていることは、水を約60%含んでいる256分の1mmの粘土と粘土がまざりあうことで、上からの水を通しにくくしている。
『日本の平野』という大森先生の本を参考にすると、こういう説明の仕方となる。
図 でいうと、13mあたりでN値が高くなっていく。つまり、地層が違うということだ。これはいわゆる大阪層群といって100万年前から30万年前のものです。奈良盆地をつくるような地層は約1万年前のものでうんと新しい。大極殿あたりはこの大阪層群となって、朱雀門あたりは泥田ですがそれは1万年前だ。
そういう点では、トンネルを通すことによって被圧地下水、つまり深いところの地下水が水漏れを起こすと、自由地下水も水位が下がることが十分考えられる。
 木簡が見つかる2mあたりのところで水がなくなって乾けば木簡は酸素に触れてボロボロになる、と西田先生もおっしゃっている。水をもらさないトンネルをつくれば木簡への影響はないが、でもそれは不可能なことだともおっしゃっています。
 次にレジメ1枚の裏側を見てください。
 地下水には2種類あるということが分かりやすく『日本の平野』にのっていたので、コピーしておいた。
 2行目に「自由水」とあるが、これは雨の水がしみこんでたまってできた水のことですが、西田先生は「自由地下水」という表現をされている。地下自由水は動きがゆっくりで一日数mぐらいだ。それに対して、粘土の粒子や砂粒の表面についている水のことを吸着水、または毛管水、まとめて保留水といっている。
図 の水圧地下水位、これは水田や井戸の下にありますね。これがいわゆる自由地下水の水位のことです。
 その下の方に被圧地下水層というのがあり、ここが深い地下水、保留地下水のたまっている場所です。
 レジメ前ページにもどって、「地層中にしめる間隙の割合は地層をつくる粒子が細かいほど大きい。つまり、砂利層より粘土層の方が透き間が多いことになる。これは、植木鉢の中の土をひっくりかえし、細かく打ち砕いたあと、元の鉢に収めようとしてもなかなか収めきれない経験からも理解していただけよう。」とあり、次が大事だと思いますが、「したがって、透き間を水が満たしている限り、水を通しにくい粘土層の方が水をたくさん含むという、見た目には不思議なことになる。」とあります。
 また、「地下水の場合、天井裏の雨水に相当するものは浅い地下水、深い地下水とちがって吹き上げる圧力をもたないことから不圧地下水とも言う。」と書いてありますが、地下水には2種類あるということをよく頭に入れておいてください。
 右側には、地盤沈下の起こるメカニズムを『日本の平野』よりコピーしておいた。深い地下水を汲みあげすぎたことから始まり、被圧水頭が異常に低下する。粘土層からの脱水と粘土層の圧密がおこり粘土層が収縮する。地表面が低下し、そのことによって地盤沈下が起こる。地盤沈下が起これば自由地下水も下がる。木簡に関係のあるその水位が下がるということは十分考えられると見ておくほうがよい。
 次に、奈良県地質概念図を見てください。
 奈良盆地の白い部分は1万年前ころの地層、斑鳩の文字のあるところから川の水が大阪湾へ流れて行く。この出て行く所で亀ノ瀬の地滑りが起きている。この地滑りを止めなければ奈良盆地は湖となる。地滑りの防止工事はJR王子駅を過ぎたところにクレーンが林立しているところで行われているが、何の工事をしているかというと、地滑りの起きそうな所にトンネルを掘って水を外に流し乾かしてもたせている。トンネルでは水が漏れるのです。だから地下水のもれないトンネルをつくることはほとんど不可能と考えていい。
 山陽新幹線のトンネル工事を見たら分かるように、まず水が漏れないということは考えにくい。漏れないトンネルができるとしたら、莫大なお金がかかるだろう。大阪の湾岸道路をつくるときにトンネルを通しているが、このトンネルは現場でつくったのではなくて、別のところでつくってもって行きくっつけた。これはかなり水を通しにくい工法だ。そんな工法でも、平城宮跡の地下で行うことはダメだろう。
 大深度地下利用のホームページを開いてみると、次のように書かれている。
 「利用される大深度で井戸や温泉が涸れた場合、補償はあるか。」という質問に対して、「実際に損失が出る場合には、補償されます。」とある。木簡の場合はどう補償するのか。お金で買えるものではない。
 さらにこんなふうに書いてある。「地下水に影響の少ない工法の採用を検討し、やむおえず地盤改良工事を採用する場合においても、地下水汚染のない改良剤を使用する必要がある。」、「大深度地下は、固くしまった比較的良好な地盤であることから、一般的には良好な施行管理を行えば地上への影響が少ないと考えられるが、施行時に過剰な土砂を掘削すると地盤の緩みなどが生じ、地上へ影響が及ぶ恐れがあるので、地盤を変形変位させないよう慎重な施行をする必要がある。これらの地層は酸素に触れることにより酸化反応を起こし、地下水の弱酸性化、有毒ガスの発生、地盤の発熱や強度低下が生じるおそれがある。」
 「おそれ」という言葉はあちこちに出てくるが、それに対して「技術的に向上させる」とは書いてあるが、それで「おそれ」をストップさせることができるとは書いてない。
 ある意味では正直に書いているなあと思う。ホームページを開いている人が「この工法でやれば100%水漏れしません。」などと書けない訳ですから、平城宮跡の木簡を守るという意味では、地下にトンネルを通すことには問題が多すぎると思います。
 平城宮跡の発掘はこれから100年も200年もかかると聞きましたが、それまでに地下水位が下がって木簡がボロボロとなり文字も読めないこととなったら大変だと思っています。以上で私の話を終わります。質問がありましたら後で出して下さい。