BFA 4.0による研究成果



 文字認識過程

(佐々木寛、岸浩一郎、武者利光:山形医学 13(1), 97-107, 1995)
文字を読んだときに誘発される「視覚誘発電位」の双極子追跡を行った。計算のモ ニター上に光る 点(固視点, Fixation Point)を作り、被験者にその点を見つめてもら う。固視点の右2度の位置に 「かな文字」を短時間提示して、それを声を出さずに読ん でもらう。提示するタイミングをランダムに して被験者が文字が提示されるのを予測し ないようにする。文字を読むことに関したニューロン活動に よって誘発された頭皮上の 電位は自発電位に埋もれてしまってそのままでは観測できないが、文字を提 示するタイ ミングに同期して頭皮上の各点電位波形を加算平均をすると、自発脳波はプラスマイ ナ が相殺して小さくなり、誘発電位だけを取り出すことができる。  双極子度が98%以上になり、双極子近似が十分に成り立つ場合だけを取り出すと、 網膜に文字の光学像が写ってから60から70ms で 双極子が左の第1次視覚野に現れ る。それから双極子度が低下して大脳皮質の活動部分は広がり、15 0ms前後で視覚 連合野に高い双極子度を持った双極子が現れる。それに続いて左角回、左側頭下部に 双 極子が現れ、最後に聴覚野とウエルニケ野付近に活動が見られた。これらの位置を A, B, C, D, E と して図1にMRI 断層図に重ねて示した。
図1 文字を認識する過程を双極子追跡した結果
文字を固視点の右側に提示するとすべての情報処理は左脳で行われる。それにたいし て文字を固視点 の左側に提示すと、1次視覚野と視覚連合野の活動は右脳で行われる が、それ以後は左脳で処理され ることが観測された。したがって処理時間が長くなり、 被験者にとっては読みにくいという感じを与え る。20例中の一例については右脳で処理 を行っている被験者があった。読めない図形、たとえば片視野づつで明暗が反転するチェッカーボードを見たときには、上の図で(A),(B)の処理しか行われなかった。



 睡眠中の脳活動 

(武者利光、井上昌次郎、Kumar Saha;NHKスペシャル「脳と心」第3回、1993年12月)
睡眠中には新皮質のニューロン活動は静かになり、脳の中心部の活動が観測された。 図1はノンレム睡眠中の脳活動で、等価双極子は脳の中心部の右側と左側に見られた。 これだけでは明らかでないが、記憶に関係した活動が行われていると解釈できるかも知 れない。図2はレム睡眠中の脳活動で、もっぱらノンレム睡眠時と同様に脳の中心部が 活動をしているが、ときどき後頭部の1次視覚野(ブロードマンの図によれば第17野) が活動をするのが見られた。この活動は間欠
的におくり、その持続時間は1秒以内であ る。このときに被験者を起こすと夢を見ていた。
図1ノンレム睡眠期ではもっぱら脳の中心部が活動しているのが観測された。
図2 レム睡眠期では間欠的に第1次視覚野が活動するのが観測されそのときに夢を見ていることが確認された。

 

 アルツハイマー型老人性痴呆患者の脳の活性度

(O. Terasaki, Y. Okubo, T. Musha, Y. Musha and M. Toru; Abstract of 5th International Congress on Brain Electromagnetic Topography, Muenster, August, 1994, p.276)
アルファ波の発生場所は左右の後頭部両半球にあるので、それを近似するには2つの等価双極子が必要になる。アルファ波のピーク毎に推定された等価双極子対の位置を赤と青の点で図1に示した。このときの近似の良さを「双極子度」という量で示すと、正常な被験者では年令にかかわらずかなり高い数値が得られる。ところがかなり重症な老人性痴呆患者について調べると、正常な被験者に比べて「双極子度」が系統的に減少していることが発見された。しかも年令別に分けると、図2に示すようにかなりはっきりとして傾向が見られる。
 
双極子度の性質を計算機シミュレーションで調べると、大脳皮質の各部分が有機的に活動をしている時には大きい価になる。したがって、双極子度は大脳皮質の活動度を表すと考えられる。そのように考えるとこの結果は次のように解釈される。つまり、若い患者では脳機能の劣化が比較的大きくならないと、重症な痴呆症状を示さない。これに対して高齢になると、わずかな脳機能の劣化が重症な痴呆状態にしてしまう。このことは高齢になるほど痴呆患者の%が大きいという事実を裏付けるものであろう。

この方法は老人性痴呆の早期発見と、痴呆症に対する治療法の効果を客観的にモニターするのに利用できる。当研究所ではこの方法による脳ドックを実施することを計画している。そのときに夢を見ているこ とが確認された。

図1 アルファ波の電源を表す双極子対
図2 双極子度と脳の劣化度:青印は正常被験者、赤印は重症のアルツハイマー型老人性痴呆患者


アルツハイマーの国内特許確定。「脳活動自動判定装置」特許第2540728号