公安が使っている電磁波の技術へ

2005年8月25日放送

アンビリサイエンス



 近い将来、犯人が人混みの中に逃げ込み警察が発砲することができない場合でも、驚くべき最新ハイテクグッズによって逮捕できるようになるだろう。
 その秘密は『音』。現在、超音波を利用したシステムの研究が進んでいる。アメリカ・サンディエゴのアメリカン・テクノロジー社ではこの超音波を使って、遠く離れていてもクリアに音を聞かせられる装置を開発中だ。しかもそれはピンポイントで特定の相手だけに聞かせることができる優れものだ。
 超音波は波長が短いために人間が聞くことができず、また一直線に伝わる性質を持っている。超音波は可聴音に変換することができ、いつ変わるかを正確に計算することが可能だ。つまり、超音波を発して狙っているあたりの人にだけ聞こえるように変えることが可能だということだ。
305_01_01  音の通り道に入ると100m離れていても聞こえるが、1・2歩離れるだけで何も聞こえなくなる。この会社のウッディ・ノリス会長は、この技術が発達すれば、車中のような狭い空間でもそれぞれが違う音楽を楽しむことができると思って研究を始めたという。
 ハイパーソニックサウンドと呼ばれるこの技術では、二つの音を同時に流しても一方の音しか聞くことはできない。別々の音を超音波に変えてそれぞれを聞きたい人に向かって照射すれば隣にいながら違った音楽を聞くことができるようになる。さらにエンタテイメントへの利用だけでなく、超音波を使った技術を防犯・警備用に応用した音波銃の開発が進んでいる。
 アメリカン・テクノロジー社では様々な音波を組み合わせることによって一定の方向性を持たせ、音の広がりを狭めた大音量発生装置を開発している。人間は130デシベル以上の音を聞くと耳に痛みを覚える。この装置では150デシベルまで増幅可能で、偏頭痛のような痛みを与える。さらに広がりが狭いために狙った方向にだけダメージを与えることができる。
 さらに音であるため一時的なもので、催涙ガスのように使用後に周囲にダメージを残すこともない。すでに軍隊や警察が300基以上を配備し、イラク戦争でも活用されたという。これを小型化すれば犯人逮捕などに活用することができる。現在は開発中だが、完成すれば犯人を傷つけずに従順にさせることができる有益なものだと会長は話す。
 ちなみに大音量発生装置の販売価格は35,000ドル(約385万円)。音が防犯の主役になる日も近い。




 次に紹介するのは、防犯カー。一見何の変哲もないこの車は盗難多発地域に配備される。だが、窃盗犯が何も知らずに乗り込み車を発車させると、間もなく勝手にドアがロックされ、エンジンがストップし、さらにクラクションが勝手に鳴りだす。この防犯カーは警察の最新兵器で、泥棒を確実に捕まえるために衛星を使って追跡する、リモコン機能を備えた「おとりカー」だったのだ。
305_01_02  おとりカーには二つの効果があり、一つ目は犯人を確実に逮捕できること、そして二つ目はおとりカーが出回っていることを知らしめることで盗難を思い止まらせることができる点だ。
 アメリカではすでに100都市以上がこのようなおとりカーを導入しているという。おとりカーの装備一式はおよそ600〜3200ドル(約7〜35万円)だ。

 次に紹介するのは最新式の銃。警察が立ち向かってくる犯人に向かって発射するのは、捕獲用ネット。犯人はからまった網によって動きを封じられてしまうのだ。時速100kmで発射される網は幅2.4〜3mで、9m先まで届く。このネットガンは1セット980ドル(約11万円)で、ネットは一発50ドル(約5500円)だ。

 強盗事件が多発する南アフリカで開発された秘密兵器は過激だ。外見は普通の車なのだが、もし高級車に狙いをつけた不審人物が車に近づくと、突然左右から火を噴き、体を丸焦げにしてしまう。このブラスター(火炎噴射装置)は前方の両側のドア下から火を噴射する装置。運転席に設置されたペダルを踏むと噴射する。車体には一切損傷を与えないブラスターは655ドル(約7万円)だ。
 幼い頃から機械いじりが大好きで、15歳の時には自力でスポーツカーを組み立てて家族を驚かせたというポール・モーラー。彼はそのまま好きな道に進み、30年以上に渡ってアイデア車を開発してきた。その集大成とも言える車が、M400という試作車だ。
 この車の特徴は飛べること、つまり空飛ぶ車スカイカーなのだ。ほんの短い時間ではあるがまっすぐ上空に向かって飛び立ち、宙をさまよう。完成の暁には最高時速600km、航続距離1440kmというまさに夢の乗り物。モーラー社長の見通しでは10年後には市場に出るという。
 将来はスターウォーズのように空中ハイウェイができるという社長の夢に賛同し、既に80人がスカイカーの予約をしているという。
305_01_03  群馬県榛東村。こののどかな村の一角にある榊原機械株式会社に、なんと最新のロボットがあるという。さっそく訪ねて開発課の南雲正章さんに話を聞いた。今までにないようなロボットならあると連れられて行くと、そこにはロボットがいたのだ。
 迫力満点、子供の頃に憧れたロボットそのものだ。ロボットの名前は「ランドウォーカー」。全高3m40cm、総重量1t、搭乗人員1名、250ccエンジン搭載で、簡単なペダル操作で運転ができる。すり足二足歩行で時速は1.5kmと遅いが、立派なバルカン砲とショットガンを備えている。
 アニメ型のロボットに憧れていて作成したというこのランドウォーカー。参考販売価格は3600万円だ。
 この日、スタジオには装着するとパワーアップする装着型強力ロボットスーツHALが登場した。関節部分に取り付けられたモーターの力で、力仕事を楽にするのだ。
 開発者は筑波大学大学院の山海嘉之教授。10kgの米袋を2つ片手に乗せても疲れることがない。医療福祉の世界で、高齢者や障害を持った人の日常運動をアシストするのが目的で開発された。将来的には災害レスキュー等の力仕事への適応が可能だという。
 そのパワーは、体験マシンを肘に装着した女性が、片手で8kgのダンベルを持ち上げることができるほどだ。この技術を全身に活用したものがロボットスーツなのだ。
305_01_04  続いては命の最前線で活躍するサイエンス。2001年9月7日、前代未聞の手術が行われた。手術室で患者の周りにいる医師は、手術ロボットの手やカメラを患者の体内に入れるアシストをしただけで、実際に執刀したのはニューヨークの医師だったのだ。患者がいたのはおよそ7000km離れたフランス・ストラスブール。医師はモニターを見ながらロボットを操作して手術していたのだ。
 これまでにもこうした遠隔手術の技術自体は存在していたのだが、映像の送信と操作にタイムラグが生じるため難しいとされていた。だが通信技術の発達によりタイムラグの許容範囲の0.7秒を大幅に上回る0.1秒を達成したのだ。この秒数は人間には感知できないほぼリアルタイムとなる。手術は無事に成功し、患者がどこにいようと専門医の手術を受けられる道が大きく広がったのだ。

 一方、ロンドンの聖マリー病院では今年の5月から2台の医療用ロボットが働き始めている。ロボットを医師が遠隔操作し、取り付けられたカメラで患者を診察するのだ。患者はモニターで医師の顔を見ながら会話することができる。
 医師はあちこちにいる病院にいる患者を診ることができ、患者も複数の医師の診察を仰ぐことが可能でどちらにもメリットがあるという。
 この診察ロボットは1台50,000ポンド(約1000万円)で、多くの人が救われるはずだ。
 米医学会で注目を浴びている目の治療法をご紹介しよう。最先端を行く学者たちが取り組んでいる方法は、視力を失った人に人工網膜を移植し、少しでも見えるようにするというもの。
 被験者は小型カメラのついたメガネをかけ、カメラの映像は埋め込まれたコンピューターによって電気信号となり、移植された人工網膜に送信される。そこで視覚神経を刺激しようとする仕組みだ。
 つまり、カメラの映像が視力となるのだ。事故でほとんど視力を失っていた男性に人工網膜が移植されると、彼は一人で歩くことどころか車の運転まで可能になったのだ。
 限られた人にしか効果がないという点で、この技術はまだ研究が始まったにすぎないという。しかし、近いうちにはどんな視覚障害者にも対応できるように研究は進むだろう。順調に進めば2008年にこの装置が30,000〜50,000ドル(約330〜550万円)で発売される見込みだという。
305_01_05  さらに、脳から直接電気信号を送り人間の意思により機械を思いのままに動かすという研究が進んでいる。マサチューセッツ州ブラウン大学のジョン・ドノヒュー教授は、脳とコンピューターを直接つなぎ、コンピューターが脳波を読み込んで作動するという技術の開発に成功した。
 ブレインゲートと名付けられたコンピューターチップを頭の中に埋め込み、読み込まれた脳波は頭上から出たプラグを通ってコンピューターに送られる。その結果、考えただけでカーソルを動かしたりクリックすることが可能になるのだ。
 手足の機能を失った男性はこの技術を使って、テレビのスイッチを入れたり切ったり、コンピューターでメールなどもできるという。コンピューターの機能を増やせば、電化製品を操作することもできるのだ。
 さらに最先端科学で人生が変わった男性がいた。2001年5月、テネシー州の電力会社で働いていた架線作業員のジェシー・サリバン氏(54歳)は、変圧器の固定作業中に誤って高圧線に両手で触れてしまった。7400ボルトの電流が流れたサリバンの体からは焦げ臭い匂いがした。
 5時間に及ぶ緊急手術で一命を取り留めたものの、直接電線に触れた両腕は切断するしかなかった。悲しみに暮れていたサリバンに数週間後、担当医が「シカゴにあなたを救えるかもしれない人がいる」と言われ、彼はそれを信じてシカゴのリハビリ研究所に向かった。
 待っていたのは医師のトッド・カイケンだった。彼はサリバンに、思いのままに動く手を手に入れることができるかもしれないので実験に協力してほしいと話した。
 実験は成功した。サリバンに取り付けられた義手は彼の思い通りに動く。仕組みはこうだ。腕を動かす神経はまだ残っていたので、その神経と義手のセンサーをつないで信号を読み取る。
305_01_06  そうすれば意思通りに義手を動かすことが可能になるのだ。サリバンに取り付けられた義手は360度の回転も可能で、埋め込まれた小さなチップで温度や感触を感じることもできる。これからさらに義手の駆動装置が進化すれば、微妙な動きも不可能ではなくなるのだ。
 現在は片手だけだが、近いうちに両腕をつけてあげたいと医師は話す。またサリバンは、自分が頑張れば次代の人たちのためになるので、生活に張り合いがあるという。
 現在もカイケン医師たちの研究は続いており、せき髄に損傷を負った人や四肢切断者の人生を変えることになるだろう。
 世界初、人間の意思で動く義手は100,000ドル(約1100万円)をかけて開発された。
 私たちの想像をはるかに越えた科学の進歩。それにかかる費用はまた桁外れだが、何よりも尊いのは一人一人の命であることを我々は知っているのだ。



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