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‘06年11月16日


神経細胞と神経伝達物質


神経細胞
参考文献 p25〜39

 あらゆる脳の活動は神経細胞(ニューロン 図1)が発火(興奮)することによって行われる。全ての精神活動及び生命の維持のための指令も神経細胞の発火によって行われています。

 発火していない時の神経細胞内にはトータルとしてマイナスイオンが多く、細胞外にはプラスイオンが多く存在します。よって細胞膜をはさんで細胞内がマイナス、細胞外がプラスの電位差が存在します。その電位差によるクーロン力(電気的力)を利用して細胞は発火します。

 神経細胞が発火するとは、細胞膜内と膜外の電位差により小さな電気パルス(イオン物質の移動による電位変化)を発生し、細胞膜に沿ってそれを伝達することです。

 神経細胞の数は脳全体で約1000億
ありお互い交信してます。

 1つの神経細胞が同時に数千の神経細胞からの信号を受け取ることもあるそうです。



神経細胞の種類

 
○ 最も大きな違いから分けると興奮性と抑制性がある。興奮性は他の神経細胞を発火しやすくさせ、抑制性は発火しにくくする。例えば抑制性の神経細胞が発火すると、その神経細胞から信号を受け取った細胞は発火しにくくなる。

 
○ 形状が違う細胞型は十数種類あり、脳の部位によってどの細胞が多いかが違う。


神経細胞の発火の仕組み
(ミエリン鞘がある-有髄細胞の例)

 
@ 神経細胞(図1)は樹上突起(じゅじょうとっき)と呼ばれる部分で、多数の他の神経細胞の軸索末端から信号(化学物質)を受け取る(注1)。神経細胞同士が化学物質を受け渡しする場所をシナプス(図2)という。

 
注1 樹上突起は神経細胞の総面積の90%以上を占めるます。図1ではかなり省略されているが、実際には樹上突起は無数にあり、その樹上突起でのシナプス結合は多いもので数万もあります。シナプスの数は脳全体では100兆にも上ると見積もられているそうです。

 
A 細胞内にはマイナスのイオンが多く、細胞外にはプラスのイオンが多い。興奮性の神経細胞から化学物質を受け取ると、プラスのイオン物質が細胞内に入り、抑制性から科学物質を受け取るとマイナスのイオンが入る。

 
B 樹上突起は同時に数多くの興奮性ニューロン、抑制性ニューロンから信号を受け取り(注2)、その電位変化の合計が軸索丘に伝わる。軸索丘でその細胞が発火するかどうかが決まる。そこで、細胞膜内がある数値以上のプラスの電位になると、軸索丘の膜上にある電位依存性ナトリウム(Na+)チャンネル(図3)が開き、Na+イオンが細胞外から細胞内にどっと流入する。これを活動電位(スパイク)という。

 
注2 神経細胞1個が発火しても脳の活動自体には変化がない。脳が仕事をするときは数十万から数百万の神経細胞が同期して活動しているといわれている。多くの神経細胞が同期している時の樹状突起の電位変化が、脳波である。(参考文献 p12〜13)

 
C ミエリン鞘とミエリン鞘の間をランヴィエ絞輪という。軸索丘の電位変化で隣のランヴィエ絞輪上にある電位依存性Na+チャンネルが開きNa+イオンが細胞内に流入する。その活動電位が次々に隣のランヴィエ絞輪上にある電位依存性Na+チャンネルを開かせ、最終的に電位変化が軸索末端まで伝わる。

 
D Na+イオンによるプラスの電場(活動電位)が軸索末端までくると、軸索末端の電位依存性Ca+チャンネルが開き、Ca+イオンが軸索末端内に流入する。最終的にシナプス小胞に入っている神経伝達物質をシナプス間隙に放出する。

 
E その神経伝達物質が次の神経細胞の樹上突起の電位変化を起こす。


 上記の繰り返しで情報が伝わって行きます。



                 図1  代表的なシナプスの全体像 樹状突起はかなり省略されている






        図2  シナプス間隙の神経伝達物質の放出

図2の説明

 シナプス後膜にある受容体が伝達物質を受け取る
 シナプス間隙の幅は20ナノメートル(0.00002ミリ)〜25ナノメートル(0.000025ミリ)





 下が細胞内、上が細胞外、赤い部分が細胞膜

  図3  電位依存性Na+チャンネルの開閉アニメーション   (
図1、図2ともに) 生命科学Cより

図3の説明
 電位依存性Na+チャンネルを表したもの。電位依存性チャンネルとは電荷の移動によって電位(電場)が変化するため、それによってチャンネルの開閉が決まるチャンネルのことである。チャンネルのイオンの通り道の開閉を決める電位センサー(青い円柱)はプラスに帯電している。

活動電位が伝わっていない時
 膜の外にはプラス、内側にはマイナスのイオンが多い(
図3ではマイナスイオンは省略されている)。そのためにクーロン力(電気的力)により、電位センサーは下に押され青い横棒でイオンの通り道をふさいでいる。

活動電位による電場の変化が伝わった時(ランヴィエ絞輪の例)
 図から見て左側で電位依存性チャンネルからNa+イオンが細胞内に流入すると(これもクーロン力による)、電場の変化により電位センサーを押していた膜外のNa+イオンも左側に移動し(イオンが均一になろうとするため)、数が減る。細胞内では電位センサーを下にひきつけていたマイナスイオンが左側に移動するため数が減る。よってプラスに帯電している電位センサーが上に動きふたがはずれ、膜外のNa+イオンが細胞内に流入する。

電位依存性チャンネルは細胞膜の円周上にずらりと並んでいるので、活動電位を発生させるには十分のイオンが流入します。



神経細胞の種類による活動電位の伝導速度

 神経細胞には有髄神経と無髄神経があります。髄とはミエリン鞘のことで絶縁体になっています。そのため有髄神経はランヴィエ絞輪からランヴィエ絞輪に電場の変化が伝わり、活動電位の伝わる速度が早くなります。有髄神経では直径が大きいほど伝わる速度が早くなります(
表1)。脳の部位ごとに、ある程度の神経細胞の種類による局在があると思われます。


分類
直径(マイクロメートル)
有髄
速度(m/秒)
機能
12−20
70−120
運動神経
5−12
30−70
触覚、圧覚
3−6
15−30
筋紡錘に関する
2−5
12−30
痛覚、触覚
B
<3
3−15
自律神経
C
0.4−1.2
-
0.5−2
痛覚、反射、嗅覚
      表1  神経細胞の種類による活動電位の伝導速度




神経伝達物質

 シナプス間隙ではイオン電流が伝わらないため、次の細胞を発火させるために神経伝達物質を放出します。神経伝達物質には機能が違う色々な種類があり、信号の伝わり方を複雑にしています。

 数は百数十種類あるといわれ、二五種類程度がはっきりと確認されています。(
参考文献 p31---1999年の出版なので現在ではかなりの数が確認されているものと思います)

 表2にあるように神経伝達物質も脳の部位などによる局在が見られます。




神経伝達物質  分 類   構造モデル  局 在   神経伝達物質  分 類  構造モデル  局 在
アセチルコリン   神経筋接合部、自律神経節前繊維、副交感神経節後繊維、脳など   セロトニン インドールアミン 視床下部、小脳、辺縁系、網膜、血小板等

γアミノ酪酸
(GABA)

抑制性アミノ酸 大脳、小脳、網膜など   アデノシン プリン 海馬、小脳、大脳皮質等
グルタミン酸 興奮性アミン酸 脳幹、大脳皮質等   エンケファリン ポリペプチド 視床下部、辺縁系、脊髄、網膜等
ドーパミン カテコールアミン 黒質線条体、視床下部、辺縁系、網膜等   サブスタンスP ポリペプチド 基底核、視床下部、中脳、小脳等
ノルアドレナリン カテコールアミン 大脳皮質、視床下部、脳幹、脊髄、小脳等   CCK ポリペプチド 大脳皮質、小腸等
           表2  神経伝達物質と局在    (表1ともに)  ビジュアル生理学より





 表3に見られるように神経伝達物質の種類によって機能が違います。
 表の一番下の気体物質も神経伝達物質として働いています。
(ビックリ)


アミノ酸 もっとも一般的な神経伝達物質で、情報伝達全般に関与する
グルタミン酸


もっとも典型的な興奮性伝達物質
記憶のメカニズムに関与

タウリン


脳内に広く、高密度に分布
伝達物質の調節役か?

ギャバ(GABA)


(=γ-アミノ酪酸) もっとも多量にある抑制性伝達物質

その他 アスパラギン酸、グリシンなど、
20種類ほどあるとも考えられている
生理活性アミン カテコールアミン類
ドーパミン


脳内に広く分布 攻撃性、創造性、精神分裂病、パーキンソン病に深く関与

ノルアドレナリン (=ノルエピネフリン) 脳内に広く分布 うつ、幸福感、不安など情動に深く関与
インドールアミン類
セロトニン


脳内に広く分布 覚醒、睡眠などの生体リズムや、情動に深く関与

メラトニン セロとニンから作られる 生体リズムに深く関与している
イミダゾールアミン
ヒスタミン 全身の組織に存在するが、脳内にも存在すると考えられる
コリン系
アセチルコリン 一番最初に発見された神経伝達物質 記憶に関与 アルツハイマー病の治療薬として注目を集めている
神経ペプチド
(脳の調節約?)
オピオイド・ペプチド
(麻薬様物質)
エンドルフィン類


β-エンドルフィンなど 痛みを緩和する機能 幸福にも関与?

エンケファリン類


メチオニン・エンケファリン、ロイシン・エンケファリンなど 同上の機能?

ダイノルフィン類
その他の神経ペプチド
P物質


抹消から中枢への痛覚伝達に関与


ACTH


(=コルチコトロピン 記憶に関与


バンプレシン


記憶に関与


その他 そのほかさまざまな神経ペプチドが存在するとされ、機能解明が進行中である
その他 気体物質
一酸化窒素


(=NO) 循環器系や免疫系に深く関与


一酸化炭素


(=CO) 長期記憶に深く関与


その他

           表3  おもな脳内神経伝達物質とそのはたらき    参考文献 p32 より



 仮に神経細胞が発火しなくても神経伝達物質を放出させることが出来れば、その先の神経細胞を発火しやすくすることが出来ます。それぞれの機能や局在の場所が違いますので脳を操作することが出来ることになります。

 しかし技術的に出来るかどうかは不明です。




参考文献

 
  「ここまでわかった 脳と心」  イミダス特別編集 集英社
  「脳のイメージング」  柴崎 浩 ・ 米倉 義晴  共立出版  (1994年8月25日 出版)
  「脳と心をあやつる物質」  生田 哲  講談社ブルーバックス (1999年10月20日 出版)