「音のなんでも小事典」 日本音響学界 講談社ブルーバックス P319〜320 1996年12月20日 第1刷発行
(注は玉城)
最近の非浸襲性脳計測技術を使った研究によって、ペンフィールドの実験(注1)や失語症の研究で明らかにされた脳のさまざまな働きが再確認されている。そして、より複雑な脳の働きが次々に明らかにされつつある。たとえば、手足や指などの体の各部を動かすと、脳の運動野の中の対応する部分が活動する。ところが、実際に動かさなくても、手足や指などの動きを想像しただけで、運動野の対応箇所が活動するのである。他人が指を動かすのを見ただけで、自分の脳の運動野にある指に対応する部分の活動が観測されるのは、典型的な例である。 言語機能に関しても、さまざまな現象が観測されている。話すときには、運動性言語野(注2)や運動野が活動する。この活動のようすは、話す内容によって違ってくる。自分の体験談などを自由に話す場合には、ある決まった言葉を繰り返し発生する場合に比較して、活動する領域が大きく広がる。 声を出さずに、黙ったままでことばを思い浮かべる(これをサイレンススピーチという)場合には、脳のどこが活動しているのだろうか。この場合にも、声を出して話すときと同じように運動性言語野の活動が観測される。しかし、実際に声を出さないため、運動野での活動は起こらない。 |
(注1)
ペンフィールド(1891〜1976) カナダ人
20年以上にわたり、計400人以上の患者の頭蓋を開いて、次々に脳に電気刺激を与え、そのときどのような運動反応、感覚反応、精神反応が見られたかを詳細に記録していった。そのとき得られた知見を元に作られたのが、有名な、大脳皮質のどこでどのような機能がになわれているかを示す「運動のしゅじゅ(小人)・感覚のしゅじゅ」の図である。
「脳を極める」より
(注2)
ブローカ野ともいう 図1を参照

(図1) Neuroinfo Japanより 脳の各部位の役割を現す 左が前方