* ホームページの都合で、写真や図などは入れてありません。
やまかいの四季 NO 38 1991,2,7 甲府西高校理科教室発行
あなたの部屋は大丈夫
二酸化窒素は幹線道路なみ
…二酸化窒素による室内汚染の実態を探る
周囲を山々に囲まれた甲府盆地の冬の冷え込みは厳しく,暖房器具なしではとても過ごせない。少し前までは,厚い綿入れのはんてんを着て,こたつに潜り込んでも,立て付けの悪い障子の隙間から冷たい風が入り込んできて部屋の中でも息が白く見えるほどだった。ところが,最近の家は,断熱材入りの壁と気密性の高いアルミサッシの窓で外気から遮断され,暖房をつければ,真冬だってシャッ1枚で過ごせるほどに暖い。でも,このような快適さの裏に何か問題は無いのだろうか。
もちろん,暖房に使う石油やガスは有限な資源で,浪費してしまえば間も無く底をついて終うことは当然だが,気密性の高い部屋の中で,燃料をどんどん燃やすのだから,室内の空気も相当に汚染されているはずなのだが,その
実態はほとんど調べられていない。室内の空気は大丈夫なのだろうか。この疑問を解決すべく,化学部の生徒諸君と一緒に,暖房器具から発生する二酸化窒素(NO2
)を手掛かりにして,室内汚染の実態にメスを入れてみた。
最近の暖房器具は,燃焼中の不快な臭気を除くために,燃料を出来るだけ高温で完全燃焼するように作られている。燃料を完全に燃焼すれば,暖房効率が向上し,ススや悪臭も減少する。さらに,極めて有害な一酸化炭素(CO)がなくなるなどの利点は多い。しかし,高温で燃焼するために空気中に多量に含まれていて本来は安定な窒素(N2
)が燃えて,二酸化窒素や一酸化窒素(NO)などの窒素酸化物(NOχ:ノックス)が生成してしまう。二酸化窒素は「やまかいの四季 NO36」でも取り上げたように,自動車の排気ガス中に多量に含まれ,光化学スモッグの原因物質であるオキシダントを生成する刺激性の強いガスで,高濃度で存在すれば色や臭いで知覚することもできるが,低濃度の場合には五感で感ずることは難しい。このガスは高濃度で吸い込むと,気管支炎などの呼吸器系の疾患を起こすほか,低濃度のものを長期間吸収すると肺炎やインフルエンザにかかり易くなるばかりでなく,発ガン性をも持つことが知られている。
昨年12月と今年 1月の2回に渡って実施した簡易捕集を使った室内での二酸化窒素発生量の実態調査では,表−1に示したように,調査した多くの地点で二酸化窒素の捕集量が極めて高く,並行して実施した幹線道路沿いでの捕集量を上回る地点が相次いだ。特に,灯油をガス化して高温で燃焼させるファンヒーターのうち,燃焼した後の排気ガスを室内に排気する(室内排気型)ものや,炊事用のガスコンロを使っている部屋での捕集量が大きく,芯を使って燃焼させるタイプの石油ストーブでもかなり大きな値を示した。また,排気ガスを室外に出す強制排気式のファンヒーターや煙突付きの石油ストーブの場合でも、値は小さかったものの,捕集量はゼロにはならなかった。さらに,排気ガスの全く出ないエアコンや電気こたつを使用している部屋でも,他の場所から流れ込んできたと考えられる二酸化窒素が捕集されるなど,全体を通して,冬のしめきった室内の空気は二酸化窒素によってひどく汚染されており,その程度は交通量の多い交差点をも上回っていると言うショッキングな実態が明らかになった。室内排気型の石油ファンヒーターには,必ず「換気必要」との表示がされているが,窓を開け閉めする煩わしさや,開けると寒くなるなどの理由で,ほとんど換気しないのが実情のようだ。少なくとも30分に1回程度は十分に換気をしないと,室内の空気をあまり汚れていない状態で保つのは難しいと言われいている。頻繁に換気を繰り返せば,確かに,室内の二酸化窒素濃度は小さくなる。しかし,二酸化窒素の発生量自体が減少する訳ではないので,低濃度の二酸化窒素を吸い続けることには変わりはない。僕はこの結果が出てからと言うもの,石油ストーブの使用を極力控えるよう努力している。
寒い季節,室内暖房は不可欠なものなのだが,体が暖まるという目に見える利益を受ける代償に,五感では直接感ぜられない多くの不利益を同時に被っている事も忘れないで欲しい。
表ー1 主要調査地点での二酸化窒素捕集量(24時間開放)
| 地点 | 暖房器具 | 暖房器具使用時間(時間) | 換気の有無 | 二酸化窒素の捕集量[μg] |
| 台所 | ガヒー、コンロ | 7 | 有 | 12 |
| 台所 | 石ヒー、コンロ | 4 | 無 | 14 |
| 台所 | ファンヒー、コンロ | 4 | 有 | 8 |
| 居間 | エアコン、コンロ | 10.5 | 有 | 4 |
| 居間 | ファンヒー | 6 | 無 | 7 |
| 居間 | 石ストーブ、ファンヒー | 5.8 | 有 | 9 |
| 居間 | ファンヒー | 4 | 無 | 8 |
| 自室 | こたつ、電ストーブ | 4 | 無 | 4 |
| 自室 | こたつ | 4 | 無 | 2 |
| 自室 | 石ストーブ | 3 | 無 | 10 |
| 教室 | 石ストーブ(煙突) | 6 | 無 | 2 |
| 県庁前スクランブル交差点 冬 | 4 |
| 県庁前スクランブル交差点 夏 | 3 |
*凡例 ガヒー(ガスヒーター)、コンロ(ガスコンロ)、石ストーブ(石油ストーブ)、電ストーブ(電気ストーブ)
ファンヒー(石油ファンヒーター:室内排気型)、エアコン、こたつ(電気こたつ)
表ー2 捕集期間による二酸化窒素捕集量の変化
| 調査地点 | 使用暖房器具 | 捕集期間(日)と二酸化窒素の捕集量[μg] | |
| 化学準備室 | 石油ストーブ(煙突) | (2)3 (4)5 (6)7 | |
| 台所 | ガスコンロ、石油ファンヒーター | (2)9 (4)15 (6)20以上で測定不能 | |
| 台所 | ガスコンロ、石油クリーンヒーター | (2)3 (4)8 (6)13 |
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