2A3プッシュプルアンプ(2006/02/12)

【1】12AU7PPQRPアンプの製作

【2】50BM8超三結アンプの製作

【3】2A3プッシュプルアンプの製作

【4】6V6GTシングルアンプの製作

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2A3プッシュプルアンプ
電解コンデンサーレス

2A3について

2A3シングルアンプを作ったのは20歳位の時だったように覚えています。ケン・オーディオからキットを購入して回路はオリジナルで組んだものでした。当時はRCAの2A3は一本5千円くらいで容易に入手できたので何度も組み直してかなり楽しんだ記憶があります。最終的にはyahooのオークションで処分しましたが今思い出すとやはりたっぷりとした音質だったように思います。


2A3プッシュプルアンプ概要

お小遣いが少し貯まったので予算を10万円以内として本格的な物を作る決意を固めました。
久しぶりに工作をするので、見栄えのする2A3のプッシュプルアンプに決め、あまり凝らないオーソドックスな回路で2A3の良さを最大に引き出す事を目標にしました。

とはいえ電源は少し凝っています。寿命があり、電子部品なのに中に液体が入っていることが何とも嫌な電解コンデンサーを一個も使わないオールフィルムコンデンサー仕様としました。 このためFETによる定電圧電源回路を導入し同時にチョークコイルも省きました。
電源トランスは市販のトランスに適当な物が無いので特注しました。トランスの実装はシャーシーにべったりくっつけてもよいのですが、発熱対策のためナットで浮かして取り付けました。
電源回路は前段と出力段を別巻き線にしてファーストリカバリダイオードでブリッジ整流しています。定電圧電源は前段用の電源からツェナーダイオードと定電流ダイオードで基準電圧を作りFETのゲートに加えています。基準電圧からゲートの間にCRフィルターを入れ電圧がゆっくりと立ち上がるようにしました。パワーFETはフルモールド型の2SK2847で取り付けが楽です。発熱を押さえると共にクロストーク対策のために左右別々にしてシャシーの裏パネルに直付けしました。

内部写真 アンプ部分はオーソドックスなムラード型で出力段は固定バイアスです。初段は内部抵抗が低い割にはμの大きい12AT7を採用し調整のしやすいSRPPとしてカソードのパイパスコンデンサー(ケミコン)を省きここでの時定数を無くしました。ドライバーは無理が効く12AU7を採用、B電圧を400V(実質300V)かけて何とかドライブ出来るようにしましたがドライブマージンはほとんどありません。
当初は前段に6DJ8-6CG7のラインナップを考えたのですが、電源トランスが意外と小さかったので省エネを第一にして12AT7-12AU7に決めました。
12AT7はSRPPとして出力インピーダンスを低くしてるのでドライバーの12AU7の入力容量の小ささと相まって高域が延びています。また、12AU7は内部抵抗が低いので20kΩ台の負荷抵抗と合わせた出力インピーダンスも低くなり、2A3の入力容量が100PF弱あったとしても高域は数百kHzまで延びます。黒川式ほどではありませんが広帯域なアンプになっています。
2A3のフィラメントは、これまでの経験や過去の諸先輩の作例からハムは1mV以下に出来ると判断して交流点火にしました。
ハムバランサーは調整しやすいように10Ω固定抵抗と10ΩVR、22Ω固定抵抗を直列に入れています。当初22Ω+10ΩVR+22Ωで作製しましたが、VRを回しきってもハムバランスが取れなかったため片方の固定抵抗を10Ωに変更しました。ここは50ΩのVRのみでも良いかと思います。組み合わせの問題で解決はしますが、フィラメント巻き線4回路用意するか、バイアス回路を4回路用意する方が調整は楽で完成度が高くなると思います。


調整と測定

2A3はペアで購入しましたが、僅かにぱらつきがあり、DCバランスが取れてもハムが取れない物があり調整はかなり面倒です。DCバランスが取れない組み合わせがの方がかえってハムが取れたりします。また、2A3が完全に動作状態(4,5分掛かる)になり熱くならないとハムが取れないし、バイアス電流の違いによってもハムの打ち消しのポイントが変わってきます。
出力トランスの巻き線抵抗が75Ωなので、電圧降下が3V(約40mA)になるようにバイアスを調整しました。
残留ノイズは0.15mVまで追い込んだのですが、裏蓋をはめると誘導のためノイズレベルが上がり最終的には0.5mV程度になりました。エレハモ12AT7-GOLDもバラツキがあります。指ではじくとマイクロフォニックノイズも出ます。数本買って選別した方がよいでしょう。また、12AT7に手を近づけてもノイズレベルが変化します。
無帰還時のダンピングファクターは1.6程度です。DFが5になるまで8dBの負帰還を掛けました。
8Ωのダミー抵抗を負荷にして方形波を入力するとオーバーシュートが出ますがリンキングはほとんど出ません。コンデンサーを並列に入れるとオーバーシュート、リンキングが僅かに大きくなりますが発振はしません。ダミー抵抗を取り去って容量負荷にしても発振しません。
使用したF-782は古いタイプの出力トランスで当時は20dBの負帰還が当たり前だったのでこの時代に高帰還に耐えられるよう設計された出力トランスは8dB程度の負帰還ではビクともしないようです。
このままでも良いのですが、気持ちが悪いので僅かに位相補正を行いました。
まず、トランスの2次側にCRを直列にした補正抵抗を入れましたが、オーバーシュートの大きさは変わりません。そこでこの補正方法はやめて、通常の微分型補正で調整しました。1kHzの方形波を入力してダミー抵抗のみの負荷でオーバーシュートが出ないように、22PFのコンデンサーを負帰還抵抗に並列に入れました。ダミー抵抗にコンデンサーを並列に入れるとオーバーシュートが現れます。10kHzの方形波を入力してダミーロードのみの場合は少しオーバーシュートが現れます。並列にコンデンサーを入れるとオーバーシュートが大きくなります。さらに、抵抗を外し容量負荷にするとオーバーシュートとリンキングが現れますが発振はしません。もう少し強く補正しても良いのですがせっかくの高域特性を生かすためにこの値としました。
逆に入力にローパスフィルターを入れた方が良いのか迷う所です。現在はLPFを入れていません。

・出力:15W+15W
(8Ω、目視によるクリッピングポイント)
・周波数特性:10Hz(+0dB)〜130kHz(-3dB)
(3Vを0dBとして測定)
・DF:5(1kHz、ON/OFF法)
・残留雑音:左 => 0.5mV 右 => 0.5mV
(入力ショート、ボリューム最大、8Ω負荷 0.3mVフルスケール交流電圧計で測定)



回路図

回路図にすると電源回路が多少複雑なので、アンプ部分と電源部分を分けています。
増幅部回路図
電源部回路図


部品について

・電源トランスは春日無線変圧器に特注しました。価格は市販の2A3PP用よりも安価です。容量は200VAで最大出力時にぼぼ定格動作になります。無信号時は100VA程度の消費電力になります。タンゴのMX-280など従来の2A3PP用と比べるとかなり小型で、発熱が少しありますが思ったよりは少いようです。
・フィルムコンデンサーはsolenのチューブラー型とシズキのブロック型(RU-Z)を使いました。 また、カップリング用は東一のオイルペーパーコンデンサー(フィルムコンデンサーではありませんが…)です。
・シャーシーはタカチのOS49-32-43SSを使いました。アルミ製で天板は2mmの厚さがあり、しっかりしています。
・出力トランスはタムラのF-782です。50Wの容量で一次インピーダンスは3.8kΩ、価格も安くお買い得と思いますがMJ誌などでこのシリーズのトランスを使った作例が少ないのは不思議です。SGタップが無いので多極管を使ったハイパワーアンプ用としては使い難いのでしょう。
・パワーFETは耐圧が1,000Vの2SK2847で秋月電子通商で入手できます。
・その他小物部品はサトーパーツなど無印良品的な物を使いました。

主要部品

メーカー、品名

入手先等

真空管

エレハモ 2A3、12AT7

クラシックコンポーネンツ

電源トランス

特注

春日無線変圧器

出力トランス

タムラ F-782

ノグチトランス

フィルムコンデンサー

solen、wima

Antique Electronic Supply

フィルムコンデンサー
オイルコンデンサー
巻き線型可変抵抗器

シズキ
東一
バイオレット

サンエー電波ドットコム

金属皮膜抵抗器

メーカ不明(タクマン電子?)

タック電子販売

パワーFET 2SK2847 秋月電子通商

シャーシー

タカチ

エスエス無線

テフロン線 サーマックス オーディオ専科


今回得られたノウハウ等

・配線材は手持ちの関係から主に#18のテフロン線を使いましたが、芯線が太くて配線がしにくいので#20か#22が良いと思います。2A3のフィラメントは#16を使いました。
耐熱電線の#20の外形はテフロン線の#18とほぼ同じですので、見た目にはおかしくありません。
・丸い穴を開けるのにボール盤、ホールソーを使いました。大きな穴は回転数を少し落して開けると綺麗に開きましたまた、19φの穴は電動ドリルでもしっかり固定して開ければ何とかなります。何れも油を差しながら焦らずに作業することがこつです。
・ノウハウという訳ではありませんが、2A3用のUXソケットは足を差し込む部分が四角い物ではなく、大きさの違う丸い穴が開いている物(間違って刺そうとしても刺さらない!)を使うべきでした。使って分かったのですが、穴が四角いソケットは真空管を無理に押し込むと、どの方向でも刺さってしまいます。fool proofの観点からは失格ですが、製作記事などでこのタイプの物が使われているのが納得出来ません。
・フィルムコンデンサはフィルムを2枚のアルミ箔ではさんでぐるぐる巻きにしたものなので、どちらかの電極が外側になります。基本的に外側になっている電極を電位の低い方に配線します。
次のようにして極性を判定します。
1、ミリボルトメーターにコンデンサを繋ぎ指で摘む。
2、外側の電極をメーターのプラスに繋いだときに誘導で針が大きく振れる。
3、逆に接続すると指で摘んでも針はほとんど振れない。
以上の現象から、どの電極が外側か分かるので印を付けておきます。


音質評価、etc.
・完成してから後にアンプの足としてTAOCを購入し5φのネジで裏蓋に固定しました。効果がかなりありスケールが一回り大きく聞こえるようになりました。MJ誌の製作記事でも一般的にゴム足そのままのケースが多いようですが、管球式アンプをお使いの方はだまされたと思って試してみることをお勧めします。(だまされても5千円程です。)
・本アンプの音質は非常にクリアーで抜けの良いのが特徴です。音が甘く美しく聞こえ古いソースでも、どのような音楽でも綺麗に再生します(VT-62のようなきらきらした感じではありません)。管球アンプ独特の奥行き感もまあまあでます。低域はソースにもよりますが、はずむような音質で、時に「昔かっ」と言いたくなることもありますが、全体的には大満足で楽しく音楽に浸ることが出来ます。良い意味で演出派と表現すればなんとなく分かるでしょうか。いままで作ったアンプの中では一番音が良いと感じています。
しかし、音が良いと言ってもスタジオクォリティと言う意味では無く、あくまでも音楽鑑賞用として優れていると言うことで、最新のブックシェルフ型スピーカーを堂々と駆動出来るかは不明です。
・アンプのデザインはいつも気にするところで、いくら音がいい、手作りと言っても見た目が悪ければリビングに置いても返ってみっともない事になりかねません。
今回は、トランスの配置など十分検討して作ったつもりですが、出来上がってみると出力トランス間の距離をあと5mm近づけたらもっとバランスがよいのかなとも思ったりしています。また、フロントパネルに銘板を付ければもっとかっこよくなりそうです。電源トランスももっと大きな物がバランス的にはよいと思っています。(2006年1月完成)
・その後、位相補正用に30PFのディップマイカコンデンサを入手したので現用のセラミックコンデンサと取り替えました。容量も多少違うのですが、僅かに音が落ち着いて良くなった様な気がします。(2007年11月追記)