ホーム 研究会のお知らせ 隔月誌『プランB』2009年バックナンバー
よびかけ めざすもの 無縁社会から連帯社会へ 活動報告 2010年主要記事
役員 会員の意見・論文 『プランB』31号 2011.2.1
入会のご案内 ご意見はこちら 『プランB』編集委員会

〈被災生存権所得〉の新設を──東日本原発震災に直面して

 東北新幹線「はやぶさ」が時速300キロで盛大に祝福されてスタートした6日後、3月11日に発生した東日本原発震災は、日を追って甚大な災害となっている。マグニチュード9.0という未曾有の大地震と大津波である。加えて沿岸には原子力発電所が稼働中で、福島第一原発では炉心溶融が起きたようだ。
 この大惨事については、私は直ちに地球からの警鐘──〈脱原発〉への転換をを書いた(『プランB』第32号=4月)が、そこでも一言だけ触れた〈被災生存権所得〉についてごく簡単に説明する。
 東日本原発震災の被害の総額は25兆円を越えると試算されており、災害からの復興と新しい街創りには巨額な資金が必要となる。被災者生活再建支援法が有効に活用されなくてはならず、さらに災害に遭遇した人に〈被災生存権所得〉の新設が必要である。今度の災害で被災した人が仮に100万人だとしたら、月に7万円で年間に8400億円必要となる。これらの財源について党派を越えて活路を見つけなくてはならない。法人税の税率縮小は見送ることになりそうであるが、そんなことで追いつく額ではない。
 この際、資本金5000万円以上の法人への累進課税の強化(外国企業の逃避を防ぐためには外国企業には現行税率を維持してもよい)、所得税の最高上限を現行の40%から50%に上げること、消費税について食料品などを課税対象から外し、さらに高額消費財への倍率課税も含む税率アップが必要であろう。残念ながら、私にはそれらの数値を示す能力はないが、しかるべきシンクタンクが試算してほしい。
 農業を継続できない地域の人は、全国の過疎地や遊休耕作地へ集団移転することが活路となる。
 受給資格をどうするかも問題となる。従来住んでいた住居に住めなくなった人、別の地域に移住する人、被災によって職業を失った人、などに大きく分類して給付額に差を付けるのも一案だ。普通の意味での〈生存権所得〉ならば、一律全員だから、審査の必要はなく、それがこの制度の大きな利点でもあるが、「被災」と限定する必要があるからである。しかも、今度の場合には、時期が限定される地震とは異なって影響が長く持続する放射能災害が重複して発生していることが問題をいっそう複雑にしている(放射能災害は別枠で考えたほうがよい)。給付期間については、当面は5年間とするのも一案である。
 今こそ憲法第25条の生存権を活かす必要がある。そして、その前提として、人間の社会は、〈信頼〉によってこそ成り立っていること、〈信頼〉とは〈システムへの信頼〉にほかならず、別言すれば法と法律によって支えられていることをベースにしなくてはいけない。ここでも「自由」ではなく、〈平等〉が救援と復興の基軸である。コンビニの棚には「平等に一人一個を」と表示してある。
 防災都市の創造のためには、私権を制限しなければならない。1995年の阪神大震災の直後に、「都市計画のために私有地が没収される『減歩』も問題になってゆく」と指摘した(「阪神大震災と土地の私的所有の限界」『社会主義へのオルタナティブ』1997年、ロゴス)が、今回もさらに大きな規模でこの措置が必要となる。さらに〈土地の自治体所有〉をめざさなくてはならない。
 私たちは今、大惨事に直面して、社会のあり方を根本から問い正す歴史的瞬間に立たされている。〈被災生存権所得〉は、〈過疎地への集団移転〉や〈土地の自治体所有〉と合わせてそのカギになるであろう。
(2011.3.23 村岡 到/『プランB』編集長 『ベーシックインカムの可能性──今こそ被災生存権所得を』2011.4.20ロゴス刊に収録)

生存権はますます重要性を高めています。生存権の頁へ
〈生存権〉の核心的な重要性
〈生存権〉の意義と歴史