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上底たす下底かける高さわる2


台形の面積の公式は「(上底+下底)×高さ÷2」である。 人生において最も使わないものの一つだと思うが、ほとんどの人が知っている公式である。 あるとき、私の妻が「むかし学校で習って覚えさせられたけど、どうしてそういう式になるのか、説明してくれる先生はいなかった」と言った。 私は「そんなことはないだろう。ひっくり返してくっつけて…って教えてくれたはずだ」と言ったが、妻は「絶対そんなことはない」と言い張った。

念のために「ひっくり返して・・・」というのを説明すると(そんなこと分かっている!という人は読み飛ばして下さい)、一つの台形に、もう一つ同じ台形をひっくり返してくっつけると「平行四辺形」になる。 平行四辺形の面積は「底辺×高さ」なのだが、その「底辺」は実は元の台形の「下底」に「上底」を足したものである。 だから二つの台形をくっつけた平行四辺形の面積は「(上底+下底)×高さ」になって、台形一つ分はその半分だということになるのである。(図で描くと簡単なのに・・・文章にするとわかりにくいね)

さて、私は全ての数学(算数か?)の先生がこの説明をしていると信じていたから、妻の話を聞いても「どうせ、本当は教えてもらったのに、ちゃんと聞いてなかったんだろう」くらいに思っていた。 授業をしているとき、突然この話を思い出して、生徒たちに訊いてみた。 (ちなみに、私の生徒たちは英語は不得手だが、数学は高校入試のときから結構得意な子たちである。 しかも、私が訊いたのは理系の生徒だった)

「台形の面積の公式の意味はわかるよな?」

生徒たちは「???」という顔をした。

「台形をひっくり返して平行四辺形を作っただろう?」

一部の生徒が「うん、うん」と頷いた。 他の生徒たちは「何、それ?」と互いに言っている。 私は黒板に台形を書き、もう一つの台形を逆さにして平行四辺形を作った。

「ああ、そうか」と、さすがに理系の生徒たちだけあって、すぐにわかった。 「これ、本当に初めて聞いたことなのか?」と私は驚いた。

「この説明を聞いたことがないという人、手を挙げて」

クラスの半数以上の生徒の手が上がった。 「聞いたけど忘れているんじゃないのか?本当に一度も聞いたことがないのか?」と私が問うても「聞いたことない」という返事だった。 「じゃあ、お前たちは意味もわからずに公式だからと覚えてきたのか?」と訊くと「そうだ」と言う。

これは一体どういうことだろう? 生徒たちの学習の中に「何故そうなるのか?」という部分がひょっとしたら抜け落ちてはいないのか? 意味を理解せず、ただ問題を解くために公式を覚えていく・・・ 教師はおそらくどこかで意味を教えていると思う。 ところが、学ぶ生徒たちに「何故そうなるのか」ということへの関心が向かない、そういう状況を私たち教師が作り出してしまっているのではないか? ・・・それとも、本当に「台形の公式」の意味は学校で教えられていないのだろうか?

数学の先生たちばかりを責めているのではない。 私自身、英語の熟語など、「何故この動詞に、この前置詞がくっつくと、こういう意味になるのか」なんてことはほとんど教えていない。 「入試によく出るぞ。覚えておけ」と言ってしまう。 日々の授業の中で、生徒に「何故そうなるのか」ということを考えさせることを意識的にやっていかないと、生徒の真の意味での「考える力」は育てられないな、と思う。 

さあ、明日から、英文を読むときも「日本語に訳して終り」とならないような授業を心がけるとするか。 (本当は今もやっているつもりですよ、実は。)



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