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トライコーンSPユニットの製作

 定電流アンプを製作したが、いよいよこれに合わせたSP造りである。電流アンプは出力インピーダンスが高くボイスコイルに電磁制動がかからないため、ボックス型SPシステムでは盛大なfo共振音を聴くはめになる。どうやら電流アンプに最も適したSPは、トライコーン・フルレンジユニットを平面バッフルに取り付けたものらしいことが判ってきた。(手作りアンプの会で、小さなバッフルに付けたトライコーンSPを定電流アンプで駆動した音を聴く機会を得たが、広々とした会場の最後部まで浸透するように響き渡らせたことは圧巻であった。)

 コーラルBETA8の磁気回路をベースにトライコーンSPを試作してみたので、紹介する。

BETA8の分解

 BETA8は完成度の高いユニットであるため、コーン、ダンパー、ボイスコイル等のパーツを潰さないように丁寧に接着剤を剥がし、取っておくこととする。

接着剤を剥がすにはMEK(メチル・エチル・ケトン)を使うが、MEKは蒸気を吸い込むと大変危険であるため、野外で息を止めながら滴下し、接着剤が浮くまでその場を離れる等の注意が必要である。接着剤が浮いてき始めたらアセトンでも十分に剥がせるが、アセトンも有害であるため、しめらせたマスクをして作業をしたほうが良い。

コーン紙を作る

 凧紙をコンニャク糊で貼り付けて積層する。コーン紙には三枚積層、サブコーン・トライコーン用に二枚積層を作った。アクリル板上で版画用ゴムローラーを使って圧着し・空気を追い出し、糊のムラを延ばす。これを一晩くらい置いてアクリル板から剥がし、積層紙をさらに乾かせる。

コーンの成型

 作った積層紙を円錐状に接着するが、メインコーン頂角を110°とするのが良い。これより浅いコーンだと音が前に出てこず、へばり付いたような歯切れの悪い音になる。また、またコーン有効径は16cmで外周5mmを折り返してリブを作っている。

 今回はBETA8のVCボビンをそのまま流用した。VCは8mm幅二層巻でDCR=7.3Ωである。

 エッヂは薄手の和紙をよく揉んで柔らかくした物である。接着剤にはセルロース系のセメダイン321をアセトンにて適度に希釈して貼り付けている。

ひも式ダンパー

 最も自作が難しいのがダンパーのように思う。一般に用いられる布ダンパーはセンター保持には良いが、初動感度が鈍くどうも音が良くない。そこでひも式ダンパーを試してみる。袋ひもの細手で伸縮しやすいもの(リリアン)を選んでみた。

 ひもの張り方は三角にするのがセンター保持の面で安定度が高いようだ。そして、センター保持力との兼ね合いではあるが、fo20Hz以下のフラフラにしたいものである。

 ダンパーとコーンの固定はシリコン系接着剤を用いたが、今のところ全く不都合を感じていない。

サブコーンの成型と接着

 サブコーンには凧紙二枚積層紙を用い、頂角75°に成型する。コーン同様にVCボビン外周部にセメダイン321で強固に接着した。

 サブコーンを接着した後、ここらで音を聴いてみることにした。センターにディフューザーを取り付けるとなかなかカッコイイ!格好も音もBETA8をグレードアップした感じである。

 裸でならしてみたが、反応良くスピード感がありながら、BETA8より暴れが少ない。これでもかなり良いが、どうしてもダブルコーンSPはメインコーンとサブコーンの振動が干渉し、離れると音のバランスが崩れたり、通りが良くないことがわかる。トライコーンによりこの辺がどれだけ改善されるか楽しみである。

トライコーンを付ける

 凧紙二枚積層、頂角110°でサブコーン外周より数ミリ大きなトライコーンを作り、接着する。なお、トライコーン、サブコーンともセルロース系接着剤(セメダイン321)をアセトンでかなり希釈して、軽く刷毛塗り含浸して音色を調整してみた。トライコーンの効果としては一聴して高域の伸びが抑えられたかのように聞こえるが、カチッと芯のある中高域になり、遠くに離れてもリアルな音像が届くようになる。また、トライコーンでできた空気室が適度な空気ダンパーとして働くためであろう、fo共振(コーンのフラフラ)が上手くおさえられるのが面白い。

バッフルに取り付けて試聴

 簡単なバッフルを作ってみたが、補強に付けた枠で箱鳴りを作ってしまい、電流アンプの売りのストレートなエネルギー再現が台無しであったが、補強枠を切り抜いてやっと期待通りの音となった。けっこう真っ当なバランスの音でありながら、電流アンプのストレートさを出してくれている。低域も高域も十分に伸びていないのだろうが、音が立ち上がっているので、しっかり出ているように聞こえる。電流アンプ+トライコーンSPは周波数特性で聴かせるのではなく、波形で聴かせているので、波形再現を鈍らす要素は出来るだけ避ける意味でもSPは裸に近い状態で鳴らす方が良いということであろう。音はかなり満足できるレベルであるが、コーンをもう一回り小さくした方がもっと反応の良い音になるのではないかと感じている。

2002.9.7


もう一度作り直す

 長谷部氏宅に作ったトライコーン・ユニットを持参し、電流アンプにて比較試聴を行った。

 長谷部氏のFLAT8改トライコーンユニットが圧倒的に良い。それに比べると私の物はコーンが薄いので音に強さが無く、分割共振で不自然な響きがつきまとう。これまで何回か作ってきた経験では電圧アンプでは比較的薄く軽いコーンの響きが良いと思ったが、電流アンプではコーンが少しくらい重くとも強さがある方が良いことが判った。エクザクトのコーンも薄すぎて電流アンプ駆動には向かないようである。電流アンプ駆動で良くできたトライコーンSPを聞くとホログラムのように室内全体に音像を形成するのが心地よい(これは電圧アンプではどんなに高級なSPシステムであろうとも聞くことの出来ない世界である)。

 そこで私もコーン紙をもう少し厚くして再度組み直してみた。改善点は次のとおり。

1.メインコーンを凧紙(薄口)4枚積層、サブコーンとトライコーンを凧紙(厚口)3枚積層とする。

2.メインコーン外周を円筒状リブで補強。シェラックをメタノール希釈し、ごく薄く含浸。

3.フレーム前部の突き出しを削り取る。

貼り付け道具とコンニャク糊(湯煎

アクリル板上で貼り付け

コーンのリブ補強とシェラック含浸

フレーム突き出しを削り取り、組み上げる

 完成後の音は目指す方向に改善され、気持ち良く聴くことができる。だんだんとトライコーンユニットづくりのコツが掴めてきたようである。あとは自然に低域を伸ばせられれば申し分なしである。

2002.11.10


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