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書  評
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Copyright 2003-2005 by Tatsuo Tabata
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このページの目次

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5 of 5 stars 憲法再生フォーラム・編 「改憲は必要か」岩波新書

改憲か護憲かを考えるためのよい判断材料

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 本書の本文は7章からなり、各章には、それぞれ長い疑問文の題名がついており、各章の執筆者は、その疑問に対して読者が自分で答を出せるような判断材料を丁寧に述べている。編さんした憲法再生フォ−ラムの性格上、執筆者の考えは当然、護憲側に傾いている。しかし、上記のようなQ&A方式と各章の執筆者のソフトな語り口が相まって、いま改憲が必要と考えている読者にも、本書を取っつきやすいものにしている。第6章「市民がどれだけがんばっても,しょせん戦争は止められないし,世界は変わらない.憲法九条も変えられてしまうのではないか」において、日本のマスメディアが全く取り上げて来なかった1990年代以降のグローバルな市民の活動が、改憲状況下にある日本の市民に勇気と知恵を与えるものとして、詳しく紹介されているのが印象的である。第7章「現実と遊離してしまった憲法は,現実にあわせて改めた方がいいのではないか」では、集団的自衛権が歴史的遺物であることが分かりやすく説明され、憲法九条が世界市民の共有財産であることへの言及があって結びとなる。この章はまさに改憲問題の核心をつくものである。改憲か護憲かを自ら真剣に考えようとする人にとって、必読の書といえよう。

(2005年2月16日)


4 of 5 stars 川西政明 「小説の終焉」岩波新書

作家を鼓舞する終末論

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 目次を見ると驚く。15章すべての題名に「終焉」がついている。いくつかの章題を、「終焉」を略して記せば、私、性、芥川竜之介、大江健三郎、戦争、存在、などである。作家が同時代の社会的・政治的テーマを扱えば、それが時代の変遷によって、今日的なテーマでなくなるという意味では、終焉もあるだろう。また、一人の作家が死亡すれば、その新たな作品がもう世に出ることがないという意味では、その作家の終焉ではある。しかし、川西は、現存の作家についても終焉を迎えたとし、また、永続的なテーマにも終焉を宣言する。読者は、これはいったいどういうことかと、いぶかりながら読まされる。本書には、多くの小説家の人生とその作品がより合わせて巧みに紹介されている。著者はそうした紹介を通じて、それらの作品に扱われたテーマ、あるいは一つのテーマを追求した一小説家の役割が、狭い意味では終焉に至ったと見得ることを示すが、なお疑問は解けない。「おわりに」の章に到って、読者は著者の終末論の意図を知り、ようやく安堵する。そこには次のように書かれている。「小説が存続するためには、この次の百年にこれまでの百二十年の小説の歴史を大きく凌駕する豊饒な世界が創作されなければならない。」――これは、日本の近代小説の歴史を多数の小説のあらすじを通して紹介し、忙しい読者を楽しませる本である以上に、今後小説を書く人びとを鼓舞する本なのである。

(2005年1月31日)


5 of 5 stars 加藤周一 「夕陽妄語VII」朝日新聞社

比喩や諧謔を交えた政治情勢評

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 「夕陽妄語」は1984年に朝日新聞に連載が始まり、著者は、うんちくの深い文学や芸術についての味わいある随筆や、日本と世界の政治情勢についての鋭い批評を、20年にわたり書き続けてきた。本書には21世紀最初の3年間の分をまとめてある。この間に、9.11のテロ事件や、アメリカのアフガニスタン攻撃と対イラク戦争があり、日本のアメリカ追随政策が進行した。著者は比喩や諧謔を交えた文で、アメリカや日本の動きを分かりやすく分析し、それに対して警鐘を鳴らし続けている。これが肝心の両国の政治首脳に影響を与えるに至っていないのは、まことに残念であるが、少しでも多くの人びとが本書を読み、国内外の政治情勢を広い視野で把握することを学んで貰いたいものである。私の出身高校のモットーは「たくましい知性と洗練された感覚」であったが、本書の著者こそは、このモットーの模範となる人物である。

(2004年6月1日)


5 of 5 stars 吉村浩一 「鏡の中の左利き―鏡像反転の謎―」ナカニシヤ出版

古来の問題を発展的に扱う

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 心理学者である著者は、前著「逆さめがねの左右学」の中でも、古くからの鏡像問題、すなわち、「鏡像では左右が逆になり、上下が逆にならないのはなぜか」という問題を扱っていたが、本書では、鏡像問題を、より幅広く真正面から取り上げている。まず、鏡像の幾何光学的性質について説明した後、鏡像に対して左右反転感を抱く場合と、抱かない場合があることを具体例で示し、それらを総合的に理解するには、座標系の共用−個別化という心的処理に注目しなければならないと提唱する。著者が長年たずさわってきた、逆さめがね実験からの知見に基づく事例の解釈には説得力がある。高野陽太郎著「鏡の中のミステリー」(岩波科学ライブラリー、1997)も、鏡像問題を学ぶためには必読の書であるが、これと比較すると、本書の取り扱いは、問題をよく整理して一歩先へ進んだ感じである。読者に疑問を抱かせるような表現や考え方も散見されるが、巻末の「一物理屋のコメント」には、それらの点の批判も記されている。

(2004年5月28日)


4 of 5 stars 加地大介 「なぜ私たちは過去へ行けないのか―ほんとうの哲学入門」哲学書房

楽しい例題で哲学に誘う

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 本の表題と同じ題名の第1章と「なぜ鏡は左右だけ反転させるのか」と題する第2章とからなる。第1章では、映画「ターミネーター2」を題材として、著者自身の夢と称する関連の物語も挿入している。そのような気軽に読める雰囲気の中で、過去と未来の相違や私たちが過去へ行けない理由について、読者にも考えさせながら論じて行き、最後に著者のユニークな回答を示す。第2章では、鏡が上下は反転させないで左右だけを反転させるという古来の謎について、「幼なじみのノボル君の悩み」と平行して考察を進め、ガードナーやブロックによる有名な説明にも疑問を呈する。ただし、左右の概念が回転に由来することの必然的帰結であるという著者の新しい説明は、上下・前後が決まって初めて左右が決まることに原因があるとする、心理学者や物理学者による最近の説明(たとえば吉村浩一著「逆さめがねの左右学」参照)と比較して、究明がやや浅いと思われる。若い人たちを哲学に惹きつけようとする意欲的な著作ではある。

(2004年5月6日)


4 of 5 stars 村田孝次 「教養の心理学」培風館

分かりやすい心理学入門書

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 大学の通信教育を受けている友人から、心理学の試験に出題される予定の問題について解答案を教えて欲しいといわれたが、私が大学教養過程で心理学を習ったのは、はるか以前のこと。何か参考書をと、書店で類書を比較検討して本書を購入した。尋ねられた三つの問題中、「視覚における無意識的推論」についての記述はなかったが、他の2問、「学習における古典的条件づけと道具的条件づけ」、「人格の類型論と特性論」については、ひじょうに分かりやすい説明があった。序論、動物から人間へ、発達、学習、動機づけと情緒、知覚、思考と言語、パーソナリティの8章からなる。多くの原著書から図表が引用されており、理解を助ける。値段も手ごろであり、入門段階の心理学を独学あるいは復習するのに最も適した本の一つと言えよう。

(2003年11月17日)


4 of 5 stars 山手正彦 「水彩スケッチ入門―美しい日本の風景を描く―」日貿出版社

落ち着いた作例で初心者を親切に導く

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 本書は安野光雅著「絵のある人生」(岩波新書)の中に、絵を描くための入門書として推薦されている。巻頭の口絵に「四季の風景」と題して、著者が日本の風景を描いた春、夏、秋、冬、各3点ずつの作品が掲載されている。なるほど、著者の画風は、安野のそれに似ている。しかし、安野の作品が鉛筆を主体とし、線を生かした描き方であるのに対して、本書の著者は、そうした描き方も紹介し、その作例も挙げてはいるが、鉛筆と絵の具を適度に用いた描き方と、絵の具を主体とした描き方の作例をより多く掲載している。この点では、安野流の絵を学びたい私にとって、いささか期待はずれであった。また、著者は多くの場合、少数の同系統の色を主体として、落ち着いた雰囲気を出す彩色をしており、その作例は、一見して強く惹かれる絵ではない。しかし、よく眺めていると独特のよさが感じられてくるという趣はある。絵を描くための感動を得る方法から、小さな個展を開くなどして、絵を描く楽しみを共有する方法までをも含めた解説は、初心者を親切に導いてくれる。

(2003年11月1日)


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