- 20世紀映画年代記(後半) -


<映画の世紀>
 20世紀は「戦争の世紀」であると同時に「大衆文化の世紀」でもありました。先進国に住む多くの人々は、その国の経済的繁栄のおかげで余暇と経済的な余裕を獲得。彼らによって「大衆文化」という19世紀にはなかった新しい文化が生み出され、育てられることになりました。「ポピュラー音楽」の世界的な発展はその好例ですが、その他にも「ダンス」「小説」「写真」「スポーツ」「ファッション」「ゲーム」「マンガ」「演劇」など、大衆的文化として広まったものが数多くあります。なかでも、「映画」はその集大成ともいえる大衆文化として、20世紀を代表する存在といえます。「映画」とは、もっとも総合的な娯楽であり、前述の大衆文化すべての影響を受けながら生み出され発展したものです。そして、映画とはその時代の社会状況をそのまま映し出す鏡でもあります。従って、それぞれの年の代表作を見て行くことは映画の変遷と同時に社会の変遷を見ることにもなりそうです。

「19世紀が植民地主義とオペラと小説の時代であったとすれば、20世紀はファシズムと精神分析と映画の時代であった」
四方田犬彦「日本映画史100年」より

<映画産業の誕生>
 映画の始まりは、一般的に1895年リュミエール兄弟がパリのグランカフェで行ったスクリーンを用いた最初の上映会だったといわれています。しかし、当時は人が動く様子や機関車が走る映像を見せるだけのものでした。(それだけでも、観客を驚かすに十分な衝撃ではあったのですが・・・)
 そこに現在の映画に通じるドラマ性をある程度持ち込むことで映画界初のヒット作「大列車強盗」を生み出したのが、エジソン社から独立した世界初のスター監督、アメリカ人のエドウィン・ポーターです。彼の作品「大列車強盗」の公開が1903年ですから大衆文化としての映画は20世紀の始まりとともに発展を開始したといえます。ヨーロッパから始まった映画の文化は、その後しだいに新大陸アメリカへと移ってゆくことになります。

<ハリウッドの時代>
 アメリカでは「ハリウッドの父」とも呼ばれるD・W・グリフィスによって、映画は「動く紙芝居」から「動く絵画」へと高められ、さらには巨額の利益を生み出すビッグ・ビジネスへと成長することになります。映画の都ハリウッドは、そうした映画界の発展を象徴する存在であり、効率的に映画を生み出すことのできる映画生産工場として1910年代に誕生しました。そして、この後、世界の映画界はこのハリウッドを中心に歴史を刻んでゆくことになります。当然のことながら、映画の歴史はハリウッド映画を見ているだけでは語ることができません。しかし、ここで取り上げている20世紀後半の映画の歴史は、ハリウッド黄金時代の終わりとそこからの復活の歴史でもあります。アメリカにおける映画の興行収入がピークに達していたのは1946年だといいます。(それはテレビの登場とも重なっています)したがって、それ以降のハリウッドの歴史は、映画の衰退の中でなんとか復興させようという苦闘の歴史でもあったのです。

<ハリウッドの生き残り策>
 ハリウッドは自らの危機を乗り切るため、数々の対応策を打ち出しました。そのひとつは外部の優れた才能や優れたアイデアを取り込んでゆくことです。例えば、第二次世界大戦中にアメリカへ渡ったヨーロッパの優れた映画人。ハリウッドで映画を製作するために海を渡った世界各国の映画人。リメイクという形でアイデア不足を補うために輸入された世界各地の映画。これらがハリウッドの新しい血として混じりあうことで、ハリウッドはその新鮮さを保ち続けることになります。そうした新しい映画人の中でもニューシネマという新しい映画スタイルの監督たちは、映画を娯楽から芸術へと高めるうえで大きな貢献を果たします。

<ビジネスとしての映画>
 映画は総合芸術として多くの要素が関わる存在ですが、その製作に必要とされる金額は年々増える傾向にあります。そのため、映画は映画産業というビジネスの一ジャンルとなりつつあり、そのビジネス・モデルの変化が作品内容にも大きな影響を与えつつあります。そのうえ、ハリウッドは生き残りをかけて自らの企業形体を常に変革し続け、今やメディア全般に関わる巨大グループの一部門となりました。映画産業は、テレビやゲームやキャラクター・グッズ業界に人気ソフトを提供する最大のアイデア源でもあるのです。

「現実の世界は、もちろん、ショットにふさわしく組織されてなどいない。にもかかわらず、一つのショットは、あたかも世界が映画のショットにふさわしく組織されているかのようにな錯覚をあたりにいきわたらせる。実際、フリッツ・ラングや、アルフレッド・ヒッチコックや、マキノ雅弘の映画と見れば、そこでのショットが、どれもこれも、これしかないという的確な構図におさまっていると嘆息せざるをえない。被写体との距離も、それがショットとして持続するリズムも、完璧である。しかも、その的確さを立証するものなど、被写体にキャメラを向ける以前のこの世界に存在していたはずがない。
 ショットとは、そこで生成と消滅とが同時に演じられるフィクションだとしかいえぬ不気味な何かである。存在していながら存在していないのがショットなのであり、あたかも見ているはしから、そこで世界が不在化してゆくとしか思えない。だが、ラングやヒッチコックやマキノは、いささかもフィクションと戯れているのではなく、あくまで現実のさなかに身を置いた現実の存在である。映画において、ドキュメンタリーとフィクションを区別することの無意味さはそこから来る。
 個々の画面がショットとして成立しているかぎり、リュミエールのシネマトグラフで撮られようが、デジタル・ヴィデオ・カメラで撮られようが、スクリーンに投影される画面は映画以外の何ものでもない。・・・」

蓮実重彦「映画崩壊前夜」より(2008年)

<追記>2012年3月
「映画は、今のところ総合芸術という概念に最も近づき得る表現形式であり、いろいろな可能性をためさずにはいあられない気質の芸術家ならば、当然このメディアに引きつけられる。だから商業的に成功し、批評家からも賞賛されて思いどおりの仕事のできる自由を得たとき、彼らはまだ開拓されていない映画の可能性をやみくもに追い求めようとする。そのあふれんばかりの情熱が夢の映画叙事詩に注ぎ込まれる。映画の世界では、正気でいることは小じんまりとまとまってしまうことを意味する。ヒューストン、リーフェンシュタール、・・・オーソン・ウェルズ、ドライヤー、フリッツ・ラング、ヴィスコンティ・・・フランチェスコ・ロージ、フェリーニ、ペキンパー・・・ジョン・フォード、アルトマン、スコセッシ、クロサワ・・・これらの監督たちも、機会さえあれば身の破滅を恐れず、この夢を実現しようとしたにちがいない。そして彼らにそういう機会がなかったことは、わたしたちすべてにとって - 後にくる世代にとっても - 悲劇ではないだろうか?映画史の不幸とは、壮大な失敗作がつくられることではなく、それがつくられないことなのだ。・・・」
ポーリン・ケイル「明かりが消えて映画がはじまる - ポーリン・ケイル映画評論集-」より



<映画の誕生からハリウッドの誕生>
1895年から1945年までの映画の発展の歴史については、この新しいページをご覧下さい!


 ヨーロッパでの映画という新しい文化の誕生からアメリカへの展開、ハリウッドの誕生までを振り返ります。
20世紀初頭 映画草創期からハリウッド誕生まで リュミエール兄弟、ジョルジュ・メリエス、エジソン他
20世紀初頭 映画音楽と芸術映画の誕生 サン=サーンス

1902年 「月世界旅行」 「映像技術の創造者たち」 リュミエール兄弟、ジョルジュ・メリエス
1908年 「ギーズ公の暗殺」 「映画音楽と芸術映画の誕生」 サン=サーンス、フィルム・ダール社
1911年 「エリザベス女王」 映画界初のスター女優誕生 (主)サラ・ベルナール
1912年 「クオバディス」 イタリアが生んだ歴史大作 エンリコ・ブアッツォーニ
1913年 「ファントマ」(連続活劇) 世界中に連続活劇ブームを巻き起こしたヒット作 ルイ・フイヤード
1914年 「ポーリンの危機」(連続活劇) アメリカ製連続活劇のヒット作  
1915年 「チート」 早川雪舟が人気悪役俳優としてブレイク セシル・B・デミル、早川雪舟
1916年 「イントレランス」 「映画の父による伝説の超大作」 D・W・グリフィス
1917年 「移民」 チャップリンによるアメリカでの出世作 チャールズ・チャプリン
1918年 「人類の春」 グリフィス、ギッシュコンビの代表作 D・W・グリフィス、リリアン・ギッシュ 
1919年 「カリガリ博士」 ドイツ表現主義を代表する傑作 ロベルト・ウィーネ
1920年 「東への道」   D・W・グリフィス、リリアン・ギッシュ
1921年 「シーク」 世界初のカリスマ・セクシー男優の代表作 ルドルフ・バレンチノ 
1922年 「鉄路の白薔薇」 ドイツが生んだ巨匠の代表作 アベル・ガンス
1923年 「荒武者キートン」 もうひとりの喜劇王キートンの代表作 バスター・キートン
1924年 「バグダッドの盗賊」 ダグラス・フェア・バンクス人気がブレイク ラオール・ウォルシュ
1925年 「戦艦ポチョムキン」 モンタージュなど映像技術の教科書 セルゲイ・エイゼンシュタイン
1926年 「ファウスト」 巨匠ムルナウの代表作 F・W・ムルナウ
1927年 「メトロポリス」 「群集の時代を予見した聖なる映画」 フリッツ・ラング
1928年 「裁かるるジャンヌ」 ジャンヌ・ダルクものの代表作 カール・ドライヤー
1929年 「アンダルシアの犬」 「アバンギャルド映画の原点」 ルイス・ブニュエル
1930年 「西部戦線異状なし」 「反戦映画の原点となった歴史的名作」 ルイス・マイルストーン
「巴里の屋根の下」 「フィルムに焼き付けられた芸術の都」 ルネ・クレール、ラザール・メールソン
1931年 フランケンシュタイン オカルト、SFものの原点 ジェームス・ホエール、ボリス・カーロフ
1932年 「グランドホテル」 グランドホテル形式を生んだスター映画 エドモンド・グ−ルディング
1933年 「新学期操行ゼロ」 「過激すぎる映像作家の悲劇過ぎる死」 ジャン・ヴィゴ
1934年 「或る夜の出来事」 スクリューボール・コメディーの傑作 フランク・キャプラ、クラーク・ゲーブル
1935年 「南海制服」 海洋冒険アクションの傑作 フランク・ロイド、チャールズ・ロートン
1936年 「巨星ジーグフェルド」 ミュージカル映画の歴史的傑作 ロバート・Z・レナード
1937年 「大いなる幻影」 「誇り高き時代が生んだ戦場の伝説」 ジャン・ルノワール
「人情紙風船」 「戦場に消えた幻の巨匠」 山中貞雄
1938年 「民族の祭典」 ドキュメンタリー映画の歴史的傑作 レニ・リーフェンシュタール
1939年 「風と共に去りぬ」 映画史に燦然と輝く超大作 ヴィクター・フレミング、ヴィヴィアン・リー
1940年 「独裁者」 「すべての独裁者に捧ぐ」 チャールズ・チャップリン
1941年 「市民ケーン」 「自由の国が生み出した奇跡の映画」 オーソン・ウェルズ
1942年 「カサブランカ」 「永遠のヒーロー、ボギーに乾杯!」 マイケル・カーティス、ハンフリー・ボガート
1943年 「ラインの監視」   ハーマン・シュムリン、リリアン・ヘルマン
1944年 「我が道を往く」   レオ・マッケリー、 ビング・クロスビー
1940年代 第二次世界大戦と戦意高揚映画 「ユダヤ系 VS ナチス・ドイツ」

<1945年から50年代へ:ネオリアリズモからヌーヴェル・ヴァーグへ>
 戦後の映画史は1945年頃にイタリアで生まれたネオリアリズモから始まったとされています。社会の現状を忠実に描き出すこの手法は、社会主義思想の世界への広がりとも重なるため、それが冷戦の始まりとともに「赤狩り」のきっかけを生むことにもなります。同じ頃、アメリカではメジャーの映画会社がすべて独占禁止法によって解体され、ハリウッドの映画産業の構造は大きく変化。独立系のプロダクションがそれぞれの企画をもとに映画を作ることが可能になります。
 そのため、映画界では娯楽性だけでなくシリアスな問題を追及する作品を撮ることが可能になってゆきます。その点では、20世紀後半の映画の歴史は、それまでは映画で取り上げることができなかったタブーとされていた事件や人物を描き出すための闘いの歴史ともなりました。それは、セックスと暴力に関するものだけではなく、政治、差別、権力機構、人種問題、エイズ、そして歴史の影に隠された事件など、様々な分野にわたりました。
 1950年代は、ビートニクの登場で象徴されるように、それまで無視されてきた10代の若者たちが「反抗する世代」として注目されるようになった時代でもあります。映画界からも、マーロン・ブランドジェームス・ディーンそして、エルヴィス・プレスリーなどのヒーローが登場し、後のニューシネマへとつながる流れを生み出すことになります。
 しかし、そうした流れの原点には1950年代後半にフランスで始まった映画の革新運動「ヌーヴェル・ヴァーグ」があったこと忘れるわけにはゆきません。映画雑誌に寄稿する若手評論家たちが自ら映画を撮ることで新たな映画の表現手法を模索したその運動は映画における「革命」だったともいえます。

1950年代後半 「ヌーヴェル・ヴァーグ」 フランスで始まった映画の「新たな波」、ヌーヴェル・ヴァーグと作家主義に愛をこめて

 こうした、時代の急激な流れの中、当時のハリウッドのメジャーは映画ファンを劇場に呼び戻すために、巨額の予算をつぎ込んだ超大作に力を入れ、テレビの浸透に対抗。ワイドスクリーンにより画面を大きくしたり、3D映画、それにドライブ・イン・シアターなどの新しい映画スタイルを登場させてゆきます。しかし、どれも一時的な効果しかありませんでした。

1945年
この年の映画
「無防備都市 「終戦、そしてフィルムは回り始めた」 ロベルト・ロッセリーニ
イタリアで誕生したネオ・リアリズモから始まった新しい時代の象徴作。イタリア市民によるナチズム抵抗運動をドキュメンタリー・タッチで描いた衝撃的作品
「天井桟敷の人々」 「戦火の中で生まれた歴史的名作」 マルセル・カルネ
1946年 「素晴らしき哉、人生!」 「素晴らしき哉、古き良きアメリカ」 フランク・キャプラ
古き良きアメリカへのオマージュに満ちた感動の社会派ドラマ。異次元世界へのトリップものの原点ともなったファンタジー映画でもあります。
1947年 「紳士協定」 「実録人種差別体験記・ユダヤ編」 エリア・カザン、ジョン・ガーフィールド
ユダヤ人への差別を告発するために自らユダヤ人になった記者の体験記。実際にあった事実をもとにしたドキュメンタリー・ドラマ。
ハリウッドを追われた人々の物語(実録赤狩り物語) ダルトン・トランボ、エリア・カザン他
1948年 「黄金」 「見果てぬ夢を追い続けた男たち」 ジョン・ヒューストン、ハンフリー・ボガート
ハードボイルド映画の黄金コンビによるトレジャー・ハンティング映画の傑作。見果てぬ夢を追い続けた愚かな男たちの破滅へ向かう物語。
1949年 「第三の男」 「戦後の混乱が生んだ影の男たち」 キャロル・リード、オーソン・ウェルズ
イギリス映画の黄金時代が生んだ戦後世界の闇を描き出した歴史的名作。美しい白黒映像と哀愁のメロディーが織りなすサスペンス・ドラマ。
「オール・ザ・キングスメン」 「権力によって善を生み出すことは可能か?」 ロバート・ロッセン、ロバート・ペン・ウォーレン
1950年 「サンセット大通り」 「ハリウッドの光と影」 ビリー・ワイルダー、グロリア・スワンソン
サイレントからトーキーへ、ハリウッドの変化が生んだ悲劇のヒロインの肖像。フィルムノワールの手法で描かれた不気味なサスペンス・ドラマ。
「羅生門」 「永田ラッパが生んだ「世界のクロサワ」誕生秘話」 黒澤明、永田雅一、京マチ子
1951年 「欲望という名の電車」 「タブーを打ち破った3人のはみ出し者」 エリア・カザン、マーロン・ブランド、テネシー・ウィリアムズ
過激な性描写の演劇を映像化した天才たちの出会い。熱い演技と演出のぶつかり合いが生み出す迫力に満ちた人間ドラマ。
1952年 「真昼の決闘」 「見えざる敵との最後の闘い」 フレッド・ジンネマン
「赤狩り」の寓話ともいわれる西部劇の古典的名作。決闘までの一時間半を同時進行で収めたリアリズム西部劇の名作。
1953年 「東京物語」 「懐かしき日本、究極の小津ワールド」 小津安二郎原節子
世界の巨匠に愛される小津安二郎の代表作。消えゆく日本の家族の姿をフィルムに収めた永遠のポートレイト集。
「ローマの休日」 「ローマ人の休日誕生の秘密」 ウィリアム・ワイラー
「地獄門」 「日本の美を世界に知らしめた名画」 衣笠貞之助
1954年 「七人の侍」 「世界が認めた西部劇式時代劇」 黒澤明
世界の映画に影響を与え続ける世界の巨匠黒澤の代表作。時代劇の枠を越えた世界標準の娯楽アクション大作。
「ゴジラ」 「ゴジラを生んだ黒澤の右腕」 本多猪四郎、円谷英二
1955年  「理由なき反抗」 「反抗の時代に火をつけた青春映画の傑作」 ニコラス・レイ、ジェームス・ディーン
「反抗する若者」を時代の主役へと押し上げ歴史を変えた作品。ビートニクからフラワー・ジェネレーションへの橋渡しとなった青春映画。
「奇跡」 「奇跡を生み出す映画という魔法」 カール・ドライヤー、カイ・ムンク
「浮雲」 男と女の愛の遍歴を描き続けた巨匠の代表作 成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之
「夫婦善哉」 懐かしき小粋な恋の物語 豊田四郎、森繁久弥、淡島千景
1956年 「捜索者」 「失われたアメリカの英雄を探す旅」 ジョン・フォード、ジョン・ウェイン
愛する者を追い求める西部劇版ロード・ムービーの隠れた名作。アメリカと西部劇の夕暮れを描き出した先駆的作品。
1957年 「十二人の怒れる男」 「テレビの黄金時代が生んだ歴史的傑作」 シドニー・ルメット
民主主義の国アメリカの理想を描いたテレビ生まれの裁判劇。陪審員もの映画の教科書となった永遠不滅の傑作。
「幕末太陽傳」 「江戸時代を飛び出した落語世界」 川島雄三、フランキー堺
1958年 「灰とダイヤモンド」 「光と影が描き出した新しい時代」 アンジェイ・ワイダ
ドイツ、ソ連への抵抗運動に命捧げた孤独な若者の悲劇。ポーランドの巨匠による美しくも悲しい青春残酷物語。
「無法松の一生」 「日本人が愛した元祖ダメ男英雄伝説」 稲垣浩、三船敏郎
「真夏の夜のジャズ」 「モダン・ジャズ黄金時代の記憶」 バート・スターン
1959年 「二十四時間の情事」 「原爆、戦争、恋、忘却」 アラン・レネ、マルグリット・デュラス
戦争と原爆によって引き裂かれた愛の物語。悲劇からの再生を求め、日本を舞台に描かれた国境を越えた恋人たちの映像詩集。
「いとこ同志」 ヌーヴェル・ヴァーグ最初のヒット作と仲間たち」 クロード・シャブロル
「アメリカの影」 「アメリカの影を映し出したインデペンデント映画の原点」 ジョン・カサベテス

<1960年代:ヌーヴェル・ヴァーグからニューシネマへ>
 60年代になると世界は再び激動の時代を向かえます。ベトナム反戦運動、公民権運動に端を発したアメリカにおける学生運動は世界各地に飛び火し、社会全体をも揺り動かします。(その中心には、ビートニクボブ・ディランビートルズなどもいました)
 50年代の「赤狩り」によって多くの優れた才能を失ったハリウッドは、そうした時代の変化に対応できず若手の映画人を積極的に採用することで、より作家性の高い作品を生み出し、なんとか危機を回避しようとしました。こうして、アメリカン・ニューシネマを生み出す下地ができました。
 ただし、アメリカン・ニューシネマのもとになったのは、ハリウッド映画ではなくフランスのヌーヴェル・ヴァーグの作品群だったことは重要です。フランソワ・トリュフォージャン=リュク・ゴダールの作品を見たアメリカの若手映画人たちがその影響の下に作り上げた新しい感覚の作品がアメリカン・ニューシネマの原点でした。彼らの多くは青春時代にヨーロッパで学んだり、放浪したりした経験があります。
 ただし、ヌーヴェル・ヴァーグの作品についても、そのルーツを探るとそこにはアメリカからやって来たのアルフレッド・ヒッチコック作品、フィルム・ノワールの作品群、そしてイタリア生まれのネオリアリズモの作品群があり、アメリカとヨーロッパの作家たちがお互いに影響を与えあっていたことがわかります。
 アメリカン・ニューシネマの時代はある意味アメリカ映画産業のどん底時代でもありましたが、その芸術性、作家性という点ではひとつのピークを迎えた時期だったのかもしれません。しかし、70年代以降の映画界復活の流れを作ったのは、ニューシネマの作家たちではなく、彼らの後に続いた新しい世代「ムービー・ブラッツ」と呼ばれる作家たちでした。
1960年 「サイコ」 「恐怖に怯える心の肖像画」 アルフレッド・ヒッチコック
サスペンス映画の教科書となったヒッチコックの代表作。お金をかけずに観客を驚かせてみせた元祖サイコ・ショッカー映画。
「おとうと」 「古き良き昭和日本の肖像画」 市川崑、岸恵子
「裸の島」 「耕して天に至った裸の映画」 新藤兼人、音羽信子
1961年 「ウエストサイド物語」 「ストリートに飛び出したロミオとジュリエット」 ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス
ハリウッドとブロードウェイの融合が生んだ新世代のミュージカル映画。ストリートに飛び出した現代版ロミオとジュリエット悲劇の物語。
1962年 「アラビアのロレンス」 「砂漠の王になろうとした男」 デヴィッド・リーン、T・E・ロレンス、モーリス・ジャール
中東問題の原点となった英国の植民地政策に反旗をひるがえした男。英雄の光と影を同時に描き時代を越えた永遠の戦争ロマン大作。
「キューポラのある街」 「若き日本の昭和を記録した永遠の名作」 浦山桐郎、吉永小百合
1963年 「山猫」 「失われた華麗なる一族の肖像画」 ルキノ・ヴィスコンティ、バート・ランカスター
ヨーロッパの伝統文化を築いた貴族文化の消えゆく退廃美。リアリズムが描き出した再現不能、究極のコスチューム・プレイ大作。
1964年 「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」 「英国式コメディが生んだMTVの原点」 リチャード・レスター、ザ・ビートルズ
英国の伝統芸能と新世代の音楽が融合したミュージック・ビデオの原点。時代を変えたビートルズの素顔と永久不滅のライブ映像。
1965年 「気狂いピエロ」 「映画とは、愛、憎しみ、死、そして爆発だ!」 ジャン=リュック・ゴダール、ジャン=ポール・ベルモンド
「東京オリンピック」 「スポーツ記録映画の金字塔」 市川崑
ヌーヴェルヴァーグの旗手ゴダールの代表作。ニューシネマの先駆ともなったドロップ・アウト・ロード・ムービーであり、アドリブ満載の犯罪アクション映画。
1966年  「男と女」 「音と映像による大人の恋の物語」 クロード・ルルーシュ
美しい映像とお洒落な音楽による大人のための新感覚恋愛ドラマ。ヌーヴェルヴァーグが生み出したファッショナブル感覚の映像詩。
 「群盗荒野を裂く」  「イタリア式反米テロリズム宣言」 ダミアーノ・ダミアーニ、ジャン・マリア・ボロンテ
1967年 「俺たちに明日はない」 「暴れだす!アメリカの青春」 アーサー・ペン、ウォーレン・ビーティー
過激な暴力と性描写の先駆となったロック時代の青春ロード・ムービー。ニューシネマ・ブームの幕を開けたリアリズム犯罪アクション映画の傑作。
「冒険者たち」 「これぞ青春!これぞ冒険!」 ロベール・アンリコ
「ドント・ルック・バック」(ドキュメンタリー) 「20世紀を扇動する偉大な詩人の肖像画」 ボブ・ディラン
「夜の大捜査線」 「白黒融合新時代の始まり」 ノーマン・ジェイソン
1968年  「猿の惑星」(5部作) 「猿をめぐる差別の寓話(第一巻)」 フランクリン・J・シャフナー、ピエール・ブール
人種差別問題を「猿の権力闘争」によって描き出した社会派娯楽アクション。SFという寓話の形をかりた異色の連作シリーズ。
「2001年宇宙の旅」 「神を体験するための映像の旅」 スタンリー・キューブリック
「冬のライオン」 「ソープオペラ・イン・英国王室」 ピーター・オトゥール、キャサリン・ヘップバーン
1969年 「イージー・ライダー」 「さまよえるアメリカン・スピリットの行方」 デニス・ホッパー、ラズロ・コバックス
ニューシネマを代表する永遠のドロップ・アウト・ロード・ムービー。ロック世代を代表するアメリカン・トリップ・ヒーローの栄光と悲劇。
「Z」 「鉄のカーテンに覆われた国」 コスタ・ガブラス
「ワイルドバンチ」 「壁の穴、兵どもが夢のあと」 サム・ペキンパー、ペキンパー一家
「明日に向かって撃て」 「夢見る男たちを描き続けた職人監督」 ジョージ・ロイ・ヒル
「エル・トポ」 「フリークの時代を予見したカルト・ムービーの元祖」 アレハンドロ・ホドロフスキー
「男はつらいよ」 昭和を代表するキャラクター「寅さん」登場! 渥美清山田洋次

<1970年代:ロジャー・コーマンの弟子たちとニューシネマ
 「赤狩り」の終わりとともに緩くなったプロダクション・コード(映画界の自主規制制度)に対し、エクスプロイテーション映画(exploitation film)というセックスや暴力、オカルトをギリギリまで描く作品群が登場します。その中心となったB級映画界の巨匠、プロデューサーのロジャー・コーマンのもとからは、ニューシネマの監督たちが育ち、その後は「ムービー・ブラッツ」と呼ばれる映画オタクの若手たちが巣立つことになります。その中のリーダー格となるF・F・コッポラ「ゴッドファーザー」から始まった彼らの活躍はスティーブン・スピルバーグの「ジョーズ」、マーティン・スコセッシ「タクシー・ドライバー」、そして最大のヒットとなったジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」などの大ヒット作を生み出し、同時に映画産業に新しい時代をもたらします。
 それは映画産業を映画館でチケット販売するだけのビジネスと捉えるのではなく、テレビや有料チャンネルでの上映権ビジネス、ビデオやレンタル・ビデオの販売、キャラクター・グッズやノベライズ本や関連書籍の販売など、多角的なビジネスとして捉える方向性を見出すことでハリウッド黄金時代復活のきっかけを作ることになってゆきます。
「地下のバーゲン・コーナーでの下見や売り出しのために陳列される、革命的精神などといったものはない。気力を失わせ、仮説を動揺させ、脅迫する映画、弱気なセールスなどしない映画を、われわれはつくりたいのだ。望ましくは(不可能な理想ではあるが)、人々の顔面で手榴弾のように爆断し、あるいは、良質の缶切りのように精神を開かせる映画をつくりたい。」
ロバート・クレーマー(映画監督、左翼活動家)

1970年 「暗殺の森」 「光と影が織りなす動く絵画」 ヴェルナルド・ヴェルトルッチ、ヴィットリオ・ストラーロ
光と影によってファシストたちの美学を描き出した寓話的政治サスペンス。カメラマンたちの教科書ともなった究極の映像美。
1971年  「フレンチ・コネクション」 「時代が生んだ英雄不在の犯罪ドラマ」 ウィリアム・フリードキン
リアリズムによって描かれた新感覚の刑事ドラマ。ヒーローなき時代の始まりを象徴する社会派アクション映画のヒット作。
「ベニスに死す」 「美を追い求めた作曲家の幸福なる死」 ルキノ・ヴィスコンティ、ダーク・ボガード
「ダーティー・ハリー」 「アメリカ映画の歴史を変えたB級映画の師」 ドン・シーゲル
「ジョニーは戦場へ行った」 「自由と栄光を勝ち取った牢獄のライター」 ダルトン・トランボ
1972年 「惑星ソラリス」 「神なき世界の救世主を探す旅」 アンドレイ・タルコフスキー
SFのスタイルを用いて、生命、愛、人間の本質を問いかけた異色の思弁映画。ソ連が生んだ最後の芸術家タルコフスキーの代表作。
1973年 「アメリカン・グラフィティ」 「さらば!懐かしきアメリカの青春」 ジョージ・ルーカス
アメリカが輝いていた1960年代初めの青春群像を描いたロックン・ロール・ムービー。ムービー・ブラッツ時代のきっかけとなった大ヒット作。
「アメリカの夜」 「映画に愛をこめた映画ファンのための映画」 フランソワ・トリュフォー
「かもめのジョナサン」 「救世主求む!ヒーロー不在の時代」 リチャード・バック
「ビリー・ザ・キッド21才の生涯」 「ペキンパー一家顔見せ公演+α」 サム・ペキンパー
「ハーダー・ゼイ・カム」 「ジャマイカ発バビロン行きレゲエ急行」 ジミー・クリフ
1974年 「ゴッドファーザーPartU」 「ハリウッドを復活させた映画小僧の出世作」 フランシス・フォード・コッポラ、ゴードン・ウィリス
シシリアン・マフィアの世界を通して描かれた移民国家アメリカの裏面史。ハリウッド映画復活の原動力となった映画オタクによる壮大なギャング映画。
「レニー・ブルース」 毒舌という名の刃物で大衆に切りかかった男 レニー・ブルース、ボブ・フォッシー、ダスティン・ホフマン
1975年 「旅芸人の記録」 「時を越えたギリシャ現代史の旅」 テオ・アンゲロプロス
東西対立の犠牲となったギリシャの戦後史を歩むタイム・スリップ・ロード・ムービー。ポリティカル・ムービーの巨匠が命を賭けた代表作品。
「ナッシュビル」 「テロをも感動に変えてしまう国アメリカ」 ロバート・アルトマン
「デルス・ウザーラ」 「大自然とともに生きた森の妖精との旅」 黒澤明
「ジョーズ」 「映画の歴史を変えた殺人鮫の恐怖」 スティーブン・スピルバーグ
「狼たちの午後」 「劇場型犯罪を再現した名優たちの共演」 アル・パシーノ、シドニー・ルメット
「ロッキー・ホラー・ショー」 「観客参加型映画の元祖となったカルト映画」 ジム・シャーマン、ティム・カリー
「カッコーの巣の上で」 「自由への旅立ちを描いた反体制映画」 ミロシュ・フォアマン、ジャック・ニコルソン、ケン・キージー
1976年 「ロッキー」 「どん底から立ち上がったアメリカン・ヒーロー」 ジョン・G・アビルドセン、シルベスター・スタローン
ベトナム戦争と不況でどん底にいたアメリカに活を入れたスポ魂映画のシリーズ第一作。無名の役者のアメリカンドリームを実現させた大ヒット作品。
「タクシー・ドライバー」 「共鳴を続ける孤独な魂のゆくえ」 ポール・シュレイダー、バーナード・ハーマン、マーティン・スコセッシ
「大統領の陰謀」 「ペンを武器に大統領を倒した男たち」 ロバート・レッドフォード、アラン・J・パクラ
「ネットワーク」 「TVが生んだ企業宇宙論の伝道師」 シドニー・ルメット、パディ・チャイエフスキー、ピーター・フィンチ
ロバート・デュバル
1977年 「アニー・ホール」 「ウディ、君こそ男だ!」 ウディ・アレン
都会に生きる新人類のための大人向け新型ラブ・コメディー。シニカル・コメディーという新ジャンルを完成させたウディ・アレンのアカデミー賞受賞作。
「カプリコン1」 「史上最大の嘘を暴いた男たち」 ピーター・ハイアムズ、エリオット・グールド
「ジュリア」 「輝きを増す女たちの闘いの日々」 バネッサ・レッドグレーブ、ジェーン・フォンダ、リリアン・ヘルマン他
「スター・ウォーズ」 「映像ビジネスの歴史を変えたメガヒット作」 ジョージ・ルーカス
「未知との遭遇」 「星よ!宇宙にいるのは我々だけなのですか?」 スティーブン・スピルバーグ
「サタデイ・ナイト・フィーバー」 「音楽史を変えた青春ダンス映画最大のの傑作」 ジョン・トラボルタ、ジョン・バダム
1978年 「ディアハンター」 「ようこそ、狂気という名の戦場へ」 マイケル・チミノ
ヴェトナム戦争という狂気の現場に飛び込んだ若者たちの悲劇。アメリカにおける東欧系移民の青春を追った人間ドラマの超大作。
「天国の日々」 「天国の日々を体験する至福の時」 テレンス・マリック
「ラスト・ワルツ」 「最後のロック・バンドによる葬送のワルツ」 マーティン・スコセッシザ・バンドボブ・ディラン
「ミッドナイト・エクスプレス」 「映画版インチキ・ジャーナリズムの代表作」 アラン・パーカー、オリバー・ストーン
1979年 「地獄の黙示録」 「戦場という闇の奥へと向かう旅」 フランシス・フォード・コッポラ、ジョセフ・コンラッド
人間の心の奥に潜む闇の世界へと向かう戦場ロード・ムービー。数々のトラブルを乗り越えて撮られたヴェトナム戦争を舞台に展開する現代の神話。
「マンハッタン」 「ニューヨークへの愛をこめて」 ウディ・アレン
「ブリキの太鼓」 「ねじれた歴史の証言者は太鼓を叩く」 ギュンター・グラス

<1980年代:インデペンデントからカルトへ>
 70年代に誕生した数少ない大ヒット作が巨大なビジネスとして大きな収益を上げた結果を受け、映画会社としては大ヒットを期待できる作品に集中してお金をつぎ込む方が効率が良いと考えるようになります。といっても、映画館では常に新作映画を上映しなければなりません。そうなるとヒットを期待できない作品については、大手は手を出さなくなり、それを独立系のプロダクションが請け負って製作をするという流れができてきます。そして、そのおかげで映画作家たちは、大手映画会社の偉方からの横槍を気にすることなく、ある程度自由に創作することが可能な条件が生まれることになりました。
 1980年代は、こうしてチャンスをつかんだ個性的な監督たちがカルト・ムービーの傑作を発表することで頭角を現した時期でした。そして、彼らの中から次なる90年代の映画界をリードする監督たちが現れることになります。
 しかし、こうした個性的な監督たちの活躍は、それ以前にいち早く活動を開始していたインデペンデントの巨匠たちの活躍によって可能になったことを忘れてはいけないでしょう。ハリウッドを中心に動いてきたアメリカ映画の歴史ではありますが、ハリウッドでは撮ることのできない芸術性の高い作品を撮り続けその質を保ち続けたインデペンデントの作家たちの役割は非常に大きなものでした。ジョン・カサベテスロバート・アルトマンウディ・アレンテレンス・マリックフィリップ・カウフマンロバート・レッドフォードらの活躍によって、21世紀に入り多くのインデペンデント系新人監督たちが映画界に登場することができたのです。デヴィッド・リンチジョン・セイルズジム・ジャームッシュコーエン兄弟スパイク・リークエンティン・タランティーノ・・・・・・。
1980年 「普通の人々」 「揺れる家族の明日はどこへ?」 ロバート・レッドフォード、ジョン・ベイリー
普通の家族に隠された修復不能の亀裂の謎に迫る人間ドラマ。犯罪事件が起きない推理サスペンスの傑作でもあります。
「ツィゴウネルワイゼン」 「ようこそ、摩訶不思議なる世界へ」 鈴木清順
1981年  「レッズ」 「ロシア革命を目撃した伝説のアメリカ人」 ウォーレン・ビーティー
20世紀最大の事件のひとつ「ロシア革命」を目撃した唯一のアメリカ人ルポ・ライターの激動の人生を描いた実録大河ドラマの名作。
「泥の河」 「懐かしき昭和日本の原風景」 小栗康平
「天国の門」 「呪われた映画の美しき映像」 マイケル・チミノ
1982年 「ガープの世界」 「人生は悲し、されど映画は楽し」 ジョージ・ロイ・ヒル、ジョン・アーヴィング
暴力と狂気に満ちた社会を生きた心優しき作家の激動の人生。小説よりも奇なる物語を描いた可笑しくやがて悲しい感動ファンタジー。
「路」 「遥かなるトルコ、それぞれの旅」 ユルマズ・ギュネイ
「ブレード・ランナー」 「リアルな未来社会を描いたカルト・ムービー」 リドリー・スコット、フィリップ・K・ディック
1983年 「戦場のメリー・クリスマス」 「戦場に生まれた愛と憎しみ、そして微笑み」 大島渚
捕虜収容所という異常な社会に生まれた男たちの友情と禁断の愛。「たけし」「教授」「デヴィッド・ボウィ」異業種の才能が結集した異色の戦場人間ドラマ。
「東京裁判」 「太平洋戦争の真実を追究した
ドキュメンタリー大作」
小林正樹
「家族ゲーム」 「時代の波に乗り続けた監督のクールな世界」 森田芳光
1984年 「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 「インディペンデント映画時代の先駆作」 ジム・ジャームッシュ
インデペンデント映画の監督がメジャー進出するきっかけともなったカルトでお馬鹿な愛すべきアメリカン・ロード・ムービー。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」 「かつて夢と裏切りの国アメリカにて」 セルジオ・レオーネ
1985年 「刑事ジョン・ブック」 「異文化の出会いが生んだ愛と別れ」 ピーター・ウィアー
異文化の出会いを背景に展開される異色の刑事ドラマ。現代社会をもうひとつの視点で見つめ直す社会派ドラマの傑作でもあります。
「未来世紀ブラジル」 「今そこにある恐怖の管理社会」 テリー・ギリアム
「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」 「すべての労働者に捧げる危険なアイの物語」 森崎東、倍賞美津子、原田芳雄
「台風クラブ」 「アイドルから女優へ、台風に乗って」 相米慎二
1986年 「ブルー・ベルベット」 「すぐ底にある悪夢への入り口」 デヴィッド・リンチ
日常生活の裏側に潜む狂気の世界を覗き見る悪夢の体験。セクシャルでアブノーマルな大人のための青春サスペンス劇場。
「シド・アンド・ナンシー」 「はみ出し者の恋」 アレックス・コックス
「プラトーン」 「米国が踏み誤ったベトナムの悲劇」 オリバー・ストーン
1987年 「ベルリン・天使の詩」 「天使が選んだ再生への道」 ヴィム・ヴェンダース
苦しみを受け入れることで実現したベルリンの壁、心の壁の崩壊。人間として生きるとは何か?を問い直す哲学的ファンタジー作品。
「メイトワン1920/暗黒の決闘」 「伝説となった最後の決闘」 ジョン・セイルズ
「紅いコーリャン」 「中国電影が放った紅い衝撃」 チャン・イーモウ
1988年 「存在の耐えられない軽さ 「プラハに咲いた民主化運動の花」 フィリップ・カウフマン、ダニエル・デイ・ルイス
チェコの民主化運動(プラハの春)とソ連による占領という激動の時代に翻弄された恋人たちのしなやかでしたたかな人生ドラマ。
「グラン・ブルー」 「海に帰った人類最初の男」 リュック・ベッソン
「最後の誘惑」 「人として生きた神、最後の闘い」 マーティン・スコセッシ、イエス・キリスト
「バード」 「天上に向かって羽ばたき続けた伝説の鳥」 クリント・イーストウッド、チャーリー・パーカー
「グッド・モーニング、ベトナム」 「戦場に流れた癒しの歌」 バリー・レヴィンソン、ロビン・ウィリアムス
1989年 「ドゥ・ザ・ライト・シング」 「目覚めよ!アフリカから来た人々」 スパイク・リー
人種差別が火をつけた街角の暴動。差別が差別を生み出すアメリカの社会構造を切る社会派ドラマの傑作。音楽も最高!
「悲情城市」 「戦後台湾の混乱を生きた一族の悲劇」 ホウ・シャオシェン(侯孝賢)

<1990年代:巨大ビジネスとしての映画黄金時代へ>
 1990年代になると、映画産業構造の巨大化はさらに大きなものとなります。それはインターネット関連事業、テレビ・マスコミ業界、ファッション業界、ゲーム業界、出版業界、そしてそれらの企業に出資する金融業界も含めた国境の枠をも越える一大エンターテイメント王国ともいえる存在へと発展しました。しかし、そうした企業体の中でも映画のもつ役割はまだまだ大きく、その中心となるものでした。どんなに優れた経営陣がいても、売り込むためのソフトがなければなにもできず、その中心となる存在は映画であり、その原作となる小説やアニメなどの作家たちによる創造物だからです。
 ただし、投資の対象となった映画ビジネスがそれまでのように作家が自由に想像力を働かせることのできる場ではなくなってきたことも確かです。ヒットを前提とする作品づくりは自ずとヒット作の模倣につながり、パート2やリメイクものばかりが作られる21世紀初頭のハリウッド映画界が生まれることになります。
1990年 「ミザリー」 「孤独な作家を追い詰めた恐るべき読者」 スティーブン・キング、ロブ・ライナー
映画界に貢献し続ける大ベストセラー作家スティーブン・キングを追い詰めた恐るべき読者とは?
「シェルタリング・スカイ」 「ようこそ、異世界モロッコへ」 ポール・ボウルズ、ベルナルド・ベルトルッチ
1991年 「テルマ&ルイーズ」 「明日に向かって空に舞った女たち」 リドリー・スコット
女たちの「ボニー&クライド」を生み出したマッチョなアメリカ社会。強くて美しいギャング・スター・コンビのを追ったロード・ムービー
「ザ・コミットメンツ」 「アイリッシュR&B青春物語」 アラン・パーカー
「ターミネーター2」 「帰ってきた最強の抹殺者」 ジェームス・キャメロン
1992年 「許されざる者」 「さらば西部劇、さらばアメリカ」 クリント・イーストウッド
最後の西部劇が描き出す暴力社会アメリカの真実。銃による殺人が許される社会が行き着く先とは?
1993年 「さらば、わが愛/覇王別姫」 「激動の中国に咲いた禁断の恋の花」 チェン・カイコー、レスリー・チャン
戦後中国の激動の歴史に翻弄された禁断の恋人たち。(共産党と国民党、文化大革命、五人組の粛清など)
1994年 「パルプ・フィクション」 「ジャンルの壁を越えた超B級映画」 クウェンティン・タランティーノ
ジャンル映画の枠組みを破壊した新世代の超B級犯罪娯楽映画。クールで粋な予測不能のジェット・コースター・ムービー
「恋する惑星」 「ハルキ・ワールドが生んだ香港ニューウェーブ」 ウォン・カーウェイ、フェイ・ウォン、トニー・レオン、金城武
1995年 「デッドマン・ウォーキング」 「死に行く人と共に歩む」 ティム・ロビンス・スーザン・サランドン
死刑とは?命の重さを問いかける究極の死刑疑似体験。人の命を奪うとは?殺人犯の主観に迫る究極の犯罪心理映画
「リーヴィング・ラスベガス」 「夢の街で壊れゆく男の悲劇」 マイク・フィッギス、ニコラス・ケイジ
「攻殻機動隊 Ghost in the Shell」 「暴走する妄想が描く人間解体」 押井守
1996年 「ファーゴ」 「人間への不信と愛が生む予測不能のドラマ」 コーエン兄弟
信じることを忘れた人間たちが巻き起こす愚かな事件の連鎖反応。やらせ誘拐事件から警官殺し、連続殺人事件へと発展するおかしな犯罪映画。
「ロバート・アルトマンのジャズ」 「ジャズ誕生の謎に迫る再現ドキュメント」 ロバート・アルトマン
1997年 「HANA-BI」 「可笑しくてやがて悲しい死への旅」 北野武
アクションのないたけし流暴力映画の集大成。たけし流暴れ人生に区切りをつけた死への旅立ちを描いたロード・ムービー。
1998年 「ライフ・イズ・ビューティフル」 「笑いを武器にホロコーストに挑んだ男」 ロベルト・ベニーニ
ホロコーストによって失われた人生をも美しい思い出に変えてしまった天才の技。笑わせ泣かせる素晴らしき人生讃歌映画。
「シャンドライの恋」 「心優しきピアニストのはかなき恋」 ベルナルド・ベルトルッチ
1999年 「マトリックス」(三部作) 「君の住む世界は本物か?」 ウォシャウスキー兄弟
究極の疑似体験システムによって生み出される仮想世界マトリックス。人間とは何かに迫るSFアクションシリーズ完結篇。
「イギリスから来た男」 「イージー・ライダーVSブリティッシュインベイジョン」 スティーブン・ソダーバーグ、テレンス・スタンプ
「海の上のピアニスト」 「さらば!20世紀最初のピアニスト」 ジュゼッペ・トルナトーレ
「オール・アバウト・マイ・マザー」 「すべての女性たちに捧ぐ」 ペドロ・アルモドヴァル
「ビートニク」(ドキュメンタりー) 「ビート世代の英雄たちの物語」 ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズ


<21世紀:インデペンデントからメジャーへ>
 オリジナリティーに欠ける作品が増える中、それでもハリウッドがその質を保てているのは、ロバート・レッドフォードが主催するサンダンス映画祭のように自主制作映画を積極的に取り上げる映画祭とそこに参加する若手映画作家の活躍のおかげで映画界の才能が枯渇せずにすんでいるおかげかもしれません。そして、世界各国でも映画産業は独自の発展をしており、それぞれの文化のもとでハリウッド映画とは異なる視点、スタイルをもつ作品が生み出され続けています。ハリウッド映画はマンネリから脱却するために、こうした自主制作映画の若手や海外の優れた才能を次々にハリウッドへと招き、作品を撮らせることでその新鮮さを保ち続けているのです。

2000年 「トラフィック」 「世界を巻き込む麻薬戦争最前線の物語」 スティーヴン・ソダーバーグ
「EUREKA ユリイカ」 「癒しのバス・ツアーがたどり着いた先」 青山真治、役所広司、宮崎おあい
2001年  「ロード・オブ・ザ・リング」 「CGが実現したヨーロッパ伝説の集大成」 J・R・R・トールキン、ピーター・ジャクソン
 「アメリ」  「古き良きパリの街へようこそ」  ジャン=ピエール・ジュネ
2002年 「ギャング・オブ・ニューヨーク」 「世界最強のギャング国家アメリカの原点」 ハーバート・アズベリー、マーティン・スコセッシ
「ボーリング・フォー・コロンバイン」
(ドキュメンタリー)
「アホでマヌケなアメリカ白人のための銃社会」 マイケル・ムーア
「戦場のピアニスト」 「ホロコーストから生還した奇跡のピアニスト」 ロマン・ポランスキー、エイドリアン・ブロディ
「めぐりあう時間たち」 「芸術は時間を越えた運命の糸を結ぶ」 スティーブン・ダルドリー、ニコール・キッドマン
「エルミタージュ幻想」 「時を越えた幻想のロシア旅行」 アレクサンドル・ソクーロフ
「美しい夏 キリシマ」 「人も自然も美しいからこその反戦映画」 黒木和雄
2003年 「フォッグ・オブ・ウォー」(ドキュメンタリー) 「指揮官が語る戦争の真実とは?」 ロバート・マクナマラ、エロール・モリス
「アメリカン・ニューシネマ」
(ドキュメンタリー)
「アメリカン・ニューシネマの誕生とその時代」 ポール・シュレーダー、ロバート・アルトマン・・・
2004年 「華氏911」(ドキュメンタリー) 「9・11の謎に迫る怒りのドキュメント」 マイケル・ムーア
「21g」 「君は魂の重さを知っているか?」 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
「誰も知らない」 「人生は悲し、されど生きるに値する」 是枝裕和
2005年 「ミルコのひかり」 「盲目だからこそ見えるもうひとつの世界」 クリスティアーノ・ボルトーネ、ミルコ・メンカッチ
「ツォツィ」 「人となった暴れ者の短き人生」 プレスリー・チュエニヤハエ、テリー・フェト
「パッチギ!」 「懐かしき肉食時代の青春映画」 井筒和幸
2006年 「エル・カンタンテ」 エクトル・ラボー、サルサ界の英雄悲劇の人生 マーク・アンソニー、ジェニファー・ロペス
「ドリーム・ガールズ」 「実録アメリカン・ショービズ物語」 ビヨンセ・ノウルズ、ジェニファー・ハドソン・・・
「グッドシェパード」 「CIA誕生秘話と虚ろな帝国アメリカの真実」 ロバート・デ・ニーロ
2007年 「大いなる陰謀」 「巨大な国家の陰謀に巻き込まれたちっぽけな兵士」 ロバート・レッドフォード
「イントゥ・ザ・ワイルド」 「荒野へ、そして真理への旅」 ショーン・ペン、ジョン・ミュア、クリス・マッカンドレス
2008年 「崖の上のポニョ」 「宮崎アニメの原点に帰ったヤンチャな英雄物語」 宮崎駿
「キャデラック・レコード
音楽でアメリカを変えた人々の物語
「黒人音楽の歴史を変えたチェス・レコード物語」 ダーネル・マーティン、ビヨンセ
「チェ 28歳の革命」
「チェ 39歳 別れの手紙」
「今再び、見果てぬ革命という見果てぬ旅へ」 スティーブン・ソダーバーグ
ベニチオ・デル・トロ
「フロストXニクソン」 「テレビが映し出した人間ニクソン」 ロン・ハワード
「ベンジャミン・バトン数奇な運命」 「特殊効果が主演した歴史的名作」 デヴィッド・フィンチャー、ブラッド・ピット
「トウキョウソナタ」 「怖くて悲しい21世紀の東京物語」 黒沢清、香川照之
「ぐるりのこと。」 「失われた10年を生きたある夫婦の物語」 橋口亮輔、木村多江、リリー・フランキー
「ハーブ&ドロシー」 「アートの世界の妖精夫婦物語」 佐々木芽生、ハーバート&ドロシー・ヴォーゲル
2009年 「イングロリアス・バスターズ」 「映画ファンのための映画による復讐劇」 クエンティン・タランティーノ
「インビクタス 負けざる者たち」 「ネルソン・マンデラ物語完結編」 クリント・イーストウッド
「NINE」 「七人の女神とダメ監督のミュージカル」 ロブ・マーシャル、ダニエル・デイ=ルイスほか
2010年 「トイ・ストーリー3」 「さらばオモチャたち!そして永遠なれ!」 ランディ・ニューマン、リー・アンクリッチ
「インセプション」 「夢と現実の境界を越える旅」 クリストファー・ノーラン
「BECK」 「魂の歌声は聞こえたか?」 堤幸彦、ハロルド作石
2011年 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 「舞い上がれ 想像力の翼で」 スティーブン・ダルドリー、ジョナサン・サフラン・フォア
2012年 「歌旅 中島みゆきLIVE劇場 「女神の歌を聴く至福の時」 中島みゆき
2013年  「ゼロ・グラビティ」 「ようこそ!重力と人類の惑星へ」 アルフォンソ・キュアロン、サンドラ・ブロック
「her 世界でひとつの彼女」 「恋する人工知能との出会いと別れ」 スパイク・ジョーンズ、ホアキン・フェニックス、スカーレット・ヨハンソン
2014年 「ALL YOU NEED IS KILL」  「今をまた生きる Die and Let Live」 ダグ・ライマン、エミリー・ブラント

<これからの映画界>
 アメリカ経済が再び破綻の危機を迎えつつある21世紀初め、このままハリウッドの栄光は続くのでしょうか?映画の撮影所も今やオーストラリアなどアメリカ以外へとどんどん流出し、CGとネットの発展で多くの背景を自由に生み出せるようになった今、ハリウッドで撮らなければならない理由はなくなりつつあります。近い将来、アカデミー賞の授賞式がアメリカ以外の国で行われるということがあるかもしれません。ただし、そうなった頃、映画は今の映画と同じものかどうか?それもわかりません。もしかすると映画に俳優はいらなくなっているかもしれません。CGで合成されたキャラクターをコンピューター内のセットで脚本に合わせて動かすことで映画が作られる時代が来ているかもしれません。
 しかし、そんな時代がやってきたとしても、20世紀の映画がその価値を失うことはないでしょう。

「・・・いずれにせよ、やがて映画もオペラの新作がめったに作られなくなり、もっぱら旧作ばかりが見られるという時代が到来することは間違いない。・・・」
四方田犬彦「映画史への招待」
 すでにハリウッド映画は、過去の作品のリメイクか海外作品のリメイクばかりが目立つ時代になりつつあります。

<映画は何を成してきたのか?>
 20世紀という激動の時代に映画が果たした役割は何だったのでしょうか?
 20世紀に生まれた傑作の多くは歴史の節目を切り取った記録映像の役目も果たしています。激動の歴史を再現することは、時に困難な作業でしたが製作現場のモチベーションを上げることにもつながり、数多くの傑作が生まれています。真実を描き出すことは現実を見つめ直すことで未来を変えることにもつながる重要な映画の役割でした。それらの作品の中には現実に大きな影響を与える作品も現れています。
 また、映画は時代を映し出す鏡として、歴史的な事件だけでなく日常のささやかな出来事なども描き、歴史のかげに隠れがちな普通の人々の普通の生き方を未来に残す役目も果たしています。素晴らしい映画の中では、今でも過去の人々が生き生きと暮らしています。
 しかし、本当に重要だった映画の役割は、映画が人々に夢とロマンを与え続けることで未来への希望を抱かせ続けてきたことなのかもしれません。厳しい時代になればなるほど、人々は夢を与えてくれる映画を求めました。時にその夢は悪夢の場合もありましたが、それはそれで現実を見失っている人々への警告としての役目を果たしていました。

<ヒーローの存在>
 映画が人々に夢を見させ明日への希望を与えるためには、やはりヒーローがいなければなりません。しかし、そんなヒーロー像もまた時代とともに変化してきました。その変遷もまた時代を映し出しています。単純明快な西部劇のヒーローは、時代の変化とともにネイティブ・アメリカンへの迫害や銃による殺人の重荷に苦しむ複雑な存在へと変わりました。こうして、人間離れした正義の存在スーパーマンは過去のものとなり、自らの抱えるトラウマに苦しむバットマンのように暗く思い悩むヒーローの時代になりました。それは「世界の警察官」を自認していたはずのアメリカがその地位を失いつつある歴史の流れに一致してたようにも思えます。
 映画が誕生した20世紀初め、人々は未来に明るい希望を持っていました。それに比べ、21世紀初めの今、人々はどれだけ未来に明るい希望をもちえているでしょうか?地球温暖化、テロリズムの拡大、食料危機、水不足、エネルギー危機、環境汚染、資源枯渇、貧富の差の拡大、異常気象、馬鹿げたグローバリズムという名の新植民地主義の広がり・・・・・・etc.
 20世紀にはなかった危機がどれだけ増えてしまったことか。残念ながら、そのほとんどは人類が自ら招いたものなのです。しかし、すべての問題についての解決へ、先ず初めにやらなければならないことは明らかです。現状を正確に把握すること、そこからすべては始まるのです。それさえできれば、成すべきことは見えてくるはずです。そして、そのために映画にできることは多いはずです。20世紀半ばにイタリアの映画人が始めた現状をリアリズムによって描き出すことは、今まで以上に重要さを増してくるはずです。いつの間にか「マトリックス」の世界に迷い込んでしまった人類は、赤いピルを口にして今一度「無防備都市」へともどるべき時なのかもしれません。今後の21世紀の映画に期待したいと思います。

 ここで取り上げている各年の一本は、もちろんその年の最高傑作として選んだわけではりません。(その後、追加作品が増えていますが・・・)時代を越える傑作よりも、その時代を代表する作品という視点で選び、さらにできるだけ多くのジャンル、監督、国から選ぶよう意識しました。もちろん、自分が好きな映画、何度も見た映画を中心に選んでいますが、今回初めてちゃんと見た映画もあります。当然、選ばれた作品にご不満を感じる方もいらっしゃるでしょう。僕自身も、ここに入れたかった作品は他にもいろいろありますが、情報不足、ダブりのために載せられませんでした。お許し下さい!

<最後におまけ>
 最後にイギリスの映画協会が世界中の映画監督に投票を依頼して実施された映画史に残るオールタイム・ベスト100(2013年版)をご参考にどうぞ!
 プロが選んだ映画史を変えた作品とは?
 何が1位だと思います?なかなか興味深い結果です。
映画史に残るオールタイム・ベスト100 



渥美清 Kiyoshi Atumi 昭和の映画の象徴、「寅さん」を演じ続けた田所康雄という男
アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 恐怖映画の巨匠、ハリウッドへ(前編)
心の闇を映像化し続けた天才監督(後編)
ヴィルモス・スィグモンド Vilmos Zsigmond 東欧から来た映像の魔術師
ウディ・アレン  Woody Allen NYが生んだ笑いの手品師(前編)
NYを描き続ける小さな巨匠(後編)
押井守 Mamoru Oshi 暴走する妄想が描く人間解体
小津安二郎 Yasujiro Ozu 日本の調和を描き続けた世界の巨匠
北野武 Takeshi Kitano その男、凶暴かつひょうきんにつき
黒澤明 Akira Kurosawa 「生きる」ことにこだわり続けた世界の巨匠(前編)
世界の巨匠、黒澤の成功と苦悩(後編)
サム・ペキンパー Sam Peckinpar 暴力の美学にこだわり続けた映画界の一匹狼(前編)
さらばラスト・ウェスタン・ヒーロー(後編)
ジェームス・ディーン James Dean 1950年代アメリカの青春の光と影
ジェローム・ロビンス Jerome Robbins 苦悩から生まれたバレエと演劇の融合
ジム・ジャームッシュ Jim Jarmusch インデペンデント映画の可能性を広げた異能の監督
新藤兼人 Kaneto Shindo 耕して天に至った裸の映画監督
スパイク・リー Spike Lee 60年代黒人文化を未来につなぐ映像作家
滝田洋二郎 Youjiro Takita ピンク映画が生んだアカデミー賞監督
デヴィッド・リンチ David Lynch 内臓から人生まで闇を覗き見る男
寺山修司 Shuji Terayama 演劇実験室「天井桟敷」誕生(前編)
街も、人生も、天国も、すべては劇場である(後編)
原節子 Setsko Hara 20世紀最後の映画界が生んだ伝説の女優
フェデリコ・フェリーニ Federico Fellini 20世紀のイタリア映画を代表する巨匠
フランシス・フォード・コッポラ
Francis Ford Coppola
映画に人生を捧げた映画界のドン
ブルース・リー Bruce Lee カンフーを世界に広めた悲劇の英雄の早すぎた死
マーティン・スコセッシ Martin Scorsese ニューヨークの街を描く奇才登場!(前編)
アメリカの裏面史を描き続ける未完の天才(後編)
マリリン・モンロー Marilyn Monroe アメリカのセックス・シンボル誕生秘話(前編)
20世紀を代表するセックス・シンボルとアメリカの裏面史(後編)
マレーネ・ディートリッヒ Marlene Dietrich 嘆きの天使、アメリカへ
山中貞雄 Sadao Yamanaka 戦場に消えた幻の巨匠
ロジャー・コーマン Roger Corman ハリウッドを救った影の功労者、B級映画学校の偉大なる校長
ロバート・アルトマン Robert Altoman 20世紀インデペンデント映画の最高峰
ロバート・アルドリッチ Robert Aldrich 男の闘いを描き続けたB級アクションの帝王
映画音楽の巨匠たち 素晴らしい映画音楽を生み出した巨匠たちについて書かれた部分を紹介しています
映画関連のスタッフ 監督、俳優、カメラマン、脚本家など、映画関連のスタッフについて検索できます
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20世紀邦画史 日本映画の歴史を年表形式でご覧下さい。代表作品についてもここからどうぞ!
映画史に残るオールタイム・ベスト100 世界の映画監督358人が選んだ映画史に残る名作100本とは?(2013年版)

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