- エルヴィス・コステロ Elvis Costello -

<異能の人、エルヴィス・コステロ>
 エルヴィス・コステロというアーティストを紹介する時、どういう肩書きにすべきなのか?
 もとはと言えば、パンク・ロックのヒーローでしたが、ニック・ロウの弟子的存在であったことからは、パブ・ロックのアーティストと呼ぶ方が適切だったのかもしれません。また彼の本名デクラン・マクマナスからわかるように、彼はアイリッシュであり、クラナドポーグスなどアイリッシュ・バンドのプロデューサーとしても活躍しています。ついでながら、ツートーン・ブームの代表格スペシャルズも彼がプロデュースしていました。イギリスのサッチャー政権を徹底的に批判し続け、反権力の闘志として、皮肉に富んだ素晴らしい歌を作り続けている人物でもあります。カントリーの本場、ナッシュビルに出向いて、地元のミュージシャンたちとカントリー系のアルバム「オールモスト・ブルー」を作り、ファンや評論家を困惑させたかと思えば、クラシック畑のブロスキー・カルテットと共演した「ジュリエット・レター」では、実にイギリス的なシェークスピアの世界を展開して見せたりもしています。最近の極めつけは、60年代を代表するソング・ライター、バート・バカラックとコンビを組んで作り上げた大人のラブ・ソング・アルバムペインテッド・フロム・メモリーで見せたヴォーカリストとしての才能の素晴らしさでしょう。

<変わらない歌の魅力>
 1977年のデビュー以来、いつもロック界の第一線にいたにも関わらず、彼は常に変化をし続けてきました。そのため、彼は何度もファンや評論家に批判されたりもしています。しかし、僕の場合、彼のアルバムは昔からずっとコンスタントに買い続けている。(全部持っているわけではないが)アルバムの作風がどう変わろうと、昔から僕にとって、彼はある種例外的存在でした。アルバムの評判とは関係なく「とりあえず聴きたいアーティスト」だったのです。そのわけは、実に単純。僕は、彼の「歌」が大好きなのです。彼の独特の「歌声」が大好きなのです。だから、彼のサウンド・スタイルがどう変化しても、それはあくまでも舞台装置の変化であり、僕にとっては彼の「歌」が聴けることが重要だったようです。良い歌い手は、どんな曲を歌っても名曲になるのですから。(昔、電話帳を読ませても、素晴らしい歌になるだろうと、言われた歌い手もいました。たしか、それはエディット・ピアフだったはずです)

<時代の流れに逆行する男>
 同じように、時代とともに変化し続けてきたイギリスのアーティストとして、デビッド・ボウィーの名を忘れるわけには行きませんが、彼は、常に時代の先を走り続け、それが魅力になっていました。それに対して、コステロの場合はどうでしょう?彼は、パンクの時代こそ、時代の先を行っていましたが、それ以後は逆に時代の流れに逆行しているようにも思えます。(まさに「パンチ・ザ・クロック」だ!)カントリー、クラシック、そして60年代ポップスときた彼のサウンドの変化がそれをよく物語っています。彼はロックというスタイルにはこだわらない、良質のエンターテイナーを目指していただけだったのかもしれません。(彼の父がジャズ系のボーカリスト、サックス奏者であり、母がレコード店を経営していたというのも、実に象徴的な事実です)

<シェークスピアとコステロ>
 彼とブロスキー・カルテットの作品「ジュリエット・レター」は、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」を元に、ジュリエットがロミオにあてた手紙という形で、この悲劇の物語を音楽化したものでした。これもまた実に魅力的な作品でした。と言うわけで、最近映画「恋するシェークスピア」を見て思ったことがあります。
 シェークスピアの作品には、あまりにいろいろなタイプがあり、そのためシェークスピアは一人の人物ではなく、複数の作家グループだったのではないかと言う説もあるのです。そして、それはある程度「異能の多作家」コステロについても言えることのような気がしたのです。シェークスピアだって、基本的には「多作な職人」でしたし、エンターテイメントを追求する人でした。それが後の評価で「天才」と言われることになったのです。だとしたら、コステロだってけっこういい線いっているんじゃないでしょうか?

<締めのお言葉>
「あなたの作品をひとつの絵で代表させるとすれば、どれでしょう」
「もともとひとつ描きたかっただけなんだ。夢中になりすぎて、描きすぎてしまってね。本当はいやになっているんだけど。ただ一点あればよかったんですよ」 アンディー・ウォーホル

<お薦めの作品>
"This Years Madel"(1978)"Armed Forces"(1978)
(若さとパワー全開ではじけてます)
"Punch The Clock"("Everyday I Write The Book"が最高!1984)
"King Of America" (美しいバラードが魅力,1986)
"Spike"(パワー全開のバラエティーに富んだ傑作,1989)
"Brutal Youth" (これもまた元気なアルバム,1994)
"All This Useless Beauty" (セルフ・カバー集だがどれも新鮮!1996)
"Painted From Memory" (完熟だがさっぱり味の赤ワイン!1998)

[参考資料]
「ロック伝説(下)」 ティモシー・ホワイト著(音楽之友社) その他

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