- フランク・ザッパ Frank Zappa (後編)-

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<もうひとつの遺産>
 フランク・ザッパの遺産は、膨大な音楽の記録だけではありません。彼が残したインタビューや文章などにある発言の数々や社会活動家としての行動の数々にも素晴らしいものがあるのです。なかでも、ロックの歌詞を検閲し、レコード・ジャケットに警告ラベルを貼るというPMRC(親たちによる音楽調査センター)の動きに対して行った彼の抗議行動と公聴会での証言は、ロック界だけでなくアメリカ社会全体における彼の存在価値を改めて知らしめました。
 それ以外にも、彼はレーガンらを中心とする共和党政権による妊娠中絶禁止の動きにも徹底的に反発しています。
「・・・妊娠中絶の選択の自由は、アメリカ人であるための基本的了解事項である。妊娠中絶反対派は、アンチ・アメリカ人だ。最近の出来事から、アメリカが直面している敵は、はるか遠くの共産主義者なんかじゃないってことがはっきりした。敵はこのアメリカにいる血迷った右翼のキチガイどもだ!このことをまちがえちゃいけない。・・・」
 彼は歌いっぱなしのロック・アーティストではなく、自分の歌にしっかりと責任をもつ筋金入りのロック・アーティストだったのです。

<幻の大統領選挙>
「戦争はやめさせるべきだ。ありゃ貪欲な戦争だ。すべての戦争がそうなんだろうけど。十字軍だって、おんなじだよ。でも、あんなやり方じゃ、うまくいかない。戦争をやめさせることができるのは、大統領だけだ。もし、自分の理想どおり、だれかにこの国を治めてもらいたいと思っているなら、そして、あんたが反戦運動家で、平和を実現したいと思うなら、実際に力となってくれる人物を、あそこに送り込め。そのため尽力する人間を、議会へと送り込むんだ。・・・」
 その後彼はレーガン、ブッシュなどをトップとする共和党の政策を批判すると同時に、具体的にそれを阻止するべく大統領選挙にうって出ようとしました。それはパロディーでも、冗談でもない真面目な行動でした。もし、彼がガンに冒されていなければ間違いなくが大統領選に出馬していたでしょう。もちろん、それは単なる売名行為ではありませんでした。その証拠に、彼は選挙戦に出馬するだけの政治的、社会的な活動実績をもっていたのです。

<東欧との架け橋として>
 1989年、フランク・ザッパは「Why Not ?社」を設立。これはレコード会社でもビデオ会社でもない国際認可・顧問・社会工学関連のコンサルタント会社で、その初仕事はロシアの崩壊によって民主化が進んだチェコスロバキアへの西側資本進出について、そのアドバイスや交渉役を請け負うというものでした。これは当時のチェコ大統領ヴァーツラフ・ハベルの信任を得て行われたもので、経済的な面だけでなく歴史的な観点でも実に画期的な出来事でした。(ザッパが大統領の信頼を得ることができたのは、彼の音楽が信頼されていたせいでもあります)
 なぜなら、彼の会社はアメリカの巨大資本、マクドナルドやコカコーラ、フォードなどの進出を促進するための企業ではなかったのです。「ホワイ・ノット社」は現代のグローバルな経済活動において最も必要なこと、富の公平な分配、資源と資本・技術力の有効な活用、自然文化環境の保全などを総合的に判断することのできる全く新しい企業だったのです。ロシアの崩壊によって生まれた混乱の中から生まれた貴重なチャンスを活かし、彼は社会の変革を目指したのです。
 この会社は、東欧専門のニュース番組も制作し、ロシアと周辺国の民主化にも大きな貢献を果たしました。(この企業が実際にどれだけの成果をあげたのか?僕にはそこまではわかりません。どなたか詳しい方がいらっしゃれば教えてほしいのですが・・・)
「問題は、システムを粉砕することじゃなく、改良することだ。忍耐が肝心だよ。ベトナムやビアフラの問題は、短期間で解決できるようなもんじゃない。苦難の道を通ってこそ、勝利を収めることができる。長い時間が必要だし、ちっともロマンチックじゃないし、バリケードの英雄もいない。だから、若者はそんなことにちっとも関心をもたない。・・・」

<誰よりもアメリカを冷静に見る男>
 彼はまた自らの国アメリカを冷静に見ることのできる数少ないアメリカ人の一人でした。
「若者たちは、目下のところ、非常に曖昧な状況に置かれている。彼らは、現実にこの国をコントロールしている。経済的な観点から言えばだが。しかし、彼らはこの国に向けられた世界中の人々の憎悪を一身に集めてもいる。それは、これまで、アメリカ人が、貪欲さもあらわに、いろんな問題の処理にあたってきたせいだ。・・・」

この言葉などは、まるで9・11同時多発テロ事件を予見していたかのような発言です。
 彼はアメリカが抱えるもう一つの悩み、「麻薬」についても、常に否定的な立場を貫いてきました。彼は、ほとんどのミュージシャンたちが薬漬けになっていた1960年代、麻薬の使用を否定し、バンドのメンバーにもその使用を許しませんでした。(そのために、初期のメンバーだったロイ・エストラダとロウエル・ジョージは、マザーズを脱退し、新たなバンド、リトル・フィートを結成することになったわけです)さらに、彼はLSDなどの麻薬がアメリカ中に広まったのは、アメリカ政府の陰謀によるものと考えていました。
「現実を直視しよう。LSDはCIAの産物だよ。すでに周知の事実ではあるけど、CIAは、陸軍の人間を使ってテストした。当時、サンフランシスコに住んでた連中の間に張り巡らされていたコネクションは、きっと政府のためにも役に立ったろうな。ティーン・エイジャー全体が、ドラッグの実験台として利用されたんだよ。・・・」

 同じような意見は、マイルス・デイビスを初め数多くの人々が語っており、そのターゲットは黒人だったというものもあります。左翼系の若者と黒人両方だったというのが、より正確な答えなのかもしれません。
 以前は、僕もこの見解はさすがにできすぎだと思っていました。しかし、北朝鮮による麻薬の輸出やCIAによる第三世界でのスパイ行為や政府転覆のための秘密工作など、政府主導による考えられない悪行の数々から考えると、それはけっして絵空事には思えなくなってきました。

<とはいえ、彼は天使じゃない・・・>
 いつか、彼の伝記映画ができるかもしれません。それは、間違ってもハリウッド映画ではないでしょうが、願わくば彼を美化し過ぎないようにしてほしいものです。これだけ書いてくると、彼はまるでキング牧師ガンジーのように思えてきますが、実際はそれだけではありません。それは彼のライブ映像を見てもらえるとわかると思います。彼のコンサートは、アルバムで聴かれる音楽以上にエッチでグロテスクかつコミカル、シュールでポップなエンターテイメント・ショーなのです。

<締めのお言葉>
「オーケイ、あんたがすぐにでも自由になりたいのなら、まずパンツを脱ぐことだ。それから、自分がパンツを脱いだことを認め、別の性の誰かを見つけたまえ。もし、もうちょっと変わった人間でいたいのなら、別のことをしてもいい。ただセクシャルにやれ。それだけが、あんたを自由にする方法だ」

フランク・ザッパ

<追記 - ゆるやかな革命を目指して - スロー・レヴォリューション宣言>
「俺は権力を手に入れようとは思わない。確かに、権力もまた、こうした事情に関与している。しかし、本当に問題なのは、システムを修正し、うまく機能するようにすることだ。民主主義の誕生時に打ち立てられた諸原理は、今日、適用されていない。教育を受けた人々とともに、民主主義は機能する。だから、俺たちに必要なものは、教育のありようを変えてくれる何かなのだ」
 フランク・ザッパは、こう言い残しています。しかし、もう彼はこの世にいません。彼が目指した自由のための「ゆるやかな革命(スロー・レヴォリューション)」は、我々自身が押し進めなければなりません。
「おいおい、俺一人にやらせようったってそうはいかないんだよ。自分たちでやってみなよ。どうせ無理だとは思うけどな」そんな彼の言葉が聞こえてきそうです。
 教育を基礎とする「ゆるやかな革命」は、長い時間、たぶん永遠の時間を必要とするでしょう。そして、それを受け継ぐ人々すべてがあきらめることなく次の世代へとビジョンを伝えて行かなければ簡単にダメになってしまいます。これは本当に困難な作業だと言わざるを得ません。しかし、本当の意味で時代を変えることができるのは、この方法だけだと僕も確信します。
 では、一人一人にはいったい何ができるのか?
 ここまで、読んできて「そうだ!」と同意してくださる方は、そのままあなたの思うように生きて下さい。そして、できればあなたの生き方、考え方を誰かに伝えて下さい。息子、娘、教え子、恋人、友人、それは一人か二人で充分です。ザッパはこうも言っています。
「・・・自分がアンダー・グラウンドにいると思っている若者に、敵の陣営に見られる献身ぶりが5%ほどもあればいいんだが。でなきゃ、だめなんだよ。戦争機械を動かしている連中は、ひどいビョーキなんだよ・・・でも、献身ぶりも並みじゃない。広告産業を動かしてる奴らも同じだ。だって、信じるものがあるわけじゃないか。「金」という信じるものがね。なのにアンダー・グラウンドとかいうやつにいる若者たちには、信ずべき何ものもない。・・・」
 ザッパと仲が良かったジョン・レノンが、歌っていたように、先ずは「想像してみる」ことではないでしょうか?そうすれば、かつてマーティン・ルーサー・キング牧師が見たように、素晴らしい世界が見えてくると思うのです。
あなたも、是非、ご参加下さい。
ようこそ!ゆるやかな革命同好会へ。

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