- りんけんバンド RINKENBAND -

<1977年「幻の沖縄イヤー」>
 1977年、喜納昌吉が、「ハイサイおじさん」で華々しく本土デビューを飾り、沖縄音楽はいっきに日本全国でブームを巻き起こしました。しかし、それはマスコミが盛り上げることによって生まれた一過性のものにすぎず、本格的に沖縄音楽全体にスポットが当たるようになるのは、それから10年以上後のことになりました。
 しかし、この記念すべき1977年は、喜納昌吉だけでなく、その十数年後の本格的沖縄音楽ブームの基礎を築くことになる沖縄音楽の仕掛け人、知名定男が本土デビューを飾った年でもありました。そして、彼のバック・バンドとして、その活動をスタートさせたのが照屋林賢率いるりんけんバンドだったのです。

<照屋ファミリー>
 照屋林賢は1949年コザ市(現在の沖縄市)に生まれました。彼の父親、照屋林助は沖縄独特の音楽漫談「ワタブーショー」の第一人者で、一家はマルテル・レコード、照屋楽器店を経営する筋金入りの音楽ファミリーでした。当然彼も、高校時代からバンド活動をしていましたが、ベトナムの戦場へ「殺人」という行為のために向かう兵士を相手に演奏することに嫌気がさし、民謡の世界へと方向を変えました。

<東京へ>
 彼は、本格的に音楽の勉強をすることを決意、父親の林助と大ゲンカののち家出同然で東京へと旅立ちました。しかし、勉強しながら始めたバンド活動の中、彼の中にある沖縄音楽は常に顔を出し続け、本土のミュージシャンたちとの間に存在するギャップを痛感することになります。結局、彼は本土での活動を断念、本格的に沖縄の音楽に取り組むため沖縄に帰郷します。しかし、この間の本土での経験は、彼にとって、音楽的、精神的に大きな財産となり、知名定男の東京デビューの際、彼はそのバック・バンドを任され、それが最初のりんけんバンド結成へとつながります。

<林賢の多彩な活動>
 幻だった沖縄音楽のブームが去った後、林賢は一度バンドを解散しますが、1982年に再結成し、いよいよ本格的に音楽活動に取り組み始めます。彼の心の中には、もう迷いも曇りもありませんでした。それからの彼は、ヤマハのコンテストにおいて沖縄地区で連続してグランプリを獲得、さらに沖縄の地ビール、オリオン・ビールのために作った「ありがとう」が沖縄で大ヒットするなど、一気にその活躍の場を広げて行きました。
 さらに彼が民謡のディレクターを務め、彼の父、林助が狂言回し(ワタブーショーによってドラマを進行させる)として出演した沖縄を舞台にした映画「ウンタマギルー」の全国的な大ヒットにより、一躍その名を知られるようになりました。そして、1990年ついに彼らのファースト・アルバム「ありがとう」が本土で発売されることになったのです。

<ワールド・ミュージックのブームとともに>
 この当時、世の中では、「ワールド・ミュージック」という言葉が市民権をすでに得ており、大型化が進むCDショップでは世界中のポピュラー音楽がそろうようになっていました。そんな中、日本国内の音楽でありながら世界的に評価される沖縄のポップスが、音楽ファンたちの間で受け入れられないはずはありませんでした。彼らは、それまでため込んでいたエネルギーを吐き出すかのように、1991年に「カラハーイ」、1992年に「アジマァ」とたて続けに素晴らしいアルバムを発表し、ネーネーズらとともにミュージック・シーンの中心に躍り出ます。

<この世のものとは思えない美しさ>
 実は、僕はりんけんバンドの方々とコンサート会場以外の場所でお会いしたことがあります。それも小樽にある「パンチョビラ」という小さなメキシコ料理のお店でのことでした。札幌でのコンサートに来た彼らは、その日小樽で行なわれたギリヤーク尼崎のパフォーマンスを見に来た帰りでした。たまたま、りんけんバンドの世話をしている方に僕がサインしてもらえないかなと頼むと、「じゃあ、これから食事だから食べに来なよ」と誘ってくれたのでした。さっそく僕はCDを持って、店に行き、メンバー全員のサインをもらい、ちゃっかり記念撮影までしてしまったというわけです。
 その場は、実にリラックスした楽しい雰囲気でしたが、バンドのヴォーカリストであり、林賢氏の奥様でもある上原知子さんの美しさはひときわ目をひき、オーラを発しているようでした。そのうえ、途中で彼女はアカペラで一曲歌ってくれたのですが、その美しさ力強さは、もうこの世のものとは思えないものでした。彼女もまた歌の女神に選ばれし者なのに違いありません。とにかく「ありがとう」の一言でした。いつかもう一度、今度は沖縄の地で彼女の歌声が聞きたいものです。

[参考]
海老原政彦氏によるアルバム「ありがとう」のライナー

<締めのお言葉>
「ヴィジョン・クエストのみならず、世界のネイティブな文化の持っているあらゆる通過儀礼の儀式は、どれもある共通するパターンに基づいて展開される。(1)独りになる(2)境界を越える(3)元の世界へ戻る」

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